大腸・肛門疾患の医療

高い専門性が求められる肛門疾患――複数の病気が絡み合っていることも

写真:PIXTA

高い専門性が求められる肛門疾患
――複数の病気が絡み合っていることも

肛門の病気は痔など身近なものも多い一方で、診療には高い専門性が求められる領域です。痔のほか、肛門の近くにうみが溜まる肛門周囲膿瘍や、尖圭せんけいコンジローマ(性感染症)、かゆみが現れる肛門掻痒症こうもんそうようしょうなどもあります。これらは出血や痛み、かゆみなどの症状を伴うことが多く、QOL(生活の質)の低下に直結します。特に出血については大腸の病気の可能性もあるため、「いつものこと」と見過ごさずに受診をすることが大切です。大腸・肛門疾患は複数の病気が関連して発症していることもあるうえ、放っておくと悪化し、病気によってはがんの発症につながるケースもあります。気になる症状がある場合には一度大腸・肛門の診療を専門とする病院に相談をしましょう。

100年以上にわたって
高松市の地域医療に貢献し続ける

前田病院

全人的な医療と介護をシームレスに提供

全人的な医療と介護をシームレスに提供

当院は1899年ごろに開院し、地域のかかりつけ医を目指して、よりよい医療の提供に努めてまいりました。幅広い病気に対する診療はもちろんのこと、96床の病床を備えており*、必要な場合あるいは患者さんがご希望される場合には入院についても柔軟に対応可能です。また、高松市で暮らす皆さんをさまざまな面から総合的に支えるべく、近隣には3つの介護施設もあります*。診断や治療のみならず、地域の方々の暮らしも支えられる存在でありたいというのが私たちの思いです。比較的小規模な病院ではありますが、小回りの利く環境だからこそ提供できる医療、そして“安心感”もあると考えています。困った際に「前田病院に相談してみよう」と思っていただける病院であり続けられるよう努めておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

病床数、関連施設数は共に2024年12月時点

胃・大腸とともに骨盤内臓器全体を診られる病院

胃・大腸とともに
骨盤内臓器全体を診られる病院

当院が強みとしているのが、胃・大腸の診療と骨盤内臓器(子宮や直腸、膀胱など)の診療です。これらの臓器は近い位置にあるため相互に影響を及ぼすこともありますが、診療では婦人科・泌尿器科などそれぞれ別の領域として扱われることもあります。特に大腸と肛門は密接な関係にあるものの、消化器内科/外科と比べて肛門の診療を専門とする医師は少ないのが現状です。
その点、当院には消化器病を専門とする医師はもちろん、肛門病を専門とする医師*も在籍しており、お腹の病気に対する総合的な診療が可能です。また、麻酔科医もいますので、手術においても十分な体制が整っています。痔だと思っていたものががんである可能性もありますし、そうでなくてもお腹・お尻の病気はQOLの低下を招きます。気になる症状がある方はぜひ一度私たちのもとへいらしてください。相談を重ねながら、つらい症状を一緒に解決していきましょう。

日本大腸肛門病学会認定の大腸肛門病専門医、日本臨床肛門病学会認定の臨床肛門病技能指導医・認定医(在籍医師の情報は2024年12月時点)

医師プロフィール
鈴木 優之 先生
肛門科・外科(日本外科学会認定 外科専門医)
鈴木 優之先生
プロフィール詳細を見る
鈴木 雅美 先生
内科・麻酔科(日本麻酔科学会認定 麻酔科専門医)
鈴木 雅美先生
プロフィール詳細を見る
高橋 修治 先生
内科・麻酔科(麻酔科標榜医)
高橋 修治先生
プロフィール詳細を見る

前田病院における
痔・大腸ポリープ/
大腸がん・骨盤臓器脱・
鼠径ヘルニアの診療

痔の診療

幅広い世代の方がなる病気――肛門の症状は専門医*の受診を

痔の種類には、痔核じかく(いぼ痔)・裂肛れっこう(切れ痔)・痔瘻じろう(あな痔)があります。これらは、一般的に“肛門の三大疾患”と呼ばれています。主な症状は出血のほか、いぼ痔の場合は排便時に粘膜が肛門外へ飛び出す“脱出”、切れ痔の場合には痛みが現れます。痔というと大人がなる病気というイメージがあるかもしれませんが、赤ちゃんから高齢の方まで幅広い年代の方がなり得る病気です。

幅広い世代の方がなる病気――肛門の症状は専門医*の受診を幅広い世代の方がなる病気――肛門の症状は専門医*の受診を

イラスト:PIXTA

痔核や裂肛は市販薬を使って少し様子を見ても問題ないと考えますが、1週間程度経っても症状の改善がみられない場合には肛門科を受診していただきたいと思います。脱出による違和感や痛みはQOLの低下に直結しますし、出血にいたっては大腸などに原因がある可能性もあります。また、痔瘻については治療をせずに放っておくと痔瘻がんを発症するケースもあり、これらを的確に診療するのは肛門病の専門医*でないと難しいことがあります。
がんでなかったとしても炎症を繰り返すと病気が複雑化し、その場合は体への負担が大きい治療が必要になることもありますので、肛門の違和感がある場合には我慢せず私たちに一度ご相談ください。当院は、肛門病の専門医*のほか、消化器内科医も在籍しており、それぞれの専門性を生かした総合的な診療が可能です。

日本大腸肛門病学会認定の大腸肛門病専門医など

大腸・肛門を専門とする病院だからこそ“安心できる”診療に尽力

先述のとおり、痔は誰でもなり得る病気ですが、その一方でデリケートな部位の診察に高いハードルを感じ、受診をためらってしまう方が多い病気でもあります。たしかに、普段人に見られることのない部位ですし、「恥ずかしい」と感じるのも無理はありません。ただ、そういった方にこそ、当院へご相談にきていただきたいと思います。

大腸・肛門を専門とする病院だからこそ“安心できる”診療に尽力

当院では少しでも安心していただける環境となるよう、基本的に女性看護師立ち会いのうえで可能な限り少人数での診療を行っています。中には、「お尻を見せて、何か変に思われたらいやだな」などと不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、当院は肛門科を主体とする病院ですから、デリケートな場所の診療こそが私たちの得意とする領域です。不安な気持ちへの配慮も含めて「行ってよかった」と思っていただけるよう職員一同努めておりますので、どうぞ楽な気持ちでご来院ください。

患者さんのご希望も踏まえた治療を提供

当院ではお薬による治療から注射治療、手術まで幅広い痔の治療をご提案可能です。専用の超音波検査装置や肛門内圧を測る機器など、肛門診療のための設備を揃えておりますので、検査の結果を踏まえて一人ひとりの病状に合った治療をご提案いたします。痔の手術には複数の方法があり、患者さんの肛門の筋肉量や年齢、排便状況なども考慮しながらよりよい治療を見極められるよう努めています。

患者さんのご希望も踏まえた治療を提供

なお、肛門の手術では根治性はもちろん、機能性の温存も重要です。ただ、これらは相反するものでもあり、双方のバランスをとるには医師の経験が欠かせません。これまで培った経験を生かし、よりよい生活をサポートいたしますので、気になること・不安なことがあればどんなに些細なことでもお尋ねください。病気の根治を目指して、私たちと一緒に治療を進めていきましょう。

解説医師プロフィール

大腸ポリープ/大腸がんの診療

便潜血検査で陽性となった方やお腹の不調が続いている方は一度検査を

大腸がんを早期発見するためには、健康診断などで便潜血検査を受けていただくことが大切です。便潜血検査の結果が陽性の場合には、決して偶然とは思わず精密検査(大腸内視鏡検査)を受けましょう。大腸ポリープはがんになる可能性があり、ポリープのように思える小さな病変が実はがんであることもあります。また、大腸がんは50歳代ころからリスクが高まるとされていますが、年齢が若いからと安心できるものではなく、若年者の場合は潰瘍性大腸炎やクローン病*などの炎症性腸疾患の可能性もあります。

クローン病:小腸や大腸などの粘膜に慢性的な炎症を引き起こす病気。

便潜血検査で陽性となった方やお腹の不調が続いている方は一度検査を

写真:PIXTA

下痢や便秘、腹痛などはよくある症状ですし気に留めない方も多いと思いますが、心当たりのないお腹の不調が続く場合には原因をはっきりさせること/悪性の病気の可能性を否定することが大切です。何らかのお腹の症状がある方は、一度大腸内視鏡検査を受けていただきたいと思います。

苦痛の少ない、受けやすい大腸内視鏡検査に努める

大腸内視鏡検査に高いハードルを感じる方も多いのではないでしょうか。抵抗を感じやすい理由の1つに前処置(下剤を飲んでお腹の中をきれいにする処置)が挙げられます。当院では一般的に用いられる液体の下剤のほか、錠剤のものも用意しており、検討可能ですので下剤が苦手という方は医師にご相談ください。

中見だし

また、ご希望に応じて鎮静薬や鎮痛薬の使用も可能です。これらの薬を使用することで不安や緊張感を和らげた状態で検査を受けていただけます。女性の内視鏡医もおりますので、ご希望の場合はお申し出ください。内視鏡の挿入時についても、痛みの軽減に役立つとされる無送気軸保持短縮法という方法を基本としておりますので、安心して受けていただければと思います。さらに、当院ではAI技術を用いて大腸ポリープなどの病変の検出および鑑別を支援する内視鏡診断支援機能を用いた大腸内視鏡検査を行っており、より正確な診断、検査ができるよう努めています。
内視鏡検査の結果、ポリープや悪性を疑う小さな腫瘍しゅようが見つかった場合にはその場で切除をし、内視鏡治療が適応とならないがんが見つかった場合は後日手術を行います。

S状結腸鏡検査や肛門超音波検査の体制も整え、お腹・お尻の健康を守る

通常の大腸内視鏡検査は抵抗があるという方は、直腸~S状結腸までを検査するS状結腸鏡検査という選択肢もあります。この検査は浣腸のみの前処置で実施可能な検査方法です。あくまで簡易的な検査ではありますが、日本人の大腸がんは7割が直腸がんとS状結腸がんとされており、この部位を調べるだけでも意義があると考えられます。当院でもS状結腸鏡検査を実施していますので、「どうしても下剤が口に合わない」、「大腸内視鏡検査に抵抗がある」などの場合には、ぜひご相談ください。

S状結腸鏡検査や肛門超音波検査の体制も整え、お腹・お尻の健康を守る

大腸内視鏡検査を提供している医療機関は数多くありますが、大腸のみならず肛門も同時に診療できるのは当院の強みの1つです。肛門超音波検査装置なども備え、お腹・お尻の病気を包括的に診られる体制を整えていますので、不調の原因をはっきりさせて不安のない毎日を過ごしましょう。

解説医師プロフィール

骨盤臓器脱の診療

臓器が体外に脱出する病気――違和感などがある場合にはまず一度受診を

骨盤臓器脱は、子宮や膀胱、直腸などの骨盤内にある臓器が下がり、膣や肛門から体外に脱出する病気です。脱出する臓器により子宮脱・膀胱瘤ぼうこうりゅう・直腸瘤・腟脱などといいますが、どれも骨盤底筋(骨盤内の臓器を支えている筋肉)や靱帯じんたいのゆるみが原因となって発症します。

臓器が体外に脱出する病気――違和感などがある場合にはまず一度受診を

イラスト:PIXTA

直腸脱では脱出・出血・痛みなど、直腸瘤では残便感などが現れます。子宮脱/膀胱瘤の場合は、腟からピンポン玉のような丸いものが飛び出ている感覚が現れるのが特徴です。
命に関わるような病気ではないものの、放っておいても治ることがないため、不快感を取り除くためには手術が必要になります。なお、直腸脱については脱出のボリュームが大きくなると肛門の機能に影響を及ぼすこともあります。肛門機能が障害された状態が続いた場合には、直腸脱の治療をしても肛門機能が回復しない可能性もありますので、思い当たる症状がある方は早めに受診をしていただきたいと思います。

可能な限り再発率を抑えた直腸脱手術の提供に尽力する

軽度のうちであれば骨盤底筋体操という“筋トレ”で症状の改善が見込めることもありますが、中等症以上の骨盤臓器脱を改善するには手術などの治療が必要です。骨盤臓器脱の手術には、多様な方法があり、直腸脱の手術にいたっては100種類以上の手術方法があります。従来は会陰えいんから手術する方法などが多く行われていましたが、再発することが多く、近年ではお腹から手術する方法が開発されています。腹腔鏡を使ってお腹から手術する方法は会陰からのアプローチと比較して再発率が低い傾向にあるとされており、当院でも積極的に実施しています。

腹腔鏡下手術により体への負担が少ない治療を提供

直腸脱のみならず、子宮脱や膀胱瘤の手術についても、当院では腹腔鏡下手術を実施しています。これらの病気は合併することもありますが、場合によっては子宮脱と膀胱瘤などそれぞれ婦人科領域・泌尿器科領域のように分けて手術が行われるケースもあります。当院では骨盤内臓器に対する総合的な診療が可能な体制を整えておりますので、複数の病気が合併している場合でもこの領域の臓器であれば同時に治療を行うことも検討できます。少しでも治療の負担が減らせればと考えておりますので、手術を検討している方はぜひご相談ください。

腹腔鏡下手術により体への負担が少ない治療を提供

先に述べたとおり、骨盤臓器脱は命に関わる病気ではないものの「あまり生活に支障はないから」と受診を先延ばしにしてしまうと、いざ手術が必要になったころには年齢を重ねたことでほかの病気を発症し、手術ができないということも起こり得ます。骨盤臓器脱自体も加齢とともに進行する可能性のある病気ですので、早めに受診いただき、必要な治療を受けていただきたいと思います。
早い段階であれば、骨盤底筋体操で症状の改善が見込める可能性もあります。気になる症状があれば、お気軽にご来院ください。手術をするメリット/しないメリットも含め、まずは一度お話ししましょう。

解説医師プロフィール

鼠径ヘルニアの診療

横になると引っ込む膨らみは放置せずに受診を

鼠径そけいヘルニアは太ももの付け根(鼠径部)の筋肉の間から、お腹の中の臓器などが飛び出す病気です。腸管が脱出することがあり脱腸ともいわれていますが、飛び出す臓器は、小腸や大腸、膀胱、脂肪組織などさまざまです。鼠径ヘルニアには生まれつき(先天性)のものと、加齢や生活環境が影響する(後天性)ものがあり、子どもから大人まで幅広い年齢層の方に起こり得るほか、男性・女性どちらでも発症します。成人の場合、年齢とともに筋肉が弱くなったり、重いものを持ったりすることなどが原因となって発症するといわれています。

横になると引っ込む膨らみは放置せずに受診を

イラスト:PIXTA

症状が軽い場合には痛みを感じないこともあるうえ、横になると引っ込むことからつい受診を後回しにしてしまう方もいらっしゃると思いますが、放置すると、飛び出した腸管の血行不良や壊死えしが起こり命にかかわることもある病気です。当てはまる症状がある方は「出っ張っているだけ」とは思わず、ぜひ一度受診をしていただきたいと思います。

根治性と負担軽減の両立を目指した治療を追求する

鼠径ヘルニアは、基本的に問診と身体所見を確認することで診断が可能です。鼠径ヘルニアは放っておいても回復する病気ではなく、また薬やリハビリテーションで改善できるものでもないため、治療をするには手術が必要となります。

根治性と負担軽減の両立を目指した治療を追求する

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手術には、鼠径部を切開して行う鼠径部切開法と、腹腔鏡下手術があり、当院では腹腔鏡ふくくうきょう下手術を積極的に行っています。腹腔鏡下手術は、お腹に5mm程度の穴を3か所開けて行います。鼠径部切開法よりも体への負担が少ないことが特徴です。基本的に1泊2日で行っていますが、病状によっては日帰り手術ができることもありますので、ご希望される場合には医師にお伝えいただければと思います。
治療方針については患者さんの全身状態やご希望を踏まえて、よりよいと思える治療をご提案いたします。当院のお近くにお住まいで鼠径ヘルニアの手術を検討されている方は、いつでもご相談にいらしてください。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2025年1月28日
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