札幌市の医療

写真:PIXTA
札幌市における脳卒中医療の
現状と脳ドックの重要性
札幌市では高齢化が進んでおり、これに伴い脳卒中の患者数が増加することが予想されます。脳卒中の主な原因は動脈硬化であり、動脈硬化は高血圧や糖尿病などにより発症します。脳卒中は命に関わる危険があるだけでなく、たとえ一命をとりとめたとしても後遺症が生活の質(QOL)を低下させる可能性があるため、早期の発見と適切な治療が極めて重要となります。
脳卒中の予防および早期発見のためには、生活習慣病の管理に加え、脳ドックの受診が有用です。脳ドックは、MRI/MRA検査などを行うことで、自覚症状がない段階での脳動脈瘤や脳梗塞を発見するのに役立ちます。北海道は、国内で初めて脳ドックが実施された歴史を持つ地域であり、脳ドックを行っている医療機関も比較的多くあります。引き続き各医療機関が連携し、質の高い医療を一体となって提供することで、札幌市の住民の方々が安心して医療を受けられる環境を築くことが求められるでしょう。
札幌市の脳疾患診療を支える
札幌孝仁会記念病院

地域に根差し、脳疾患の予防から
治療まで一貫してサポートする
当院は、脳の病気に対する医療を広くカバーしつつ救急体制を整備するほか、予防医療や健診事業にも注力しています。脳卒中は心血管疾患と併せて“循環器病”と呼ばれ、深い関連性があります。当院では脳神経外科・脳神経内科のみならず、循環器内科・心臓血管外科を備えており、強固な連携体制のもと日々の診療にあたっています。また、鍵穴手術*やカテーテル治療など体への負担が少ない治療にも積極的に取り組んでいることも特徴です。
鍵穴手術:頭蓋骨に小さな穴を開けて脳の手術をする方法。

いつまでも健やかに過ごすために――脳の病気は未病の段階で発見・治療を
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳の病気は突然起こることが多いものの、そのリスクとなる病気がある場合にはあらかじめ治療をすることで、重症の脳疾患の発症を予防できる可能性があります。当院では脳疾患の患者さんを少しでも減らすべく、脳ドック*を実施しています。脳ドックA・Bにはそれぞれ頭部MRI/MRA検査や頸動脈エコー検査が含まれていますので、これらの検査をとおして脳や首の血管の健康状態を確認可能です。MRIは磁場強度の高い3T(テスラ)の装置を導入し、より診断精度を高められるよう努めています。40歳以上の方でまだ脳ドックを受けたことがないという方は、ぜひ一度受診いただくことをおすすめします。検査の結果、もし治療が必要になった場合でも、当院では適切かつ迅速な治療介入がかなえられる環境を整えておりますので、どうぞ安心して受診ください。
費用は全額自己負担になります。脳ドックA:50,600円(税込)、脳ドックB:41,800円(税込)。人工内耳の方、ペースメーカの方、妊娠中の方(可能性がある方)、閉所恐怖症の方は脳ドックを受けていただけません。また、インプラント治療をされた方は予約時にご相談ください。

札幌孝仁会記念病院の
脳卒中・脳動脈瘤・脳梗塞・
頸動脈狭窄症の治療
脳卒中の治療
救急搬送の受け入れと脳卒中の予防的治療に尽力
脳卒中の患者さんは救急搬送されてくるケースが多いですが、手足のしびれやめまいなどの症状を訴えて外来を受診される方もいらっしゃいます。そのほか突然の頭痛、舌のもつれ、言葉が出づらい、顔の半分が動かないなどの症状が起こり得ますので、ご本人でもご家族でも、異変に気付いたら一刻も早く救急車を呼んでください。当院は24時間365日救急搬送を受け入れる体制をとっており、脳梗塞の中でも特に重症化しやすい心原性脳塞栓症に関しては超急性期の治療として有効とされている“血管内機械的血栓回収療法”を行える医師が常駐しています(2025年9月時点)。また、くも膜下出血や脳出血に対しては迅速に外科的治療に移行できる体制を整えております。
脳梗塞について、より詳しい情報はこちらの項でご紹介しています。

頭痛やめまいなどの症状や脳ドックなどをきっかけに未破裂脳動脈瘤(破れていない脳動脈瘤)が発見された場合は、低侵襲な鍵穴手術とカテーテルを用いた治療を検討します。脳動脈瘤が破裂すると“くも膜下出血”が起こり、命に関わる場合も少なくありません。もし未破裂脳動脈瘤が発見されたら治療を検討してください。特に両親や兄弟に脳動脈瘤やくも膜下出血の既往歴がある方は、一度検査を受けていただくことをおすすめします。
脳動脈瘤について、より詳しい情報はこちらの項で紹介しています。
退院後の生活や経済面の不安もサポート
脳卒中を発症すると、後遺症によってうまく話せなかったり、症状や体の状態を思うように表現できなかったりする場合も少なくありません。そのため私は患者さんの様子を丹念に観察してその方の目線に立ち、伝えようとしていることをしっかりと受け止められるよう心がけています。ご家族には脳卒中の後遺症などの正しい知識を持っていただくことが非常に重要ですので、丁寧に説明をしています。退院後の生活や療養については、入退院支援センターでメディカルソーシャルワーカーが相談をお受けしています。“脳卒中相談窓口”でも経済的な不安や介護・福祉サービスのことなど、さまざまな相談を無料で受け付けていますので、ぜひご利用ください(対象は、当院に入院中、または入院歴のある患者さんとそのご家族となります)。

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脳卒中は迅速に正しい治療を行えば、予後を改善できる可能性が十分あります。前述したような症状があれば、できるだけ早く病院にかかりましょう。また、札幌では脳の病気に関して意識の高い方が多く、一定の年齢の方ならば企業の定期健康診断でオプションの脳ドックを付けられる場合もあります。もちろん当院でも脳ドックを受けられますので、ぜひご相談ください(検査は全額自己負担となります)。
脳ドックの費用など詳しい情報は、こちらの項で紹介しています。

脳動脈瘤の治療
「自分は大丈夫」「このくらいで」と思わず、積極的に脳の検査を
脳の血管にできる“こぶ”のようなものが脳動脈瘤です。この動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血という命に関わる重篤な病気を引き起こします。いったんくも膜下出血を発症すると、約3割の方は社会復帰が可能となりますが、約4割の方は亡くなり、残りの約3割の方には重大な後遺症が残るとされる病気ですので、症状が現れる前に発見し、治療を行うことが非常に重要です。
とはいえ、脳動脈瘤は破裂するまで基本的に自覚症状がありません。未破裂の時点で発見するには脳ドックなどで定期的に脳の状態を確認することが有用です。

脳動脈瘤と、くも膜下出血(右イラスト:PIXTA、加工:メディカルノート)
脳ドックではMRIを使用し、脳の血管にこぶがないか、また脳梗塞や脳出血の痕跡がないかなどを詳細に調べることができます。なお、頭痛やめまいなど何らかの症状がある場合は、放置せずに医療機関を受診することが病気の早期発見と予防につながります。「このくらいで」「いつものこと」などと思わず、受診してしっかりと診察・検査を受けるようにしましょう。
検査の結果、未破裂脳動脈瘤が見つかった場合には、こぶの大きさや形、位置などを総合的に判断し、適切な治療方針を決定します。
脳ドックの費用など詳しい情報は、こちらの項でご紹介しています。
幅広い治療選択肢を備え、少ない負担で確実な脳動脈瘤治療を目指す
未破裂脳動脈瘤の治療には、主に外科的手術(クリッピング術)と、血管内治療(コイル塞栓術など)の2つがあり、当院では24時間365日どちらの治療にも対応できる体制を整えています。また、手術の方法については開頭手術はもちろん、体への負担を減らした“鍵穴手術”にも対応可能です。

鍵穴手術は、2~3cm程度の小さな切開から脳にアプローチする術式です。未破裂脳動脈瘤の場合は、この穴を通してクリッピング術(動脈瘤の根元を専用のクリップで挟んで血液が流れ込まないようにする治療)を行います。この鍵穴手術は、当法人で手術を行ってくださっていた故・福島 孝徳先生が考案された術式です。当院ではその意思を継ぎ、患者さんへの負担を減らしながらも、確実性高く破裂を防げる治療の提供に努めています。

左:入江 伸介先生、右:福島 孝徳先生
もう1つの治療法である血管内治療は、足の付け根などから細いカテーテルを挿入して動脈瘤へアプローチする方法です。開頭することなく治療ができるため、患者さんの身体的な負担を減らすことに役立ちます。血管内治療には複数の方法があり、これまではコイル塞栓術(動脈瘤の内部にコイルを詰めて血液を流れなくする方法)が主に行われていましたが、当院ではフローダイバーターという特殊なステントやウーブン・エンドブリッジというデバイスを用いた新しい血管内治療にも対応しています。
当院には、手術を得意とする医師、血管内治療を得意とする医師がそれぞれ在籍しており、各治療の利点を生かした総合的な診断と治療を提供しています。「動脈瘤がある」と指摘された場合は怖い気持ちが強くなってしまうと思いますが、患者さんとご家族が納得できるまで丁寧にご説明しますので、一緒に治療を進めていきましょう。
くも膜下出血は、さっきまで元気にしていた方が突然倒れるような病気です。特に血縁者にくも膜下出血になった方がいる場合はリスクが高いとされていますので、一度検査を受けていただくことを強くおすすめします。

脳梗塞の治療
“隠れ脳梗塞”の可能性も――動脈硬化や心房細動のある方は要注意
脳梗塞は、脳の血管が何らかの原因で詰まって、血液が行き届かなくなり、脳の細胞が壊死する病気です。代表的な症状として、手足の麻痺や、ろれつが回らない、言葉が出てこないなどがあります。もし、このような症状がご自身やご家族に突然現れた場合、様子は見ず、すぐに救急車を呼んでください。超急性期の治療には時間制限があるため、可能な限り早く治療を開始することが、その後の回復に大きく影響します。

イラスト:PIXTA、加工:メディカルノート
なお、自覚症状がなくても脳梗塞が起こっている可能性はあります(無症候性脳梗塞)。細い血管が詰まった場合には先述したような重篤な症状は現れないものの、脳卒中や認知症の発症リスクが高まるとされていますので注意が必要です。血管が詰まる前の段階で発見できれば、血液をサラサラにする薬の服用や、カテーテル治療など脳梗塞予防のための治療を受けていただけます。脳梗塞は心臓や血管の病気が原因で起こることが多いため、動脈硬化や不整脈(心房細動など)を指摘されている方は、脳ドックなどを活用し、定期的に血管の状態をチェックしていただきたいと思います。
脳ドックの費用など詳しい情報は、こちらの項でご紹介しています。
迅速な救命から丁寧なリハビリまで、患者さんの人生に寄り添う医療を提供する
脳梗塞の予防治療から超急性期の治療、治療後のリハビリテーションまで、適切な医療を一貫して提供できる体制が当院の強みです。
当院は24時間365日、いつでも救急搬送を受け入れられる体制を敷き、専門的な治療に対応しています。超急性期には、発症からの経過時間に応じて“アルテプラーゼ(rt-PA)静注療法”や“血栓回収療法”を行い、脳の閉塞を迅速に解消します。なお、適切な治療は血管が詰まっている場所や状態によっても異なります。当院では脳卒中治療を専門とする専門医・指導医*が複数おり、適切な治療を迅速に見極められる体制を構築しています。
日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医・指導医、日本脳神経血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医・指導医など。職員の配置状況については2025年9月時点。

また、脳梗塞は後遺症が残ることも珍しくありません。後遺症の改善にあたっては早期にリハビリを開始することが大切になりますので、当院では基本的に治療の翌日からリハビリを開始しています。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門職のスタッフが計60名以上**在籍しており、チーム一丸となって患者さんの状態に合わせた手厚いリハビリを提供しています。また、関連施設には回復期リハビリテーション病棟を備える病院もありますので、ご自宅に戻るまで切れ目のないサポートを行うことができます。
繰り返しになりますが、とにかく体調に違和感があれば早めにご来院ください。当院では循環器内科・心臓血管外科を備えており、脳梗塞の原因となり得る不整脈に対するアブレーション治療や左心耳閉鎖術などにも対応可能です。各科が横断的に連携しサポートいたしますので、些細なことでも遠慮なくご相談ください。
2025年9月時点

頸動脈狭窄症の治療
脳梗塞の引き金となる病気――定期的に首の血管の検査を
頸動脈狭窄症は、頸動脈(心臓から脳へ血液を送る太い血管)が動脈硬化によって狭窄する(狭くなる)病気です。狭窄が進むと、脳への血流が不足したり、はがれたプラーク*が血流に乗って脳の血管に詰まったりして脳梗塞を引き起こす可能性があるため、早期発見と適切な治療が大切になります。特に、狭心症など心臓の冠動脈が狭くなっている方の場合は、首の血管にも狭窄が起こっていることが多いため、定期的に首の検査も受けるようにしましょう。
頸動脈狭窄症は症状が現れないケースもありますが、症状が現れた場合には手足の麻痺やろれつが回らないなど脳梗塞と同じ症状が起こります。なお、これらの症状は短時間で改善することが多いのが特徴です。一過性脳虚血発作(TIA)といって数分~数時間の間に完全に回復しますが、脳梗塞の前兆ともいわれる症状ですので決して安心できません。当てはまる症状が現れた場合には、すぐに病院を受診してください。このほか、黒内障といって一時的に片方の目がまったく見えなくなる症状が現れることもあります。
プラーク:血管壁に蓄積する脂肪やコレステロールなどの塊
脳梗塞について、より詳しい情報はこちらの項でご紹介しています。

左イラスト:PIXTA 加工:メディカルノート 右:頸動脈の狭窄の様子
頸動脈狭窄症の検査は、頸動脈エコー検査が一般的です。首に超音波の機械を当てるのみですので痛みがなく、また短時間で血管の狭窄具合を評価できます。
治療については、狭窄が軽度であれば、抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)を服用し、血管が詰まるのを防ぎます。症状があり狭窄が50%を超える場合、もしくは症状がないものの狭窄が60~70%を超えるような場合は、脳梗塞のリスクが高まるため、血管を広げる手術やカテーテル治療を行います。
患者さんの年齢や血管の状態を考慮し、一人ひとりに適した治療を提供
先述したとおり、頸動脈に狭窄があり脳梗塞のリスクが高いと判断した場合は、血管の狭窄を解除する治療を行います。治療法は大きく分けて、頸動脈内膜剥離術(CEA)と呼ばれる手術と、頚動脈ステント留置術(CAS)というカテーテル治療の2つがあります。
頚動脈内膜剥離術は、首の付け根を切開して血管を開き、動脈硬化でできたプラークを直接取り除く方法です。もう一方の頚動脈ステント留置術は、足の付け根などからカテーテルを挿入し、血管の内側からステント(金網状の筒)を留置して血管を広げる方法です。

以前は手術のほうが脳梗塞の予防効果が高いとされていましたが、カテーテル治療の技術も進歩し、特に剥がれたプラークが脳の血管に詰まることを防ぐデバイスが確立されたことで、近年では両者の治療成績はほぼ同等であるという報告もあります。
当院では、どちらの治療にも対応できる環境を整えておりますので、患者さんの年齢や全身状態、血管の状態などを総合的に評価し、一人ひとりに適した治療をご提案可能です。
脳梗塞の発症を予防するためには、頸動脈狭窄症が重症化する前に治療を行うことが非常に重要です。動脈硬化は気付かないうちに進行しますので、健康診断などで動脈硬化を指摘された方や、過去に心臓の病気を経験された方、特に狭心症などの治療を受けたことがある方は、早めに受診のうえ一度血管の状態を詳しく調べていただくことをおすすめします。不安がある方は紹介状をお持ちのうえ、ぜひ当院へご相談にいらしてください。

- 公開日:2026年3月17日