各分野の専門医が議論を重ね、よりよい治療を追求する
埼玉石心会病院 低侵襲脳神経センター

脳の病気を包括的に診る診療体制を構築
低侵襲脳神経センターの使命は、地域の皆さんの脳の健康を包括的に守ることです。脳ドックで指摘された微細な異常や、診断のついていない頭痛・めまいといった不安の段階から、高度な技術を要する難易度の高い治療まで、悪性腫瘍以外のあらゆる脳疾患の検査・治療を当センターでは扱っています。「気のせいかもしれない」と思うような些細な症状であっても全く構いませんので、脳の症状や病気について気になることがあれば、どうぞお気軽に当センターへご相談ください。
頭の検査と聞くと、どうしても「痛そう」「大変そう」といったイメージが先行し、受診の足が遠のいてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、最初からリスクや苦痛を伴う検査を強いることはありませんのでご安心いただければと思います。まずは負担の少ない検査から始め、より詳細な検査が必要な場合は患者さんやご家族への丁寧なご説明と同意の下で精密検査へと進めていきます。患者さんと対話をしながら、一人ひとりに適した一歩を共に決めていくのが当センターの方針です。

専門家同士で議論し、一人ひとりに適した治療を追求
当センターには、脳神経治療の柱である開頭手術、脳血管内治療(カテーテル治療)、神経内視鏡手術の各治療に精通した医師が在籍しています。各分野の学会が認定した専門医、指導医、技術認定医の資格*を持つ医師が真剣な議論を重ねながら、一人ひとりの患者さんに適した治療法を検討していることが当院の最大の強みだと考えています。「どの治療を選択することが確実性・安全性高く治すことができるのか」を第一に考え、専門家同士が意見を出し合い客観的な評価によって治療を進めています。また、複数の治療を組み合わせることが望ましい症例においては、密に連携を取り、お互いの知恵と技術を出し合いながら治療にあたっています。
日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医・指導医、日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医・指導医、日本神経内視鏡学会 技術認定医・日本脳卒中の外科学会 技術認定医

身近な相談窓口として――気になる症状があれば気軽に受診をしてほしい
私たちは「患者さんを本来の人生にお返しする」という目的に向けて診療にあたっています。
病気が重いか軽いか、あるいは診断がついているかどうかは、患者さんの抱える不安の大きさとは関係ありません。患者さん一人ひとりが不安や苦しみから解放され、笑顔で本来の健やかな日常を取り戻せるよう、あらゆる手段を尽くしてお手伝いいたします。「こんなことで受診してよいのかな」と思わず、気軽に受診していただきたいと思います。
また、地域の開業医の先生方との連携も欠かせません。先生方の「少し気になる」という直感を大切にし、ご紹介いただいた患者さんには誠実に対応し、適切な治療や経過観察の結果を丁寧にお返しいたします。これからも地域の皆さんに信頼されるセンターとして技術を磨き、寄り添う心を大切にしてまいります。

埼玉石心会病院 低侵襲脳神経センターにおける
脳動脈瘤の治療
脳動脈瘤とは
くも膜下出血を起こすリスクがある病気――脳動脈瘤の特徴から破裂リスクを見極める
脳動脈瘤とは、脳に血液を送る血管(脳動脈)に生じる瘤状の膨らみのことです。瘤が破裂する前の状態を“未破裂脳動脈瘤”、破裂した状態を“破裂脳動脈瘤”と呼びます。脳動脈瘤は約2~6%の方に見つかるといわれており、決して珍しい病気ではありません。未破裂のまま一生を終えるケースも多いですが、一度破裂してしまうと、ほとんど前兆がないまま突然“くも膜下出血”を引き起こします。

イラスト:PIXTA 加工:メディカルノート
くも膜下出血は命に関わるだけでなく、重い後遺症を残す可能性も高い病気です。未破裂脳動脈瘤は瘤が大きくなるほど破裂率が高まるとされていますが、脳動脈瘤の場所や形によっても破裂する可能性は大きく左右されるため、個別に詳細な検討を行う必要があります。
早期発見には脳ドックを――他院で指摘された異常などさまざまな相談に対応
脳動脈瘤は一般的な健康診断やCT検査で見つけることは難しく、発見にはMRI検査、特にMRA検査(MRIの技術を用いて脳の血管を立体的に画像化する検査)が必要です。頭痛やめまいなどの症状でMRI・MRA検査を受けた際に偶然見つかるケースがありますが、無症状の場合は保険診療で検査を受けられないため、自費(数万円程度)の脳ドックを受けることが推奨されます。特にご両親やご兄弟などにくも膜下出血や脳動脈瘤を患った方がいる場合は、お近くの医療機関で脳ドックを受けていただくことをおすすめします。なお、脳動脈瘤の破裂は比較的若い世代と高齢の世代という2つの年代でピークを迎える特性があります。そのため、私個人の考えとしては、30代後半~40代半ばにかけて一度受診し、その後10年ごとに定期的にチェックを受けることが安心につながると考えています。
また当院では、他院で脳ドックを受けて異常を指摘されたものの、その先どうするべきか分からずにお困りの方のご相談をお受けしています。検査データをお持ちいただければ、専門の医師が内容を精査し、すぐに治療が必要なのか、あるいは慎重な経過観察でよいのかを丁寧にご説明いたします。内科・外科双方の知識や経験を持つ医師も複数在籍していますので、患者さん一人ひとりの人生やご希望に寄り添った治療を共に考えてまいります。
未破裂脳動脈瘤について
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脳動脈瘤の治療選択・治療方針“生涯破裂率”の算出に基づき、個々のリスクに応じた診療を提供
脳動脈瘤は薬で治すことができず、根治的な治療としては“開頭クリッピング術”もしくは“脳血管内治療(カテーテル治療)”を行う必要があります。開頭クリッピング術は、頭を開いて顕微鏡で見ながら瘤の根元をクリップ(極小の洗濯ばさみ状の器具)でつぶす手術です。一方、脳血管内治療は足の付け根などからカテーテルという細い管を入れ、瘤の中にコイルを詰める(コイル塞栓術)などして破裂を防ぐことを目的に行う治療です。

ただし、脳動脈瘤が見つかったからといって必ず治療を行わなければならないわけではありません。脳動脈瘤は絶対に破裂するものではなく、また治療には一定の合併症リスクが伴うため、患者さんによっては定期的なMRI検査による経過観察が適しているケースもあります。 “将来破裂する可能性”が、“治療により合併症が生じる可能性”を上回る場合には治療を提案し、逆の場合には経過観察を推奨しています。
治療方針について患者さんとお話しする際、私自身が大切にしているのは、統計学的な数値を誤魔化すことなく正しくお伝えすることです。日本人における脳動脈瘤の年間破裂率は約1%といわれていますが、実際は患者さんごとにまったく異なります。そのため当院では、患者さんの年齢や性別、既往歴、瘤の場所・形・大きさなどを踏まえた、その方の“生涯破裂率”を算出して提示しています。数値を具体化することで、患者さんご自身が今後の人生設計と照らし合わせ、自分自身で納得した結論を出すことにつながると考えています。
患者さんの人生に寄り添ったフルオーダーメイドの治療を実践

当院では担当医1人の独断で治療方針を決めることはありません。開頭手術を行う専門医と脳血管内治療を行う専門医*が一緒になり、患者さんの状態や瘤の形状、大きさなどに応じて、フルオーダーメイドで治療法を選択しています。そのうえで、患者さんの不安や疑問、希望にしっかりと耳を傾け、最終的にどの治療法を選択するかを相談します。脳動脈瘤は「絶対に破裂しない」とも「手術が必ず成功する(合併症が絶対に起こらない)」とも言い切れない不確定要素の多い病気です。だからこそ当院では、患者さんとしっかりとコミュニケーションを図り、一人ひとりの人生に寄り添った選択をすることを何よりも大切にしています。
日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医

ご自身に合ったオーダーメイドの治療を受けるためには、1人の名医を探すこと以上に、「開頭手術と脳血管内治療、両方の専門医が在籍している病院」を選ぶことが非常に重要なポイントになります。また、一定以上の治療実績があることはもちろんですが、術後の通院や万が一の事態を考慮し、「ご自宅から無理なく通える距離にあるか」という点も、長く安心してお付き合いしていくうえで欠かせない要素です。ご自身の病院選びの際、ぜひこうした視点を1つの基準にしていただければと思います。
治療選択について
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脳動脈瘤の治療
開頭手術と脳血管内治療、どちらも低侵襲での治療を提供

当院での脳動脈瘤の治療に伴う入院期間は、開頭クリッピング術でも脳血管内治療でも基本的には1週間ほどです。開頭手術であっても脳血管内治療と同様の入院期間で済むのは、開頭手術における低侵襲治療(体に負担が少ない治療)が実現できているためです。開頭範囲や傷口を極力小さく抑える技術を持った医師が複数いるため、脳血管内治療と同様に早期の社会復帰が可能です。どちらの手法も低侵襲であることを前提にできるからこそ、「切るか切らないか」という選択肢に縛られることなく、「その患者さんの脳動脈瘤を治すために、どちらがより安全性と確実性が高いか」という高次元でのディスカッションを行ったうえでの治療が実現できています。
なお、治療後は痛みや筋力の衰えなど、日常生活に戻るための力が十分に回復していないことがあります。患者さんの体を第一に考え、合併症の有無はもちろん、退院後に生活する力がしっかりと戻っていることを確認してから退院いただくようにしています。
新技術を積極的に導入するとともに、基本技術を次世代に継承していく

脳血管内治療においてはフローダイバーター治療やWEB (Woven Endo Bridge)治療といった新しい治療が登場しており、当院でもこれらの治療を積極的に行っています。ただし、どれほど華やかな新技術が登場しても、その土台となるのはコイル塞栓術のような従来から積み上げられてきた基本技術です。コイル塞栓術がしっかりとできなければ患者さんを救えない場面が必ずありますし、これができてこそ新しい技術も高い安全性で使いこなすことができます。基本技術を磨き続け、若い世代へ正しく受け継いでいく“技術の継承”ができている病院こそが脳血管内治療を担うべき病院であると考えており、当院はそれが実現できていると自負しています。
難易度の高い症例にも対応する技術を備える
開頭手術においては、複雑な手技を要する開頭クリッピング術を行える医師が複数在籍していることが大きな強みです。巨大な動脈瘤や血管の走行が複雑な場合には、血流を別の血管から確保するバイパス術を併用するケースもあり、こうした手術にも対応できる技量と経験を持った医師もいます。

さらに、再発瘤(一度治療をした後に再発した脳動脈瘤)においては、バイパス術とフローダイバーター治療を組み合わせるなど、外科手術と脳血管内治療の双方に高度な技術が求められるケースがあります。こうした症例に対しても、脳神経外科専門医と脳血管内治療専門医*が密にコミュニケーションを図りながら治療にあたっています。
また当院には、過去に他院で治療し十数年ほど経ってから脳ドックなどで再発瘤が見つかり受診される患者さんもいらっしゃいます。こうしたケースでは、過去に受けた治療の詳細が不明な場合もありますが、当院では現在の画像所見を徹底的に精査することで過去の治療状況を読み解き、その方に適した治療方針を組み立てます。情報がないからといって患者さんを見捨てるようなことは決してありません。どうぞ安心して頼っていただければと思います。
日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医
患者さんの人生に寄り添った治療を行うために、チーム一丸で治療にあたる

写真:PIXTA
脳動脈瘤の治療には、どれほど技術が進歩しても、わずかながら合併症のリスクが伴います。仮に合併症の発生率が1%だった場合、医学的には良好な治療成績といえますが、その1%に該当した患者さんやご家族にしてみれば100%なわけですから、当然これを無視するわけにはいきません。医療である以上、合併症を100%防ぐことは難しい側面があるものの、それでも私たちが目指すのは“合併症ゼロ”であり、その目標を達成するための努力は一切惜しみません。術中に起こり得るあらゆるリスクを事前に想定し、徹底したシミュレーションを繰り返したうえで手術に臨みます。もし治療の過程で予測されるリスクが治療のメリットを上回ると判断した場合には、無理な治療をすることは決してありません。常に患者さんの安全を最優先に考えて治療を行います。
当院では、医師だけでなく、看護師、放射線技師、臨床工学技士など、脳動脈瘤治療に関わる全てのスタッフが「患者さんを本来の人生にお返ししたい」という共通の思いを持っています。患者さんの人生に寄り添った治療を選択し、安全性と確実性を目指した治療を提供するためにチーム全体で努力を続けています。

脳疾患の治療後を支える診療体制
エビデンスに基づいた定期的なフォローアップと地域連携体制

写真:PIXTA
当院では、脳動脈瘤など脳疾患の治療を終えた後の生活を不安なく過ごしていただくために、術後の状態に応じたきめ細やかな診療体制を構築しています。たとえば、未破裂脳動脈瘤など症状が起こる前の予防的な治療を行った場合には、治療後に思わぬ合併症が起こっていないか、再発はしていないかなどを確認する目的でフォローアップを行います。当院では、病気ごとの再発リスクなどのエビデンス(科学的根拠)に基づき、画像検査の頻度やフォローアップの期間を細かく定めています。そのうえで、患者さんが外来受診日を忘れてしまうことがないよう、予約日が近づいた際には当院からご案内を差し上げ、漏れのない管理を継続しています。
また、日常的なお薬の管理などは、患者さんが通い慣れている地域のかかりつけ医の先生にお願いしています。脳の専門的な検査は当院が担当し、全身の健康管理は患者さんをトータルで診てくださる地域の先生にお願いすることで、患者さんを多角的に支える体制を整えています。
院内・院外問わず安心してリハビリを受けられる体制を整える

一方で、くも膜下出血や脳梗塞などで患者さんに何らかの症状がある場合には、日常生活への復帰を目指したリハビリテーションが非常に重要です。当院は、急性期の治療後に集中的なリハビリを行うことで日常生活に必要な動作の獲得などを目指す“回復期リハビリテーション病棟”を併設しており、高い専門性を持つスタッフによる手厚いサポートが可能です。さらに、埼玉西部圏域内の回復期リハビリテーション病棟を有する病院と連携体制を構築していますので、何らかの事情で当院でのリハビリが難しい場合には各病院へのご紹介が可能です。私自身が各病院へ自ら足を運び、現場の先生方と信頼関係を築いてきました。それぞれの病院の体制を深く理解したうえでご紹介しておりますので、院外へ移行される際も一貫した方針の下で安心してリハビリを継続していただけると思います。
また、未破裂脳動脈瘤の手術などで万が一予期せぬ合併症が生じた場合は、私たちはその責任を真摯に受け止め、当院のリハビリ科の医師と共にその後の人生設計を立て直すまで全力を尽くします。どのような状況であっても患者さんに寄り添い、共に歩んでいくことが私たちの信念です。
脳に関わるお悩みがあればどのようなことでもご相談ください。皆さんのこれからの歩みを支えるために、私たちは誠実に向き合い続けます。

- 公開日:2026年8月1日