ベルランド総合病院
脳神経外科

進歩する脳腫瘍の治療――個々に寄り添った診療を実践

進歩する脳腫瘍の治療――個々に寄り添った診療を実践

脳腫瘍のうしゅようとは頭蓋内に発生する腫瘍の総称で、大きく分けて脳そのものから発生する“原発性脳腫瘍”と、他の臓器のがんが転移して生じる“転移性脳腫瘍“があります。良性・悪性にかかわらず、腫瘍によって脳が圧迫されると、手足の麻痺や言語・視力障害など多様な神経症状が現れ、患者さんやご家族の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。しかし近年は診断技術や治療法が大きく進歩し、以前よりも長く通常の日常生活を維持できるケースが増えてきました。
最近の大きな変化として、MRIなど画像検査の普及により、症状が現れる前に偶然発見される“無症候性”の脳腫瘍が増加していることが挙げられます。また、患者さんの高齢化も進んでいますが、麻酔や術後管理の進歩により、70代や80代の方でも安全性に配慮して治療を受けていただける時代になりました。だからこそ、当院では単に腫瘍を摘出するだけでなく、患者さんの社会的背景やご家族のサポート体制、認知機能なども総合的に考慮し、お一人おひとりに適切な治療を提供できるよう努めています。

進歩する脳腫瘍の治療――個々に寄り添った診療を実践

写真:PIXTA

命だけでなく“その人らしさ”と
“日々の生活”を守る

脳は、会話を楽しみ、好きな場所へ出かけるなど、その人らしさを司る重要な臓器です。当院の脳神経外科では、命を守るだけでなく「患者さんの人生と生活を守る」ことを第一に考え、「安全性」と「機能の温存」を重視した治療を行っています。
治療にあたっては、術前の精密な画像診断に加え、リハビリスタッフによる詳細な運動機能・高次脳機能の評価を行い、患者さん個々の状態に適切なアプローチを検討します。また、麻酔科医や手術室、ICU(集中治療室)の看護スタッフなどとも密に連携し、手術の安全性向上と、細やかな術後管理に努めています。
さらに私たちが大切にしているのが、術後の生活までを見据えた伴走です。たとえ手術が成功しても、その後に身体機能が低下してしまっては本当の意味で患者さんのためとは言えません。そのため、術後の早い時期から無理のないリハビリを開始し、退院に向けてソーシャルワーカーとも連携しながら在宅療養の環境を整えるなど、患者さんが再び自分らしく生活できるよう包括的にサポートいたします。

進歩する脳腫瘍の治療――個々に寄り添った診療を実践

専門性を結集し、チーム一丸となって治療を支える

脳腫瘍のうしゅようの積極的な治療は、「手術」「放射線治療」「化学療法(抗がん薬を用いた治療)」の3本柱で成り立っており、当院ではこれらの治療を網羅的に提供できる体制を整えています。たとえば悪性脳腫瘍に対する化学療法が必要な際は、腫瘍内科と緊密に連携し、専門知識を持つ看護師がいる化学療法室で、安心して治療に臨んでいただけるようサポートしています。また、院内の放射線科による高精度放射線治療に加え、同一法人内にあるサイバーナイフ(病巣にピンポイントで放射線を当てる治療装置)導入施設とも連携し、正常な脳組織への影響を最小限に抑え、安全性に配慮した治療の提供に努めています。
脳腫瘍と診断されると、ご本人もご家族も非常に大きな不安を抱えられます。不安な気持ちからさまざまな情報に触れ、かえって戸惑いや心配を深めてしまうこともあるかもしれません。当院では、患者さんお一人おひとりの不安や希望にしっかり耳を傾け、「この病院に相談してよかった」と思っていただける医療を目指しています。医師だけでなく看護師やソーシャルワーカー、リハビリスタッフなど多職種が相談窓口となり、同じ方向を向いて一致団結して治療に臨めるよう、サポートいたします。ちょっとした物忘れや手足のしびれなど、少しでも気になる症状があれば、お一人で悩まずにぜひご相談ください。

医師プロフィール

ベルランド総合病院 脳神経外科における
脳腫瘍の治療

髄膜腫の治療

脳を包む膜から発生する髄膜腫――多くは良性であるものの神経症状には要注意

脳を包む膜から発生する髄膜腫――多くは良性であるものの神経症状には要注意

イラスト:PIXTA

髄膜腫ずいまくしゅとは、脳そのものではなく、脳を包んでいる“髄膜ずいまく”から発生する腫瘍です。脳腫瘍の中では頻度が高く、多くは良性に分類されます。比較的ゆっくり大きくなることが多いため、無症状のまま偶然発見されることもあります。しかし、腫瘍が脳や脳神経を圧迫するようになると、手足の麻痺やしびれ、視力の低下、物忘れや記憶障害、けいれん発作などが起こることがあります。
40歳代~50歳代くらいの中高年の方に多いとされていますが、近年では高齢になってから診断される患者さんが増加傾向にあります。

顕微鏡を用いた精密な手術で神経に及ぼす影響を最小限に

髄膜腫の治療には、大きく分けて経過観察、手術、放射線治療の3つがあります。無症状で発見された場合は、定期的に経過観察を行うのが一般的です。一方で、何らかの神経症状があり、患者さんが手術に耐えられる状態であれば、手術をおすすめしています。当院では患者さんのご年齢、腫瘍の部位や大きさ、生じている症状、これまでの進行のスピードなどから総合的に判断し、お一人おひとりに適した治療方針を検討します。
なお、髄膜腫の治療において「安全性に配慮した手術」「手術と放射線治療の緊密な連携」「術後のリハビリテーション」の3つが重要であり、どれか1つが欠けてもいけないと考えています。

顕微鏡を用いた精密な手術で神経に及ぼす影響を最小限に

手術について、当院では正常な神経に及ぼす影響を最小限に抑えるため、顕微鏡を用いた手術を行っています。また、血管や神経の周囲など手術での摘出が難しい場合や再発した場合などには無理に全てを摘出せず、放射線治療を組み合わせることもあります。手術後はスムーズにリハビリテーションへと移行し、早期の退院や社会復帰を目指します。
髄膜腫は発生した部位によって症状や手術のリスク、治療のアプローチが大きく異なります。だからこそ、治療の必要性や緊急性、手術の方法やリスクを正しく理解し、ご家族も含めて納得のいく選択をされることが何よりも重要です。当院では脳腫瘍の手術に日々取り組んでおり、高齢の患者さんの麻酔管理やICUでの細やかな術後管理など、手術から術後までを支える体制を整えています。ご自身にとってどのような治療が適しているのか、十分に納得して選択いただけるよう丁寧にお話させていただきますので、少しでも不安なことがあればぜひ当院へご相談ください。

早期リハビリにより仕事や趣味への復帰まで一貫してサポート

早期リハビリにより仕事や趣味への復帰まで一貫してサポート

写真:PIXTA

手術が終わることが、すなわち治療のゴールではありません。当院では術後早期からリハビリテーションを開始し、患者さんのスムーズな退院をサポートしています。
手術を受けてからご自宅へ退院されるまでの期間は2週間弱が1つの目安ですが、実際の入院期間は患者さんによって大きく異なります。たとえば、回復が早かったりご家庭の事情があったりして数日後に退院される方もいれば、術前から強い麻痺や認知機能の低下、心臓・肺などの持病があり、もう少し長期間のリハビリが必要になる方もいらっしゃいます。
当院では、お一人おひとりの状態やご希望に合わせて個別のリハビリプランを立てています。無理のないリハビリの過程を経て、入院前と同じような生活に戻り、さらには旅行やスポーツなどの趣味を再び楽しんでいただけるよう、退院後の生活までを見据えて伴走いたします。

解説医師プロフィール

神経膠腫の診療

染み込むように広がる悪性腫瘍――頭痛や手足の麻痺などに注意

神経膠腫しんけいこうしゅは“グリオーマ”とも呼ばれ、脳の神経細胞を支える神経膠細胞から発生する悪性の脳腫瘍です。周囲の正常な脳組織に染み込むように広がっていく特徴があります。一言でグリオーマといっても悪性度(グレード)によって病気の経過や進行スピードは大きく異なります。
現れる症状は腫瘍が発生した場所によって異なりますが、頭痛やけいれん発作、手足の麻痺のほか、言葉が出にくい、認知機能の低下などが挙げられます。

ナビゲーションシステムで、機能を残しながら最大限の腫瘍摘出を目指す

グリオーマの診断と治療には、非常に慎重なアプローチが必要です。脳梗塞や感染症など別の病気と画像上の見分けがつきにくいため、まずは高精度のMRI検査でしっかりと画像診断を行います。そのうえで、手術で腫瘍細胞を採取して病理診断と遺伝子検査を行い、どのような種類のグリオーマでどのような治療が必要なのかを特定して治療方針を立てていきます。
グリオーマの治療には、手術、放射線治療、薬物療法、交流電場療法があります。基本的には手術でできるだけ多くの腫瘍を取り除くことが望ましいとされていますが、「どこまで摘出するか」の判断が極めて重要です。患者さんが日常生活を維持できる機能を守りつつ、安全に切除できる限界を見極める“可及的最大限かきゅうてきさいだいげん”の摘出を目指します。

ナビゲーションシステムで、機能を残しながら最大限の腫瘍摘出を目指す

当院では手術の安全性を高めるため、顕微鏡を用いた手術に加え、“手術ナビゲーションシステム”を導入しています。これは、車のカーナビゲーションのように、手術前に撮影したMRI画像と、位置感知カメラから実際の脳の空間位置をリアルタイムに立体的に描き出し、連動させるシステムです。手術中に腫瘍の正確な位置や摘出の進捗状況を常に画面上で把握できるため、正常な組織を誤って傷つけるリスクを減らし、安全性に配慮した摘出を目指すための重要なサポートとなっています。

新薬や交流電場療法も導入――患者さんの不安に寄り添い前向きな治療を支える

近年、一部のグリオーマ(IDH遺伝子変異を有するものなど)に対して、新しい治療薬が承認されました。当院でも適応となる患者さんには、こうした新しい治療薬を使用できる体制を整えています。また、手術や薬物療法とは異なる新しいアプローチとして“交流電場療法”も実施しています。これは頭皮に4枚の特殊な電極を貼り付け、微弱な交流電場を発生させることで腫瘍細胞の分裂を抑制し、進行を遅らせることを目指す治療法です。適応となる患者さんはご希望に応じて、当院で受けていただくことが可能です。

新薬や交流電場療法も導入――患者さんの不安に寄り添い前向きな治療を支える

グリオーマに関してインターネットなどで検索すると、深刻な情報がたくさん出てくるため、患者さんやご家族の精神的な負担はとても大きいかと思います。私自身は、悪性の腫瘍であるという事実は冷静にお伝えしつつも、できる限り不安を和らげたいと考えています。患者さんご自身のやりたいことや目標を見据えて、前向きに治療に臨めるよう私たちがしっかりとサポートいたします。一歩一歩、今できることを一緒に進めていきましょう。

解説医師プロフィール

間脳下垂体腫瘍(下垂体腫瘍、頭蓋咽頭腫)の診療

小さな「ホルモンの司令塔」に生じる腫瘍――多彩な症状から診断の難しさ

“脳下垂体”とは、脳の下に位置する非常に小さな器官ですが、「ホルモンの司令塔」として生命維持のために重要な役割を果たしています。間脳下垂体腫瘍は、この脳下垂体に発生する腫瘍です。

小さな「ホルモンの司令塔」に生じる腫瘍――多彩な症状から診断の難しさ

イラスト:PIXTA

間脳下垂体腫瘍が発見されるきっかけとして多いのは、「目が見えにくい」「目がかすむ」といった目の症状です。脳下垂体は視神経に近いため、腫瘍が視神経を圧迫することでこれらの症状が生じることがあります。
また、脳下垂体から分泌されるホルモンのバランスが崩れることで生じる症状もあります。腫瘍によってホルモンの分泌が低下すると、全身の倦怠感やうつ傾向などが現れることがあります。反対に特定のホルモンが過剰に分泌されることで、手足が分厚くなる、舌が大きくなっていびきをかくといった変化が現れることもあります。

開頭しない“経鼻内視鏡手術”を実施――内分泌科医と連携したサポート

間脳下垂体腫瘍の治療では、経過観察、薬物療法、手術が選択肢となります。腫瘍が小さく症状がない場合は、定期的に検査を行い経過観察とします。ホルモンの異常がある場合は薬物療法も選択肢となります。視力や視野などに何らかの症状が出ている場合は、手術によって腫瘍を摘出する必要があります。

現在、間脳下垂体腫瘍の手術で主流となっているのは“経鼻内視鏡手術”で、当院でもこの方法を採用しています。鼻から挿入する内視鏡を用いて手術を行うため、最大のメリットは「開頭しない」という点にあります。鼻の奥から腫瘍に直接アプローチするため、正常な脳や神経を触ることなく処置が可能です。鼻腔びくうという狭い経路から緻密な操作を行うため高い技術が求められますが、習熟した医師が行えば、開頭手術よりも腫瘍が摘出しやすく、いわば理にかなった術式といえます。
当院では、内分泌・代謝科と連携しながら治療を進めています。適切に内分泌機能を評価することで、国の指定難病などの医療費助成制度を活用できる可能性があります。安心して治療を受けていただけるよう、多職種が連携して患者さんをサポートしてまいります。

丁寧な診療を通じて、日々の体調に合わせた適切な薬のコントロールを目指す

間脳下垂体腫瘍の治療では、患者さんやご家族に下垂体から分泌されるホルモンのはたらきについて、理解していただくことがとても大切です。下垂体ホルモンは体が日々のストレスに対処するために欠かせないものですが、腫瘍の影響や手術の経過によってホルモンの分泌機能が低下してしまうことがあります。この状態で感染症に罹患するなど体に強いストレスがかかると対応できなくなってしまうため、体調に応じた薬の調節が必要になります。これは他の脳腫瘍にはない間脳下垂体腫瘍ならではの特徴です。

丁寧な診療を通じて、日々の体調に合わせた適切な薬のコントロールを目指す

写真:PIXTA

日々の体調の変化に気付き、必要に応じて薬を適切にコントロールするためには、患者さんご本人はもちろん、ご家族の理解とサポートが不可欠です。当院では、ホルモンの役割や薬の管理方法についてしっかりとご理解いただけるよう丁寧な説明を心がけています。治療を進めるにあたって不安な点などがあれば、遠慮なくお尋ねいただければと思います。

解説医師プロフィール

転移性脳腫瘍の診療

しびれや頭痛があれば速やかに画像検査を

しびれや頭痛があれば速やかに画像検査を

転移性脳腫瘍とは、脳以外の臓器で発生したがん細胞が血流などで脳へと移動し、そこで増殖して病巣を形成したものです。代表的な原因(原発巣)としては、肺がん、乳がん、胃がんなどが挙げられますが、近年では、分子標的薬の登場などによりがん治療そのものが大きく進歩しており、脳への転移が抑えられるケースも増えてきています。
とはいえ、がんの治療を続けている中で、「最近手がしびれる」「今までになかった頭痛がする」といった症状が現れた場合は注意が必要です。症状から脳への転移が疑われる場合は、速やかにCTやMRIといった画像検査を行い、脳に異常がないか詳しく調べることが重要です。

患者さんの状態に合わせて、負担を抑えた手術や高精度の放射線治療を使い分ける

脳への転移が見つかった際の治療方針は、患者さんの状態に応じて大きく異なります。一般的に症状を伴う脳転移に対して積極的に治療を行う場合、手術または放射線治療のいずれか、あるいは両方を組み合わせた治療が選択されます。
脳に転移した腫瘍が大きく、かつ摘出可能な場所にある場合、腫瘍を取り除く手術を優先的に検討します。腫瘍が摘出できれば症状の悪化を防げますし、比較的短期間の入院で済むため、もともと継続しているがん治療の速やかな再開を目指すことができます。
一方で、腫瘍が比較的小さい場合や複数ある場合には、放射線治療が有力な選択肢となります。

患者さんの状態に合わせて、負担を抑えた手術や高精度の放射線治療を使い分ける

放射線治療は近年の技術進歩が目覚ましい分野です。かつては脳全体に放射線を照射する“全脳照射”が主流でしたが、この方法は記銘力や認知機能の低下といった副作用が課題でした。そこで現在では、脳転移の病変へ集中的に放射線を照射する“ガンマナイフ”や“サイバーナイフ”などの高精度な放射線治療が発展してきています。この方法であれば、たとえば1cmほどの腫瘍が5つあるような状況でも、周囲の正常な脳組織への影響を抑えつつ、一度にまとめて治療することも可能です。
当院では、腫瘍内科、放射線治療科、脳神経外科の各科が密に相談し、治療方針を決定しています。放射線治療が適切と判断した場合には、必要に応じて地域の医療機関とも連携し、専門的な治療をスムーズに受けていただける体制を整えています。

複数科の緊密な連携で、速やかに丁寧に患者さんに寄り添う

転移性脳腫瘍の診療において、私たちはスピード感を何よりも大切にしています。当院は総合病院であり、各科が常に緊密な連携を図っています。脳転移と診断されたその日のうちに各科の医師が治療方針を話し合い、必要であれば手術日程の調整まで、時間のロスを最小限に進められるのが当院の強みです。
脳への転移を告げられたとき、患者さんやご家族が感じる動揺や不安は非常に大きいものです。私たちは身体的な治療を行うだけでなく、そうした気持ちに寄り添うことも不可欠であると考えています。緩和ケア科や看護師とも連携しながら、患者さんとご家族の不安を和らげつつ、必要な治療を速やかに受けていただける環境を整えていますので、どうぞご安心いただければと思います。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2026年8月20日
病院ホームページを見る病院ホームページ初診の方はこちら