脳神経外科診療を支える
矢木脳神経外科病院
︎包括的な脳疾患診療の重要性
日本では高齢化が進み、75歳以上の人口は2054年まで増加し続けるとされています。その後、減少に転じるものの、2065年には約4人に1人が75歳以上になることが推計されています。
高齢化に伴って、脳卒中や認知症にかかる人も増加すると考えられています。一般的に、脳卒中は脳神経外科、認知症は脳神経内科や精神科などと、同じ脳の病気でもそれぞれ別の診療科で扱われることが多々あります。しかし、認知症には脳卒中に関連して発症する“血管性認知症”もあり、脳卒中と認知症はまったくの無関係ではありません。また、脳梗塞があると認知症の発症リスクが高まることも報告されており、脳卒中予防が認知症予防につながることが分かってきています。
これらのことから、今後は脳神経外科においても総合的な視点を持って診療にあたることが求められます。
幅広い世代の健康を守り、
生活の質を支える存在へ
当院では2024年4月より、認知症診療(もの忘れ外来)を開始しました。包括的な脳疾患診療を提供することで、可能な限り多くの患者さんの健康を守り、命を救うことが当院の使命だと考えております。 また、脳疾患は高齢者だけの問題ではありません。若い世代の方の中には片頭痛に悩まされる方も少なくないでしょう。当院では、幅広い世代の方々を支える脳疾患診療を提供しています。皆さまが安心して有意義な日常生活を送れるよう、これからも診療体制の整備に努めてまいります。
予防からリハビリテーションまで、
患者さん目線の脳疾患診療を提供する
当院では可能な限り新しい設備を導入し、脳卒中の予防にも取り組んでいます。脳卒中は「突然起こる防ぎようのない病気」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。当院の脳ドック*では最新鋭のMRIによる高精度な検査を行っており、脳卒中の早期発見に努めています。早期に発見できれば治療の可能性が広がりますし、認知症の予防にもつながります。生活習慣病を指摘され始める40~50歳代の方々には、ぜひ一度当院のMRI検査を受けていただきたいと思います。
また、もし脳卒中になったとしても、当院では検査から手術、リハビリテーションまで迅速に院内で完結できる体制を整えています。治療と同様、リハビリテーションも早く開始すればするだけよい結果につながります。リハビリテーション専門スタッフの充実を図っており、92床という病床数に対して、療法士30名(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、管理栄養士4名が在籍しています**。
当院はこれまで、常に患者さん目線で診療や病院づくりにまい進してきました。これからも地域や時代に必要とされる医療を提供してまいります。ぜひお気軽にお越しください。
矢木脳神経外科病院の
脳梗塞・脳動脈瘤・
片頭痛・認知症の治療
脳梗塞の治療
より多くの命を救うべく、診断精度の向上に取り組む
脳梗塞の治療には外科治療のほかにtPA 静注療法やカテーテルを用いた血管内血栓回収療法などがあり、基本的に時間との勝負です。一般的に血栓回収療法の適応は発症後8時間以内とされますが、当院ではより多くの患者さんを救うべく、時間で区切らない脳梗塞診療を追求しています。この診療体制を支えるのが、RAPIDという診断補助システムです。RAPIDは患者さんのCTやMRIの画像から、すでに脳梗塞になっている領域/これから脳梗塞になる可能性のある領域を自動で解析することができます。治療の適応時間を経過していても、脳梗塞になっている領域が限られている場合は血栓回収療法が有効な可能性があります。反対に、脳梗塞の範囲が広い場合には血栓回収療法がかえってリスクになるケースもありますので、当院では最新技術*を駆使しながら診断精度のさらなる向上を図り、より安全で的確な治療をスピーディーに提供できるよう努めています。
充実した設備と迅速な治療体制を整える
当院は開院当初から脳卒中ケアユニット(SCU)を12床備えるなど、患者さんを救うために治療設備を充実させてきました。SCUでは、血管内治療後2週間ほど血圧や血糖のコントロールなど徹底した術後管理を行います。脳卒中治療に特化したSCUを備えることは、再出血や再発の防止、死亡率の低減に有用であることが報告されています。なお、繰り返しになりますが、脳卒中治療において重要なのは、兎にも角にもスピードです。特に脳梗塞においては、1分治療が遅れると脳の細胞が約190万個失われるといわれていますので、発症してからいかに短時間で治療を行えるかがカギとなります。当院は救急室からCT・MRI室、そして血管撮影室への移動距離が短く、迅速に治療に入ることができます。脳神経外科診療を専門とする病院ならではの強みを生かし、可能な限り後遺症を最小限に抑えられるよう治療に臨んでいます。
当院は治療体制に万全を期していますが、脳卒中を未然に防ぐことはやはり重要です。40~50歳代の方には、一度MRI検査を受けて、自分の脳の状態を知っていただきたいと思います。脳卒中のリスクを予防できれば、認知症の予防につながります。ぜひ気軽に当院にお越しください。
脳動脈瘤の治療
安全な治療を最優先に据えた脳動脈瘤治療
脳動脈瘤の治療には、コイル塞栓術による脳血管内治療と開頭クリッピング術による直達手術があります。当院には、日本脳神経血管内治療学会認定の脳血管内治療専門医および日本脳神経外科学会認定の脳神経外科専門医が揃っており、どちらの治療にも対応しています。
当院では、安全に治療を終えることをもっとも重要視しております。私(小川 大二)は基本的に開頭手術を専門とする医師ですが、全ての症例に対して開頭クリッピング術を推奨しているわけではありません。脳動脈瘤の形状や大きさ、位置などを総合的に判断し、血管内治療のほうが安全であると判断した場合は、コイル塞栓術を提案し、血管内治療を専門とする医師にお任せする体制で治療にあたっています。脳神経外科専門医としてこれまで蓄積した経験をもとに、患者さん一人ひとりにとって、安全で効果的な治療法を提供することを心がけております。
病態に応じて患者さんに寄り添う診療を提供
脳内に埋没している脳動脈瘤が破裂した場合、くも膜下出血だけでなく脳内血腫(血の塊)も合併する場合があります。血腫が大きい場合、脳の深部である脳幹にまで圧迫が及ぶと呼吸機能障害や昏睡を引き起こし、時に命に関わることもあります。その場合、開頭クリッピング術の治療と併せて直視下に血腫を取り除くことも可能ですが、高齢の方の場合は、体の負担を軽減できるように、脳動脈瘤は血管内治療によるコイル塞栓術で治療を行い、脳内血腫は侵襲の少ない内視鏡を用いて血腫を除去することもあります。当院では病態や患者さんの体の状態を適切に判断して、患者さんごとにふさわしい治療を可能な限り安全に行える環境を整えています。
脳動脈瘤は、何よりも未破裂の状態で早期に見つけることが重要です。生活習慣病を指摘された方などは、ぜひ脳ドック(MRA・MRI検査)を受けていただきたいと思います。また検査の結果すぐに治療が必要でない場合でも、当院で継続的にフォローを行います。脳動脈瘤の大きさや形状の変化を見逃さず、治療適応となった場合には、すぐに対処できる体制で患者さんをサポートいたしますのでご安心ください。
片頭痛の治療
脳神経外科病院だからこその頭痛診療で適切な診断につなぐ
片頭痛は名前のとおり、頭の片側がズキンズキンと痛むものとしてイメージされがちですが、実際には頭の両側が痛むことや、締め付けるような痛みが生じることもあります。まずは一度、ご自身の頭痛が片頭痛かどうか適切な診断を受けることが望ましいでしょう。
当院では、日本頭痛学会認定の頭痛専門医が頭痛診療を行っています。頭痛診療を専門とする医師が検査・診断を行っていますので、適切な診断に結び付きやすいと自負しております。また、当院は脳神経外科を専門とする病院ですので、充実した設備を生かした頭痛診療ができることも特徴です。導入しているMRIは従来のMRIよりも磁力が強く、より鮮明な画像で脳の異変を検出することが可能です。CTについてもAI機能を搭載したCTを導入しており、体への負担を抑えつつ、より確実な診断につながるよう設備を充実させています。
なお、より適切な診断につなげるためには、医師によるMRI画像の読影技術も欠かせません。当院の医師陣はもともと脳神経外科を専門としているため、日ごろからMRI画像の読影診断を重ねてきています。片頭痛以外の脳の病気が隠れていないかをしっかり見たうえで適切な診断につなげられるよう診療に真摯に向き合っています。
継続的な治療を実現できるよう患者さんをバックアップ
検査の結果、片頭痛と診断された場合は即日治療に移行することもできます。片頭痛と診断された方へは、発作に対する痛み止めを処方するほか、予防のための内服薬を処方できます。内服薬による発作予防効果が見込めない方へは注射の予防薬も検討します。注射の予防薬は近年投与することができるようになった新しい薬で従来の予防薬と比較して効果が高いと言われており、片頭痛に悩まれている患者さんで適応がある方はぜひ試していただき効果を実感していただければと考えます。当院では、まず1~2か月ほど予防薬内服を続けていただき、様子を見たうえでその後の治療方針をご提案しています。
当院で注射薬による治療を行う場合は、基本的には月(4週間)に1回通院いただき、薬を投与します。3か月(12週間)に1回の注射で治療を進められるタイプの薬もあるため、さまざまな事情でお忙しい方でも、片頭痛の予防治療を受けていただきやすいと思います。当院では患者さんのライフスタイルに大きな影響を与えることなく、QOL(生活の質)の向上を目指してまいります。
認知症の治療
脳外科と神経内科の診療経験を生かした“もの忘れ外来”を開設
当院では、2024年に“もの忘れ外来”を開設いたしました。「もの忘れ」と聞くと「認知症ではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、もの忘れには老化によるものと認知症によるものがあります。経験そのものをすっかり忘れるような、日常生活に支障をきたすもの忘れは認知症の可能性があります。認知症は早期に発見することで治療の効果がより見込めるものや治せるものもあるため、ぜひ一度当院のもの忘れ外来へお越しください。
当院では日本認知症学会認定 認知症専門医・日本神経学会認定 神経内科専門医が、診療経験を生かしながら患者さんを診療しています。私(久永 學)は脳神経外科医として、これまで積み重ねてきたMRIの画像診断の経験をもとに、適切な診断につながるよう努めています。また患者さんと年齢が近いためお気軽に相談していただきやすいのではと考えております。お気持ちに寄り添った診療ができると自負しておりますので、お困りのことがあればぜひ一度お話しましょう。
新薬による治療から生活支援まで――患者さんとご家族を幅広くサポート
認知症の方はご自身が認知症であることを自覚していない場合も少なくありません。そのため、適切な治療を行うためにはご家族や周囲の方が受診を促すことも重要でしょう。また、来院の際にはご家族にもお越しいただき、患者さんの普段の様子などをお話しいただくことで、具体的な状況を把握しながら、可能な限り適切な診療に結び付けることができます。
当院ではレカネマブを用いた治療を行うことができます。レカネマブは2023年末に保険適用となった新薬です。認知症の進行を遅らせる効果が期待できますので、まずはお気軽にご相談ください。また、当院が所属する弘善会グループでは、介護施設(グループホームなど)も運営しています。認知症患者さんを法人全体でサポートできることも当院ならではの強みです。認知症患者さんを支えるご家族も大変な思いをしていることが多いかと思います。ご家族のみで悩む必要はありませんので、ぜひ我々を頼っていただければ嬉しいです。協力をしながら、一緒に患者さんをサポートしていければと思います。
なお当院では、診断の結果認知症ではなくても、定期的に受診いただき認知機能を見守ってまいります。認知症に限らず、脳に関して不安がある方は、ぜひ当院へお越しください。
- 公開日:2024年11月25日