横浜市の脳疾患の診療

横浜市の脳疾患の診療

競争激化する横浜北部医療圏で
「選ばれる病院」になるために

競争激化する横浜北部医療圏で「選ばれる病院」になるために

横浜市は全国の市の中でもっとも多くの人口を抱えており(2019年時点)、その中でも青葉区は市内で第2位の人口規模を誇っています(2023年時点)。青葉区を含む横浜北部医療圏には、半径10km圏内に3つの大学病院と300床以上の規模を持つ病院が10施設以上存在しています。医療施設が不足している地方とは対照的に、病院が多く存在するこのエリアでは、医療機関間の競争が激化しており、各病院には選ばれるための努力が求められています。
また近年、脳疾患の患者さんが若年化しています。この増加の背景として、24時間営業の店やインターネットの普及、スマホやSNSの過剰利用、高カロリーな食事が若者の生活習慣に影響を及ぼし、そのストレスの蓄積が脳疾患につながっていることが指摘されています。そんな状況のなか、各病院は「選ばれる存在」になるために、治療の質向上や迅速な対応を追求しています。特に競争が激化しているこのエリアでは、医療の質やスタッフの接遇が病院の評価に大きく影響し、選ばれるための重要な鍵になると考えています。

横浜市の脳疾患医療を支える
横浜新都市脳神経外科病院

横浜市の脳疾患医療を支える横浜新都市脳神経外科病院

脳卒中医療に特化した
迅速かつ包括的な医療体制

大学病院は多科にわたる設備が整い集約的な治療が可能ですが、民間病院は機動力と迅速な対応が強みです。当院は脳卒中に特化しており、発症から治療までの対応時間の短縮によって患者さんの予後改善に寄与しています。加えて、「24時間365日受け入れ可能な体制」「断らない医療」を目指して軽症から重症までを広く受け入れ、予防的治療の強化にも注力しています。また、リハビリテーションにおいては急性期と回復期の両方を扱える点が特色です。60床の回復期病棟を持ち、同じチームで継続的なリハビリテーションが可能であることが大きな強みとなっています。
日本では脳血管障害がもっとも多いのですが、アメリカやヨーロッパでは脊椎・脊髄せきずいの外科的治療が8割を占めています。高齢化社会の進展により、脊椎や脊髄の外科的治療の需要は今後増加すると考えられます。脳神経外科を専門とする病院として包括的に取り組んでいくためにも、2023年4月に、脳、脊髄、末梢神経、筋肉に生じるさまざまな病気の診療を行う脳神経内科、そして脊椎外科を新設するなど、対応力の強化に努めています。

院長プロフィール
森本 将史 先生
森本 将史先生

横浜新都市脳神経外科病院の
脳疾患治療

未破裂脳動脈瘤の治療

血管内治療から開頭手術まで、安全性を最優先に

脳動脈瘤のうどうみゃくりゅうはくも膜下出血の主要な原因であり、80~90%は脳動脈瘤が破れることでくも膜下出血を引き起こします。未破裂脳動脈瘤は、それがまだ破れていない状態です。以前は、多くの方がくも膜下出血を経験して初めて脳動脈瘤に気付くことが一般的でしたが、最近では健康意識の高まりから、脳の検査を受ける方が増えています。その結果、破れる前の未破裂脳動脈瘤が発見されるケースが増加しています。実際に当院では、年間約200件の動脈瘤治療を行っており、そのうち約8割が破れる前の未破裂脳動脈瘤の患者さんです。動脈瘤のリスクには遺伝的要素が大きく影響していますが、遺伝だけではなく、高血圧など後天的要因もリスクの一因になると考えられています。また、ストレスがリスクに関与している可能性もありますが、データとしてはまだ証明されていません。

大腸がんの早期発見と治療

未破裂脳動脈瘤の治療は、70歳以下では動脈瘤の最大径5mm以上が治療の目安とされています。ただし、動脈瘤の位置や家族歴、患者さんの不安度も考慮したうえで、手術の安全性が高いと判断されれば2、3mmの小さいものでも手術が行われることがあります。小さな動脈瘤は破裂のリスクが低いものの、カテーテルを使う治療を行うのが難しいというのがあります。多くの患者さんは開頭手術を避けたがるため、治療の選択肢は慎重に考える必要があります。患者さんの希望と、安全にできるかどうかの医師の判断。当院ではこの2点を重々考慮するようにしています。
動脈瘤の治療では、可能な限り血管内治療(カテーテル治療)が優先されます。カテーテルを使う治療では、脳動脈瘤の破裂を防ぐために細いカテーテルを脳の血管に入れて瘤の中にコイルを詰めていきます。しかし、この治療はコイルが正常血管に逸脱し、詰まってしまうリスクが伴うため、医師は患者さんの希望を尊重しつつ、難しい症例では開頭手術を選択することもあります。また、最近では、ステントを使用するフローダイバーターステント治療という最新治療も注目されています。従来のコイルを用いる治療に比べて、動脈瘤の薄い壁にカテーテルやコイルを挿入するリスクが低くなりますが、フローダイバーターのステントは網目が密で血栓ができやすいため、現在は脳の太い血管にしか使用できません。最終的にはどの治療法が安全に行えるかを考慮して治療法を選択します。

安全を第一に、患者さんの希望も考慮した治療選択による脳治療を提供

当院は血管内治療(カテーテル治療)と開頭手術の両方を同じチームで行えるため、それぞれの視点に合わせて患者さんに適した治療法を判断できます。また、全国的に症例数が多く、経験から安全性に配慮した選択が可能です。動脈瘤破裂の予防につながる未破裂脳動脈瘤の手術は、緊急手術と異なり時間に追われないため、患者さんは病院選びを慎重に行う必要があります。予防手術の質が高いことが重要であり、脳に関する手術は人生に大きな影響を与えるため、選択には特に注意が求められます。そのため、医療機関は治療の結果で患者さんに応えることが大切だと考えています。

安全を第一に、患者さんの希望も考慮した治療選択による脳治療を提供

動脈瘤は検査で発見可能ですが、脳梗塞のうこうそくや脳出血は100%の予防が難しい病気です。特に40歳を超えたら脳検査を受けることをおすすめします。また、動脈瘤の手術は命に関わるため、症例には院長である私ができるだけ関与するようにしています。丁寧なコミュニケーションを重視し、患者さんに対して自分が全責任を持つことを明確にするようにしています。

解説医師プロフィール
森本 将史 先生
森本 将史先生

頸動脈狭窄症の治療

頸動脈狭窄症の症状と早期診断の重要性

頸動脈狭窄症けいどうみゃくきょうさくしょうは、動脈硬化によって頸動脈にプラーク(コレステロールなどの沈着物)が沈着し、脳への血流が悪くなる病気です。初期には自覚症状が少なく、進行すると一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞のリスクが高まります。頸動脈狭窄症のリスク要因には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などが挙げられ、特に男性や高齢者に多くみられる病気です。クリニックで偶然狭窄が見つかることもありますが、動脈硬化のリスクがある方には、早めに頸動脈超音波検査などを受けることが推奨されています。

頸動脈狭窄症の症状と早期診断の重要性

頸動脈狭窄の典型的な症状には、手足のしびれや力が入らない、言語障害、視力障害などがあります。これらは一過性脳虚血発作といわれる軽い脳梗塞の前兆のような症状の可能性があり、症状がある場合はたとえ一時的なものであっても病院を受診する必要があります。頸動脈狭窄を放置すると脳梗塞のリスクが高まるだけでなく、最悪の場合、重篤な後遺症が残ることもあるので、早急に脳神経外科や脳神経内科を受診することが大切です。

脳神経外科と脳血管内治療を担うメンバーが連携し、治療に対応

当院の外来で行える検査には、頸動脈超音波検査、磁気を使って頸動脈を観察するMRアンギオグラフィー(MRA)検査、血管の状態を詳細に観察するCTアンギオグラフィーなどがあります。特に超音波検査は体への負担が少なく、初期の発見に役立ちます。狭窄が見つかった場合は、MRAで詳しく調べ、血管造影検査は造影剤を用いてさらなる評価を行います。また、頸動脈狭窄症の診断がつき、外科的治療を検討する場合は、状態やリスクに応じて血管撮影検査を入院で行います。

脳神経外科と脳血管内治療を担うメンバーが連携し、治療に対応

治療法には、頸動脈内膜剥離術けいどうみゃくないまくはくりじゅつ(CEA)と頸動脈ステント留置術(CAS)があります。また、狭窄が高度に至っていなかったとしても、狭窄が進行している場合やプラークが不安定な場合も治療が検討され、狭窄の程度や症状の有無が治療判断の基準となります。CEAは頸部を切開して、血管にたまったプラークや血栓を取り除く手術です。一方、CASは狭窄部位にステントという網目状になった金属製の筒を留置し血流を改善する、カテーテルを用いた治療です。CASは体への負担が少ないため、最近ではこちらが優先される傾向にありますが、患者さんの腎機能や喘息などの状態によってCEAが選ばれることもあり、患者さんの年齢や病変の場所・症状などを総合的に考えてより適した治療方法を決定します。
当院では、脳神経外科と脳血管内治療を担うメンバーが連携し、頸動脈狭窄の患者さんに適した治療法を提供しています。また、個別対応を重視し、手術を行わない場合でも生活習慣病の管理や動脈硬化リスクの低減に向けた指導や薬物療法を行い、再発予防にも力を入れています。頸動脈狭窄や脳血管疾患では、早期の診断と治療が不可欠であり、気になる症状がある場合は、当院へご相談していただければと思います。

解説医師プロフィール
福田 慎也 先生
福田 慎也先生

脳梗塞の治療

脳梗塞治療は時間が勝負ーー急性期における再開通治療の重要性

脳梗塞は、脳の血管が詰まることで酸素や栄養が脳に供給されず、脳細胞が死んでしまう病気です。主な症状として手足の半身麻痺、言語障害、顔の歪みなどが多くみられます。脳梗塞には大きく分けて、細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」、太い血管が動脈硬化で詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓の血栓が原因で起こる「心原性脳塞栓症しんげんせいのうそくせんしょうしんげんせいのうそくせんしょう」の3タイプがあります。発症年齢は原因によって異なり、50~80歳代が多いものの、若年層でも発症することがあります。発症の原因としては遺伝的要因に加えて、食生活や飲酒・喫煙といった生活習慣などが大きく影響していることがよくあります。
また、動脈硬化は自覚症状がほとんどなく、血管が詰まって脳梗塞を起こして発覚するか、その前段階となる一過性脳虚血発作を起こす直前で初めて症状を自覚するケースが多くみられます。動脈硬化の進行状況を確認するためには、頸動脈超音波検査やMRIでプラークや血管の狭窄を検査することが有効です。これにより、動脈硬化が進んでいることを把握し、生活習慣の改善を図ることで脳梗塞の予防につなげることができます。

脳梗塞治療は時間が勝負ーー急性期における再開通治療の重要性

脳梗塞が発生した際、もっとも重要なのは詰まってしまった血管に再び血液が流れるようにする急性期の緊急再開通治療です。脳梗塞の治療は時間との闘いです。脳に詰まった血栓を注射で溶かす「t-PA静注療法」や、カテーテルを使って血栓除去を行う「血栓回収療法」が有効で、t-PA静注療法は発症後4.5時間以内に治療を開始することとされています。しかし、急性期は症状が非常に変動しやすいため、実際にt-PA静注療法を受けられるのは全体の2割程度です。緊急再開通治療が適用とならない患者さんについては、抗血小板薬、抗凝固薬、点滴治療を増やすなど、脳梗塞になりにくくさせるための急性期の一次予防の治療を行います。

多部署連携で来院から治療開始までの時間を20分台に短縮

多部署連携で来院から治療開始までの時間を20分台に短縮

横浜新都市脳神経外科病院

脳梗塞を一度治療した患者さんの約半数が、10年以内に再発する可能性があるとされています。再発率の高さから、治療後も注意深い管理と生活習慣の見直しが重要です。当院では、退院時に必ず管理栄養士が関与し、自宅へご帰宅前の患者さんの生活習慣を整えたり、血圧や体重(BMI)を可視化することで患者さんの健康管理をサポートしています。一緒に改善に取り組むことで、患者さんが目標に向かって努力できるよう支援することが当院の慢性期(病状が安定してはいるが、治癒は困難で長期的な治療を必要とする時期)の治療の特徴です。また、当院では、看護師、診療放射線技師、検査技師、薬剤師、事務などの複数のスタッフが協力し、救急体制強化の取り組みを専門に行うチーム(Acute Stroke Team)を組み、来院から治療開始までの時間(Door to Puncture Time)の短縮に取り組んでいます。全国平均60分のところ、当院は20分台を達成し(2024年9月時点)、世界的にも非常に早い対応が可能になっています。患者さんには早期発見や予防も大事にしてほしいですし、もしも何か異変を感じたら、すぐに救急車を呼んで病院へ行っていただくのが一番だと思います。

解説医師プロフィール
山﨑 英一 先生
山﨑 英一先生

もやもや病の治療

MRAとSPECTを用いた診断が治療方針の判断に寄与

もやもや病は遺伝的要因が影響し、内頸動脈の一部が細くなる病気です。通常、動脈は高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病で細くなりますが、もやもや病の場合はそうではありません。血管が細くなることで脳への血流が減少し、体は代償的に細い血管を多く作ります。これが「もやもや血管」と呼ばれる血管です。もやもや血管が作られても血流不足から血管が詰まりやすく脳梗塞のリスクは高まります。特に小児期で脳梗塞が発生しやすい傾向にあります。また、大人になると本来の血管が失われ、もやもや血管だけで脳の血流を維持している方もいますが、もやもや血管は壁が薄く、破裂する危険性もあります。そのため、もやもや病は脳梗塞と脳出血の両方のリスクを伴います。

MRAとSPECTを用いた診断が治療方針の判断に寄与

横浜新都市脳神経外科病院

子どもに多いもやもや病の初期症状としては、激しい運動をしたり、ラーメンなど熱いものを食べるときにフーフーと息を吹きかけたりすると、手が動きにくくなったり言葉が出にくくなったりすることがあります。これは脳梗塞の初期にもよく似た症状です。一方、大人の場合は脳内出血が突然起こり、体が動かなくなるなどの症状が出ることがあります。また、脳出血による症状が重篤の場合に救急車で運ばれたり、または外来で偶然、生活習慣病の症状がないのに脳の血管が細くなっていることが発覚したりすることで、初めてもやもや病の診断につながります。なお、早期発見のためには、SPECTスペクト検査が有効です。MRAは太い血管しか見えないため、動脈瘤はもちろん、細くなった血管がある太い血管の異常もすぐに発見できます。ただ、大きな血管が詰まっている場合でも症状がないことがあり、MRAだけではリスクの可能性を十分に判断できないことがあります。そのため、SPECT(脳血流検査)をして、主要血管の閉塞へいそくによってどれくらい脳血流が低下しているかを評価し、治療方針の判断に役立てます。

あらゆるリスクを考慮し、治療アプローチを検討

もやもや病の治療については、主に内科的な治療と外科的な治療の2通りのパターンがあります。もやもや血管が発達している場合、血流が保たれていると経過観察が行われることが多いですが、血流が低下していると脳梗塞のリスクが高まります。脳の血流が低下している患者さんには、血圧管理や脳梗塞予防のための薬が処方されることがあります。また、皮膚の血管を脳につなげる手術を行うことで、皮膚の血管から脳へ新たな血管が作られ、もやもや血管を減少させるという方法もあります。この方法によって、壁の薄い血管が少なくなり、出血のリスクも軽減できるとされています。

脳の病気は一瞬で人生を変えてしまいます。重い後遺症が残るなどした場合、自分では生活がままならない状態で最期を迎えなければならなかったり、周りに介護の負担をかけることへのつらさを伴ったりもします。また、寝たきりや認知症の一番の原因とされているものでもあります。もやもや病は遺伝的要因が関わっているとされているので、もしご家族に脳疾患のある方がいらっしゃる場合、私の見解としては40歳前後で一度脳の検査を受けることをおすすめします。

解説医師プロフィール
森本 将史 先生
森本 将史先生
  • 公開日:2024年12月4日
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