茅ヶ崎市・湘南東部地域の
がん医療

高齢化が進むなか、人口10万人あたりの医師数や病床数は全国平均以下

がん患者数が増加傾向にある茅ヶ崎市――よりよい未来を目指すために

高齢化を理由として増加傾向にある病気の1つにがんが挙げられます。茅ヶ崎市の属する湘南東部医療圏も同様の傾向がみられ、特に大腸がんや膵臓すいぞうがん、前立腺がんなどの増加率が高いとされています。医療技術が進歩し、がん患者さんの5年生存率は改善が進んでいるといわれているものの、根治(がんが完全に治る)を目指すには早期に発見することが重要です。早い段階でがんの疑いがある方を見つけ、治療につなげるため、各医療機関は引き続き病院同士の情報共有およびネットワークの強化に取り組み続ける必要があるといえるでしょう。

湘南東部地区のがん医療を支える
茅ヶ崎市立病院

24時間365日“断らない救急”を目指す

良質な医療の提供を追求し、
健やかな暮らしを支える

当院の始まりは1943年にまでさかのぼります。前身となる国民健康保険直営病院から“茅ヶ崎市立病院”となり現在の地に移転をしたのは1972年のことになりますが、80年以上にわたって茅ヶ崎の地で地域の医療を支えてまいりました。当院には数多くの特徴があり、特にがん診療においては神奈川県がん診療連携指定病院として地域のがん診療をけん引していることが挙げられます。
地域の方々によりよい医療を提供すべく、新しい機器の導入にも積極的に取り組んでいます。手術では精緻せいちでより安全、低侵襲ていしんしゅう(体に負担が少ない)な治療が可能になる手術支援ロボット“ダヴィンチ”を導入。放射線治療では、より副作用を抑えた治療が可能な放射線治療装置“TrueBeam”を2023年に導入しました。また、内視鏡センターや患者支援センターも備え、検査から診断、治療、その後のサポートまで抜け目のない医療がかなえられる体制を構築しています。地域にお住まいの皆さんから選ばれる病院となるべく、職員一同これからも努力を重ねてまいりますので、お困りのことがあれば紹介状を持参のうえぜひ当院へご相談ください。

院長プロフィール
藤浪 潔 先生
藤浪 潔先生

茅ヶ崎市立病院における
大腸がん・膵臓がん・
前立腺がん・乳がんの診療

大腸がんの診療

検査設備を整え、苦痛の少ない・高精度の検査を追求する

大腸がんは部位別のがん罹患数がもっとも多い*とされているがんですが、早期発見・早期治療により十分根治が期待できるがんでもあります。大腸がんを早期発見するためには、便潜血検査や大腸内視鏡検査を受けていただくことが大切です。
「大腸内視鏡検査=つらい検査」というイメージがある方もいらっしゃると思いますが、当院ではご希望の方に鎮静下での検査を実施しています。鎮静薬を投与することでウトウトとした状態になり、楽に検査を受けていただけます。

2020年時点

検査設備を整え、苦痛の少ない・高精度の検査を追求する

※本画像は一部を加工したイメージ画像となります。

また、2024年11月よりAIを搭載した“内視鏡画像診断支援プログラム”も導入しました。検査では1mほどある大腸の中をくまなく観察する必要があるうえ、大腸ポリープが見つかった場合には一つひとつ精査しなければなりません。AI技術によって、より確実性の高い検査を目指すだけでなく、効率化を図ることで検査時間の短縮、ひいては検査の負担軽減もできればと考えています。

検査設備を整え、苦痛の少ない・高精度の検査を追求する

大腸内視鏡検査でポリープや、良性と判断できない腫瘍が見つかった場合には、内視鏡を用いて切除します。切除方法には複数の方法があり、腫瘍しゅようの形や大きさを見て適切な方法を判断します。切除方法の1つ、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は高度な技術が求められますが、当院では対応が可能です。ESDは大きな腫瘍もひとかたまりで切除できるため、より正確な病理診断(病変の組織を顕微鏡で観察する検査)および再発の防止に役立ちます。

検査設備を整え、苦痛の少ない・高精度の検査を追求する

検査というと高いハードルを感じる方もいらっしゃると思いますが、大腸がんは40歳代ころからリスクが高まるとされている病気です。早期の段階では基本的に自覚症状が現れないとされていますので、40歳を超えたら不調の有無に関係なく検査を受け、ご自身の健康状態をチェックする習慣をつけましょう。

“ダヴィンチ”を導入し、可能な限りいつもどおりの生活を目指した治療に尽力する

内視鏡治療の適応とならない腫瘍は手術を行います。当院では、根治性の担保はもちろんのこと、術後もできるだけいつもどおりの生活を送っていただけるよう、患者さんの術後のQOL(生活の質)も重視して治療方針を決定しています。体への負担をできる限り少なくするため、2023年には手術支援ロボット“ダヴィンチ”を導入しました。ロボット手術は人の手を超えた動きができるのが特徴です。また、3Dカメラにより術部を拡大視可能なため、細かな血管や神経なども捉えられ、従来の手術よりも正確で精密な手術を行うことができます。

“ダヴィンチ”を導入し、可能な限りいつもどおりの生活を目指した治療に尽力する

当院では自然肛門しぜんこうもんの温存に注力していることも強みです。消化器内科と連携し、肛門の近くにがんがある場合には術前に化学放射線療法を実施したり、がんの影響で大腸が狭くなっている患者さんにはステント(筒状の金属の網)を留置したりすることで、可能な限り人工肛門(ストーマ)を避けられる治療の提供に努めています。がん治療認定医*を取得している医師も複数名在籍しており、多角的な観点でよりよい医療を検討・提供できる体制が整っています。

日本がん治療認定医機構認定。がん治療の共通基盤となる臨床腫瘍学の知識およびその実践を支える基本的技術に習熟し、医療倫理に基づいたがん治療を実践する優れた医師。

“ダヴィンチ”を導入し、可能な限りいつもどおりの生活を目指した治療に尽力する

なお、炎症性腸疾患(IBD:潰瘍性大腸炎かいようせいだいちょうえん・クローン病)の診療にも注力しています。IBDは長い経過をたどると大腸がんを発症する可能性があり、その場合は通常の手術と異なった知識や技術が必要とされます。当院ではIBDの専門外来を設置しているほか、IBDの診療を専門とする医師も在籍していますので、病気の経過も含め適切なフォローが可能です。
受診から診断・治療、経過観察、ご自宅での生活など病院全体で精いっぱいサポートしますので、お困りのことがあればぜひ我々にご相談ください。

解説医師プロフィール

膵臓がんの診療

高い診断レベルを維持し、膵臓がんの早期発見に挑む

膵臓がんは早期発見が非常に難しく、また手術で取り切れない状態まで進行するのが早いがんです。とはいえ、根治を目指すには手術が必要ですから、私たちはまず“手術ができる状態で見つけること”を重視し、日々技術の研鑽を行っています。自覚症状が現れにくいという意味では早期発見がしにくいがんではあるものの、検査技術は着実に進歩しています。
膵臓がんのリスクを高める要因としては、家族歴や糖尿病などが挙げられます。これらに該当する方は、健診などで腹部超音波検査を受け、もし膵管の拡張や膵嚢胞すいのうほうが指摘された場合にはその後も定期的に検査を受けていただきたいと思います。当院には、腹部超音波検査のスキルと専門性を兼ね揃えた超音波検査士*が在籍していますので、気になる体調の変化などがあった場合には遠慮なくご相談ください。

日本超音波医学会認定の超音波検査士

高い診断レベルを維持し、膵臓がんの早期発見に挑む

膵臓がんの検査/診断では、超音波内視鏡検査(EUS)が重要な役割を果たします。EUSは、口から先端に超音波端子がついている特殊な内視鏡を挿入して行う検査で、至近距離から膵臓の詳細を観察できる検査です。
私(佐藤 高光)は修練医時代から胆道・膵臓領域の診療を専門としてきました。どんなに治療が進歩したとしても、当然ながら診断がされなければ治療を行うことはできません。ですから、私は“正確性の高い診断”に何よりもこだわって診療を行ってきました。それを可能にしているのが、患者さんや医学に向かう姿勢であると思っています。些細な変化や異常であっても、それに気付き、またその原因を追究し続けることで、診断能力だけではなく内視鏡などの技術の向上にもつながります。
腹部超音波検査で異常が指摘された方や膵臓がんが心配な方は、ぜひ一度当院へいらしてください。診断力には自信をもっておりますので、これまでに培った専門性を生かし、責任を持って診療をさせていただきます。

黄疸や消化管狭窄に対して高度な内視鏡治療を提供

近年では切除可能な膵臓がんであっても術前に化学療法(抗がん薬を使った治療)を行うことが一般的となっており、当院でも実施しています。ただ、先述のとおり、膵臓がんは進行が早いため、手術を実施するまでの速さが何よりも重要となります。当院では可能な限り時間のロスを減らすため、膵臓がんを疑う患者さんがいらっしゃった場合、基本的に翌日もしくは翌々日にはEUSを用いた組織採取(EUS-TA)を行います。また、胆管狭窄に伴う黄疸おうだん(皮膚などが黄色くなる症状)がみられる場合は、まずはそれらに対する内視鏡治療を行ったうえで化学療法を行う必要があります。内視鏡治療についても基本的にEUS-TAを行った翌日には実施できる体制を整え、手術までの待機期間をできるだけ短縮できるよう努めています。
なお、手術ができない段階で発見されたとしても、近年は有効な抗がん薬の種類が少しずつ増えてきたことで化学療法後に手術が可能になることもありますし、内視鏡治療を行うことでQOLの改善も目指せるようになっています。

黄疸や消化管狭窄に対して高度な内視鏡治療を提供

黄疸や胆管炎のコントロ-ルにあたって重要となる内視鏡治療については多様な方法があります。当院ではERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)はもちろん、ERCPが困難と判断される患者さんの場合にはEUS-BD(超音波内視鏡下胆道ドレナージ)も可能です。また、過去に消化器系の手術歴がある患者さんに対しては“小腸鏡を用いたERCP”を選択することで、従来の開腹手術よりも体への負担が少ない治療がかなえられます。EUS-BDや小腸鏡を用いたERCPは高度な技術であり、いわゆるハイボリュームセンター*と呼ばれる施設を中心に行われています。地域の病院でありながらも、大学病院などと同等の治療が提供できる体制は当院の強みの1つです。
今後も患者さんのよりよい予後に貢献すべく研鑽に励んでまいりますので、治療が困難と言われた方でも、ぜひ一度私たちにご相談ください。

ハイボリュームセンター:大学病院など症例数の多い施設

解説医師プロフィール

前立腺がんの診療

50歳を超えたらPSA検査を

前立腺がんは、男性が罹患するがんの中でもっとも多いがんです(2020年時点)。自覚症状としては排尿症状(尿の出にくさなど)が挙げられるものの、早期の段階ではほぼ無症状なため、早期発見のためにはPSA検査を受けることが大切です。特に50歳以上の方に多いとされる病気ですので、症状の有無にかかわらず50歳を過ぎたらまずは一度PSA検査を受けていただきたいと思います。

50歳を超えたらPSA検査を

PSAの値が高い場合には、MRI検査などの画像検査を実施します。当院では、従来のMRIよりも高解像度画像を得られる3T(テスラ)MRIを導入しており、これにより小さな病変も見逃しにくい検査体制が構築できています。
画像検査で疑わしい病変があった場合には前立腺針生検を実施します。前立腺針生検とは前立腺に針を刺して組織を採取し、がん細胞の有無を確認する検査です。会陰部(陰嚢と肛門の間)から膀胱へ針を刺すため、「怖い」と感じる方も多いかもしれませんが、当院では脊椎麻酔(下半身の麻酔)下*で行っており痛みを感じることはありませんので、ご安心いただければと思います。

麻酔科標榜医:山本 一人先生

“ダヴィンチ”や“TrueBeam”を備え、QOLの維持を目指した治療を提供

前立腺がんの根治的な治療方法には、手術と放射線治療があります。どちらも治療成績はほぼ同等と報告されているものの、膀胱に近い場所の治療であることから合併症や副作用として、尿失禁や膀胱炎などが生じる可能性があります。当院では、根治性の追求はもちろんのこと、患者さんへの負担の少ない治療・合併症の少ない治療の提供を目指し、手術支援ロボット“ダヴィンチ”と高精度放射線治療装置“TrueBeam”を備えています。

“ダヴィンチ”や“TrueBeam”を備え、QOLの維持を目指した治療を提供

ダヴィンチは、人の手を超えた操作性を有しており、また術部を拡大することができるため、より繊細な手術を行うことができます。前立腺の近くには排尿に関わる筋肉や性機能に関わる神経などが存在していますので、精緻な技術がこれらを可能な限り温存することに役立ちます。
もう一方のTrueBeamは、腫瘍に合わせてより適切な照射ができる放射線治療装置です。放射線を当てる形状や放射線量を細かく調整しながら照射することができるため、正常組織に当たる放射線量を抑えながらも病変には多くの放射線を照射することが可能です。
手術や放射線治療などの根治治療を行った患者さんには、10 年間は通院していただき経過観察を行っています。

“ダヴィンチ”や“TrueBeam”を備え、QOLの維持を目指した治療を提供“ダヴィンチ”や“TrueBeam”を備え、QOLの維持を目指した治療を提供

TrueBeam

なお、手術や放射線治療、ホルモン療法、化学療法を組み合わせた集学的治療を行えることも当院の強みの1つです。外来化学療法室を備えていますので、ホルモン療法や化学療法は通院をしながら受けていただけます。患者支援センターも備え、一貫して包括的な診療が提供できる体制を整えていますので、体調面でお困りのことや不安なことがあればぜひ私たちにご相談ください。

解説医師プロフィール

乳がんの診療

9人に1人の女性がなる病気――定期的な検診を受けてほしい

乳がんは、女性が罹患するがんの中でもっとも多い*がんです。残念ながら確実に予防する方法はありません。もし罹患した場合でも最小限の治療で元の生活に戻るには早期発見が何より重要です。早期発見のために、“変化”に気付くには“いつもの状態”を知っておく必要がありますから、まずは乳房を意識する生活習慣を心がけていただきたいと思います。これはブレスト・アウェアネスといって、日本乳癌学会でも推奨されているものです。見て、触って、皮膚のひきつれや硬さがある、分泌物がみられるなど、いつもと違うことに気が付いたら次回の検診を待たずになるべく早めに受診をしましょう。
特に女性はご自身のことは後回しにされてしまう方が多い印象です。実際、当院を受診された患者さんでも日常生活の忙しさから、受診が遅れてしまったケースが見受けられます。何か変化に気がついた場合には、次の検診を待たずに受診してください。

2020年時点

9人に1人の女性がなる病気――定期的な検診を受けてほしい

写真:PIXTA

「特に症状がない」という方も、検診は定期的に受けていただきたいと思います。当院の健康管理センターではマンモグラフィ(乳房X線検査)を実施しており、茅ヶ崎市の乳がん検診と人間ドック*を行っています(どちらも自費診療)。市の検診では40歳代の方は2方向、50歳以上の方は1方向の撮影になります。人間ドックでは、2方向撮影のほか、オプションで3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)を選択いただけます。トモシンセシスとは、スライスした断層画像が得られる技術で、微細な病変の検出に有用です。

9人に1人の女性がなる病気――定期的な検診を受けてほしい

乳房X線撮影診断装置

撮影画像の読影は全て当科の医師が行っているため、乳がんを強く疑う場合に適切な診療を行えることはもちろん、精密検査の結果“異常なし”と判断した方も必要に応じてフォローしています。要精密検査=必ずしも病的な所見があるとは限りません。精密検査の結果、異常なしと分かった場合であっても、次回の検診を受けると再び同じ所見で引っかかってしまうことがあります。当院では前回の検査結果も踏まえて診察をすることで、適切なフォローおよび負担軽減に努めています。

人間ドックAコース:詳細検査(基本)49,500円(税込)、人間ドックBコース:基本的な検査38,500円(税込)。乳房検査はオプションを選択いただく必要があります。乳房検査(女性のみ)3,300円(税込)、トモシンセシス(乳房検査受診者のみ)6,600円(税込)。トモシンセシスについては乳房を圧迫した際の厚みにより検査を行えないケースがあります。なお、乳房に自覚症状がある方は検診ではなく診察を推奨しています。豊胸手術後、ペースメーカー・持続血糖測定器・インスリンポンプなど医療機器を装着されている場合はマンモグラフィ検査を行うことができません。

少しでも早く日常生活に戻っていただくために――幅広い治療が可能な体制を整える

精密検査の結果、乳がんを疑う所見があった場合には、基本的にその当日に針生検を行います。生検で乳がんの診断がついたら、がんの広がりを確認する検査を行い、治療方針を決定していきます。
乳がんの治療には、手術・薬物療法・放射線治療があり、当院ではこの全てに対応可能な体制を整えています。薬物療法においては、2024年時点で標準治療(一般的に推奨される治療)とされている薬剤は全て使用可能です。手術方法は、部分切除術と全切除術があり、どちらが適しているかはしこりの大きさや広がりをみて判断していきますが、患者さんのご希望もお伺いして最終決定していきます。

少しでも早く日常生活に戻っていただくために――幅広い治療が可能な体制を整える

がんと聞くと、その治療に専念すべくご自身らしい生活は諦めなければいけないと思っている方が多い印象ですが、乳がんは治療期間も長いため、もとの生活や役割を維持していただくことも大事だと考えています。手術後は最長1週間ほど入院が必要ですが、経過に問題がなければ退院翌日から通常どおりお仕事に戻っていただくこともあります。
治療中もできるだけいつもの生活を変えないためには、通いやすい病院で治療を受けることも1つの選択肢と考えます。茅ヶ崎市にお住まいの方で治療に迷っている、あるいは胸の違和感が気になるという方は、どうぞ遠慮せず当科へご相談にいらしてください。不安な気持ちも含め職員一同精いっぱいサポートさせていただきますので、一緒によりよい生活について考えていきましょう。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2025年2月1日
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