静岡県の医療

高齢化で増加するニーズ――QOL維持のための重要な診療科

写真:PIXTA

高齢化で増加するニーズ
――QOL維持のための重要な診療科

静岡県中央部に位置する静岡医療圏(静岡市葵区・駿河区・清水区)は総人口約67.4万人の地域です(2024年9月時点)。2035年には約62.5万人に減少すると推計されている一方で、65歳以上の人口は約21.4万人まで増える見込みです。
高齢化に伴って整形外科疾患に対する診療は需要が高まっていくと考えられます。また、変形性膝関節症へんけいせいしつかんせつしょうなどの病気は、高齢者のQOL(生活の質)低下の原因にもなります。その一方で、痛みや動かしにくさの原因となっている部位を適切に治療することで、症状の改善が見込めるのが整形外科医療の特徴です。日常生活での動きも楽になり、より活動的な生活も期待できます。
人生100年時代と呼ばれる現代において、健康寿命の延伸は重要性が高まっています。増加するニーズに応えるため、静岡医療圏でも質の高い医療を提供できる体制の整備が求められていくでしょう。

整形外科とリハビリテーションに
特化する

しずおか整形外科病院

患者さんの状態に合わせた治療をワンストップで提供

患者さんの状態に合わせた治療を
ワンストップで提供

当院は1998年に静岡リウマチ整形外科リハビリ病院としてスタートし、リウマチや整形外科の診療に努めてきました。2023年に開院25周年を迎え、翌2024年に“しずおか整形外科病院”と名称を変更しています。
現在は整形外科とリハビリテーションに特化し、変形性股関節症へんけいせいこかんせつしょうや変形性膝関節症などに対する人工関節置換術、膝や下肢を中心としたスポーツ外傷、脊椎手術を3本柱として診療を行っています。
また、当法人では、併設する介護老人保健施設など、介護、リハビリテーション、在宅看護を含めて包括的に地域の方々を支える体制を構築しています。
患者さんの状態に合わせた専門的な治療をワンストップで行っていますので、静岡県周辺にお住まいの方はぜひお気軽にご相談いただければと思います。

医師プロフィール

しずおか整形外科病院における
変形性膝関節症・変形性股関節症・
半月板損傷・坐骨神経痛の治療

変形性膝関節症の治療

診断の正確性を高めさまざまな治療を提案

診断の正確性を高めさまざまな治療を提案

写真:PIXTA

変形性膝関節症とは、膝関節にある軟骨がすり減って骨と骨が直接接触することで関節に痛みや炎症、変形が生じている状態です。初期は起立時や歩き始めの際に痛みを感じます。進行すると膝関節に水がたまる、安静時にも痛む、歩行や曲げ伸ばしが困難になるなどの症状が出ることがあります。この病気は女性や高齢者に多いのが特徴です。主な原因は加齢や肥満のほか、遺伝的な要因も関与していると考えられています。
診断は通常のX線検査でも可能ですが、当院では体重をかけた状態や、立ったまま膝を軽く曲げて後ろからX線を撮影する方法(ローゼンバーグ法)を採用しています。この方法は、関節裂隙の狭小化(軟骨のすり減りによる関節の隙間の狭まり)をより詳細に確認することができ、診断の正確性をより高めることが可能になります。
治療方針については、患者さんの症状やご希望、病気の進行度を踏まえて決定していきます。比較的症状が軽い初期の場合は、手術をせずに症状を抑える保存療法(リハビリや薬物療法など)が中心になります。強い症状が長く続いている、保存療法を長く続けていても症状がよくならないといった患者さんに対しては、治療の選択肢として手術をご案内いたします。
手術にも複数の方法があり(詳しくは後述)、より体への負担を抑えた手術を行うには、やはり早い段階で受診いただくことが重要になります。早い段階であれば手術をせずに済む可能性もありますし、手術が必要になったとしても自分の膝関節を温存できる手術も検討できます。反対に、症状を我慢し、進行した状態での手術となると、術後のリハビリが大変になったり、膝が曲がりにくくなったりすることがあります。手術の適切なタイミングを判断するためには、まずは膝関節の状態を確認することが大切です。気になる症状があるときは、ぜひ一度、当院を受診いただければと思います。

手術のタイミングが重要――高齢を理由に諦めずにぜひ相談を

手術のタイミングが重要――高齢を理由に諦めずにぜひ相談を

手術には、骨切り術と人工膝関節置換術があります。骨切り術は、膝周囲の骨を切って角度を変えることで、膝に負担がかかるO脚を改善する手術です。主に軟骨のすり減りが少ない初期の患者さんが適応になります。自分の膝関節を残すことができ、術後の生活にも制限がなく、スポーツも可能です。年齢が若い方や活動性が高い方におすすめしています。
症状が進行している患者さんには人工膝関節置換術をご案内します。これは傷ついた膝関節を、関節の代替としてはたらく人工物に置き換える手術です。

手術のタイミングが重要――高齢を理由に諦めずにぜひ相談を

これらの治療方法は患者さんの生活状況やご希望を十分に考慮してご案内します。年齢を理由に手術をためらわれる患者さんもいらっしゃいますが、たとえご高齢の方であったとしても、手術をすることで膝の痛みから解放され、活動的に過ごせるようになるのであれば、健康寿命を延ばすという観点からも大きなメリットがあるのではないでしょうか。
とはいっても手術となると不安を感じられることも多いと思います。当院では、手術の内容や起こりうる合併症、術後の痛みの経過などを丁寧に説明します。また、手術の前には当院でこれまでに手術を受けられた患者さんが、元気に歩けるようになった姿などを動画で見ていただくことで、術後の自分の姿をイメージしていただけるようにしています。
長引く膝の痛みでお困りの方、膝をあまり気にせず趣味やスポーツを楽しみたいと思われる方は、ぜひお気軽に当院までご来院ください。

解説医師プロフィール

変形性股関節症の治療

手術以外の選択肢も含め、ご希望に合った治療選択をサポート

変形性股関節症とは、何らかの原因によって股関節の軟骨がすり減り、関節に痛みや炎症、変形が生じている状態です。女性の患者さんが多いのが特徴です。また変形性股関節症の患者さんの約8割が、股関節が正常に形成されない寛骨臼形成不全などの発育性股関節形成不全によるものです。

手術以外の選択肢も含め、ご希望に合った治療選択をサポート

写真:PIXTA

日常の生活動作で困っていたり、痛みなどの症状があったりする場合は、早めの受診をおすすめします。症状の進行によって選択できる治療法は変わってきます。
初期の場合は薬物療法や運動療法、注射療法などで症状の改善が見込めます。たとえば、体の深い部分の筋肉をうまく使えていないと関節部分がグラグラと不安定になってしまうのですが、患者さんによっては運動療法でこの筋肉を鍛えることによって症状が改善する可能性があります。手術の際にも、軟骨のすり減りが少ない初期の患者さんには関節を温存した手術をご案内できることがあります。
変形が進行している患者さんでも、ご本人が何を望んでいるかによって治療法は変わってきます。最終的な治療法は患者さんのご希望や生活状況をよくお聞きして、手術がよいのか、運動療法がよいのか、内服薬がよいのか、注射がよいのかを一緒に検討していきます。

手術は回復が早い術式を積極的に採用

手術には、骨の一部を切って股関節の負荷を軽減する骨切り術や、変形した骨を取り除き、人工関節と置き換える人工股関節置換術があります。
骨切り術は、股関節の周囲の骨を切って変形が進まないようにします。かつては横からのアプローチが行われていましたが、傷が小さく筋肉を切る範囲が少ない前方からのアプローチが開発されました。さらに私(西脇 徹)は、前方からのアプローチを工夫し、筋腱を完全に温存する方法を考案しました。さらに傷が目立ちにくく回復も早くなることが見込まれます。近年、この方法は前方からの骨切り術において採用されるようになっています。
人工股関節は、体内に入れる際に後方や前方からのアプローチなど、いくつかの進入方法があります。かつては後方からのアプローチが主に行われていましたが、筋肉を大きく切ることになるため、術後に脱臼のリスクが高いことが欠点でした。しかし、20年ほど前に前方からのアプローチ法が日本に導入されました。この方法は、縦に走っている筋肉と筋肉の間から進入することで、筋肉を温存できることが特徴です。
この前方からの進入法も十分に低侵襲な術式ですが、患者さんの体への負担をさらに軽減すべく通常の前方アプローチに改良を加えた術式であるAMISと呼ばれる手技を可能な限り実施しています。これは関節を包む袋(関節包)の切開も最小限にする新しい術式で、私(西脇 徹)が日本へ導入しました。2025年6月時点で日本全国の約300名の医師がAMISを採用しています。筋肉や神経をより傷めにくくなっており、入院期間の短縮や早期回復が期待できます。

手術は回復が早い術式を積極的に採用

症状があっても「病院を受診したら手術をすすめられるのではないか」と受診をためらわれる患者さんも多くいらっしゃると思います。手術以外の選択肢も含めてよりよい治療がご提供できるよう努めていますので、股関節の症状でお困りのことがあったらまずはご相談いただければと思います。

解説医師プロフィール

半月板損傷の治療

半月板の温存に尽力――整形外科専門医*の目線で適した治療を見極める

半月板とは大腿骨だいたいこつ脛骨けいこつ(すねの骨)の間にある組織で、体重の負荷を分散したり、膝関節を安定させたりするはたらきがあります。損傷すると膝の曲げ伸ばしの際の痛み、可動域の制限、歩行時の痛み、膝の腫れなどが生じます。

半月板の温存に尽力――整形外科専門医*の目線で適した治療を見極める

写真:PIXTA

半月板損傷の原因は大きく3つに分類されます。1つ目は、若い方などに多くみられるスポーツによる損傷です。2つ目は、中高年の方にみられる、加齢による変性です。そして3つ目は、円板状半月という生まれつき膝外側の半月板が大きい先天的な形状異常です。
治療は、症状や患者さんの背景、どの段階までの回復を目標にするかによって変わります。たとえば、若い方で症状が強く、スポーツに支障が出る場合や、円板状半月の場合は手術を推奨することが多いです。一方、スポーツによる軽度の損傷などでは、一時的に休むことで症状が軽くなる場合もあります。中高年の方で加齢による変性が原因の場合も、まず保存療法で経過をみることが可能な場合があります。一人ひとりの患者さんに合わせて、よりよいと思われる治療法をしっかりと判断できることは整形外科専門医*が在籍する当院の強みです。

日本整形外科学会認定 整形外科専門医

半月板の温存に尽力――整形外科専門医*の目線で適した治療を見極める

手術に関しては、損傷部分を切除する半月板切除術と、機能を温存する半月板縫合術があります。近年、医療機器の改良により、半月板を切除せず、なるべく残すことも可能となっています。どちらを選択するかは縫合後に起こり得る再断裂の可能性まで考えて、慎重に見極めていきます。

高齢者からスポーツ選手まで一人ひとりに合わせた治療とリハビリテーションを提供

手術後のリハビリテーションを行うには設備や人員が充実していることが重要です。その点、当院は理学療法士が在籍しており、患者さん一人ひとりに合わせたリハビリテーションが可能です。
また、私(土井 光人)はプロサッカーチームのチームドクターを務めており、術後のスポーツ復帰に対するノウハウや経験があります。サッカー以外にもバスケットボールやハンドボール、柔道など、競技の特性に合わせて、再断裂を防ぐために必要な筋力をしっかりとつけるなど、順を追って丁寧にサポートしていきます。
地域の患者さんが痛みなく歩けるようになること、そして、元気にスポーツができるようになることを目指して当院は治療を行っています。半月板の治療に加えて人工関節置換術などの処置が必要になる場合は、院内で連携して治療を進めていくことも可能です。高齢の方からスポーツをされている方まで、膝の症状にお悩みの方はぜひ当院へご来院ください。

解説医師プロフィール

坐骨神経痛の治療

足の痛みやしびれ――長引く場合は早めに受診を

足の痛みやしびれ――長引く場合は早めに受診を

写真:PIXTA

坐骨神経痛とは、具体的な病気の名前ではなく、臀部から足の先までの痛みやしびれなどの症状の総称のことです。主な原因疾患は、若い方では腰椎椎間板ようついついかんばんヘルニア、中高年の方では腰部脊柱管狭窄症ようぶせきちゅうかんきょうさくしょうが多いため、それらを念頭に診察や検査を行います。足の痛みやしびれがしばらく続いていたり、腰痛が長く続いていたりする場合は、原因を特定し早期に治療することが大切です。これらの症状がある方はぜひ一度当院を受診していただければと思います。
当院では原因疾患の特定と治療、そして坐骨神経痛の症状緩和までトータルで対応できることが強みです。原因となる病気を見つける第一歩として、患者さんのお話は非常に大切な情報源です。どのような症状がいつから、どのくらい続いているか、歩行などの日常生活の動作に支障がないか、といった情報から原因となっている病気を丁寧に探っていきます。その後、筋力の低下の有無、腱反射のチェックなどを行い、腰部からの神経症状が疑われる場合は、X線、MRIによる検査まで行い、原因疾患を特定していきます。

患者さんの希望に合わせた幅広い治療選択肢と充実したリハビリテーションが強み

患者さんの希望に合わせた幅広い治療選択肢と充実したリハビリテーションが強み

坐骨神経痛では、原因疾患に応じた治療方法を行い、症状の緩和を目指します。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症は基本的に保存療法で経過をみていきます。これらを2~3か月続けても症状の改善がみられない場合や、患者さんの日常生活の動作が困難になっている場合は、手術を検討します。
整形外科の治療はがん治療などとは異なり、それぞれの患者さんが求める生活動作のレベルに合わせて方針を決めていくことが大切です。「近所へ買い物に行く際の不自由をなくしたい」「旅行が趣味なので長い距離を歩きたい」など、患者さんによって求めるレベルはさまざまです。当院では患者さんのご希望をよくお聞きしながら一緒に方針を決定します。
保存療法は、病態に応じて痛み止めなどの薬物療法を行いながら、リハビリテーションを並行します。当院では理学療法士が一人ひとりの状態をしっかりと把握しながら、筋力訓練やストレッチを行えることも強みの1つです。
手術は腰部脊柱管狭窄症に対する除圧術や除圧固定術などがあります。これは硬膜管や神経根の圧迫を解除することで症状を改善する方法になります。
手術は大きな決断であり、どうしても抵抗感や不安がある患者さんも多くいらっしゃると思います。こまめに経過をみながら薬物療法やリハビリテーションの段階から少しずつお話をさせていただき、必要なタイミングで手術を受けていただけるよう、慎重にタイミングを見極めるように心がけています。
当院は、症状の段階に応じて保存療法や術前術後のリハビリテーションに対応し、もし手術となっても他施設へ紹介することなく、基本的に当院で完結して治療が可能です。地域の患者さんにとっても複数の医療機関にかからなくて済むため負担が少なく、安心感を持って治療に臨んでいただける体制となっておりますので、ぜひご相談ください。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2025年8月6日
病院ホームページを見る