多摩地域の医療

大阪市のがん医療

高齢化が進む多摩地域――複雑化するがん診療を地域で完結するには

北多摩北部医療圏(小平市・東村山市・清瀬市・東久留米市・西東京市)では高齢化が急速に進んでおり、医療需要のさらなる増加が見込まれます。特にがん(悪性腫瘍あくせいしゅよう)については65歳以上の方の死因の約3割を占めており、地域全体でがん診療の充実に取り組み続ける必要があるといえます。高齢化の進展に伴い、遠方での受診が困難になった患者さんや基礎疾患のある患者さんの増加も想定されます。圏域内の各施設は医療の質の向上はもちろん、施設ごとの医療機能を把握することで効率的に連携を図れる体制を強化していく必要があるでしょう。

多摩地域の医療を支える
東京病院

多摩地域の医療を支える東京病院

患者さんと地域と共に歩み、職員と共に進む

当院は昭和初期の開設当初、結核を患った方の療養施設でした。その歴史から、呼吸器疾患や喀血かっけつの治療を中心に多摩地域北東部の中核的な病院として発展してまいりました。なお、近年では超高齢社会に伴ってがん医療のニーズが増加しているため、がん診療の充実にも努めています。院内には呼吸器センター・消化器センターをそれぞれ設置し、迅速で総合的ながん診療が提供できる体制を整えています。地域の皆さんに温かい気持ちで育てていただいて、今の東京病院があります。これからも地域の方の信頼に応えるべく、患者さんの目線に立ち、質の高い医療の提供に努めてまいります。

東京病院の
肺がん・大腸がん・胃がんの治療

肺がんの治療

あらゆる呼吸器疾患に対し、専門性の高い診療が提供できる体制を構築

肺がんでみられる主な症状としては、咳や痰、血痰(血の混じった痰)、息苦しさなどが挙げられます。ただし、発症早期には症状が現れないことも多く、早期発見のためには健診(検診)を受けることが大切です。胸部の異常陰影などが指摘された場合は、速やかに精密検査を受けるようにしましょう。喫煙が肺がんのリスクを高めることはよく知られていますが、喫煙をしていない方に肺がんが発生することもよくあります。「自分は大丈夫」と思わず、定期的に検査を受けていただきたいと思います。
また、すでに肺をはじめとする呼吸器に何らかの病気を患っている方は特に注意が必要です。呼吸器の病気は長期にわたって治療や管理を必要とするものが多く、長い経過の中で肺がんを発症するリスク因子になることが知られています。

肺がんの治療

当院の呼吸器センターには21名の呼吸器内科常勤医師(呼吸器専門医*取得済17名)と3名の呼吸器外科常勤医師が所属しています(2024年4月時点)。肺がんを含む胸部の腫瘍、肺感染症・びまん性肺疾患・慢性閉塞性肺疾患まんせいへいそくせいはいしっかんまんせいへいそくせいはいしっかん(COPD)・アレルギー性肺疾患など、それぞれの領域に精通した医師をそろえて、あらゆる呼吸器疾患に対して専門性の高い診療を提供できる体制を構築しています。また現在患っている肺の病気だけでなく、肺がんや肺感染症など、将来の肺合併症のリスクも踏まえ、しっかりとフォローし、必要な対応が取れる体制も整えています。呼吸器の症状や治療に関してお困りのことがあれば、ぜひ当院へご相談ください。

*

日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医

経験と専門性を生かし難易度の高い肺がん治療にも対応

肺がんの治療には大きく分けて薬物療法・放射線治療・手術(切除)の3つの方法があり、薬物療法は呼吸器内科、放射線治療は放射線科、手術は呼吸器外科が担当します。基本的にはガイドラインに則った治療を行いますが、治療方針については、がんの種類や進行度、患者さんの体の状態やご希望などを考慮しつつ、診療各科が参加する合同カンファレンス(キャンサーボード)で決定するようにしています。なお当院の放射線科常勤医3名(放射線治療専門医*2名)は肺がん治療の経験が豊富で、強度変調放射線治療(IMRT)や定位放射線治療(SRT/SBRT)も行っています。肺がん治療の実施にあたっては診療科以外のサポートも重要で、当院では緩和ケアチームや分子標的治療・免疫治療支援チーム(MIST)などの多職種チームの活動、歯科による口腔管理、リハビリテーション科によるがんリハビリテーションなどを行っており、外来化学療法室、緩和ケア病棟も整備されています。肺がんは、すでにCOPDやびまん性肺疾患・間質性肺炎など、肺にもともとの病気を持っている方に発生することが多いとされますが、その場合、通常の肺がんとは異なった専門的な対応が求められます。

*

日本医学放射線学会認定 放射線治療専門医。医師人数は2024年4月時点。

肺がんの治療

合同カンファレンスの様子

また、肺がんでは放射線治療や手術に伴って、あるいは薬物療法中に肺感染症をはじめとする新たな肺合併症がしばしば起こります。肺がんと肺合併症の治療を平行して行う時には、それぞれの病気に対する薬の効果が減弱しないように工夫したり、外科治療や放射線科治療なども含めた治療のタイミングや優先順位を考慮したりする必要があります。こうした場合、知識と経験に裏打ちされた呼吸器内科の専門的対応に加えて、呼吸器外科や放射線科との連携がスムーズに進むことも当院の強みの1つです。なお、2023年までは社会の要請に従い、新型コロナウイルス感染症の対応強化で一時的に一般呼吸器診療を制限し、肺がん症例も減少していました。そのため当院の2018年~2022年の直近5年間の肺がん院内登録数では平均273例/年、肺がん切除例数は平均67例/年と以前より減少していますが、現在はコロナ禍以前の体制に戻っておりますので、安心してご相談ください。

解説医師プロフィール

大腸がんの治療

ほぼ無症状だからこそ検査を――まずは気軽に相談してほしい

大腸がんは早期発見できれば根治を目指せる病気です。そのため、症状が現れる前に発見することが大切です。便潜血検査で一度でも陽性(+)となった場合は、なるべく早く精密検査(大腸内視鏡検査)を受けていただきたいと思います。とはいえ、大腸内視鏡検査に抵抗がある方も多いのではないでしょうか。医療機器を体内に挿入するわけですから「怖い」と感じるのも無理はありません。抵抗がある方はぜひお気軽に当院の外来へいらしていただければと思います。「どのようなことに抵抗があるのか」などをじっくりとお伺いし、必要に応じて楽な検査方法を一緒に考えます。まず一度お会いできればと思いますので、構えず楽な気持ちでいらしてください。

大腸がんの治療

なお、当院では前処置(大腸をきれいにする準備)における合併症を防ぐため、下剤はできるだけ院内で服用いただくようにしています。院内服用であれば看護師が常に便通や体調などを確認でき、少しでも違和感があった場合にはすぐに担当の医師に連絡が入ります。患者さんの年齢や体の状態などを考慮したうえで安全な検査ができるよう努めていますので、初めて検査を受けるという方も安心して受診いただければと思います。

根治性を担保しながらQOL(生活の質)を考慮した治療を実践する

内視鏡治療の結果、腫瘍が見つかった場合は内視鏡治療もしくは外科手術を行います。外科手術については、開腹手術と腹腔鏡下手術ふくくうきょうかしゅじゅつふくくうきょうしゅじゅつで対応をしており、患者さんの状態に合わせてより適した方法を判断します。なお、肛門こうもんの近くにできる直腸がんの場合、“肛門を残せるかどうか”という点も重視して治療方針を決定します。状況に応じて術前化学放射線治療*も取り入れながら、可能な限り自然肛門を温存できるよう努めています。

*

化学療法(抗がん薬を使用する治療)や放射線治療を実施することでがんが小さくなった場合、手術がしやすくなり、肛門を残せる可能性があります。

大腸がんの治療

“手術”と聞いたとき、誰しもすぐに受け入れるのは難しいはずです。当院では、卒後30年以上の研鑽を積んだ医師が中心となり、よりよいと判断できる治療をご提案いたします(2024年4月時点)。患者さんのお役に立てる準備はできていますので、治療の際にはぜひ我々にご相談ください。相談を重ねながら一緒に治療を進めていきましょう。

解説医師プロフィール

胃がんの治療

丁寧な診療を心がけ、少しでも安心して検査を受けていただけるように

胃がんで現れる症状は一般的に胃の痛みや胸やけ、吐き気などといわれていますが、早期の段階ではほぼ無症状です。自分で気付くのはまず難しいため、早期発見をするには定期的に健診(検診)を受けていただくことが重要です。胃内視鏡検査は、大腸内視鏡検査と比べて抵抗を感じる患者さんは少ない印象がありますが、それでも進行状態で見つかる方もたびたびいらっしゃるのが現状です。まずは自覚症状の有無を問わずご自身の健康状態を定期的にチェックする習慣をつけていただき、異常が指摘された場合は早い段階で治療ができるようにしましょう。

胃がんの治療

内視鏡検査に抵抗があるという方は、ぜひ一度当院の外来へ相談にいらしていただければと思います。受診をしたからといって医師が強制的に内視鏡検査を決定するようなことはありません。まずは必要性も踏まえてじっくり説明をさせていただきますので、相談をしながら検査の計画を立てていきましょう。

術後の生活も視野に入れ、健康寿命の延伸を目指した手術を提供

胃内視鏡検査の結果、内視鏡治療の適応とならない腫瘍が見つかった場合は開腹手術もしくは腹腔鏡下手術を検討します。胃がんの手術では肺に近い部分の処置になるため、呼吸器の状態などを踏まえて、どちらの方法が適しているかを判断します。胃は食事に直結する臓器ですので、患者さんの術後のQOL(生活の質)も重視しながら治療方針を決定していきます。胃を切除するため、術後はどうしても食べられる量が減ってしまいがちです。ただ、場合によっては幽門ゆうもんという胃の出口を温存することで、食事量の低下をある程度防げる可能性もあります。切除範囲についてはがんの状態や位置によって異なるものの、可能な限り術後の食事のトラブルを軽減し、QOLの維持、ひいては健康寿命の延伸がかなえられるよう努めています。

胃がんの治療

がんの根治も重要ですが、手術を無事に乗り切ることも重要です。高齢の方やほかに病気を患っている方の場合は手術のリスクが高いこともあるため、慎重に検討を重ねて判断をします。なお、手術が可能であったとしても、よく分からない状態で手術を受ける決断をするのは大きな不安が伴うことでしょう。当院では、十分な理解と納得を得たうえで治療選択いただけるようご本人やご家族を含めてよく相談をし、よりよい治療選択をサポートできればと考えています。お困りの際は1人で悩まずぜひ我々に頼っていただければと思います。

解説医師プロフィール

緩和ケア病棟・通院外来

病棟をリニューアルし、より穏やかに過ごしていただける環境を整備

緩和ケア病棟は、がんを治す治療を希望されない方や治療継続が困難となった方が心や体のつらさを和らげながら、自分らしく過ごしていただくための病棟です。当院の緩和ケア病棟自体は1995年に開設しましたが、2022年にリニューアルしました。病床数は20床から30床に増床し、より多くの方に療養いただけるようになりました。全室個室のため、ご自宅のような環境の中で落ち着いてお過ごしいただけます。

緩和ケア病棟・通院外来

当院は緑豊かな環境に立地しており、お部屋からの景色も自然であふれています。暖かな日差しが差し込み、小鳥のさえずりも聞こえる穏やかな空間となっています。病棟は平屋建てなので、車いすのままお散歩に出かけることも可能です。また、ベッドのまま出られるテラスも新たに設置しました。お体の状態を問わず外の空気に触れリラックスいただける環境を整えています。

“自分らしい”生活を送っていただけるように

当院では、毎週金曜日に緩和ケア通院外来を行っています。他院でがん治療中の患者さんで将来的に当院への入院をご検討されている方は、お気軽にご相談いただければと思います。通院外来は、“少しでもご自分らしい生活を送ってほしい”という思いのもとスタートしました。入院前からお付き合いをさせていただくことで信頼関係を構築できますし、大切にされていることなどお話をたくさん伺うこともできます。もしも将来的にお話が難しくなってしまったとしても、外来で伺った患者さんのお気持ちを大切にしたケアがかなえられればと考えています。

緩和ケア病棟・通院外来

“緩和ケア”と聞くとつい不安になってしまうかもしれません。以前は終末期に行われる治療とされていましたが、近年ではがんと診断された時から治療と並行して行うものとされています。当院の外来も決して後ろ向きなものではなく、実際、診療の合間にする趣味や旅行のお話などの雑談を楽しみに来られる患者さんもいらっしゃいます。一度受診いただければきっと和気あいあいとした雰囲気が伝わると思いますので、まずは軽い気持ちで来院いただけるとうれしいです。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2024年6月5日
先生に無料でメール相談する