知多半島医療圏の地域医療を支える
知多半島総合医療センター

切れ目のないがん診療体制を整備し、地域完結型の医療を目指す

がん診療体制をさらに強化し、
地域完結型の医療を目指す

当院は、半田市立半田病院を前身として、2025年4月に名称を新たに開院いたしました。新病院開院の構想は、10年ほど前から始まりましたが、建設地の選定には紆余曲折がありました。「津波の影響が及びにくい場所に」という市民の方々からのご要望をもとに、半田市横山町を新たなスタートの地に選びました。
当院の強みは、地域がん診療連携拠点病院として、患者さんにがん治療における標準治療*を提供できることです。たとえば乳がん一つをとっても診断から手術、薬物療法、放射線治療まで当院で一連の治療が行えます。

科学的根拠に基づいて現在利用できる最良の治療であることが示されており、一般的な患者さんへの提供が推奨される治療のこと。

知多半島医療圏におけるがん治療の“ハブ病院”として尽力

知多半島医療圏における
がん治療の“ハブ病院”として尽力

新病院の開院に際しては、がん診療の専門性を高めるべく、検査・治療体制の強化に努めました。たとえば旧病院では2台体制だったCT・MRIをそれぞれ増設して3台体制とし、迅速に画像診断を行える体制を確立しています。また、手術室は9室で、全室をほぼ同じ仕様とし、どの手術室でも腹腔鏡下手術ふくくうきょうかしゅじゅつ・ロボット支援下手術に対応できるようにしました。放射線治療においても新たな治療装置であるIMRT(強度変調放射線治療)を導入し、通常の放射線治療に加え、より短時間で体への負担に配慮した治療にも対応できるようになりました。
同じく知多半島にある“知多半島りんくう病院”とは、同じ地方独立行政法人 知多半島総合医療機構に属する病院として連携体制を築いています。より強固な連携体制を確立しながら、がん治療における“ハブ病院”として、この地域の方々がより安心できる治療を提供していく所存です。お困りの際は、ぜひ安心して当院にお越しください。

院長プロフィール

知多半島総合医療センターにおける
乳がん・胃がん・大腸がん
の治療、がん相談支援センター

乳がんの治療

検査技術と設備でがんの見逃し防止に努める

乳がんは早期発見・早期治療によって根治する可能性が高いがんです。しかし、早期には自覚症状がないこともありますので「自分は大丈夫だろう」と思わず、定期検診を受けることが非常に大切です。
乳がんはいかに小さいうちに発見できるかが重要で、そのカギを握るのがマンモグラフィ検査の"撮影精度"です。当院では“検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師*”を有する技師が撮影を担当しており、精度高く撮影できるよう、日々研鑽を重ねています。

検査技術と設備でがんの見逃し防止に努める

検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師*
小竹さん

また、当院は患者さんの体への負担も考慮して、検査機材にもこだわっています。当院が導入している富士フイルム社のAMULET SOPHINITYは、低被ばくかつ精細な撮影が可能な機器で、痛みの軽減を目指した“なごむね機能”と呼ばれる機能も備わっています。あらゆる面で患者さんの負担軽減を考えた検査体制を整えています。

日本乳がん検診精度管理中央機構が認定する資格。技術や知識が要求されるマンモグラフィ撮影において、同機構の認定試験に合格した診療放射線技師を指す。

多職種によるチーム医療で、術後の日常生活まで支える

私たちは“いかに質高く、チームで患者さんを支えるか”に重点を置いています。新病院の開設にあたっては、検査室の配置を工夫してスタッフ間の円滑な情報共有を促すことで、病変の見逃し予防に努めています。もちろん診療においても“チーム医療”を重視しています。たとえば治療方針は外科全体でカンファレンスを行って決めており、複数の医師の視点からより患者さんに適した治療を提案しています。また、がんを告知された患者さんの精神的ケアや就労支援、退院後の生活・療養支援などは、認定看護師(がん薬物療法看護分野・緩和ケア分野)*や社会福祉士など、多職種でサポートしています。患者さんの社会生活や普段の生活も踏まえ、お一人おひとりに合った提案をするとともに、がん相談支援センターとも連携しながら必要な情報提供も行っています(がん相談支援センターに関しては、ぜひこちらもご覧ください)。

日本看護協会による認定。高度化し専門分化が進む医療の現場において、特定の看護分野で水準の高い看護を実践できると認められた看護師を指す。

多職種によるチーム医療で、術後の日常生活まで支える

写真右:がん薬物療法看護認定看護師
(日本看護協会認定) 籾山さん

治療においては標準治療を提供しています。“標準”治療というと「特徴的でない」という印象を与えてしまうかもしれませんが、標準治療は科学的根拠に基づいて現在利用できる最良の治療とされており、どのような病気の治療でも基本となるものです。まずは“標準治療”をしっかりと行うことが、安心で安全性の高い医療につながると私たちは考えます。当院ではこの基本を大切にし、患者さんの状態に応じて柔軟に対応できるチーム医療体制と専門性を備えています。放射線治療には設備や放射線科医が必要になりますし、手術範囲を決める術中迅速病理診断*には病理医が欠かせません。薬物療法センターでは医師のほかに、認定看護師(がん薬物療法看護分野・緩和ケア分野)、がん専門薬剤師**、がん病態栄養専門管理栄養士***といった専門的な資格を持つスタッフも常駐しています。
それぞれの役割として、看護師は体調や副作用を確認し、日常生活の支援や不安への対応。薬剤師は薬の説明や副作用への支援を行い、安全・的確に治療を行えるように努めています。管理栄養士は食欲不振や体重減少など治療中の食事の工夫などを提案して栄養が摂れるように支援し、チームで患者さんをサポートしています。
さらに当院では、化学療法や手術後のアピアランスケアにも力を入れています。アピアランスケアとは、がん治療によって生じた外見の変化に起因する苦痛を軽減するケアのことです。
日本乳癌学会認定 乳腺専門医、検査技師、がん薬物療法認定看護師、他科の医師など、多職種の連携によるチーム医療で、治療から術後の生活までサポートできることが当院の強みです。何か心配なことがあれば、ぜひご相談にいらしてください。

手術中にリンパ節への転移の有無を確認する検査。最終的な手術範囲を決めることができる。

日本医療薬学会による認定。がん領域の薬物療法などに一定水準以上の実力を有し、医療現場において活躍しうる薬剤師を指す。

日本病態栄養学会による認定。がんの栄養療法に関する専門的知識を有し、患者さんの状態に応じた栄養療法について高度な知識と技術を有することなどが認められた管理栄養士を指す。

解説スタッフプロフィール
籾山 裕美 先生
がん薬物療法看護認定看護師(日本看護協会認定)
籾山 裕美さん
小竹 真紀 先生
検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師
(日本乳がん検診精度管理中央機構認定)
・医学物理士
小竹 真紀さん

胃がんの治療

鎮静薬を用いた内視鏡検査で苦痛を軽減

胃がんが発見されるきっかけはさまざまですが、患者さんの中には、健診で異常が見つかっても「生活に支障が出ていないから」と様子見をしてしまい、進行してから発見に至るケースも少なくありません。早期に治療できれば根治も見込めますので、気になることが少しでもありましたら、お気軽に受診してください。
当院では、“患者さんの不安をできるだけ早く取り除くこと”を大切に、速やかに内視鏡検査を実施しています。苦しい思いをしながら検査を受けると、以降の検査にも足が向かなくなってしまうと思うので、鎮静薬を使い、眠った状態で内視鏡検査を受けていただけるように工夫しています。検査の結果、がんが発見された場合は転移がないかなどを確認し、ステージング(がんの進行の程度を評価)を進めます。

低侵襲の内視鏡治療も実施、多職種によるカンファレンスで治療方針を立案

早期胃がんの場合は、内視鏡を使用してがんを切除します。当院では新病院開院に伴い内視鏡センターを設立し、新しい設備・機器を導入しました。早期胃がんの治療として行っているESD(内視鏡的粘膜下層剥離術ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)は、内視鏡を通して胃に挿入した高周波ナイフを使い、胃の粘膜にある病変を切除する方法です。胃を切除するわけではないため、外科手術に比べ体への負担が少なく、お腹を切開することなく治療することができます。

低侵襲の内視鏡治療も実施、多職種によるカンファレンスで治療方針を立案

内視鏡による切除が難しい場合には、がんの進行の程度によって外科治療や化学療法を検討していきます。より高い治療効果が見込めるよう、患者さんの体の状態やがんの性状を診て、薬剤師や消化器内科医、消化器外科医などと相談しながら、治療方針を決めています。
手術では、腹腔鏡を使用した胃切除術・胃全摘術を実施しています。お腹に数か所5mm~1cm程度の小さな穴を開け、そこから腹腔鏡と呼ばれるカメラやメスを挿入して行う手術です。傷が小さく済むため術後の痛みが少なく、回復も早いことがメリットとされています。症状やステージによっては開腹手術が必要となる場合もありますが、こちらも患者さんの病態を診て総合的に判断しています。

“見えない不安”を解消し、信頼関係を築きながら治療を進める

手術に際し心がけているのは、入院してからどのような経過をたどるのか、という患者さんにとっての“未来のビジョン”を具体的にお伝えし、不安を取り除くことです。特に胃の切除などにより食べ物が直接腸に運ばれることで、ダンピング症候群(食後にめまいや動悸、手指のふるえなどの症状が現れること)と呼ばれる後遺症が発生する可能性があるため、食事の指導は非常に重要です。管理栄養士による指導はもちろんのこと、外科的な観点からも、予防のために「食事は小分けで6回ほど取ったほうがよい」など具体的な食べ方を患者さんにお伝えするようにしています。

“見えない不安”を解消し、信頼関係を築きながら治療を進める

院内にはがん相談支援センターもあり、がん治療や入院・療養に関する疑問や不安などを解消できるよう、病院スタッフ一丸となってサポートしています(がん相談支援センターに関しては、ぜひこちらもご覧ください)。
胃がんに限らず、がん治療は治療期間が長期にわたるケースも少なくありません。そのため、患者さんとのお付き合いも自然と長くなり、私(酒徳)にとっては患者さんが家族のように感じられることもあります。がんと診断を受けたとき、「どうして私が」などと悲観的になるのも無理はありません。ですが、この知多半島には私たちがいます。責任をもって治療にあたりますので、お困りの際はぜひ当院にいらしてください。

解説医師プロフィール

大腸がんの治療

内視鏡による前がん病変の切除やロボット支援下手術による低侵襲な治療を提供

大腸がんは、早期発見、早期治療によって根治が見込めます。またがんになる前の小さな病変(前がん病変)の段階で切除できれば、将来の大腸がんの予防につながる可能性もあります。健診での便潜血検査などで異常が見つかった場合には、ぜひ一度ご来院いただきたいです。
早期の大腸がんに対しては、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)による治療が可能です。この治療では内視鏡を用いて、高周波ナイフで粘膜にあるがん病変を切除します。お腹を切開しないため外科手術に比べ負担が少ない治療です。

内視鏡による前がん病変の切除やロボット支援下手術による低侵襲な治療を提供

手術が必要な場合でも、当院は患者さんの体への負担に配慮した手術を行っています。結腸・直腸がんには、従来から傷の小さな腹腔鏡下手術を行っていますが、直腸がんに対しては2023年4月にダビンチXiサージカルシステム(da Vinci Xi Surgical System)を導入し、ロボット支援下手術を実施しています。直腸がんの手術では、狭い骨盤内、かつ周辺に膀胱や生殖器といった臓器が複数位置している場所での剥離操作が求められるため、手術の難度が高いといわれています。これに対してロボット支援下手術では、高倍率の3D画像で病変を確認しながら執刀できるうえ、手ぶれ補正機能があり、繊細な手術が可能です。安全に配慮した手術に努めていますので、手術が必要な際はぜひ頼っていただければと思います。

術後のQOLも勘案し手術方針を決定する

直腸がんの手術では、できる限り患者さんがいつもどおりの生活を維持できるよう、“肛門が残せるかどうか”という点も重視しながら治療方針を決めていく必要があります。もちろん、全ての症例において肛門こうもん温存が患者さんのQOL(生活の質)向上につながるとは言い切れません。治療方針は術後の生活を見据えて、よりよい生活ができると考えられる治療法を提案します。人工肛門が必要な場合には、患者さんとそのご家族にも時間をかけて十分な説明をします。ご不安なことは、どのようなことでもご相談いただければと思います。また、当院には皮膚・排泄ケア認定看護師(日本看護協会認定)という専門資格を有するスタッフも在籍しており、術後の皮膚のケアや人工肛門との付き合い方について、情報提供や日常生活のアドバイスを行うなど、術後のフォロー体制も整えております。

術後のQOLも勘案し手術方針を決定する

がん患者さんとは深いお付き合いになることが少なくありません。患者さんお一人おひとりが少しでもよくなっていただけるように全力を尽くしたいといつも思っています。当院にはがん相談支援センターもありますので、ご不安なことがあれば、いつでも当院にお越しください(こちらもご覧ください)。

解説医師プロフィール

がん相談支援センター

患者本人以外に、家族や友人も相談可能

がん治療においては、分からないことや知りたいことが、あらゆる場面で浮かんでくると思います。中には、“何が分からないか分からない”と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。突然のこと、初めてのことでそのように感じるのは当然のことだと思います。当院では、そのような状況にある患者さんに少しでも安心していただけるよう、がん相談支援センターを設置しています。必要に応じて、利用できる公共サービスや窓口におつなぎすることも可能です。
検診でがんの疑いありと指摘された後、がんの告知後、治療中、退院後など――どんなタイミングでも、ご相談にいらしてください。入院されている場合には、こちらからお声掛けすることもあります。

患者本人以外に、家族や友人も相談可能

がん相談支援センターには、看護師2名、社会福祉士1名、公認心理士1名がおり、情報共有を密にして小回りの利く体制を整えています*。患者さんが少しでも気持ちを軽くして治療に向き合えるよう、そして、納得のいく治療を受けられるよう、サポートいたします。がんに関するさまざまな不安や悩みは、ぜひ私たちにご相談ください。もちろん、ご相談は無料です。
なお、患者さんご本人はもちろん、ご家族やご友人、さらに当院で診療を受けていない方からのご相談も受けています。“友人ががんになり、支援が必要かもしれない”というケースなどでも、頼っていただければと思います。

人員体制については2025年6月時点の情報。

治療と仕事の両立を可能にするための支援に尽力する

治療を行いながら働くこともあきらめたくない――。そのような思いを抱く患者さんも少なくありません。私たちは仕事と治療の両立支援にも力を入れていますので、ぜひ退職を決める前に一度ご相談ください。
当院では、仕事内容や雇用形態などもヒアリングしながら、患者さんが自分らしく生活できるよう支援を進めます。「会社にどこまで病状を話せばよいのか」「意見書を作ってもらうべきか」といったお悩みに対しては、会社や主治医への伝え方、聞き方もアドバイスしています。また、毎月第3金曜日の午前10~12時には、社会保険労務士に無料の就労相談ができる機会も設けています。「治療のために仕事をやめなければならないかもしれない……」とお悩みの方は、まずは声をかけていただけたらと思います。

治療と仕事の両立を可能にするための支援に尽力する

不安な思いや分からないことを少しでも話してみることで、気持ちの整理が付いたり、話しているうちに自分の中で答えが見つかったりすることもあるもしれません。匿名あるいはお電話でのご相談にも対応しています。聞いてはいけないことは何もありません。何気ないことでもかまいませんので、一人で抱え込まずにお話しに来ていただければ、大変うれしく思います。

解説スタッフプロフィール
信岡 直美 先生
看護師
信岡 直美さん
犬塚 雅子 先生
社会福祉士
犬塚 雅子さん
  • 公開日:2025年7月1日
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