埼玉県 南西部医療圏の医療

高齢化が進むなか、地域で求められるがん対策・がん治療とは

写真:PIXTA

高齢化が進むなか、地域で求められる
がん対策・がん治療とは

日本では高齢化が進んでおり、ふじみ野市や和光市などを含む埼玉県南西部医療圏も例外ではありません。この地域は、2020年時点で高齢化率が23.80%となっており、この割合は少なくとも2050年まで増加することが予想されています。高齢化に伴って増加する病気に、がんが挙げられます。がんは早期発見・早期治療により、治せる病気になってきているものの、埼玉県では4人に1人ががんで亡くなっている*のが現状です。埼玉県では、企業や団体と連携してがん検診の重要性や正しい知識の啓発が行われています。また、医療機関においては高齢の方にも適用できる体にやさしいがん治療の提供も求められるでしょう。

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2025年時点

埼玉県 南西部医療圏の医療を支える
埼玉病院

地域の人々の健康といのち、安心のこころを守る埼玉病院

地域の人々の健康といのち、
安心のこころを守る埼玉病院

当院は、埼玉県南西部医療圏で唯一の紹介受診重点医療機関(2023年指定)であり、地域医療の中核的な役割を担う総合病院です。
この地域の医療需要に応えるため、当院では設備の拡充に注力しています。2021年に350床から550床に増床し、2023年12月には国産初の手術支援ロボット“hinotori”を導入して、ロボット支援下手術を開始しました。この手術は、患者さんの体への負担が少ない治療法です。導入当初は主に前立腺がんの治療など、泌尿器科の手術で活用していましたが、徐々に外科や婦人科の手術にも導入し、患者さんのニーズにお応えできるようになってきました。
今後も“この地の人々の健康といのち、そして安心のこころを守る“という理念の下、誠実な医療を通して地域の皆さまに貢献してまいります。お困りのことがあれば、いつでも当院にお越しください。

病院長プロフィール

埼玉病院における
子宮体がん・大腸がん・
膵臓がん・前立腺がんの治療

子宮体がんの治療

月経以外の出血、血液が混ざったおりものがみられたらすぐに受診を

子宮体がんとは、子宮体部しきゅうたいぶ(胎児が育つ部分)にできるがんです。50~60歳代で発症する方が多く、近年増加傾向にあります。月経でない期間の出血や、おりものに血液が混ざるなどの不正出血は、発症初期に多くみられる症状です。子宮体がんは早期発見・早期治療が非常に重要ですので、体調の変化を感じた際には必ず医療機関を受診しましょう。特に、閉経後に出血がみられる場合は、速やかな受診をおすすめします。

月経以外の出血、血液が混ざったおりものがみられたらすぐに受診を

子宮体がんの診断のためには、まず子宮体部の組織を採取し、がんの有無を確認します(細胞診・組織診)。検査の結果、がんが見つかった場合は、MRI、CTをはじめとする画像検査を行って、子宮の筋肉への染み込みの深さや遠隔転移の有無などを確認していきます。当院では基本的に初診から1か月程度で手術が行えるよう努めていますが、進行がん(ステージⅡ期以上)の場合には優先的に検査を行うなど、患者さんの状態に応じて柔軟に対応できる体制が整っています。

密な連携体制と低侵襲な治療で患者さんを支える

当院の強みは、がん治療に関わる診療科との連携が強固なことです。患者さんの治療方針を決める際も、症例によっては婦人科のほかに消化器外科や泌尿器科、放射線科などの医師も参加してディスカッションを行います。中にはオンラインで医師が参加するケースもあり、可能な限り多くの意見を出し合い、よりよい治療方針を導き出せるよう努めています。また標準治療をベースに患者さんのご希望やADL、状況に合わせた治療方針を提案するよう心がけています。

密な連携体制と低侵襲な治療で患者さんを支える

初期の子宮体がんの治療は、基本的に手術となります。当院では、患者さんの体への負担が少ない低侵襲手術ていしんしゅうしゅじゅつに対応しており、2018年から腹腔鏡下手術ふくくうきょうかしゅじゅつを行っています。お腹に5mm~1cmの穴を4~5か所開けて、そこからカメラや鉗子かんしなどを入れてがんを摘出する手術です。術後4日ほどで退院が可能なうえ、開腹手術に比べて小さい傷口で済むため、術後の痛みが少なく、また早期回復も期待できます。
さらに2024年にはhinotoriも導入し、ロボット支援下手術にも対応できるようになりました。ロボットならではの正確な動作によって、より精密な手術の提供が可能です。
お伝えしたとおり、子宮体がんは早期発見が非常に重要です。当院は患者さんに寄り添い、がんの根治を目指しつつ精神的・身体的負担を考慮した治療を提供できるよう尽力しています。気になることがある方は、ぜひ一度相談にいらしてください。

解説医師プロフィール

大腸がんの治療

スピーディーな診断・適切な治療方針の決定に努める

大腸がんは比較的進行が遅く、早期に発見できれば手術によって治る可能性が高いのが特徴です。そのため、便潜血検査で一度でも陽性(+)となった場合は、なるべく早く精密検査(大腸内視鏡検査)を受けていただきたいと思います。当院では、初診から約2週間で診断を確定し、大腸がんの診断がついた場合は進行度(ステージ)を確認していきます。治療方針は消化器外科の複数の医師たちでディスカッションして決めており、がんの進行度や患者さんの体の状態に応じて、速やかに適切な治療に進めるよう体制を構築しています。

スピーディーな診断・適切な治療方針の決定に努める

入念な術前検査とロボット支援下手術で精度の高い手術を目指す

当院の強みは、術前検査と低侵襲な手術(hinotoriを用いたロボット支援下手術)です。術前検査については、CT検査(3D-CTA+CTC)を実施します。この検査では、病変やその周りにある血管の位置を詳細かつ立体的に把握することが可能です。検査で得られた詳細な情報をもとにあらかじめしっかりと準備をして手術に臨むことで、より精度の高い手術の実施、ひいてはよりよい予後にも貢献できると考えます。

入念な術前検査とロボット支援下手術で精度の高い手術を目指す

手術は、基本的にロボット支援下手術を行います。ロボットアームに付いている鉗子は、腹腔鏡下手術で用いる鉗子に比べて精密かつ自在な操作が可能です。手ぶれ補正機能が備わっているため繊細な手技を実現しやすく、排泄や性機能に関わる重要な神経を温存しながら、安全な手術を目指せます。
また、開腹手術よりも傷口が小さいため痛みが少なく、術後の早期回復が期待できることもロボット手術のメリットです。

QOLに配慮した直腸がん治療を提供

自然肛門しぜんこうもんの温存に注力していることも当院の強みです。大腸がんの中でも直腸がんは肛門に近い場所にあるため、がんを切除する際、人工肛門が必要になる場合があります。当院ではできる限り人工肛門を避けられるよう、局所進行癌の場合には、術前化学療法や放射線治療を実施しています。がんを縮小させて肛門との距離を確保することで、自然肛門を温存できる可能性を高めます。もちろん、自然肛門の温存を優先しすぎると排便トラブルなどが生じ、かえってQOLを低下させてしまう可能性もあります。そのため、患者さんと丁寧に対話を重ねながら、慎重に治療方針を検討していきます。
当院は、“地域で高度な医療を提供する”ことを目指し、日々がん診療に向き合っています。「手術が必要といわれたけれど、負担の少ない方法がないか相談したい」などのお悩みがあれば、ぜひ一度当院へいらしてください。地域の皆さまが質の高い医療を安心して受けられるよう、これからも全力で取り組んでまいります。

解説医師プロフィール

膵臓がんの治療

膵臓がんを治せるがんに――地域を挙げて早期発見に尽力

膵臓すいぞうがんは症状が現れにくいことから早期発見が難しいがんとして知られています。そのうえ、悪性度が高く転移しやすいため、ほかのがんに比べて死亡率が高いのが実情です。
この状況を改善すべく、当院では“膵臓がんを治せるがんにする”を合言葉に掲げ、2024年8月から“膵がんwatchプロジェクト”を立ち上げました。このプロジェクトは、膵臓がんのリスク因子がある患者さんを拾いあげ、がんの早期発見につなげていくというものです。膵臓がんの罹患リスクには、家族歴(膵臓がんにかかった家族がいる)、糖尿病、喫煙、アルコール、肥満などがあります。地域のクリニックや診療所の先生方と協力しながら、対象となる患者さんを重点的に検査することで早期発見率の向上を目指しています。

膵臓がんを治せるがんに――地域を挙げて早期発見に尽力

当院ではプロジェクト開始に先立って、超音波内視鏡下穿刺吸引法ちょうおんぱないしきょうかせんしきゅういんほう(EUS-FNA)検査を2024年4月から本格導入しました。この検査は超音波内視鏡を用いてがんの組織を採取・検査するもので、膵臓がんの診断に非常に有用です。2025年1月までに120件ほどの検査を行い、そのうち4件で早期膵臓がんを発見するに至っています。プロジェクト開始から日が浅いものの、早期発見による膵臓がんの治療成績向上に期待が持てる成果だと考えています。
現在は朝霞地区医師会と協働し、周辺地域のクリニックに当院の医師が訪問するなどして、このプロジェクトの趣旨や重要性をお伝えしています。その甲斐もあり、徐々に参画していただけるクリニックが増えてきました。より多くの膵臓がんを早期に発見できるように、引き続き連携を強化し、地域に貢献してまいります。

ステージに応じた専門性の高い治療を目指す

ステージに応じた専門性の高い治療を目指す

膵がんwatchプロジェクトで見つかった早期の膵臓がんに限らず、当院では膵臓がんのステージに応じた集学的治療*を行っています。がんの状態に応じて、適切な治療法を提案できることが当院の強みです。切除不能膵臓がんに対してはコンバージョン手術**にも対応しており、治る見込みの低かった患者さんが再発なく日常生活を送っていらっしゃるケースもあります。
膵臓の手術は難易度が高いといわれており、患者さんの体への負担も大きくなりがちです。そのため手術には、専門性の高さが要求されます。日本肝胆膵外科学会は、“手術件数が30例以上あること”を1つの指標として高度技能専門医修練施設(B)の認定制度を設けており、当院はこの認定を受けています。より安全でより根治性の高い治療を提供できるように、日々努力していますので、治療にお悩みの方はぜひ当院にご相談ください。どうか諦めずに、希望を持って私たちと一緒に膵臓がんと闘っていきましょう。

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手術、薬物療法、放射線治療などを組み合わせた治療のこと。

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診断時に切除ができないと判断した進行がんが化学療法などにより縮小した場合、さらなる長期生存や治癒をねらって行われる手術のこと。

解説医師プロフィール

前立腺がんの治療

迅速かつ丁寧な検査で適切な診断・治療を目指す

前立腺がんの特徴としては、高齢の方に多いこと、発症初期の自覚症状がほとんどないこと、進行が比較的ゆっくりであることの3点が挙げられ、早期に発見して適切な治療を行えば根治が期待できるがんといえます。前立腺がんは2015年以降、男性における部位別がん罹患数の第1位となっており非常に増えています。その理由として考えられるのが社会全体の高齢化と食生活の欧米化です。そのほか、PSA検査(血液検査)の普及や前立腺がんそのものの認知度の上昇も前立腺がんが見つかりやすくなった要因だと考えられます。

迅速かつ丁寧な検査で適切な診断・治療を目指す

スクリーニング検査*には血液検査(PSA検査)が用いられます。PSA(前立腺特異抗原)とは前立腺で生成される特殊なタンパク質で、前立腺にがんができると上昇することが多いため、基準値を超えている場合は前立腺がんを疑います。またPSAが基準値以下でも直腸診(肛門から人差し指を挿入して前立腺の性状を確認する検査)で前立腺に硬い部分がある場合はがんを疑います。
診断を確定するためには精密検査(前立腺針生検)が必要であり、近年では生検の前にMRI検査を行うことが一般的になっています(MRI検査を生検後に行う場合は6週間以上空けなければ適切な評価ができないため)。当院でも可能な限り時間のロスを減らし、速やかに診断から治療ができる体制を敷いています。

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一定の集団の中から、病気などの疑いがある人をふるい分ける検査。

幅広い治療選択肢で患者さんに寄り添った前立腺がん治療を提供

早期の前立腺がんの治療では、根治療法として手術と放射線治療が大きな柱となります。当院ではロボット支援手術や放射線治療の1つである小線源療法など、複数の治療法が提案可能です。
2023年12月から手術支援ロボット・hinotoriTMを用いたロボット支援前立腺全摘除術(RARP)を開始しております。従来の腹腔鏡下手術では鉗子の動きが直線的となるため制限があり、特に骨盤内での深い位置での手術操作が難しいことが課題でしたが、ロボット支援手術では三次元モニターによる精細な画像情報と手振れ補正のある多関節鉗子があるため、より複雑で細やかな手術手技が可能となりました。
小線源療法は、“シード”を前立腺内に挿入し、体の内部から前立腺がんを治療する方法です。シードは長さ約5mm、直径1mmのカプセル状で、その中に密閉されたヨウ素(I-125)から放出される放射線によってがんを治療します。1個のシードから放出されるエネルギーは非常に弱いですが、前立腺内に50~100個挿入することで前立腺に十分な放射線を当てつつ、ほかの臓器への影響を最小限に抑えられるのがこの治療のメリットです。また、強度変調放射線治療(IMRT)にも対応しており、体への負担に配慮した放射線治療を行っています。

幅広い治療選択肢で患者さんに寄り添った前立腺がん治療を提供

がんの疑いを指摘された方や診断された方は、さまざまな不安を抱えておられると思います。当院では前立腺がん疑いの段階にある方から転移のある患者さんまで広く受け入れておりますので、お一人で悩まずに、ぜひご相談に来ていただければと思います。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2025年4月1日
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