大切なのはネバーギブアップとパッション!

群馬大学大学院医学系研究科病態腫瘍制御学講座腫瘍放射線学 教授
中野 隆史 先生

大切なのはネバーギブアップとパッション!

群馬大学に重粒子線治療を導入した中野隆史先生のストーリー

公開日 : 2017 年 11 月 22 日
更新日 : 2017 年 11 月 27 日

野球漬けだった医学生時代

医学生時代の私は、野球に夢中でした。東医体(東日本医科学生総合大会)の野球大会で優勝するために、朝から夕方まで練習漬けの日々。そんな学生時代も終わりを迎え、ついに卒業となった時点で私はがん研究への道を歩む決意をします。自身の父親が40代でがんになってしまったこともあり、がんの患者さんを治したいと思ったからです。

そんな折、野球部の新部英男部長(前放射線医学講座教授)から放射線科に誘ってもらいました。放射線治療なら自分の目標であるがんの患者さんを救えると思い、放射線科へ入る決意をします。それまでの反動なのか、私の中で勉強への熱意が一気に込み上げ、大学院へと進学し、4年間みっちりと勉強漬けの日々を過ごしました。

放射線医学総合研究所で目の当たりにした重粒子線治療

30歳くらいのときにずっと所属していた群馬大学を離れ、その後17年もの間、千葉県にある放射線医学総合研究所で子宮がんの放射線治療を専門にすることになるのですが、そこで私は最先端の放射線治療である重粒子線治療に出会い、その可能性に圧倒されることになります。

がんを外科的治療で治そうとすると、がんが発生している部分を切り取るしかありません。たとえば、喉頭がんを患い手術により声帯を取ってしまった場合、患者さんは声を失ってしまいます。たとえば腰や骨盤の骨肉腫を全摘出した場合、歩けなくなってしまいます。

放射線治療の場合、腫瘍部分に放射線を照射することで治療するため、患者さんのその後の生活に大きな支障をきたすことはあまりありません。もちろん照射した箇所は、一時的にダメージを受けます。しかし時間が経つにつれ、人間元来の力で回復へと向かいます。ここまでが放射線治療の特徴です。しかし、重粒子線治療のメリットはこのさらに上をいくものです。

重粒子線治療とは患者さんの生活に寄り添う治療

通常の放射線治療の場合、腫瘍だけでなく、正常な細胞にまで放射線が当たってしまうので、患者さんへの身体的な負担が大きくなってしまいます。また、1か月ほど、継続的に来院する必要があり、学校や仕事を休まなければならない場面も増えてしまいます。

しかし、重粒子線治療はこれとは違います。まず、重粒子線は腫瘍部分にだけ集中的に照射することが可能です。そのため、正常な細胞を傷めず、副作用を最小限に抑えることができます。通常の放射線治療の患者さんと比べ、重粒子線治療後の患者さんはとても元気でピンピンしています。また、早い方だと1回の通院で治療が完了し、学校や仕事など、患者さんの本来の生活に大きな変化を強いません。

重粒子線治療のメリットはこれ以外にもさまざま存在します。とにかく患者さんの喜ぶ顔を見ることにやりがいを感じる私にとって、これほどまでの可能性を秘めた重粒子線治療はまさに宝の山だったのです。

ネバーギブアップとパッションでチャンス到来

その後、私は母校である群馬大学に教授として戻ることになります。その際、重粒子線治療の導入も立案しました。こんなにも可能性のある重粒子線治療ですから、ぜひ群馬にも!と思ったのです。

しかし、どうして群馬という地に、最先端の放射線治療である重粒子線治療装置が必要なのかと思われるかもしれません。というのも、いくら重粒子線治療が素晴らしくとも、本体の値段は80億円以上、総工費では150億円以上もの莫大な建設費用がかかるからです。

重粒子線は線量の集中性のよさと高い生物効果の両方を持っています。そして、これまで通常の放射線治療では治しにくかった、骨肉腫や悪性黒色腫などのがんが治せることが分かったのです。そのため、全国に普及型の重粒子線装置を開発して、自ら、その有効性を実証し、地域医療の中で、がんの重粒子線治療を定着させたいと私は考えました。

私が重粒子線治療の導入を主張した当初は、まさに四面楚歌。私に対する態度は例外なくみな厳しいものでした。しかし、私の強みはネバーギブアップとパッション。

重粒子線治療が必要な理由を発言し続け、行動を起こしているうちに、周囲も耳を傾けてくれるようになりました。そして、偶然と奇跡が重なりチャンスはやってきて、念願であった重粒子線治療を群馬大学でも始めることができたのです。

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群馬大学大学院医学系研究科病態腫瘍制御学講座腫瘍放射線学 教授

中野 隆史 先生

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