ひだいがたしんきんしょう

肥大型心筋症

最終更新日:
2023年02月27日
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2023/02/27
更新しました
2017/04/25
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概要

肥大型心筋症とは、高血圧弁膜症など心臓に負担をかけるような原因や全身性疾患などがないにもかかわらず、心筋(心臓の筋肉)が肥大(通常のサイズよりも大きくなること)する病気のことです。

この病気は心筋が均一に肥大しないのが特徴であり、肥大した部位によって症状や重症度は大きく異なります。全身に血液を送り出すはたらきを担う左心室の血液の流れの障害となるような心筋肥大を生じるものは“閉塞性肥大型心筋症(へいそくせいひだいがたしんきんしょう)”と呼ばれ、左心室の血液の流れを障害しない心筋肥大が生じるものは“非閉塞性肥大型心筋症”に分類されます。

肥大型心筋症は発症したとしても多くは自覚症状がないとされています。しかし、中には心機能の低下や左心室内の血流障害、不整脈などの症状を引き起こす場合もあり、これらは突然死の原因になることも知られています。

何らかの症状があるときは心筋肥大による血流障害を改善する薬物、不整脈の出現を抑制する薬物などを用いた薬物療法がまず行われます。薬物治療で制御できない場合には、肥大した心筋をカテーテルで焼灼(しょうしゃく)したり、手術で切除したりする治療が必要です。

原因

肥大型心筋症は遺伝が関与していると考えられています。具体的には、心筋の細胞の中にある一種のタンパク質を作る遺伝子の変異が主な原因とされています。この遺伝子の変異は“常染色体性顕性遺伝”の形式で遺伝していくことが分かっています。

しかし、肥大型心筋症の約半数は家族内にこの病気を発症している方がおらず、遺伝の関与は否定的など、はっきりした原因が分からないのが現状です。

症状

肥大型心筋症を発症したとしても、多くの場合は自覚症状がないとされています。しかし、この病気は心筋が不均一に肥大化する病気であり、全身に血液を送り出すはたらきを担う左心室の心筋が肥大化して硬くなると、心臓から送り出される血液が減少したり、肺からの血液が心臓に戻りにくくなったりすることでさまざまな症状が現れるようになります。

具体的には、胸の痛み、動悸、息苦しさなどの症状、脳への血流が低下することによる立ちくらみ、失神などが挙げられます。また、肥大型心筋症では不整脈弁膜症を引き起こすこともあり、特に不整脈は突然死の原因になることもあるため注意が必要です。

検査・診断

肥大型心筋症は自覚症状がないことも多く、健康診断などで偶然発見されるケースも少なくありません。肥大型心筋症が疑われる場合には次のような検査が行われます。

画像検査

心臓が肥大化していることを確認するため、胸部X線検査などの画像検査を行うのが一般的です。また、心筋の状態や心機能などを詳しく評価するためにCTやMRI、ほかの心筋症を除外するために心筋シンチグラフィなどによる精密検査を行うこともあります。

心臓超音波検査

心機能や心筋の動きと合併症の有無を評価するために行う検査です。心筋肥大の状態を確認できるため、診断の鍵となります。

この検査では、血流障害の有無、合併する弁膜症心房細動に伴う左房内血栓の有無などを評価することができます。

血液検査

肥大型心筋症の診断はできませんが、心肥大を引き起こし得るほかの病気との鑑別を行うことや全身の状態を把握する目的で血液検査を行うのが一般的です。

遺伝子検査

肥大型心筋症の約半数は遺伝が関与していると考えられており、原因となる遺伝子の変異も特定されています。そのため、遺伝子検査は診断確定に有用と考えられています。

心筋生検

心筋の一部を採取して顕微鏡で詳しく観察する検査です。肥大型心筋症では特徴的な心筋の変化がみられるため、体への負担が大きな検査ですが診断確定に有用とされています。

心電図検査

肥大型心筋症は不整脈(特に心室頻拍・心房細動)を引き起こすこともあるため、心電図検査を行うのが一般的です。不整脈の有無を確認するため、受診時だけではなく24時間の心電図モニタリング(ホルター心電図)を行うことも重要です。

また、心電図の波形の異常から心筋肥大を推測することもでき、健康診断などでこの病気が発見されるきっかけとなることもあります。

治療

肥大型心筋症の多くは自覚症状がないため、特別な治療はせずに心臓に過度な負担をかけるスポーツを控えるなどの生活指導を行いながら経過を見ていくことが多いとされています。しかし、左心室内の閉塞や不整脈などによる症状がある場合は、心筋の過度な収縮を抑える薬剤や不整脈を抑える薬剤などによる薬物療法を行うのが一般的です。

薬物療法を行っても症状が改善しない場合や重症な場合は、カテーテル(医療用の細い管)を用いて肥大した心筋の一部にエタノールを注入して焼灼する治療や、手術による切除が行われます。さらに、左心室の機能が著しく低下して心不全などを発症している場合は、心臓移植が検討されます。

また、心房細動を認める場合は心臓内にできた血栓により脳梗塞を引き起こすため、抗凝固薬(血液が固まりにくくなる薬剤)の内服が必要となります。心室頻拍に代表される心室性不整脈は、突然死の原因となるため埋め込み型除細動器(電気ショックが可能なペースメーカー)の埋め込みが必要となる人もいます。

予防

肥大型心筋症の約半数は遺伝によるものであり、残りは原因不明であるのが現状です。そのため、肥大型心筋症を確実に予防する方法は現在のところありませんが、特定の遺伝子変異に対する治療法が研究されています。

しかし、この病気は無症状であるケースが多い一方で、不整脈を起こして突然死を引き起こすこともあり、診断された場合は適切な管理をしていく必要があります。健康診断などで偶然発見されるケースも多いですが、軽く考えずに医師の指示に従って治療や経過観察を続けていきましょう。

また、過度な運動や飲酒は肥大型心筋症の症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。

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