大阪市の医療

高齢化が徐々に進行――がんや整形外科疾患への対策が課題に
写真:PIXTA

高齢化が徐々に進行――がんや整形外科疾患への対策が課題に

大阪市全体では2040年に高齢化率が30%程度まで上昇することが見込まれています。北区と中央区では働く世代の流入により高齢化率は市内では低い水準ですが、港区では市全体と比較して高齢化率が高くなっています。
こうした状況から重要性が高まっているのが、がんへの対策です。がんの罹患数は高齢化を背景に増加傾向にあります。胃や大腸のがんに関しては、がん検診と内視鏡治療により早期発見・早期治療を進めてきましたが、膵臓すいぞうがんは依然として早期発見が非常に難しく命にかかわるがんです。そこで当院では膵臓がんのリスク評価やMRI検査などを組み合わせて早期発見に力を入れています。超音波内視鏡で観察しながら微細な針で吸引生検を行い、がんが見つかった場合はできる限り待たせることなく手術に進める体制を整えています。
また、加齢は整形外科疾患のリスクも高めます。高齢の方は変形性膝関節症へんけいせいしつかんせつしょうや骨粗鬆症になりやすく転倒による骨折などを起こしやすくなります。これらの疾患は高齢者の生活の質(QOL)を著しく低下させるため、がん対策と並ぶ重要な健康課題となっています。

大阪市の医療を支える
JCHO大阪みなと中央病院

アクセスのよさを生かし地域医療に貢献――救急医療にも対応

アクセスのよさを生かし地域医療に貢献――救急医療にも対応

当院は1949年に船員保険大阪診療所として開設され、2024年に75周年を迎えた歴史のある病院です。2014年から地域医療機能推進機構(JCHO)の運営となり、名称を現在のJCHO大阪みなと中央病院へ変更しました。
当院は開設当初から「やさしさと安心の医療で人々につくします」という理念を掲げています。地域医療を支えるとともに、高齢化という地域課題に対応するため、地域の皆さんが必要としている診療科の医師を増員するなど診療体制を強化してきました。
2019年9月には、大阪港駅前から現在の弁天町駅前に移転しました。駅直結という立地のよさから、近隣だけでなく遠方からも患者さんが来院されるほか、ご高齢の方からお仕事をされている方まで治療を受けやすい環境です。潰瘍性大腸炎かいようせいだいちょうえんやクローン病を患っている方など、定期的に通院される患者さんにとっても来院しやすくなっています。
また、移転に合わせて救急科を設置するなど診療体制の充実を図り、二次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担う病院として指定を受けています。
今後も地域の皆さんに必要とされる病院を目指し努力を続けてまいります。ぜひ安心してご来院ください。

院長プロフィール

JCHO大阪みなと中央病院における
膵臓がん・変形性膝関節症・
腰部脊柱管狭窄症・潰瘍性大腸炎/
クローン病の治療

膵臓がんの治療

わずかなサインを見逃さないで――早期発見のため早めの受診を

わずかなサインを見逃さないで――早期発見のため早めの受診を

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膵臓がんは、一般的に“難治性がん”と呼ばれています。大きく2つの理由があり、1つは、進行が速く転移しやすいことです。もう1つは、早期の段階では自覚症状がほとんどないため、発見が非常に難しいことです。膵臓は体の最も奥まった場所にあるため、腹部超音波検査だけでは異常を見つけにくいという特徴があります。
だからこそ、私たちはわずかなサインを見逃さないことが何よりも重要だと考えています。早期発見のため、特に気をつけていただきたいポイントが2つあります。
1つは“家族歴”です。血のつながりがあるご親族に膵臓がんになった方がいらっしゃる場合はリスクが高いと考えられています。もう1つは“血糖値の急な変動”です。これまで糖尿病のコントロールが良好であったにもかかわらず、急に血糖値が悪化したというようなケースは、膵臓がんのサインである可能性があります。これらに心当たりがある方は、ぜひお早めに日本外科学会が認定する外科専門医へご相談ください。

消化器内科と外科が綿密に連携し迅速な診療を実現

膵臓がんの診療では、診断から治療までスピード感が求められます。当院は診療科の垣根を越えた“フットワークの軽さ”が強みです。消化器内科と私たち外科は病理検査部門とも連携し、検査の初期段階から常に情報を共有し、綿密な治療計画を立てていきます。

消化器内科と外科が綿密に連携し迅速な診療を実現

また、当院では“背伸びをしない”という姿勢も大切にしています。これは病院として、責任を持って最後までしっかりと治療できる症例を見極めるという意味です。より専門的な治療が必要だと判断した場合には、抱え込むことなく、大学病院などの高度医療機関へ速やかにご紹介します。これは治療効果をトータルで考えた際、患者さんにとってのメリットにつながるからです。
手術では、まずはがんを完全に取り除く“根治性”をしっかりと追求しつつ、一方で体への負担が大きくなりすぎないようにも気を配っています。「がんは取り切れたが、大きな負担があり体力がもたなくなってしまう」といったことは避けなければいけません。手術前のADL(日常生活動作)の評価をしっかり行い、術後もなるべく早期からリハビリテーションのプログラムを行うことで体力維持を支えています。

患者さんと“正直に向き合う”ことを大切に――ふさわしい治療を一緒に考える

患者さんと“正直に向き合う”ことを大切に――ふさわしい治療を一緒に考える

私が診療において最も大切にしているのは、“患者さんと正直に向き合う”ことです。
膵臓がんは、難しい病気です。手術を乗り越えた後も、多くの場合は術後の抗がん薬治療を頑張っていただく必要があります。治療の際には厳しい現実も含めて丁寧にお話ししたうえで「大変な治療ではありますが、精一杯サポートいたします。頑張っていただけますか」と、患者さんの意思を問いかけるようにしています。
膵臓の病気かもしれないと告げられた方はとても不安な日々を過ごされていると思います。まずは一度、私たちにご相談ください。もちろん診療ガイドラインはありますが、治療の正解は1つではないと思っています。患者さん一人ひとりの状態、お気持ち、そして社会的背景などを丁寧に伺いながら、その方に合った治療法を一緒に見つけていく。それが、私たちが目指すトータルサポートです。

解説医師プロフィール

変形性膝関節症の治療

「年のせい」と我慢しがちな病気――まずは早めに受診を

変形性膝関節症は、加齢などによって膝の関節にある軟骨がすり減り、骨同士がぶつかることで痛みや炎症が起こる病気です。膝が伸びにくい、曲げにくいといった可動域の制限や、歩行時の痛みなどが主な症状です。
多くの方が「年だから仕方ない」と痛みを我慢してしまいがちです。ですが、症状が軽いうちであれば、治療の選択肢が広がることがあります。膝の痛みが数か月続くような場合は、ぜひ早めに受診いただきたいです。

「年のせい」と我慢しがちな病気――まずは早めに受診を

写真:PIXTA

当院ではまず、X線で膝の状態を確認します。画像で明らかな異常がなくても強い症状がある方は、MRI検査で軟骨や半月板の状態まで見ながら総合的に診断をしていきます。治療方針の決定は、患者さんのライフスタイルや“これからどういう生活を送りたいか”というご希望をじっくりお伺いし、一人ひとりに合った治療を提案します。

正確性を高めた人工関節手術をロボットで実現――関節を温存する手術にも対応

当院の整形外科には、人工関節置換術を専門とする私(今村 史明)と、患者さんの関節を温存する“骨切り術”を専門とする中尾 吉孝医師が在籍しており、幅広い年代の患者さんに対応できる体制が整っていることが強みです。

正確性を高めた人工関節手術をロボットで実現――関節を温存する手術にも対応

手術の適応としては、ご高齢で軟骨のすり減りが進んでいる方には“人工関節置換術”という選択肢があります。これは、傷んだ関節の表面を削り、金属やポリエチレンでできた人工の関節に置き換える手術です。人工関節置換術は全く新しい膝に作りかえる手術ですが、当院では、 患者さん同有の膝を再現することを目指した人工関節置換術を行っています。安定したバランスのとれた膝となることで術後の痛みや違和感の軽減につながり、歩行機能や日常生活機能の改善が期待できます。当院では手術の正確性を高め、より良いバランスを目指すために2025年の1月から手術支援ロボットを導入し、人工関節置換術で活用しています。

正確性を高めた人工関節手術をロボットで実現――関節を温存する手術にも対応

自然な膝の再現をめざす人工関節置換術のメリット
①患者さん固有の膝(元来の関節面の傾き、自然な靭帯張力)を再現するため、術後の痛み、違和感の軽減が期待できる
②全可動域でばらつきのない、安定したバランスとなることで、歩行や階段昇降の安定が見込める

膝関節の手術では、骨と骨をつなぐ靱帯じんたいのバランスを整えることが非常に重要です。従来の手術では、このバランスを医師の経験と感覚に頼って調整していました。しかし、ロボットを使うことで、そのバランスが“数値”として見えるようになりました。これにより、mm単位で正確性を高めて骨を切ることができ、理想的な靱帯バランスの実現が可能になりました。手術の傷が小さく、負担が少ないため、患者さんの早期回復にもつながっています。
一方、活動的でスポーツなどを続けたいという比較的若い世代の方には、膝周囲骨切り術を提案しています。この治療はご自身の膝の骨の一部を切って角度を調整することで、O脚やX脚をまっすぐの脚に矯正する手術です。膝の内外のうち、痛みの原因になっている側の負荷を減らすことで痛みを改善させます。当院では可能な限り、半月板機能温存を目指しています。関節鏡を使って低侵襲で半月板縫合術や半月板制動術を行った上で骨切り術を行うため、より生理的な膝関節の機能が温存されます。

正確性を高めた人工関節手術をロボットで実現――関節を温存する手術にも対応

メリット
①関節を温存できる
人工関節手術と異なり、ご自身の関節をそのまま残す治療です。
②自然な関節運動を維持しやすい
本来の関節構造が維持されるため、術後の可動域や自然な動きが保たれやすくなる
③スポーツや活動的な生活が続けやすい
若年〜中年のスポーツ愛好家やアクティブな方にとっては術後に運動やスポーツが可能になる

希望を尊重しよりよい治療を一緒に見つける――まずは気軽に相談を

希望を尊重しよりよい治療を一緒に見つける――まずは気軽に相談を

膝の痛みのせいで、旅行や趣味を諦めてしまう中高年の方はたくさんいらっしゃると思います。整形外科疾患の治療は患者さんによっては手術をしないほうがよい場合もあれば、したほうが生活の質が格段に上がる場合もあります。患者さんの希望を尊重しながら、よりよい治療を一緒に見つけていければと思っています。まずは一度、ご自身の膝がどういう状態なのかを知っていただくことが大切です。ぜひお気軽にご相談ください。

解説医師プロフィール

腰部脊柱管狭窄症の治療

放置すると筋力低下のリスクも――早めの受診が大切

腰部脊柱管狭窄症ようぶせきちゅうかんきょうさくしょうは、主に加齢によって背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されることで起こります。代表的な症状には“少し歩くと足が痛くなったり、しびれたりして、少し休むとまた歩けるようになる”という間欠性跛行かんけつせいはこうがあります。

放置すると筋力低下のリスクも――早めの受診が大切

写真:PIXTA

これらの症状があると「歩かなければ痛くないから」と、つい外出を控えたり、家の中に閉じこもりがちになったりする方も少なくありません。しかし、特に高齢の方は“動かない”という選択により、筋力の低下や全身の状態の悪化を招き、結果的にもっと動けなくなってしまうという悪循環に陥りかねません。そうなる前に、ぜひ一度、医療機関を受診していただければと思います。

迅速な介入で痛みを緩和――負担の少ない手術を目指す

迅速な介入で痛みを緩和――負担の少ない手術を目指す

当院の強みは、まず“迅速な介入”を心がけている点です。 診断をできるだけ早く行い、症状が強い患者さんには神経ブロック注射などで、まずはつらい痛みを和らげることから始めます。
保存療法(投薬等)で改善が見られない場合や痛みがある患者さんには手術をご提案しています。手術の際には、患者さんにご納得いただけるよう一人ひとりに寄り添った丁寧な説明を心がけています。

迅速な介入で痛みを緩和――負担の少ない手術を目指す

手術が必要と判断した場合には、患者さんの体への負担をできるだけ少なくする方法を追求しています。特に力を入れているのが、可能な限り負担を減らした腰椎ようついの固定術です。これは腰椎の椎間板(クッションの役割をする軟骨)を取り除き、背骨を構成する椎体と椎体の間に“ケージ”と呼ばれる、つっかえ棒のような器具を挿入し、スクリュー(ねじ)で固定する手術です。当院では体の前方と後方の両方からアプローチする方法を行っています。傷は側腹部の指3本分程度の切開と、背中側にスクリューを入れるための数か所の切開で済みます。背中の筋肉を大きく剥がす必要がないため、術後の回復が早まるほか、神経そのものに直接触れることなく手術を行えるため、合併症のリスクを低減できるなどのメリットがあります。
足腰の痛みでお困りの地域の患者さんのために早期介入をしっかり行い、一人ひとりに寄り添った治療を提供させていただきます。長く歩けなくなったと感じたり、足腰の痛みが気になったりする方は、ぜひ一度ご相談ください。

解説医師プロフィール

潰瘍性大腸炎/クローン病の治療

若い世代に多い病気――自己判断せず早めの受診を

潰瘍性大腸炎とクローン病は、どちらも“炎症性腸疾患(IBD)”と呼ばれる、慢性的な腸の炎症を引き起こす病気です。潰瘍性大腸炎は、主に大腸の粘膜に炎症が起こります。一方、クローン病は、食道や胃、小腸、大腸といった消化管のあらゆる場所に発症する可能性があります。免疫の異常が関わっていると考えられていますが、特定の原因や明確な遺伝性についてはまだわかっていません。共通する症状としては、腹痛、下痢、血便などがあり、炎症が長期間続くと潰瘍性大腸炎ではがんのリスクも高まります。

若い世代に多い病気――自己判断せず早めの受診を

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仕事や学業に励む若い世代の発症が多いのが特徴です。「ただのお腹の不調だろう」と自己判断したり、診断のために必要な内視鏡検査への抵抗感から診断が遅れたりしてしまうケースも少なくありません。
これらの病気は慢性疾患であり、完治が難しいとされています。しかし、悲観しすぎる必要はありません。適切な治療を受けて、症状が落ち着いた“寛解”という状態を維持できれば、健康な方とほとんど変わらない生活を送ることが可能になります。ぜひ前向きに向き合っていただければと思います。

新たな薬で広がる治療選択――通いやすい環境で仕事や学業との両立を支える

新たな薬で広がる治療選択――通いやすい環境で仕事や学業との両立を支える

IBDの治療は、近年大きく進歩しています。かつては症状が強い場合はステロイドによる治療が中心でしたが、副作用の問題がありました。現在では、“生物学的製剤”や“JAK阻害薬”といった新たな薬が次々と登場し、治療の選択肢が大きく広がっています。近年では点滴や注射だけでなく、飲み薬だけで寛解を目指せる方もいらっしゃいます。患者さんの病状やライフスタイルに合わせて、幅広い選択肢の中からよりよい治療方針を一緒に考えていきます。
また、定期的な治療が必要な患者さんのために、通いやすい環境を整えることも大切にしています。当院は地下鉄の弁天町駅出口から直結しており、アクセスが良好です。また、採血から点滴、お会計までを午前中に終えることもできますので、お仕事や学校がある患者さんも、治療と社会生活を十分に両立していただけると思っています。
潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんの数は年々増加しています。ですが、まだ受診されずに悩んでいる方もたくさんいらっしゃると思います。この病気は適切かつ迅速な診断と治療を受けることで症状の速やかな改善が期待できます。内視鏡検査への抵抗感もあるかとは思いますが、鎮静剤、鎮痛剤を用いて苦痛を軽減させた検査も可能です。少しでも不安に感じることがあれば、まずは一度ご相談ください。

解説医師プロフィール
小豆澤 秀人 先生
小豆澤 秀人先生
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  • 公開日:2025年10月24日
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