播磨姫路医療圏の医療を支える
姫路医療センター

専門性を磨き続け、地域と共に歩む

専門性を磨き続け、地域と共に歩む

当院は、1898年に姫路陸軍衛戌病院として開院して以来、長きにわたり地域の健康を支えてまいりました。全国的に医師不足が課題となるなかでも、この地域では各病院がそれぞれの得意分野を生かし、機能を分担しながら専門性を高めた医療を提供しています。
当院が特に注力しているのは呼吸器診療と消化器診療です。特定の領域の診療に特化することで、さまざまな症例に触れる機会が増え、医師の専門性をさらに高めることにつながります。学会発表なども活発に行うことで、その専門性にさらに磨きをかけられると考えています。なお、医師の数が増えることで、診療における医師の負担分散が期待できます。医師自身が健康的に診療に携わることができれば、結果として医療の質向上にもつながるでしょう。内科と外科が互いに支え合い、そのような好循環を重ねていけるよう、これからも体制の拡充に尽力してまいります。

設備の拡充と寄り添う心で診療に向き合う

設備の拡充と寄り添う心で
診療に向き合う

当院では患者さんによりよい医療を提供するため、設備の充実も図っています。2019年4月には、21床の緩和ケア病棟(全室個室)を新設いたしました。これにより、がんによるさまざまな症状に専門的に対応できるようになり、単に治療するだけでなく、患者さんの心身のつらさを和らげる体制が整いました。また、同年10月からは手術支援ロボットの稼働を開始し、がん診療において、より体への負担が少ない治療を提供できるようにもなりました。
このような施設や医療機器の拡充だけでなく、丁寧な診療も欠かしません。患者さん一人ひとりの状況に寄り添い、安心して治療を受けられるよう、きめ細やかなサポートを大切にしています。当院では呼吸器・消化器診療に加え、泌尿器科、整形外科、リウマチ科でもそれぞれ専門性の高い診療を得意としています。地域の皆さんの日常生活に寄り添う医療を提供できるよう、日々努力していますので、何かお困りのことがございましたら、いつでも当院にご相談ください。

院長プロフィール

姫路医療センターにおける
肺がん・間質性肺炎・
胃がん・大腸がんの治療

肺がんの治療

小回りの利く体制を生かした“迅速な肺がん診療”

肺がんは、早期発見とがんの性状に応じた適切な治療が非常に重要です。
当院の呼吸器診療の大きな強みは、検査から治療までスピード感をもって診療を行える体制です。特に肺がんの場合は“手術の順番待ちをする時間をいかに短くできるか”を常に考え、内科医・外科医が診療に向き合っています。定期的なカンファレンスはもちろんのこと、緊急性の高い症例では、担当医同士が相談して迅速に治療方針を決定するなど、患者さんをお待たせすることなく、スムーズに次のステップへと進めるよう尽力しています。

小回りの利く体制を生かした“迅速な肺がん診療”
写真:PIXTA

検査では診断の精度を高めるべく、超音波気管支鏡ガイド下針生検や仮想気管支鏡ナビゲーションなどを活用した検査に対応しています。また、気管支鏡指導医*の資格を持つ水守医師を中心に、経験を重ねた医師が検査を主導することで診断率の向上に努めています。内科での診断が難しい場合は、呼吸器外科での病変の切除が必要になりますが、ここでもスムーズな連携・受け入れ体制が整っており、タイムラグをできる限り少なくして検査から治療までを進めることが可能です。

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日本呼吸器内視鏡学会認定。気管支鏡専門医(経験症例計100例以上、かつ術者として20例以上の実績が必要)の育成・指導を行える医師を指す。姫路医療センターにおける気管支鏡指導医の在籍情報は2025年6月時点のもの。

患者さん一人ひとりに応じた専門的な肺がん治療を提供

肺がんの治療には、手術、薬物療法、放射線治療の選択肢があります。当院では、患者さんの病状に合わせて適切な治療を提供できるよう、これら全ての選択肢を用意しています。
手術では、体への負担が少ないロボット支援下手術や胸腔鏡下手術を積極的に行っています。2024年*には肺がん手術全265件のうち、68件をロボット支援下手術、190件を胸腔鏡下手術で行いました。日本呼吸器外科学会の胸腔鏡安全技術認定制度の認定**を受けた医師も在籍しており、安全管理にも十分配慮して質の高い手術を実現しています。また私たちは根治だけでなく早期退院・社会復帰まで視野に入れた治療を目指しています。術後早期から院内のリハビリテーションチームが介入して合併症の予防にも注力しており、安心して術後をお過ごしいただける環境も整えています。

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2024年1月~2024年12月

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胸腔鏡手術を安全かつ円滑に施行できる知識と技能の普及ならびに、同手術を実施する医師の安全技術を客観的に評価、認定する制度(姫路医療センターの在籍情報は2025年6月時点のもの)。

患者さん一人ひとりに応じた専門的な肺がん治療を提供
写真:PIXTA

当院は強度変調放射線治療(IMRT)にも対応しており、新しい機器の導入によって放射線治療のさらなる質向上にも努めています。放射線科とも密な連携を図っており、転移性の病変に対しても放射線治療を迅速に実施できる体制です。
また、近年進歩が著しい薬物療法についても、新たな知見を積極的に取り入れて、患者さんごとに効果の見込める治療を提案しています。臨床試験にも積極的に参加しており、患者さんによっては治療選択肢が広がる可能性もあります。
なお、当院では間質性肺炎や肺気腫など、肺がん以外にも肺の病気を抱える患者さんの診療にも対応が可能です。患者さんの状態を総合的に判断し、患者さんに合った治療を提供できるよう努めていますので、ぜひご相談ください。

解説医師プロフィール

間質性肺炎の治療

必要な検査を見極め、体への負担に配慮した検査体制を敷く

間質性肺炎は、さまざまな原因で肺が硬くなってしまう病気で、咳や息切れといった症状が現れることがあります。インターネットの情報などを見て“難病”というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、患者さん一人ひとりで原因や病気の進み方は大きく異なります。当院では、病状を丁寧に見極め、対話を通じて適切な治療方針を一緒に考えていくことを大切にしています。
間質性肺炎の診断には、肺の一部を採取して調べる“生検”が必要となる場合があり、その中でもクライオ生検は、より大きい組織を採取できる有用な検査です。しかしその一方でこの検査には出血などの合併症のリスクも伴います。そのため、検査手技はもちろんのこと、そもそもこの検査が本当に必要なのか、患者さんにとってメリットがあるのかを慎重に“見極める力”が非常に重要です。当院では、気管支鏡指導医*の資格を持つ医師を中心として、検査にあたっています。これまでの経験をもとに、一人ひとりの患者さんの状態を丁寧に評価したうえで、必要な検査・診療を実施できていると自負しています。
冒頭でもお伝えしたように、間質性肺炎の原因は多岐にわたります。中には、膠原病こうげんびょうという自己免疫疾患が原因となるケースも少なくありません。当院では、リウマチ科でリウマチ専門医**による膠原病診療を行っています。膠原病が関連している間質性肺炎の場合、どちらの病気の症状が強いかによって、治療薬の種類や治療方針が異なります。そのため、呼吸器内科とリウマチ科が密に連携し、患者さんの病態を多角的に評価することで、より適切な治療法を選択できるよう努めています。

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日本呼吸器内視鏡学会認定。気管支鏡専門医(経験症例計100例以上、かつ術者として20例以上の実績が必要)の育成・指導を行える医師を指す。姫路医療センターにおける気管支鏡指導医の在籍情報は2025年6月時点のもの。

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日本リウマチ学会認定。

必要な検査を見極め、体への負担に配慮した検査体制を敷く
写真:PIXTA

対話を重ね、きめ細やかな診療を提供

間質性肺炎の中には、住環境などが原因で発症するものもあります。このようなケースでは、医師が患者さんのご自宅の環境調査に伺い、病気の原因を特定することもあります。お薬を処方するだけでなく、生活環境の改善も視野に入れたきめ細やかな診療は、当科の自慢の1つです。
間質性肺炎の診療において、私たちは検査手技の正確さはもちろんのこと、患者さんとのコミュニケーションを非常に大切にしています。患者さんとの何気ない会話や、普段の生活の様子から、病気の原因や病態を理解するヒントが見つかることも少なくありません。インターネットにはさまざまな情報があふれていますが、間質性肺炎の症状や経過は個人差が非常に大きいため、情報に惑わされず、ご自身の状態について主治医とじっくり話し合うことが非常に大切です。また、対話の中から、どんなに正確と思われる予測を立てても、その後の検査ができなければ、適切な診断・治療にはつながりません。当院では、丁寧な問診、専門的な検査のどちらも得意としており、患者さんに合った治療を提供します。

対話を重ね、きめ細やかな診療を提供
写真:PIXTA

間質性肺炎は診断から治療、そしてその後の経過観察まで、患者さんと長くお付き合いしていくことが多くなります。当院では、地域の医療機関とも連携し、患者さんが安心して継続的なケアを受けられるよう努めています。臨床試験も実施しており、特発性肺線維症の患者さんであれば、新しい治療の選択肢についてご相談いただくことも可能です。ご自身の症状や間質性肺炎との付き合い方に不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

解説医師プロフィール

胃がんの治療

負担の少ない内視鏡検査を目指す――がんの見逃し防止にも尽力

胃がんの原因の1つに、ピロリ菌感染が挙げられます。若い世代の感染率は低下しているものの、どの世代の方でも一度は胃内視鏡検査(ピロリ菌除菌)を受けることをおすすめします。また、ピロリ菌除菌をした後も胃がんが発生する可能性がゼロになるわけではありませんから、定期的に胃内視鏡検査を受けていただき、がんの早期発見につなげていくことが非常に重要です。

負担の少ない内視鏡検査を目指す――がんの見逃し防止にも尽力

とはいえ、胃内視鏡検査を受けることに抵抗を感じる方も少なくないと思います。当院では物理的・精神的に胃内視鏡検査を受けやすい体制の整備に努めています。初診でも前日から絶食して来院いただければ、当日中の検査が可能です。これにより、忙しい方でも通院回数が少なく済み、通院、あるいは付き添いの負担が軽くなると考えています。また、検査時の苦痛を軽減するため、鎮静薬を用いた内視鏡検査にも対応しています。うとうとした状態で検査を受けていただくことで、嘔吐反射や不快感の軽減が期待できます。胃内視鏡検査には鼻の穴を通すものと口から挿入するものとがありますが、当院では特殊光を用いて拡大観察が行える新しい経口内視鏡を使用し、がんの見逃しがないよう検査にあたっています。

患者さんの負担を考慮した包括的な治療・サポート体制を整備

万が一がんが見つかった場合は、がんの状態や進行度に応じて治療を進めていきます。
当院の強みは、内科と外科のシームレスな連携です。内科医と外科医が綿密に情報共有を行い、多角的な視点から患者さんにふさわしい治療を検討します。また患者さんが不安に思われる時間を可能な限り短くできるよう、定期カンファレンスを待てないような緊急性の高い症例では、担当医同士で密に連絡を取り合って治療方針を決定することもあります。
早期の胃がんでは、内視鏡的粘膜下層剥離術ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ(ESD)による内視鏡治療が可能です。ESDは外科的手術に比べて体への負担が少ないため、早期の社会復帰が期待できます。

患者さんの負担を考慮した包括的な治療・サポート体制を整備
写真:PIXTA

ESDによる治療が難しい場合でも、当院は腹腔鏡下手術ふくくうきょうかしゅじゅつ(お腹に小さな穴を開けて、内視鏡で確認しながら操作する手術)、ロボット支援下手術に対応しており、従来の開腹手術に比べて低侵襲ていしんしゅうな治療を提供できます。どちらも開腹手術よりも傷が小さく、早期の回復が期待できます。さらに近年では手術の術式の進歩や術前化学療法(集学的治療*の1つ)によって、切除不能と考えられていたがんを手術できるようになるケースもあります。当院では胃がん患者さんの5年生存率はStage Iで99.0%、Stage IIで75.5%、Stage IIIで69.6%、Stage IVで10.5%という結果が得られています*。また、がん治療においては、病気の治療だけでなく、がんに伴う苦痛・つらさを和らげる“緩和ケア”も非常に大切です。当院では、診断の早期段階から緩和ケアを視野に入れ、患者さんの心身の苦痛を和らげられるよう、医療スタッフが連携してサポートしています。
がんが治癒した後も、患者さんの健康を総合的にサポートできるよう、長期的なフォローアップ体制を整えていますので、ご安心ください。

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集学的治療:手術、薬物療法、放射線治療などを組み合わせ、治療の効果をより高めることを目的とする治療。

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対象:胃がん(Stage I~IV)と診断され、姫路医療センターで治療を行い、その後フォローまでを行っている胃がん患者822例
調査期間:2014年1月~2022年12月
評価:相対生存率を算出。がんと診断された人のうち、5年後に生存している人の割合が、一般の集団(年齢や性別、地域などの特性が同一の日本人の集団)の5年後の生存割合に対してどれくらい低いかを表したもの。

解説医師プロフィール

大腸がんの治療

患者さんの不安に寄り添う検査体制で早期発見を目指す

大腸がんは近年増加傾向にありますが、早期に発見できれば根治が期待できる病気です。
健康診断の便潜血検査をきっかけとして、早期のがんを見つけることができます。便潜血検査そのものは、便にわずかな血液が混じっているかを調べるもので、すぐに病気を意味するわけではありません。もし陽性の結果が出ても何も異常がないこともありますので、ご自身の安心のためにも、精密検査(大腸内視鏡検査)を受けていただきたいです。
大腸内視鏡検査は「つらい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。当院では、安心して検査を受けていただけるよう、検査体制の充実を図っています。

患者さんの不安に寄り添う検査体制で早期発見を目指す

ご希望の方には鎮静薬を使って検査を行うことも可能です。また、ご自宅での前処置がご心配な方や、遠方からお越しの方など、さまざまな患者さんのニーズにお応えできるよう、当院では2泊3日の検査入院にも対応しています。検査入院中は、前処置から検査、そして検査後のフォローまで、安心して受けていただけるようサポートさせていただきます。患者さんの不安を少しでも取り除けるよう努めておりますので、体力に自信のない方やご高齢の方も、ぜひご検討ください。

内科と外科の密な連携によって低侵襲な治療を実現

早期がんが見つかった場合は、内視鏡的切除の適応となります。当院では、内視鏡的粘膜下層剥離術ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ(ESD)による治療を積極的に行っています。内視鏡の先端についた電気メスでがんを剥ぐようにして切除する治療で、お腹を切開しないため早期の回復が見込めます。
もしESDの適応とならない場合でも、体への負担に配慮した手術へと迅速に移行できる体制を整えています。当院は病院の規模がそれほど大きくないからこそ、内科医と外科医が日常的に密なコミュニケーションを取り、患者さんの病状について気軽に相談し合える風通しのよい環境です。診断から治療方針の決定、治療へと、切れ目なく速やかに進めることができるのが当院の強みです。

内科と外科の密な連携によって低侵襲な治療を実現

手術においては、腹腔鏡下手術ふくくうきょうかしゅじゅつ(お腹に小さな穴を開けて、内視鏡で確認しながら操作する手術)に加え、2020年からロボット支援下手術を導入しています。ロボット支援下手術の大きな特長は、鉗子に関節があることです。これにより、従来の腹腔鏡下手術では難しかった繊細な動きができるようになりました。また、手振れ補正の機能が付いていることで、術者は剥離操作に集中することができ、より安全に配慮した手術を提供できるようになりました。当院には、ロボット支援手術認定プロクター*の資格を持った医師が在籍しています(2025年6月時点)。手術の質を維持しながら、より多くの患者さんにロボット支援下手術を受けていただけるよう努めています。
当院で対応が難しい症例については関連施設である京都大学または、兵庫県内の兵庫医科大学に紹介を行い、治療を受けていただく場合もありますが、専門性が必要な治療は専門の施設へ、日常の診療は当院へ、といった形で患者さんの負担を減らしながら当院も継続的なサポートをいたします。患者さんにやさしい検査と治療を目指して診療にあたりますので、大腸がん治療のことは、私たちにご相談いただければと思います。

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日本内視鏡外科学会認定/消化器・一般外科領域。高度な技術が要求される、消化器・一般外科領域のロボット支援下手術において、手術指導医としての技量が認められた医師を指す。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2025年8月1日
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