札幌市の片頭痛・認知症・
脳卒中治療

高齢化が進む中、QOLを低下させる脳疾患にどう備えるか

高齢化が進む中、QOLを低下させる脳疾患にどう備えるか

北海道は総人口に対する脳卒中患者さんの割合が47都道府県中3番目に高いといわれています。脳卒中の予防には減塩・血圧のコントロールが欠かせませんが、北海道では全国平均よりも速く高齢化が進行しており、今後ますます脳卒中患者さんが増加していくと考えられます。男女ともに塩分摂取量が摂取基準として定められている目標量から2g以上オーバーしています。

また、脳卒中のほかにも、脳疾患における課題があります。認知症については、札幌市では高齢者(65歳以上)がすでに人口の4分の1以上を占めており、さらなる高齢化に伴い患者数が増加すると予想されます。老々介護や認認介護と呼ばれる状況も深刻化していくでしょう。30代の女性に多い片頭痛へんずつうは、脳卒中や認知症と同様に、高齢化に伴い患者数が増加すると予想されます。片頭痛は、慢性的な痛みから生活の質(QOL:Quality of Life)を低下させ、その経済的損失は毎年2,880億円にも及ぶといわれます。片頭痛には適切な治療法があるにもかかわらず、患者さんの70%は受診していないのが現状です。

札幌市における医療機関の数は、ほかの自治体に比べ決して少なくはありませんが、全国的に脳神経外科医の人数は減少し続けており、将来的に高齢の方が増えると相対的に脳神経外科医不足に陥ることが予測されます。今もこの先も、よりよい生活を過ごすために、札幌市の医療機関は脳の病気に対する啓発や予防対策に取り組んでいくことが必要といえるでしょう。

インフラとしての医療を超えた貢献を目指す
札幌秀友会病院

安心した生活のため医療者として地域に尽くす

“急性期医療から在宅療養まで”――脳神経外科を中心とした広い視野での医療を目指して

札幌秀友会病院は1988年の開院当初から“急性期医療から在宅療養まで”を理念に掲げ、脳神経外科を中心に地域の健康を支えてまいりました。患者さんがご自宅に帰るために、札幌市西部において救急医療を支えるだけでなく、リハビリテーションまでを一貫して提供していることが当院の特徴であり強みです。

認知症や片頭痛など、生活でお困りの病気があっても、受診すべきか分からない方もいらっしゃるかもしれません。“これぐらいで病院に行っていいのかな”と思わずに、まずは気軽に相談していただきたいです。

安心した生活のため医療者として地域に尽くす

地域の方との新たな学びの場――“秀友会アカデミア”で「よりよく生きる」を考える

病院外での取り組みとして、私たちは2023年から“秀友会アカデミア”という学びの場をスタートしました。テレビ番組「水曜どうでしょう」の企画・構成に携わった鈴井 貴之さんや、北海道日本ハムファイターズでコーチを務める森本 稀哲さんなど、トップランナーを毎回ゲストに招いてお話を伺います。2024年には、北海道コンサドーレ札幌でアカデミーダイレクターを務める石川 直樹さんや元 レバンガ北海道の牧 全さん、北京オリンピック銀メダリストの朝原 宣治さんにお越しいただき、「スポーツで得られること」や「社会人に求められる“乗り越える力”」などをテーマにお話いただきました(8月時点)。体だけではなく心から「よりよく生きる」ためのヒントをぜひ一緒に見つけていきましょう。

秀友会アカデミアを通して、私たちは単に医療を提供するだけのインフラではなく、医療の枠を超えて地域に貢献する存在を目指しています。

秀友会アカデミア
理事長プロフィール
藤原 雄介 先生
藤原 雄介先生
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病院情報
医療法人秀友会  札幌秀友会病院
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札幌秀友会病院の
片頭痛・認知症・脳卒中治療

片頭痛の治療

予防の段階からアプローチし、QOLの改善を目指す

当院では片頭痛外来を開設し、頭痛でお悩みの患者さんに対する診断・治療を積極的に行っています。
片頭痛は、日本では成人の8.4%ほどが患っているといわれています。“片頭痛”と聞くと、“頭の片側だけがズキズキと痛む頭痛”とイメージする方が多いかもしれませんが、実際にはいつも片側が痛むという患者さんは25%、いつもズキズキと痛むという患者さんは32%しかいないという報告があります。
片側だけの痛みやズキズキと脈を打つような痛みは片頭痛の症状の1つに過ぎません。痛み止めを飲まなければ何もできないほどの頭痛や、歩行や階段の上り下りといった日常の動作に支障が生じる頭痛は、片頭痛の可能性があります。

また、片側に痛みがあるからといって、それだけで片頭痛であるとは断定できません。ほかの病気が隠れている可能性や、市販の痛み止めを飲み続けるとことで薬剤の使用過多による頭痛が引き起こされる可能性もあります。気になる症状がある方は気軽にご相談ください。
片頭痛の診断には、ほかの病気の可能性を否定する必要がありますので、当院では患者さんのお話を詳しく聞き、またMRI検査やX線検査もあわせて行い、適切な治療につながるように努めています。

片頭痛の治療

当院の片頭痛外来では、片頭痛の発作に対して対症療法的に服用する鎮痛薬のほかに、片頭痛の発症を予防するための薬を処方しています。予防薬の中でも、脳内血管の拡張や神経の炎症に関わるCGRPという物質に作用して発症を予防する薬は2021年に保険適用による処方が可能になりました。毎日服用するタイプの予防薬とは異なり、1か月に1回(または4週間に1回)の注射で済む薬です。
当科を受診した50歳代の女性は20年ほど片頭痛に悩まされていましたが、CGRPに作用する薬を処方したところ症状の改善がみられました。今では予定を立てて休日を過ごしたり、これまで行けなかった旅行にも出かけたりすることができるようになりました。
片頭痛は仕事の生産効率を低下させ、育児や家族との関係にまで影響が及ぶこともあります。頭が痛いのに痛みを周囲の人に理解されず、なかなか優しくできなかったり日常生活がままならなかったりと、QOLを低下させる原因にもなり得ます。
これまで緊張型頭痛と診断されていた方も、肩や首周りのストレッチを行っても症状が改善されない場合は、改めて当院の片頭痛外来にお越しいただくことをおすすめします。月に4回以上の頭痛がある方は、片頭痛と診断されれば注射による予防薬治療を検討できます。“頭痛なんかで”と我慢せずに当院にお越しいただき、一緒にQOLの改善を目指していきましょう。

解説医師プロフィール

認知症の治療

精神科医による診察と核医学検査で、正確かつ早期の病状把握を目指す

当院では精神科に特化したもの忘れ外来を開設し、地域とも連携しながら認知症患者さんの包括的なサポートに努めています。
認知症を抱える患者さんの中には精神疾患を抱える方や、精神疾患を認知症だと間違われて受診される方もいらっしゃいます。当科は精神科医による診療を行っているため、精神疾患、認知症のどちらも診ることができることが強みです。患者さん一人ひとりに向き合い丁寧にお話を聞き、認知機能の維持のために正確な病状の把握を目指しています。
また当科では、血液検査や頭部MRIによる脳の形態異常の確認を行うほか、核医学検査を行っていることも特徴です。核医学検査とは放射性医薬品を用いて脳の血流や神経などの状態を画像化して、脳の働きを確認する検査です。脳の形態異常が現れる前に認知症かどうかを診断できるため、認知症の早期発見につながります。加えて、脳の血流が低下している部位を確認できるため、認知症の原因となる病気の特定も行うことができます。
なお、認知症の検査には、ご家族に一緒に来ていただくようお願いしています。最近では核家族化が進んでいることもあり、お子さんが帰省されるタイミングで検査に来てくださる方や、認知症の疑いがあるパートナーの方をお連れになり、お二人で認知症の検査をされる方もいらっしゃいます。検査の流れがスムーズになり待ち時間も少なくなるかと思いますので、前もって予約をしていただくことをおすすめしています。

認知症の治療

認知症は全身の不調を引き起こし社会生活に困難をもたらす病気です。当科では認知症の診断後は病態に応じた薬物療法に加え、患者さんの体調やご関心に合わせて運動や趣味の活動をおすすめするなどの心理社会的サポートを行っています。また、認定医療ソーシャルワーカー*や地域包括支援センターとも連携して介護サービスや訪問看護が利用できるよう包括的に患者さんをサポートしています。
認知症患者さんの中には介護サービスや訪問看護などの地域資源をご存じない方もいらっしゃいます。地域包括支援センター行くとどのようなサービスが使えるのか、介護保険の申請はどのように行うのかといった部分も、患者さん一人ひとりの状況に合わせて認定医療ソーシャルワーカーがお手伝いします。患者さんのご希望に応じて、訪問診療も行っていますのでお気軽にご相談ください。

*認定医療ソーシャルワーカー:日本医療ソーシャルワーカー協会認定による資格。

解説医師プロフィール

脳卒中の治療

急性期治療からリハビリ、治療後の生活までサポート

急性期治療終了後に転院する必要はありません。患者さんにとってもご家族にとっても負担が少なくなるよう、ご自宅に帰るまでのサポートに努めています。
また脳卒中は再発率の高い病気ですので、元の生活に戻っても外来に通っていただき、血圧のコントロールなどの診療を続けて再発を予防することが大切です。私たちは薬を処方するだけではなく、患者さんの退院後の生活に真面目に向き合って診療を行っています。
脳卒中は後遺症によって介護が必要になることもありますが、現代はご家庭に介護の担い手になる方がいないことが多く、もともとお一人で生活していらっしゃったという方も増えているため、ご自宅に帰りたくても難しい患者さんもいらっしゃいます。
当院では医師を含めた医療スタッフ全員が、そのような患者さんのご家庭の状況まで把握し、患者さんに合った医療の提供を目指しています。ご自宅での介護が難しい方や、いわゆる老々介護、認認介護でお困りの方へも柔軟に対応し、地域包括支援センターと連携しながら安心してよりよい生活を過ごせるようサポートいたします。

脳卒中の治療

24時間365日、いつでも頼りにしてほしい

当院は日本脳卒中学会による一次脳卒中センターとしての施設認定を受けており、24時間365日いつでも脳卒中患者さんの治療ができる体制を整えています。
脳梗塞は脳の血管が詰まることによって生じる病気で、発症から1分ごとに脳細胞が190万個死んでしまうといわれています。“タイムイズブレイン”という言葉があるほど、脳梗塞をはじめとする脳卒中は発症してからの時間が治療後の生活を左右するのです。当院は、超急性期治療である“血栓回収療法”を行うことができる病院です。血管にカテーテルを挿入し、脳血管を詰まらせている血栓を取り除くことで血流の流れを再開させる治療で、発症から最長24時間以内にのみ行うことができます。そして血栓回収療法による血流の再開が早ければ早いほど、後遺症が現れにくいことも報告されています。
このように脳卒中は発症から治療を受けるまでの時間がカギになりますが、ご家族や身近な方が脳卒中であるかどうかを判別するのは難しいかもしれません。そんな時のために、ぜひ“FAST”という合言葉を覚えていただきたいです。
FASTとは、脳卒中の症状を見分けるためのポイントと行うべきことの頭文字をとった標語です。

・Face(顔)……うまく笑顔がつくれているか(片側が動かないことがないか)確認すること

・Arm(腕)……両腕を上げた状態で姿勢が保てるか(片側の腕に力が入らないようなことはないか)確認すること

・Speech(言葉)……言葉が問題なく発せるか、ろれつが回っているかを確認すること

・Time(時間)……すぐに救急車を呼び、発症時間を伝えること

F(顔)・A(腕)・S(言葉)のどれか1つに症状があれば、とりあえず様子をみるのではなく、すぐに救急車を呼び、発症時間を伝えてください。救急車による搬送が早ければ、血栓回収療法を行える可能性が高くなります。
たとえ脳卒中になってもよりよい生活が過ごせるよう、まずは脳卒中という病気の症状について少しでも知っていただきたいです。
そして何かあったらご家庭で様子を見るのではなく、24時間365日、いつでも当院を頼っていただければと思います。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2024年2月5日
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