横須賀市民の健康を守る
KKR横須賀共済病院の医療体制
「よかった。この病院で」を理念に掲げ、適切な医療を地域の皆さんに
当院の歴史は古く、1906 年に横須賀海軍工廠共済会病院として開設されました。以来、「よかった。この病院で」を理念として、「いつでも質の高い医療を提供し、地域になくてはならない病院」を目指しながら、横須賀市を含む三浦半島の中核的な病院として皆さんに安心していただける医療環境の構築に励んでいます。当院ではがんや脳卒中をはじめとする患者さんを受け入れ、2017年には手術中の出血量を抑え患者さんの肉体的負担を軽減できる手術支援ロボット、ダヴィンチを導入するなど、常に新たな治療法・医療機器の導入に尽力しています。「救急全応需」を目標として掲げ、急性期医療を提供しています。
内閣府プロジェクトへの
参加の経験を地域に還元
KKR横須賀共済病院の
先進的取り組み
地域全体で患者さんをお守りする
システムを構築
当院は2018年に内閣府「AIホスピタル」プロジェクトに参画し、患者さんがより快適に医療を受けられるよう院内DX化(デジタル技術を用いた院内業務の改善)に取り組んできました。そのノウハウと知識をもとに、地域医療の効率化の一環として、横須賀市を中心に患者さんの医療・介護情報を地域の医療機関などで相互共有するためのネットワークシステム「さくらネット」を立ち上げ、運用を開始しました。患者さんの同意のもと情報を共有し、検査の重複や誤った薬の処方を防ぐほか、初めて行く病院に救急搬送された場合や、災害などでカルテを閲覧できない場合も医療者が素早く患者さんの情報を取得し、正しく対処することができます。
KKR横須賀共済病院の
未破裂脳動脈瘤、不整脈、
虚血性心疾患の治療
未破裂脳動脈瘤の治療
経過観察と治療選択を慎重に判断
未破裂脳動脈瘤は、脳動脈において多くの場合で分岐部にできる膨らみのことです。はじめは無症状のことが多いものの、大きくなり破裂するとくも膜下出血を引き起こすことで死亡する可能性にもつながりますし、生存しても後遺症で寝たきりになることも少なくありません。脳ドックなどの機会で発見されることもあれば、頭部のMRI検査で偶然見つかることもあります。当院では、未破裂脳動脈瘤の場所や大きさ、患者さんの年齢、生活状況などを考慮して治療方針を検討します。
MRI検査の結果だけで治療法が検討できない場合は、脳血管撮影(カテーテルを用いた脳血管のX線検査)を行い、未破裂脳動脈瘤の形や大きさをさらに詳しく検査します。
未破裂脳動脈瘤の当院の治療法には、開頭術によるクリッピングと、血管内手術があります。開頭術によるクリッピングは、小さなクリップで未破裂脳動脈瘤の首の部分を閉塞し、未破裂脳動脈瘤への血流をせきとめる方法です。血管内手術は、血管の内側からコイルをつめて、未破裂脳動脈瘤内の血流を遮断して破裂を防ぐ方法です。どちらの治療法を用いるか、未破裂脳動脈瘤の場所や形などを考慮し、医師が判断して患者さんに提示します。どちらの治療も選択せず、慎重に経過を追う場合もあります。
何度もお話をして、ご納得いただいてから方針を決定
当院では未破裂脳動脈瘤のある場所や大きさ、形、個数、患者さんの年齢などの要素を考慮してすぐに治療を行うか経過を追うかの判断をします。即座の治療が必要ではない場合でも、「未破裂脳動脈瘤があると思うと怖くてお風呂にも入れない」など心理的不安で生活に支障が出るという患者さんには、治療を検討する場合もあります。患者さんと何度でもお話をして、患者さんにご納得いただいたうえで方針を決定します。
当院ではおおむね、開頭術によるクリッピングは術後順調であれば1週間前後、血管内手術は術後順調であれば5日前後の入院になります。開頭術によるクリッピングは長期の効果が期待でき、退院後に一度外来で状態を確認した後は、当院ではおおむね2〜3年受診の必要はないと伝えています。血管内手術は開頭せずに行うことができますが、当院では退院後も3か月に一度、半年に一度などの頻度で来院いただき、未破裂脳動脈瘤内のコイルの状態などの経過を確認しています。
未破裂脳動脈瘤の発生を予防することは難しいと考えています。ただ、ご家族にくも膜下出血患者さんのいる方は、未破裂脳動脈瘤ができたり、それが破裂しやすかったりする場合があります。ご家族にくも膜下出血を発症したり、動脈瘤を指摘されたりした方がいる場合は、定期的に脳ドックを受けることをおすすめします。
不整脈の治療
心房・心室の不整脈にそれぞれ適した治療を実施
心臓の収縮は、心臓の上部にある洞結節という細胞から規則正しく発信される電気信号が、刺激伝導系(電気信号の通り道)を介して心臓の筋肉全体に伝わることによって起こります。頻脈性不整脈は、この刺激伝導系や心臓の筋肉に異常な電気信号の発信源や電気の渦(旋回路)が発生し、脈が早くなったり、不整になったりする病気です。カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)は、この頻脈性不整脈の治療法の一つであり、カテーテルを使用して原因となる部位または回路の心筋を壊死させ不整脈が起こりにくくします。
横須賀共済病院循環器センターでは直近の10年間において、のべ7000件以上のカテーテルアブレーションを行っていますが、そのうちの80%程度が心房細動の治療です。当院では、心房細動のカテーテルアブレーションの黎明期である2003年から本格的に治療を開始しました。これまで、全国各地の医療機関からご紹介をいただいて、多くの患者様の治療を担当してまいりました。これらの経験に基づいて、心房細動が長く持続してしまった難治性の患者様についても治療を行ってまいります。
また心室性不整脈には、心室性期外収縮や致死的不整脈(心室頻拍)があります。心室性期外収縮は脈が1拍欠けたように感じるもので、当院では1日に5,000〜10,000回の心室性期外収縮がある場合を治療の適応とし、薬物治療とカテーテルアブレーションを選択肢として提示します。
心室頻拍は、基礎心疾患で心臓のはたらきが低下した患者さんに起きることが多く、緊急の検査・対応が求められます。当院は、心室頻拍アブレーション治療の最先端病院であり、全国から多くの患者さんを紹介いただいております。
左心耳閉鎖術やリードレスペースメーカーなどにも対応
当院は心房細動で血栓ができやすい左心耳(左心房の中の袋状の構造物)をカテーテルを用いて閉鎖する左心耳閉鎖術を施行しています。これにより心房細動患者様の脳梗塞のリスクの低減を目指しています。
また、徐脈性不整脈の患者さんに対してリードレスペースメーカの植え込みも多数施行しております。これはカテーテルで小さなペースメーカの本体を心臓内に留置する手術で、皮下ポケット(ペースメーカ本体を埋め込むために皮膚の下に作るスペース)もリード(ペースメーカ本体に接続した細い電線)も不要なため、患者様の術後の生活のご負担が少なくなることが期待できます。当院はこの左心耳閉鎖術、リードレスペースメーカの認定病院であり、この手術の全国への普及に努めています。
ほかにもICD(埋め込み型除細動器)やCRT-D(両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器)の植え込み手術や、感染症などによりペースメーカーのリードのレーザー抜去術なども行っています。
不整脈疾患のすべての治療に対応している施設ですので、不整脈に関するお悩みがあればご相談ください。
虚血性心疾患の治療
狭心症や心筋梗塞などを含む心臓の病の検査に対応
虚血性心疾患の中でも代表的な病気は、狭心症と心筋梗塞です。胸の痛みや圧迫感に加えて心電図に異常がある、または症状がなくても心電図に異常がみられた患者さんや、心不全を発症していて息苦しさを感じている患者さんについては狭心症を疑います。当院では問診で詳しく症状を伺うほか、心電図検査とX線検査、エコー検査、血液検査などを実施して診断します。
問診の結果、心筋梗塞への移行の心配が少ない安定狭心症だと思われる場合は、当院では運動負荷心電図検査を行います。運動負荷心電図検査は、ランニングマシンなどで運動をして心臓に負担をかけ、安静時には現れない異常を見つけるための検査です。安定狭心症と診断した場合、当院ではさらに、冠動脈に狭窄や閉塞があることを確認する冠動脈CTや心臓カテーテル検査、心臓に十分な血液が供給されているかを確認する心筋血流シンチグラフィの3つの検査法を患者さんに提示します。
カテーテル検査は当院ではおおむね受診の当日または翌日に行いますが、実施後基本的に1日の入院が必要です。患者さんによっては、外来で可能な冠動脈CTや心筋血流シンチグラフィを選択されることもあります。
狭心症に対して、当院ではまず薬物療法を行い、十分な改善が得られない場合はカテーテル治療か冠動脈バイパス術が適応となります。カテーテル治療は手首の動脈から、カテーテルと呼ばれる細い管を冠動脈の局所に進め、バルーン(特殊な風船)やステント(金属の筒)で血管の狭くなった部分を広げて、血流を改善する治療法です。冠動脈バイパス術は、冠動脈の狭くなった部分より先の部分に穴を開け、患者さんの体のほかの部位から血管を採取し、縫い付けることで血流を改善する外科手術です。
心筋梗塞は強い胸の痛みや胸部の圧迫感が代表的な症状です。症状は狭心症に似ていますが、安静にしても治まらない点が異なります。心筋梗塞を発症した場合は、できる限り早く治療を開始することが重要です。当院では心筋梗塞の患者さんに対してできる限り早い治療を行うため、24時間緊急でカテーテル治療に対応する体制を整えています。
心筋梗塞の治療後は心臓リハビリテーションを実施
カテーテル治療終了後は、心疾患集中治療室でおおむね1日安静にして合併症に備えます。その後は心臓の機能を回復させるために、徐々に心臓リハビリテーションを行います。心臓リハビリテーションには運動療法と包括的なリハビリテーションがあります。運動療法は身体機能を回復するためのもので、当院では医師が患者さんの心拍数や血圧をみて運動量を判断し、それに沿って実施します。包括的なリハビリテーションは心筋梗塞の再発予防のためのもので、生活指導や栄養指導、禁煙指導などを実施します。必要に応じて退院後も通院で心臓リハビリテーションを継続し(保険適用は退院後半年間)ます。
狭心症と心筋梗塞は、心不全の原因となる病気です。胸の症状や心電図の異常がある場合は、できるだけ早く医療機関に相談し、精密な検査を受けるようにしてください。
- 公開日:2024年12月25日