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腸チフス

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

腸チフスは、チフス菌に感染し、全身に症状を起こす感染症です。体内に入ってから潜伏期間を経て、徐々に発熱や皮疹などの症状があらわれます。東南アジア、中南米、アフリカなど各地で多く発生しており、繰り返し流行しています。

日本でも昭和初期から終戦後にかけてよくみられた感染症でしたが、衛生環境の改善に伴い、発生は一気に低下しました。近年では、毎年20~30人くらいの感染者が確認されていますが、7~8割は海外への渡航歴がある方で、渡航地でチフス菌に感染したものと考えられます。しかし、2013〜2014年には海外渡航歴のない国内での感染例が散見されました。2014年に東京都で報告のあった7例は、ある飲食店での喫食が感染のきっかけとなって起こった腸チフスの集団発生であり、1999年4月に腸チフスに関する感染症発生動向調査が始まってから初めての集団食中毒でした。

腸チフスは抗菌薬を使用して治療しますが、治療を行わずに自然に経過をみた場合、約10%の患者さんは発症~3か月間にわたって便に菌が排泄されて感染源となるとされています。また2~5%の患者さんは胆嚢(胆汁を蓄積する臓器)に菌が居座り、無症状であるにもかかわらず菌を持った状態(無症状病原体保有者)となることがあります。

なお、腸チフスは感染症法で3類感染症に定められています。これは診断した医師に、症状の出た患者さんだけでなく、無症状病原体保有者についても直ちに最寄りの保健所へ届出を義務付けるものです。無症状病原体保有者は、腸チフスを発症した患者さんとともに渡航している、あるいは食事を摂ったことを手掛かりに調査を進めることで発見されます。また、ほかの病気の検査でたまたま指摘されたり、健診などで発見されたりすることがあります。

原因

腸チフスの原因菌はチフス菌で、ヒトにのみ起こります。症状の出た患者さんや無症状病原体保有者の便や尿、またそれらによって汚染された手指や食べ物、水などを経口摂取することで感染します。腸チフスが流行する海外への渡航が感染のきっかけとなることが多いものの、輸入された長期保存できる食品(冷凍食品など)がチフス菌に汚染されていた場合にも感染源となりうるため注意が必要です。

腸チフスの予防について

一番の予防方法は、徹底した手洗い(トイレの後や、料理・食事の前など)です。また、腸チフスの流行している地域に渡航した際には生野菜やフルーツ、生水や氷を喫食しないように心がけることも重要です。南アジアなど流行地に渡航する場合には予防目的でワクチンを使用することもありますが、日本では未承認です。

輸入ワクチンを取り扱っている医療機関(トラベルクリニックなど)にて接種することができます(ただし、予防効果はワクチン接種者の50~80%においてみられ、100%の予防効果があるわけではありませんので注意が必要です)。

症状

チフス菌が経口的に体内に入ると、通常は8~14日間の潜伏期間を経て、徐々に症状が現れます。もっとも多くみられる症状は発熱です。38~39℃の高熱で、稽留熱(けいりゅうねつ)(1日のなかで体温の変化1℃以内)という熱型を呈します。下痢または便秘、バラ診(背中やお腹の淡いピンク色の発疹)や、肝臓や脾臓(ひぞう)の腫れがみられます。ときに腸の出血や穿孔(せんこう)(穴が開くこと)を起こし、生命にかかわることもあります。典型的な経過では、回復するまでにおよそ4週間かかります。

検査・診断

海外への渡航後しばらくして高熱が出た場合、腸チフスも可能性に入れ、渡航した場所が流行のある土地であったか、潜伏期間などについて問診・診察をしていきます。腸チフスの診断は、血液や便、胆汁などを採取して培養しチフス菌を検出して行います。

治療

腸チフスの治療には、抗菌薬を内服します。チフス菌に効果を持つ抗菌薬を使用することで、症状をより早く改善し、死亡リスクを下げます。世界的に広く使用されている抗菌薬は、フルオロキノロン系の抗生物質(多くはシプロフロキサシン)です。しかし現在(2018年時点)、南アジアや東南アジアでは薬剤に対して耐性を獲得した菌(従来の抗生剤が効きにくいタイプに変化した菌)も多く報告されています。

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