しんぞうしゅよう

心臓腫瘍

最終更新日:
2024年01月26日
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2024/01/26
更新しました
2017/04/25
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概要

心臓腫瘍とは、心臓(心房や心室)に発生する腫瘍(しゅよう)の総称です。

ほかの臓器と比較すると心臓に腫瘍が生じることはまれで、そのうちのおよそ70%は良性腫瘍、30%が悪性腫瘍(がん)(小児の場合は10%)であるといわれています。ただし、良性・悪性にかかわらず、心臓の機能に悪影響を与える可能性があれば積極的な治療が必要です。

種類

心臓腫瘍は大きく“良性腫瘍”と“悪性腫瘍”に区分されます。

良性の心臓腫瘍

心臓腫瘍の大半は良性腫瘍です。良性腫瘍は転移がなく、それ自体が命に危険を及ぼすことはありません。しかし、発生部位に応じて心臓のはたらきに悪影響を及ぼすことがあるほか、腫瘍の一部が壊れて血液とともに流されることにより血管が詰まる“塞栓症(そくせんしょう)”を引き起こすこともあるため、注意が必要です。

心臓の良性腫瘍には心臓粘液腫、脂肪腫、乳頭状弾性線維腫、横紋筋腫などさまざまな種類がありますが、中でももっとも割合が高いのは心臓粘液腫で、心臓に生じる良性腫瘍全体の50%程度、心臓腫瘍全体の30〜40%を占めるといわれています。心臓のあらゆる部分に発生する可能性がありますが特に左心房に発生しやすく、男性より女性に多くみられます。

また、心臓粘液腫のおよそ5%は血縁者に遺伝しやすい“家族性”であるといわれており、この場合は若い男性によくみられ、腫瘍が多発したり再発したりしやすいことが特徴です。

悪性の心臓腫瘍

悪性の心臓腫瘍には、心臓で発生した“原発性”の腫瘍と、ほかの臓器で発生したがんが転移して生じた“転移性”の腫瘍があります。いずれも心臓からほかの部位へ転移する可能性があり、命に関わることも少なくありません。

心臓原発の悪性腫瘍のうち、原発性の心臓腫瘍の95%は肉腫、ごく一部は悪性リンパ腫または心臓を包む心膜原発の悪性中皮腫が挙げられます。悪性中皮腫は若い人に多くみられる傾向があり、心臓肉腫、悪性リンパ腫は中年以降の人に多くみられます。原発性の心臓悪性腫瘍はかつて治療が困難で長期生存が難しい病気といわれていましたが、近年手術や化学療法、放射線療法を組み合わせて行う集学的治療の進歩により治療成績は改善傾向にあります。

なお、転移性の心臓腫瘍は、原発性の心臓腫瘍と比較すると30~50倍多いとされています。がん全体の10〜20%程度に起こるといわれており、特に心臓に転移しやすいがんとして白血病悪性黒色腫甲状腺がん肺がん、肉腫などが挙げられます。

原因

ほとんどの心臓腫瘍は原因が明らかになっていません。

ただし、良性腫瘍の1つである横紋筋腫は結節性硬化症に合併する傾向があります。また、一部の粘液腫は家族性で血縁者に遺伝する可能性があります。

なお、転移性の心臓腫瘍はほかの臓器で発生したがんが心臓に転移することによって生じます。

症状

心臓腫瘍では良性・悪性にかかわらず、腫瘍が心臓の内部を占拠することにより血流が悪くなり、めまいや息切れ、失神などの症状が現れることがあります。特に立っているときは重力によって腫瘍が引き込まれやすいため、症状が現れやすいといわれています。

また、左心房から左心室へ血流を送り逆流を防ぐ僧帽弁という器官に腫瘍が完全にはまり込んでしまうと、血流が遮断されることで突然死の原因になる可能性もあります。

そのほか、塞栓症と心不全にも注意が必要です。腫瘍の一部が壊れ、破片となって血液とともに流れていくと血管のどこかで脳梗塞(のうこうそく)心筋梗塞、肺塞栓、下肢急性動脈閉塞などの塞栓症を引き起こします。また、腫瘍が心臓内を占拠することによる血流障害に続発して、うっ血性心不全が引き起こされ、下肢浮腫、胸水や腹水の貯留が起こることもあります。

検査・診断

心臓腫瘍の有無については、心エコー検査やCT検査などの画像検査で判別が可能です。特に心エコー検査は腫瘍の位置や心臓機能への影響を確認できるため、診断のためには非常に有効な検査方法です。

ただし、これらの検査のみでは良性・悪性、腫瘍の種類などの腫瘍の性質を判断することはできません。そのため、心臓腫瘍は手術後に腫瘍を詳しく検査することで初めて確定診断が付くこともあります。

治療

心臓腫瘍では一般的に手術治療が検討されます。良性腫瘍の場合、より体へ負担がかかりにくい手術方法(低侵襲(ていしんしゅう)手術)が検討され、右の肋骨(ろっこつ)の間などから器具を入れて手術を行います。

ただし、粘液腫は術後5〜10%ほど、乳頭状弾性線維腫では約2%の再発が報告されています。心臓内で複数箇所に腫瘍を認める多発性の腫瘍では、より強い増殖性を持つ可能性から手術後も再発に注意する必要性が指摘されています。

悪性腫瘍の場合は手術をしても根治が期待できない可能性もあり、全例が手術の対象となるわけではありません。ただし手術による根治が難しい場合でも、突然死のリスクなどを回避するために手術治療を行うことがあります。この場合、基本的には手術治療だけでなく薬物療法や放射線治療を組み合わせることによって、病気とうまく付き合っていく手段を模索します。治療効果を最大限に得るためには、経験豊富な心臓外科医と肉腫など希少がんを専門とする医師が病院の枠を越え、連携協力して治療を行うことが重要となります。

手術のリスク

心臓手術を行う際は術中に心臓を一時的に停止させ、代わりに“人工心肺装置”を使用することが一般的です。人工心肺装置を使用すると、脳梗塞、肺に関する障害、多臓器機能低下、血液凝固の異常、免疫能力の低下などの合併症が起こることもあるため、手術を行う際は事前に詳しく説明を受けるようにしましょう。

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心臓腫瘍を得意な領域としている医師

  • 社会医療法人財団石心会川崎幸病院 川崎心臓病センター 心臓外科部長、低侵襲治療部門副部門長

    • 狭心症
      • オフポンプ冠動脈バイパス術
    • 心筋梗塞
      • 左室破裂、心室中隔穿孔修復術
    • 心臓弁膜症
      • 大動脈弁、僧帽弁、三尖弁の弁形成、弁置換術
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