“本当に求められる医療”を追求する
稲波脊椎・関節病院

最小限の負担で治療する
低侵襲治療へのこだわり
当院の特徴の1つが、内視鏡手術を中心とした “低侵襲治療”に特化している点です。私(髙野 裕一)自身、40年ほど前、局所麻酔で膝の内視鏡手術を受けた経験があり、このことが負担の少ない治療を提供することの重要性について深く考えるきっかけとなりました。内視鏡手術は決して簡単ではありません。しかし、私たちは患者さんの負担を最小限に抑えるという強い信念のもと、この手術に取り組んでいます。「大変だけれど、やり続けることが患者さんのためになる」――そう考え続けて今に至ります。
医療技術は進歩し、現在では7 ~10mmといった細い内視鏡も登場しています。低侵襲手術の最大のメリットは、“患者さんの体への負担を大きく減らせること”です。従来の手術に比べて術後の傷の痛みが少なく 、早期の社会復帰も実現しやすくなります。
適応については、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などです。これらの変性疾患は患者さんの数が多い病気ですから、低侵襲治療を追求することでより多くの患者さんの早期回復と生活の質の向上に貢献できればと考えています。

適切な診断により
“真”の低侵襲治療を提供する
内視鏡手術を行うために最も重要になるのが“診断力”です。近年では検査技術も進歩しており、どうしてもCTやMRIなどの画像に頼りがちになります。画像を見れば狭窄(狭くなること)部位は分かりますが、強い狭窄があってもまったく痛くないという方も大勢いらっしゃいます。つまり、画像上の“狭さ”が、必ずしも患者さんの“痛み”の原因とは限らないということです。そのため、当院ではまず患者さんの様子と訴えを慎重に評価し、画像検査との一致を重視した診療を行っています。診察室に入る際の歩き方や、患者さんが示す痛みの場所、痛みが生じる場面などをよく診てしっかり聞き取りをしたうえで画像と照らし合わせます。それでも診断が難しい場合には、神経ブロック注射などを行いながら痛みの原因を探るケースもありますが、いずれにしても決して画像のみで治療方針を決定することはせず、本当の原因を見つけ出し、本当に必要な治療を行うのが私たちの基本方針です。

教育機関としての責務を果たすとともに、技術研鑽を通じてより質の高い医療を目指す
当グループは、内視鏡手術を習得したいという脊椎外科医の教育機関としての役割も担っています。技術の継承と向上に力を入れており、これまでに実施した手術のビデオを教材として整理し、活用しています。医師は、このビデオを繰り返し見て、さまざまな病状に対する処置の方法を学ぶことが可能です。積極的に手術見学も受け入れており、国内外の医師たちと常に活発な議論を交わすことで、私たち自身の知見も常にブラッシュアップされていると感じます。そのほか、より安全で質の高い医療を提供するため、ロボット手術支援システムも導入しました。こうした技術への投資も、患者さんにやさしい手術を実践するための大切なことの1つだと考えます。
インターネットなどで情報があふれる時代ですが、診断や、ご自身の選択に不安を抱える方もいらっしゃるでしょう。まずは1人で悩まずに、どうか気軽に受診いただければと思います。メールでのご予約やオンライン診察*も承っておりますので、ぜひご活用ください。当院は低侵襲な手術に特化した病院ですが、もちろん手術を無理におすすめすることはありません。一人ひとりの状態に合った治療をご提案させていただきますので、まずは一度お話ししましょう。
オンライン診察の料金は、5,170円(税込)+ アプリ利用料 330円(税込)です。対象:当院にかかったことのない方・腰や首、手足の痛み、しびれなどでお困りの方・他の医療機関で直近に撮影されたMRIの画像データをCD-ROMでお持ちの方。

稲波脊椎・関節病院における
脊椎・頚椎の治療、スポーツ・
関節センターについて
脊椎の治療:FESS(完全内視鏡下脊椎手術)について
約7mmの内視鏡を使用し、痛みの原因をピンポイントで取り除く手術
FESS(Full Endoscopic Spine Surgery:完全内視鏡下脊椎手術)は、端的に言えば、“最小限の侵襲でよりよい効果を得ることを目指した手術法”です。使用する内視鏡は直径7mm程度であるため、従来の内視鏡を使った手術(MEDやMELなど)に比べて、より小さな切開でヘルニアの摘出などが可能です。原因にピンポイントでアプローチできるため、筋肉や靱帯へのダメージを抑えることができます。また、傷が小さいことで術後の痛みも軽減でき、入院期間の短縮、ひいては早期の社会復帰や日常生活への復帰も期待できます。FESSは、主に腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など、神経の圧迫が原因で足のしびれや痛みが生じる病気に適応となります。特に、神経の圧迫を取り除くのみで症状の改善が見込めるケースに効果的です。

当院の名誉院長である稲波 弘彦先生が掲げられた理念“一歩先のスタンダードへ”を追求し、努力と研究を重ねた結果、7mmという小さな傷でのアプローチが可能になりました。
現代において、患者さん個々のライフスタイルは多様化しています。たとえば、80歳になっても山に登りたいという方もいれば、仕事が忙しくなかなか休みが取れない方など、価値観や状況はさまざまです。そのようななか、FESSはまさに“患者さんの生活や生き方に寄り添える手術”の1つだと私たちは考えています。最小限の侵襲で手術ができれば、より多くの方の生き方に寄り添い、サポートできる――そう考え、私たちは日々研鑽を重ねてきました。

当院では、これまで、特に内視鏡を用いた低侵襲手術に注力し、短時間で安全性の高い治療を実施できるよう尽力してまいりました。技術認定医*も複数名在籍しており、FESSを標準治療として安定した手術を提供できる体制を整えています。そして、多くの医師が確立された手技を実践できるよう、教育・指導方法を整備し、国内外で広める活動にも注力してきました。今では、世界中の医師と技術や知識を共有しながら、常に新たな知見を取り入れた治療を提供できていることも大きな強みです。
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医。指定の資格を複数取得したのち、実技試験を受けて合格した者。手術時のビデオ提出などが定められており要件の厳しい資格。
的確な診断を追求し、“あなたらしく生きる”を支える
FESSの実施にあたっては、的確な診断が何よりも重要です。ピンポイントで原因を治療する手術ですから、その場所を間違ってしまっては当然ながら症状の改善は見込めなくなります。当院では、“画像検査と症状の一致”を重視しており、まず患者さんの様子と訴えを慎重に評価します。そのうえでMRIやCTで神経圧迫の部位を確認した後、患者さんの訴える症状と照らし合わせて本当に手術が必要かどうかを判断します。
治療を検討する際には保存療法で様子を見ても問題ないと考えられる期間と、手術に踏み切ったほうがよいタイミングについても患者さんへ丁寧にご説明し、ご本人やご家族に納得していただくことを大切にしています。
短い診察時間の中でも、患者さんの症状をヒアリングするだけでなく、どのような不安を抱いているのか、どのような治療を望まれているのか、治療が患者さんの生活や人生にどのような影響を与える可能性があるのか、という点を理解できるよう努めています。分からないこと・不安なことがあれば、どのようなことでも遠慮なくどんどんご質問ください。

手術と聞くとどうしても不安や抵抗があると思いますが、FESSは体への負担を最小限に抑え、早期の回復を目指した治療法です。私たちは、患者さんに安心して治療を受けていただけるよう努めるのはもちろんのこと、“あなたらしく生きる”ことに寄り添い、支えられるように、一人ひとりに合わせた適切な医療を提供してまいります。腰や足のしびれや痛みでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

UBE(2孔式内視鏡下手術)について
国内普及に貢献してきた知見と経験を生かし、より安全かつ体にやさしい手術を追求
近年ではUBE(Unilateral Biportal Endoscopy:2孔式内視鏡下手術)という新たな内視鏡手術が普及しており、当院でも実施しています。従来の内視鏡を使った手術は、1つの孔で治療をするのが一般的でした。対して、UBEは2つの孔を開け、そこから内視鏡と手術器具を挿入して治療を行う術式です。当院で使用している内視鏡は3.8mmと非常に細いため 、内視鏡を入れる孔はほとんど“点”に近い小ささです。もう1つの器具を入れる孔も、7mm程度のため、皮膚を大きく切開する手術に比べて体への負担を大幅に減らした治療が可能になります。

脊椎の内視鏡手術には複数の術式があり、どれも低侵襲な方法ですが、UBEの特徴は“医師が両手で操作できること”にあります。1つだけ孔を開けて行う手術に比べて操作性・汎用性が高く、従来の内視鏡手術(MEDやMEL、FESSなど)では処置がしにくい場所の治療であってもUBEであればスムーズに処置が可能です。また、水を流しながら処置を行うため、手術中の出血が抑えられ、クリアな視界を保った状態で治療ができることも利点の1つです。

UBEは2022年から日本で行われている手術ですが、もともと日本にはUBE専用の内視鏡がありませんでした。海外で用いられている内視鏡はありましたが、内視鏡径が太く日本人の体格にはあまり適さないという課題がありました。そこで当院ではUBEの国内普及のためにはより細い内視鏡が必要だと考え、海外の医療機器メーカーと共同開発に着手しました。そうして開発に至ったのが3.8mmの内視鏡です。現在ではUBEは国内でも広く普及していますが、私たちはその導入の初期から深くかかわってきました。この過程で得られた経験・知見は、当院だからこそ持ち得る強みだと自負しています。
生活に寄り添った診療を実践――内視鏡手術を諦めずに相談してほしい
手術を検討するにあたって当院で大切にしているのは、“患者さんの生活に寄り添った治療”を提供することです。がんなどの手術とは異なり、脊椎の手術は受けなくても命にかかわるわけではありませんし、同じ病名・同じ病状であっても、手術が必要かどうかは患者さんによって異なります。たとえば、80歳で「痛みに応じてそれなりに動ければよい」という方であれば手術はおすすめしませんが、「まだまだ運動を楽しみたい」という場合には、手術を検討したほうがよいでしょう。ただ、あくまで手術は最終手段ですから、私たちは患者さんの声に耳を傾け、手術を受けることのメリットがどの程度あるかを一緒に考え、治療方針を決めていきます。

UBEについては先述のとおり、汎用性の高い手術ですので、多椎間(骨と骨の間)の処置や、ボルトなど金具を入れる固定術にも対応可能です。過去に「内視鏡手術はできない」と判断された場合であってもUBEであれば治療ができる可能性もありますので、どうか諦めず一度ご相談に来ていただきたいと思います。
当院は内視鏡手術を中心に低侵襲な治療に特化した病院です。UBEに限らず幅広い治療選択肢の中からよりよい治療をご提案いたしますので、治療を検討されている場合にはどうぞお気軽にご相談ください。

頚椎(首の骨)の診療
症状重視の診療を実践し、真に必要な医療の提供に努める
首の病気で現れる症状としては、首の痛みや、手足のしびれ、歩きにくさなどが挙げられます。ただし、これらが生じたからといって必ず首の病気とは限らず、単純な肩こりや運動不足による首回りの筋肉の凝りなどが原因となっているケースも多々あります。とはいえ、ご自身で治療を要する病的なものかを判断することは困難ですから、首や手足に違和感がある場合にはまず医療機関を受診し、医師の診断を受けていただきたいと思います。

当院が大切にしているのは、“患者さんの症状を重視した診療”です。MRIなどの画像上は神経の圧迫が見られても、患者さん本人の自覚症状(困っている症状)がほとんどないケースも多く存在します。画像所見のみで判断をすると場合によっては必要のない治療を行うことになってしまいますから、私たちは、まず患者さんの訴えている症状を起点として診療を進めます。もちろん画像検査も行いますが、あくまで病状を確認したり、手術が必要な場合にその具体的な治療方法を検討したりする目的で行います。画像に頼りすぎるのではなく、患者さんお一人おひとりの訴えに耳を傾け、適切な治療へとつなげるのが当院全体の方針です。
原因の的確な鑑別と、内視鏡を駆使した治療で機能回復を目指す
診察の結果、病的な症状ではなく、肩こりや筋肉の凝りの場合は、ご自宅でストレッチなどをしていただきながら様子を見ます。一方、神経の障害が起きているケース、すなわち病的な症状の場合は手術も視野に入れて治療を検討していきます。特に脊髄(背骨の中を通る神経の束)が障害される“頚椎症性脊髄症(頚髄症)”は、両手足の麻痺にもつながり得るため、積極的に手術をおすすめしています。
神経根(脊髄から枝分かれする神経)が障害される“頚椎症性神経根症”については、痛みやしびれが生じやすいものの、自然治癒する可能性のある病気ですので、患者さんの症状の程度によって治療方針を決定していきます。日常生活が成り立つ程度の症状であれば、保存療法(手術以外の治療)を行いながら様子を見ます。それでは改善しない場合、あるいは日常生活に支障をきたすほど痛みが強い場合には手術をおすすめしています。

当院は低侵襲な治療に注力しており、首の病気に対しても内視鏡手術が可能です。特に神経根の圧迫による症状であれば、ほぼ100%内視鏡で対応が可能であり、入院期間も4~6日程度と短期間での回復を目指せます。また、より繊細な手技を必要とする頚髄症に対しても、約半分*のケースで内視鏡での治療がかなえられています。
従来の手術(椎弓形成術)では、首の後ろの筋肉や骨を広範囲に切開するため、術後に背骨に沿った痛み(軸性疼痛)が生じることがしばしばありました。しかし、内視鏡を用いることで、筋肉や靱帯を温存したまま神経の圧迫を取り除くことができるため、術後の痛みを軽減できるというメリットがあります。
もし過去に「内視鏡手術は難しい」と言われた場合にも、どうか諦めず一度当院へご相談ください。病状によっては従来の手術が適しているケースもありますが、可能な限り負担の少ない治療ができるよう尽力いたします。
稲波脊椎・関節病院における頚椎症性脊髄症の治療実績
2024年(4月~翌3月):計35件(内、内視鏡手術15件)、2025年(4月~9月):計12件(内、内視鏡手術8件)

首の手術に対して不安を感じる方も多いでしょう。不安・疑問があれば、ぜひ担当医にお尋ねください。「半身不随になるのではないか」「ひどい麻痺が残る可能性はあるのか」など、どのようなことでも、ご質問いただければ一つひとつ丁寧にご説明いたします。
また、気になることがある場合には、セカンドオピニオンを得ていただくのも1つの方法です。他院から当院に来ていただくのも歓迎ですし、反対に当院から他院へ意見を求めていただくのもまったく構いません。他の医師の意見も聞き、ぜひ納得した状態で治療を受けていただければと思います。オンラインによるセカンドオピニオン*も行っておりますのでお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
セカンドオピニオンは自由診療です。オンラインによるセカンドオピニオンの費用:5,170円(税込)+ アプリ利用料 330円(税込)。対象:当院にかかったことのない方・腰や首、手足の痛み、しびれなどでお困りの方・他の医療機関で直近に撮影されたMRIの画像データをCD-ROMでお持ちの方。

スポーツ・関節センターについて
競技特性を深く理解し、徹底した個別評価に基づいたオーダーメイドの診療を提供
当院のスポーツ・関節センターには、プロアスリートから部活動に励む学生さん、スポーツ愛好家の方まで、“スポーツを続けたい”という思いを持つ方々が来院されます。また、スポーツによる外傷のみならず、変性疾患(変形性膝関節症など)に対する人工関節置換術や膝周囲の骨切り術などにも幅広く対応しています。

私たちが理念に掲げるのは、“Patient-Centric / Athlete-Centric Treatment(患者さん中心/アスリート中心の治療戦略)”です。スポーツ外傷は、単に“治す”だけでなく、“元のパフォーマンスを取り戻すこと”“再発を防ぐこと”が極めて重要です。患者さん一人ひとりに合った治療を提供するため、手術前には、どのようなスポーツをしているのか、利き足はどちらか、得意な動き、過去のけがなどの情報はもちろん、目標とする復帰時期やチームとの契約状況まで、徹底的に評価し把握します。この徹底した問診と評価を通じて、手術内容やリハビリテーションの内容まで、全てを患者さん一人ひとりに合わせて個別化しています。このオーダーメイドの診療こそが、当センターの最も大きな強みです。
“自分たちが最後の医師になる”――目標にコミットすべく専門的な知見をもって尽力する
手術内容については、たとえば膝前十字靱帯損傷(断裂)の場合、自身の腱を移植する再建手術が一般的です。採取できる腱は片足で3種類あり、当センターにおいては患者さんの行っているスポーツや利き足、体の使い方の特性などによってどの部分の腱を移植するのかを決定していきます。より有利で、可能な限りエラーが少ない治療を提供する――ごく当たり前のことですが、この綿密な治療戦略のもとで行うアプローチこそが、早期かつ確実なスポーツ復帰につながると考えています。

リハビリについても同様で、問診の際に聞き取った復帰目標を考慮し、計画を立てていきます。当センターではバスケットボール、サッカー、バレーボール、クラシックバレエ、格闘技などスポーツ別にリハビリの計画表を作成し、手術前の説明時に患者さんへ配布しています。リハビリのプログラムでは各競技の専門的な技や動きを細分化しており(バレエであればタンジュ・プリエ・シェネなど)、それらを週単位の明確な目標として設定。表に沿って、毎週のリハビリ目標をクリアしていくことで安全かつ確実な競技復帰を目指します。
また、当センターの理学療法士はほとんどがスポーツ経験者です。患者さんと同じスポーツ経験のある理学療法士がいれば、その理学療法士がリハビリを担当することで、競技に特化した専門的な指導ができるよう工夫しています。
プロや代表クラスの選手にとって、目標とした時期に復帰ができるかどうかは大きな問題です。キャリアの明暗が分かれてしまうわけですから、“自分たちが最後の医師。自分たちの後ろにもう医師はいない”――そう考えて患者さんに会うようにしてきました。
もし「どうも経過が悪いな」「なかなか思うようにスポーツに復帰できないな」と感じている方がいらっしゃいましたら、どうぞ遠慮なく当センターにお越しください。これまでの経験を生かし、理想のパフォーマンスが発揮できるよう最大限サポートしますので、一緒に治療を進めていきましょう。

- 公開日:2025年12月1日