茨城県における
消化器・肛門疾患の医療

誰でもなり得る身近な病気 ――専門の病院へ相談を

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誰でもなり得る身近な病気
――専門の病院へ相談を

痔は日本人の3人に1人が患っているといわれるほど身近な病気です。年代や性別を問わず誰でもなり得る病気ですが、その一方で痔を専門とする医師は少ない状況にあります。厚生労働省の統計によると痔などの肛門診療こうもんしんりょうをしている医師4,501人のうち、痔を専門とする医師はわずか1割程度にとどまっています(2014年時点)。

肛門の病気は症状が現れるとQOL(生活の質)に大きな影響を及ぼすほか、痔と思い放置していると、大腸がんなどの隠れた病気を見逃してしまうこともあります。肛門領域は高度な専門性が必要とされるため、お尻に関して何か気になることがある、近隣の診療所で治療が難しいといった場合は専門医*がいる病院に相談することが大切です。

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日本大腸肛門病学会認定の大腸肛門病専門医

茨城県の医療を支える
川﨑病院

地域に信頼される病院として肛門疾患に注力――骨盤臓器脱や消化器の良性疾患にも対応

地域に信頼される病院として肛門疾患に注力――骨盤臓器脱や消化器の良性疾患にも対応

当院は1963年に川﨑胃腸科外科病院として開院し、消化器に特化した病院として地域の皆さまのお役に立てるよう努力してまいりました。1999年に川﨑病院に改名し、昨今は肛門疾患の診療に力を入れています。日本大腸肛門病学会が認定する大腸肛門病認定施設として、直腸鏡・大腸内視鏡、超音波検査、大腸CTなどさまざまな検査方法をそろえています。治療についても、薬や手術など幅広い選択肢を備えており、複数の専門医*が患者さんの状態やご希望に合わせて適切に治療方針を検討・提案していきます。肛門疾患をメインとしながら、膀胱脱、子宮脱などの骨盤臓器脱や消化器の良性疾患に関しても検査・治療を行っています。

なお、当院の医療を求めて遠方からお越しいただく患者さんが度々いらっしゃったことから水戸市の「みと肛門クリニック」と、福島県いわき市の「いわき泉肛門クリニック」の2つの分院も開院しました。分院では診察はもちろん、内科的治療から外来で行える手術まで対応しており、入院の必要がある手術の際は本院(川﨑病院)にて治療をお受けいただけます。術後のフォローはお近くの分院で行いますので、ご安心ください。通院の負担を減らしながらも専門的な医療を受けられるような体制を敷いていますので、お住まいの場所やご都合に合わせてご活用いただければと思います。今後とも、地域の皆さまに肛門疾患診療において信頼いただける病院となれるよう努力してまいります。お困りの際にはぜひお気軽にご相談ください。

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日本大腸肛門病学会認定の大腸肛門病専門医
院長プロフィール

川﨑病院における
痔・痔瘻・大腸ポリープ・鼠径ヘルニアの治療

痔の治療

早期治療により手術せずに治ることも――慢性化する前に早めの受診を

痔は肛門に起こる病気の総称で、代表的なものに痔核じかく(いぼ痔)、裂肛れっこう(切れ痔)、痔瘻じろう(あな痔)があります。
痔核は、肛門の内側や外側がうっ血して腫れができる病気です。代表的な症状は脱出(排便時や強くいきんだ時に肛門の内側にできた痔核が肛門の外に出てくること)です。出血や痛みを伴うこともありますが、慢性的な痔核は痛みや出血が少なく、脱出だけがあることが多くなります。

切れ痔は肛門の皮膚が切れてしまう病気です。基本的には痛みと出血がありますが、それらの症状がないこともあります。切れてから数日で治りますが、頻繁に繰り返すと肛門が硬くなり、切れ痔がより起こりやすくなります。
痔瘻については「痔瘻の治療」の項で詳しく述べますが、簡単に言うと肛門周囲の組織の中に膿の通り道ができてしまう病気です。

早期治療により手術せずに治ることも――慢性化する前に早めの受診を

イラスト:PIXTA

痔はどうしても受診に恥ずかしさや抵抗感がある方が多いと思います。ですが、市販薬で様子を見て受診を先延ばしにすることで、慢性化してしまうケースもあります。早期に治療を開始できれば手術をせずに、根治を目指すことが可能になりますのでぜひ相談にいらしていただければと思います。

ささいな異変を見逃さないために――複数の検査方法で丁寧に診察

肛門の病気には多くの種類があり、痔だけをみてもその病態は多岐にわたります。当院ではささいな異変も見逃さないよう、複数の検査を駆使してより正確性の高い診断ができるよう努めています。

診察では問診のあとに肛門の周囲を見る視診、指を入れての触診を行い、肛門鏡という器具を使って肛門の中も確認します。「肛門の病気と思っていたら、実は大腸の病気だった」ということもありますので、直腸鏡を使って直腸の観察もしています。種類の異なる肛門鏡を使う、いきんでもらった状態の観察をするなどの工夫は、肛門病の診療を専門とする当院ならではの強みです。

ニーズに合わせ幅広い選択肢からよりよい治療を追求

痔核は脱出の程度によって分類され、治療方法が異なります。痔核の腫れや脱出の程度、痛みや出血が軽微な場合、脱出の頻度が少なく自然に戻るといった場合は、保存的な治療を選択することが多いです。薬による治療をしても、すぐ症状が出てきてしまう場合は手術を検討します。

痔核の手術は、注射療法と切除術に大きく分けられます。体への負担が少ないゴム輪結紮術ごむわけっさつじゅつ(痔核の根元をゴムでしばることで壊死させる方法)は当院では外来で行うことが可能です。入院して行う結紮切除術(痔核の根元を糸で結んだうえで痔核を切除する方法)は根治性が高く、さまざまな痔核に対応できます。

注射療法はALTAという薬を痔核に注射して痔核を小さくする方法です。これは手術後の出血や痛みが少なく、生活制限もほとんどありません。このほかにも、注射と切除を組み合わせた方法もあります。切れ痔の場合は固い便にならないようにする便通のコントロールや薬物療法などの保存療法を行います。切れ痔は繰り返すことで肛門が狭くなってしまうことがあり、その場合は当院では手術による根本的な治療を検討します。

ニーズに合わせ幅広い選択肢からよりよい治療を追求

治療方法は患者さんの生活状況や入院可能な日数などを考慮して決定します。症例数や経験の蓄積をもとに、いろいろな方法を組み合わせながら、患者さんにとってよりよい治療を追求しています。痔は手術をして根治することが理想的ではありますが、「簡単な処置で当面の症状を抑えてほしい」という患者さんもいます。ご希望を丁寧に伺いながら一緒に治療を進めていきますので、お悩みの方はぜひ当院にご相談ください。

解説医師プロフィール

痔瘻の治療

慢性化する前の治療が大切――放置せず早めに受診を

痔瘻は、肛門の出口からやや離れたところに穴が開き、膿の通り道ができる病気です。前段階には膿がたまることで腫れや痛みが出る肛門周囲膿瘍こうもんしゅういのうようがあります。

慢性化する前の治療が大切――放置せず早めに受診を

イラスト:PIXTA

このとき膿が自然に出るか、病院で切開して膿を出すと炎症は治まるものの、膿が溜まっていた管が残ることで痔瘻になります。炎症がなくなることで一見治ったように思えますが、実際には痔瘻が残っている状態なので、肛門周囲膿瘍が再発する恐れがあります。

再発により炎症を繰り返すと周囲が硬くなり、痔瘻の途中から枝わかれして範囲が広がります。これにより肛門を締める筋肉に対するダメージが大きくなり、手術の際も切除範囲が広くなります。体の負担を最小限にしつつ根治させるためには、症状が治まっていたとしても痔瘻と診断されたら早期に治療することが重要です。「痛みや腫れがある」「肛門を拭くときに膿がつく」といった症状があれば、早めに当院までご相談ください。

根治性、機能温存を重視し一人ひとりに合わせた治療を提供

痔瘻の場合は触診が大切です。視診や問診から痔瘻が疑われる場合に、皮膚にできる膿の出口(2次口)を指で触って確認します。2次口が肛門の中につながっていれば、痔瘻の診断になります。触診だけでは分かりにくい場合は、必要に応じて超音波検査も行いながら丁寧に確認します。

根治性、機能温存を重視し一人ひとりに合わせた治療を提供

痔瘻の手術は「根治性は高いものの肛門機能に影響が出やすい手術」、逆に「根治性はやや低いものの肛門機能や括約筋に対するダメージが少ない手術」など複数の方法があり、もともとの肛門を締める力の程度によっても適した手術が変わります。患者さんの病態や希望に合わせて複数の手術方法に対応できることが、痔を専門としている当院の一番の強みです。それぞれの手術のメリット・デメリットをしっかり説明しながら患者さんと一緒に治療法を決めていきます。

根治性、機能温存を重視し一人ひとりに合わせた治療を提供

とはいっても、状況によっては「急に手術に踏み切るのは難しい」という方もいらっしゃると思います。当院ではおおむね3か月以内の手術をおすすめしていますが、お仕事などの都合で難しい場合は、炎症を抑える治療を外来で行いながら、日程が調整できたタイミングで手術を検討していただくことも可能です。そのほかクローン病に合併した難治性の痔瘻の治療(注射薬"ダルバドルトロセル"を用いた再生医療)にも対応しています。将来的なQOLの維持まで見据えて、患者さん一人ひとりに合った治療をご案内いたしますので、相談を重ねながら治療を進めていきましょう。

解説医師プロフィール

大腸ポリープの治療

早期発見が大切――がんを防ぐために早めに内視鏡検査を

大腸ポリープとは、大腸の粘膜表面がイボ状に隆起してできたものです。ポリープが小さい段階ではほとんど症状がないため、検診の便潜血で陽性となったことをきっかけに来院される患者さんが多いです。ポリープは前がん病変と呼ばれ、大きくなるとがんになることがあります。そのため、ポリープの時点で早期に治療することが重要です。下血や便に血が混じる症状があれば、自己判断せずに早めに大腸内視鏡検査を受けていただきたいと思います。

痛みを抑えた内視鏡検査や負担の少ない大腸CTを用意

痛みを抑えた内視鏡検査や負担の少ない大腸CTを用意

大腸内視鏡検査は、ポリープや大腸がんの診断において優れた検査法とされています。しかし、検査前に大量の下剤を服用する必要があることや、検査時の痛みから検査への抵抗感がある患者さんも多いのではないでしょうか。

当院では痛みを最小限に抑えた検査を目指して、日々技術の研鑽に努めています。大腸内視鏡検査は、曲がりくねった長い大腸に内視鏡を挿入するため、無理に挿入すると痛みが生じてしまいます。苦痛の少ない検査を行うには経験や技術が求められますが、当院では30歳代後半~60歳代の医師が検査を担当します。若い医師でも少なくとも約10年以上の経験がありますので、安心して検査をお任せいただければと思います。また、挿入の方法も工夫しており、近年普及している水浸法という新しい方法を当院でも採用しています。これは大腸に水を注入しながら空気の注入を少なくして内視鏡を挿入することで、大腸が過度に伸びないようにして痛みを軽減する方法です。不安や痛みを感じやすい患者さんには鎮静薬の投与も行っていますので、どうぞお気軽にご相談ください。

痛みを抑えた内視鏡検査や負担の少ない大腸CTを用意

加えて、当院では大腸CT検査も選択肢としてご用意しています。大腸CT検査は肛門から炭酸ガスを注入し、CT撮影を行うのみで大腸内の様子が調べられる検査です。大腸内視鏡と比較して下剤の量が大幅に少なく済みます。内視鏡を挿入しないため痛みも少ないです。ポリープやがんが疑わしい病変が見つかった場合には精密検査と治療のために内視鏡検査が必要になりますが、「内視鏡検査を受けるのはどうしても抵抗がある」という方はご相談ください。

拡大観察で病変を分析、内視鏡治療も対応

当院では全ての内視鏡に拡大観察機能が搭載されており、より詳細な観察が可能です。ポリープの種類を鑑別し、大腸がんになる可能性があるかどうか、あるいはがんか否かを見極めることで、微小な非腫瘍性ひしゅようせいポリープについては切除しない判断も可能です。

大腸内視鏡検査でポリープが見つかった場合、かつサイズが小さなものは内視鏡を用いてその場で切除します。それ以外の治療が必要な場合でも連携する医療機関を責任もってご紹介いたしますので、ご安心ください。

近年、日本でも大腸がんは増加傾向にあります。繰り返しになりますが、当院では大腸内視鏡検査をできるだけ楽に受けていただけるよう努めており、診断においても細心の注意を払っています。将来の健康のためにも、ぜひ検査を受けにいらしていただければと思います。

解説医師プロフィール

鼠径ヘルニアの治療

手術で根治が可能――違和感があれば一度受診を

鼠径ヘルニアとは下腹部の足の付け根(鼠径部)の一部の筋膜が弱くなり、腹部内の臓器が腹膜を袋にして皮膚の下に飛び出し、ぽっこりと膨らんだ状態になる病気です。入浴時や力を強く入れて重いものを持ったときに膨らみを自覚する方が多いです。これらは通常は触ると軟らかく、押すと引っ込む状態で、痛みはあまり感じない方が多いです。

手術で根治が可能――違和感があれば一度受診を

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鼠径ヘルニアと診断された場合は、基本的に全ての方が手術の対象となります。がんのような悪性疾患とは異なるため、必ずしも早期の手術が必要というわけではありませんが、嵌頓かんとんと呼ばれる状態には注意が必要です。これは、腸の一部がヘルニア部分にはまり込んで元に戻らなくなった状態をいい、放っておくと腸閉塞や、腸管の壊死を引き起こす可能性があり、緊急手術が必要になることがあります。

いずれにしてもまずは診断が必要になりますので、鼠径部にふくらみがみられる方は、一度受診を検討していただければと思います。

低侵襲な腹腔鏡下手術で早期の社会復帰を実現――丁寧な説明で不安も少なく

手術の方法には鼠径部切開法と腹腔鏡下手術ふくくうきょうかしゅじゅつがあり、当院では、患者さんの年齢や体の状態を考慮して手術方法を決定します。鼠径部切開法は、従来からの標準的な手術法です。鼠径部の膨らんでいる部分の少し上を約4cm切開し、そこからメッシュと呼ばれる人工の補強材を挿入して弱くなった筋膜を補強します。

腹腔鏡下手術は、おへそに5mm~1cm程度の切開を1か所、さらにその両脇に5mm程度の切開を2か所加えた計3か所の小さな切開から、腹腔鏡と手術器具を挿入して行います。こちらも同様にメッシュを用いて補強します。小さな穴から行うため、傷あとが目立ちにくく、術後の痛みの軽減、早期の社会復帰が期待できます。

低侵襲な腹腔鏡下手術で早期の社会復帰を実現――丁寧な説明で不安も少なく

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治療は手術が基本となりますが、決断に迷われる方も多いと思います。当院では患者さんにご納得いただき、少しでも不安を減らして手術を受けていただけるよう、手術前の説明を丁寧に行うことを心がけています。手術の内容や起こり得る合併症について、実際の手術のビデオを見ていただきながら分かりやすくご説明いたしますので、「迷っている……」という方もお気軽にご相談ください。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2025年7月1日
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