札幌市の医療

心血管疾患が増加すると推測される

写真:PIXTA

心血管疾患が
増加すると推測される札幌市

国内の人口が徐々に減少しつつあるなか、札幌市全体の人口は約197万人(2024年5月1日時点)と増加し続けています。高齢化率も全国平均と大差がないため、心筋梗塞しんきんこうそくの患者数も増加も増加すると推測されています。現在、札幌市内の救急医療体制は成熟しており、市内の病院が当番制で救急搬送を受け入れる仕組みが構築されています。医学の発展・医療技術の進歩とともに予防できる病気も少しずつ増えており、今後さらに心臓・血管の病気を未然に防ぐ取り組みの活発化が期待されます。

札幌市の医療を支える
札幌孝仁会記念病院

地域の方々にとって“なくてはならない病院”であり続ける

地域の方々にとって
“なくてはならない病院”であり続ける

当院は、脳卒中、心臓病、がんの三大疾病に加え、運動器(整形外科領域)の病気に対する医療を広くカバーしつつ、予防医療や健診事業、24時間365日の救急体制を整えています。特に医療技術の発展とともに進化している心身への負担が少ない治療、たとえば脳の病気に対しては鍵穴手術やカテーテル治療、心臓の病気に対してはTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)やMICS(低侵襲心臓手術ていしんしゅうしんぞうしゅじゅつ)などに積極的に取り組んでいます。心血管疾患と脳卒中は“循環器病”と呼ばれ関連性が深く、さらに迅速な診断と治療を要する場面が多くあります。心臓血管外科と循環器内科、脳神経外科の協働体制を整えていますので、安心して治療を受けていただければと思います。

院長プロフィール

札幌孝仁会記念病院の
狭心症・不整脈・心臓弁膜症の治療
狭心症・不整脈・
心臓弁膜症の治療

狭心症の治療

胸の苦しさを感じた場合は早めに受診を

胸の苦しさを感じた場合は早めに受診を

写真:PIXTA

狭心症とは、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈という血管が何らかの原因で狭くなり、心臓の筋肉に十分な血液が行き渡らなくなる病気です。それにより胸苦しさ(胸部に起こる痛みや圧迫感)の症状が現れます。狭心症は2種類に大別されます。いずれも冠動脈(心臓自体に血液を送っている血管)の血流不足を起こす病気ですが、1つは動脈硬化が原因で起こる“労作性狭心症”、もう1つは冠動脈がけいれんして起こる“冠攣縮性狭心症”で、症状が起こるタイミングが異なります。労作性狭心症は体を動かしているときに、冠攣縮性狭心症は安静時、特に夜中から早朝にかけて症状が現れることが多いのが特徴です。いずれにせよ胸部に違和感がある場合は、早めに循環器内科を受診いただくことをおすすめします。
なお、心臓病の早期発見のためには、普段からかかりつけ医をもつことも重要です。症状を自覚して、自ら適切な診療科を受診することは、なかなか難しいことだと思います。そのため、普段から気軽に体調の相談ができるかかりつけの先生を見つけていただき、何かあった場合にはすぐに適切な医療機関に紹介してもらえるようにしておくのがよいでしょう。

内科・外科の知見を備え、患者さんの治療選択を支える

内科・外科の知見を備え、患者さんの治療選択を支える

写真:PIXTA

狭心症の治療には、薬物療法、カテーテル治療(脚の付け根や手首の血管から医療用の細いチューブを挿入し、冠動脈の狭くなった部分を治療する方法)、外科手術の3つの選択肢があります。当院の強みは、循環器内科と心臓血管外科が常に協働し、これらすべての選択肢の中から将来を見据えてよりよい治療をご提案できることです。短期的な成績はもちろん、長期的な成績も加味して治療法を検討するには、双方の診療科の高い専門性が求められます。当院では内科医・外科医のどちらも常に研鑽を積んでおり、日本で可能とされるほぼすべての心血管疾患の手術に対応できる体制を構築しています。患者さんの年齢や病気の状態はもちろんですが、その方がどこにお住まいで、ご家族のサポートをどのくらい受けられるか、治療後にどのような生活を送りたいのかなど、一人ひとりのバックグラウンドを考慮したうえで、偏りなく、よりよい治療を丁寧に考えます。当然ながら、治療選択に迷われる患者さんもいらっしゃいます。私自身は医師としての知見を踏まえ、さらに「自分の両親だったら」「自分だったら」どうするのかを深く考えるよう心がけています。診察の場になると内容を忘れてしまったり遠慮して質問できなかったりすることもあるかもしれません。そのような方は、ぜひ質問を2~3個メモに書いて持参いただくとよいでしょう。気になることや不安なことがあれば、遠慮なくご相談ください。

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上記内容は2024年8月時点の情報です。

解説医師プロフィール

不整脈の治療

不整脈外来で専門の医師が一貫して診療

不整脈外来で専門の医師が一貫して診療

不整脈は心臓を動かす電気の流れが異常を起こし、心臓の動きが速くなったり、遅くなったり、不規則になったりする病気です。症状は多彩ですが、特に突然始まり突然止まるような動悸には注意が必要です。動悸に加えて胸痛やめまいを伴うものは早急に検査を行って治療を始める必要があります。また、息切れやむくみが悪化している方も心臓に負担がかかっている心配がありますので早めの検査をおすすめします。
上記の症状があり不整脈が心配な方は、かかりつけの主治医の先生にまずご相談ください。当院をご紹介していただければ責任をもって対応させていただきます。またかかりつけ医がいらっしゃらない場合や健康診断で不整脈を指摘され当院の受診を希望されるときには、一度当院へお電話でご連絡ください。当院は不整脈外来(週4日・予約制)を開設しており、日本不整脈心電学会認定の不整脈専門医が2名在籍し、診療にあたっています(2024年6月時点)。専門の医師が診断から治療、その後の経過観察まで一貫して担当しますので、安心して治療を受けていただけます。また24時間365日の救急体制を取っており、急な不整脈の出現時にも対応していますので、ご安心いただければと思います。

必要性を判断し、患者さんに適した治療を提供

必要性を判断し、患者さんに適した治療を提供

当院にお越しいただいたら、まずは専門的な視点で治療の必要性を判断することからはじめます。治療が必要と判断したら症状や心臓の状態に合わせて方針を決定し、薬を使った治療、カテーテルアブレーションと呼ばれる治療、またはその両方を行います。カテーテルアブレーションは、不整脈の原因となる異常な電気の流れを改善するため、心臓の筋肉を焼灼する方法です。医療用の細いチューブを脚の付け根などから挿入して行います。不整脈を根治できる可能性があり、薬よりも症状の改善効果が高いことがメリットです。当院は年間200例以上のカテーテル治療を行なっておりますが(2022年1〜12月実績)、合併症の可能性に十分配慮し、心臓血管外科・脳神経外科とも連携を図りながら安全な治療に努めています。
また当院はペースメーカー治療、植込み型除細動器による治療、心臓再同期療法などさまざまな治療に対応可能です。心臓・血管の治療を長年手がける医師たちが、それぞれの患者さんに合った治療をトータルマネジメントします。チーム一丸となって対応しますので、お困りのことがあればどのようなことでもご相談ください。

解説医師プロフィール

心臓弁膜症のカテーテル治療

歳のせいと思わず、専門の医師に相談してほしい

歳のせいと思わず、専門の医師に相談してほしい

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心臓弁膜症は心臓の弁がうまく開かない“狭窄症きょうさくしょう”と、うまく閉じない“閉鎖不全症”があります。心臓には4つの弁があるので、全8種類の心臓弁膜症があることになります。共通するのは、ある程度進行するまで自覚症状がない方が多いという点です。さらには重症化しても自覚症状がない場合もあります。症状としては息切れや動悸などが挙げられますが、以前は問題なくできていたことができなくなった場合は注意が必要です。たとえば以前は休みなく10分の散歩ができたのに途中で2〜3回休まなくてはいけなくなった、同じ量の家事をこなすのに大幅に時間が延びたなどです。健康診断で異常を指摘されたり、かかりつけ医で精密検査をすすめられたりしたら、症状がないからと安心せず、必ず専門の病院を受診していただきたいと思います。高齢の方は「歳のせい」と感じられるかもしれませんが、病気が隠れている可能性もありますし、その場合は治療をすることで改善が期待できます。

治療選択から早期の社会復帰まで、全力でサポート

治療選択から早期の社会復帰まで、全力でサポート

心臓弁膜症の治療は薬物治療のほか、手術やカテーテル治療(胸を切開せずに行う内科的な治療)を検討しながら根治を目指します。当院では心臓弁膜症に対する一通りのカテーテル治療を保険適用の範囲で提供することが可能です。カテーテル治療は小さな傷で済むため体への負担が少なく、体力が低下している高齢の方や併存疾患のある方に適応がある点がメリットです。当院は幅広い選択肢を持ちつつ心臓血管外科医と循環器内科医がカンファレンスで議論を重ねて、個々の患者さんにとってどの治療法がよりよいかを見極めています。また、治療後の心臓リハビリテーションにも力を入れており、早期の社会復帰を多職種でサポートしています。
“心臓の治療”と聞くと不安を感じる方も多いでしょう。その不安は至極真っ当なことです。私たちは、まず治療のメリット・デメリットをきちんとお伝えし、患者さんが抱く不安や心配事を解消したうえで治療に臨んでいます。これまで心臓弁膜症によってご自身のやりたいことや快適な生活を諦めざるを得なかった方も、今は治療することで改善する可能性がありますので、どうか希望を捨てないでいただきたいです。患者さんが治療に前向きになり、生活を楽しく送れるよう全力でサポートしますので、どうか安心してご相談ください。

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上記内容は2024年8月時点の情報です。

解説医師プロフィール

心臓弁膜症のロボット手術

ロボット心臓手術とは――心臓弁膜症の新たな治療選択肢

心臓弁膜症の手術には、開胸手術と、近年普及している低侵襲(体への負担が少ない)手術があります。開胸手術は胸骨を切る必要があることから術後は3か月程度の運動制限が必要ですが、低侵襲手術は肋骨ろっこつの間を切開するのみで済むため回復が早いのが特長です。低侵襲心臓手術のことを総じてMICSミックスと呼びますが、近年ではMICSの1つの手法としてロボット心臓手術が登場し、当院でも積極的に活用を開始しています。

ロボット心臓手術とは――心臓弁膜症の新たな治療選択肢

MICSは、胸腔鏡(細い棒状の医療器具)を用いて、3~5cm程度の小さな切開で手術を行う方法です。そして、このMICSに手術支援ロボットの使用を組み合わせたのが、ロボット心臓手術です。ロボット心臓手術は医師がコックピットのような操作席に座り、3Dカメラで映し出された立体画像を見ながらロボットアームを遠隔操作して手術を行います。ロボットアームは従来のMICS鉗子以上の自由度を持ち、細かな動きやぶれのない精密な操作が可能です。

ロボット心臓手術とは――心臓弁膜症の新たな治療選択肢

心臓のロボット手術を施行するには日本ロボット心臓手術関連学会協議会の定める基準(従来のMICS手術を高いレベルで施行できていることなど)を満たす必要があり、実施できる医療機関が限られますが、当院では2025年1月より心臓に対するロボット手術を再開しました。心臓弁膜症の治療においては、主に僧帽弁閉鎖不全症の患者さんを対象とした、僧帽弁形成術*に活用しています。ロボット心臓手術の最大のメリットは、小さな創からでも、従来のMICSでは施行不可能であったような手術操作が可能になることです。入院期間は最短で5日、術後の運動制限はありません。

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僧帽弁形成術:患者さん自身の弁を修復して心機能の回復を図る手術。

緊密な連携により、患者さんに適切な心臓治療を提供する

当院では循環器内科と心臓血管外科が常に密な連携を図っています。また外科医同士も患者さんに適した手術方法を常に議論しています。内科的な治療と外科的な治療の両方の視点から、患者さんにとって適切な治療は何かを公平に検討し、外科的な治療となった場合にロボット心臓手術、従来のMICS、従来の開胸手術のメリット・デメリットを患者さん個々の状態に合わせて検討しご提案しています。現在当院では日本で施行できる心臓手術のほぼすべてを施行できる状態ですが、まれな病気でより専門的な治療経験を持つ医師の力が必要となる場合は、当院に招いて手術を行っていただくこともあります。当院での治療が適切な選択肢ではないと判断した場合は、よりよい治療が受けられる病院を積極的にご紹介し、セカンドオピニオンも推奨しています。私たちの目標は、当院で治療を完結させることではなく、患者さんにとって適切な医療を提供することにあります。リハビリテーションの期間についても、患者さんの仕事や生活スタイルに合わせて、「早く仕事に復帰したい」「もう少しゆっくりリハビリを続けたい」といったご希望を伺いながら計画を立てていきます。

緊密な連携により、患者さんに適切な心臓治療を提供する

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手術は誰しも避けたいものでしょう。特に心臓の手術というと大がかりで大変な手術というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、低侵襲手術の進歩により、体へのダメージは格段に少なくなり、術後早期から治療前以上に生き生きとした人生を送っていただけることが多くなりました。ただし、その恩恵を受けるには、やはり早期発見・早期治療が大切になりますから、胸の症状を感じた際には、なるべく早めに受診いただきたいと思います。何もなければ安心できると思いますし、もし病気が見つかったとしても早い段階であればさまざまな治療選択肢があります。もちろん、病期が進んでいても、低侵襲治療も含め心臓治療は十分可能なことが多いです。
数多くの病院、数多くの医師がいるなかで、この地域で1人の患者さんと出会い、心臓手術という大きなイベントを共に過ごしていただくことは、まさに一期一会だと感じます。私たちはこうした出会いを大切にし、皆さんに笑顔で人生を送っていただけるよう日々診療にあたっています。体、心臓に違和感を覚えた場合には、恐れずに一度ぜひ私たちと話しに来てください。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2024年8月22日
  • 最終更新日:2025年9月25日
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