概要
肩腱板損傷とは、肩関節の安定性をもたらす腱板に断裂などの損傷が生じた状態です。肩腱板損傷が生じると、肩の痛みや肩関節の運動障害などを呈するようになります。
腱板損傷は外傷を契機に発生することもありますが、明らかな外傷歴がなくても、長年の疲労や負荷などの積み重ねにより肩腱板損傷を発症することがあります。肩腱板損傷は50歳以上の男性、特に右肩で発症することが多いといわれています。
肩腱板損傷の治療は、肩関節の安静、痛み止めの使用、理学療法など保存的治療が中心となります。しかし、これらを実施しても効果が見られない場合には、手術的治療が検討されます。
原因
肩関節の前側には鎖骨、後側には肩甲骨があります。肩甲骨には、上腕骨頭(上腕骨の頭)が収まる関節窩があり、これらが軟骨によってつながっているため、腕を上げる・下げる・回すなど複雑な動きができます。
しかし肩関節は骨同士が接する面積が非常に狭いため、受け皿から上腕骨頭がずれて脱臼しやすいなどの不安定さも抱えています。こうした弱点を補うため、肩関節周辺にはインナーマッスル(腱板)・関節包や靭帯・関節唇といった様々な軟部組織が存在しています。肩腱板損傷とは、肩関節を支える周辺組織が損傷した状態のことです。
インナーマッスルは、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋と呼ばれる筋肉が合わさっていて、関節組織を3方向から支えています。肩腱板損傷を最も起こしやすいのは、肩甲骨の一部である肩峰の下にある肩峰下腔に位置する棘上筋です。
肩腱板損傷は肩を何度も動かすことで、損傷部と肩峰の間に衝突現象が生じ、損傷が進みます。そのため、ケガやスポーツなどによる外傷が引き金となることもありますが、スポーツ選手や職人など長年の肩の酷使、加齢などが原因で肩腱板損傷を発症することもあります。
症状
肩腱板損傷が生じると、腕を上げたり下げたりする動作に伴い肩の痛みを自覚するようになります。また炎症が強い場合には安静時や夜間就寝中にも痛みが生じることもあります。こうした肩の痛みは日常動作に関連したちょっとした動作でも誘発されることがあり、テーブルの遠くのものが取れない、髪の毛をブラシでとかせないなど支障が生じることもあります。断裂のサイズが大きくなると筋力低下が生じ、挙上障害も出現することがあります。
検査・診断
肩腱板損傷では身体診察により、肩の挙上に際して痛みが誘発されるかどうか、動作に一致して肩峰で腱板が挟まれている音がするか、健側と比較して外転や外旋筋力の低下がないかなどを確認して、どの部位が損傷しているのか推定します。その後、レントゲン写真、超音波検査、MRIといった画像検査を実施して、肩峰下腔の狭まり方や肩腱板の損傷度合を確認して最終的に診断します。
治療
肩腱板損傷の治療では、保存療法もしくは手術的な治療介入が行われます。どちらを選択するかは、患者さんの年齢や職業、肩を使う頻度、日常生活に対しての障害具合、どの程度肩の障害が持続しているかなど考慮して決定します。
肩腱板損傷ではまず保存的療法が取られることが多く、患部の安静(三角巾の使用や肩の使用制限)、痛み止めの内服、理学療法やヒアルロン酸・ステロイドの注射などを行います。
しかし、保存療法の効果が薄い、損傷の程度が強い場合には、手術により肩腱板の修復を行います。手術は直視下に行うものと関節鏡下に行うものがあります。術後は1か月肩装具で肩関節を固定したあと、回復具合をみながらリハビリテーションを実施します。
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