座間市の医療
婦人科のニーズが高まるなか、
人口に対する医療機関の不足が課題
約13 万人が暮らす座間市(2024年5月時点)は、近隣の海老名市などと比較して住民の年齢層が高い傾向にあり、産科よりも腫瘍などの病気を扱う婦人科の需要が高まっています。しかし、不正出血などの症状を相談できる婦人科クリニックの数は、人口に対して多いわけではありません。過多月経や月経痛などの症状を抱えながら仕事をしている女性も多く、医療体制の充実が求められます。また、今後は高齢人口の増加が見込まれており、さまざまな病気を持つ人の増加に備えて地域で支えていくシステムの構築がますます重要になります。また、座間市には在日米陸軍基地“キャンプ座間”が設置されています。外国籍の方にも医療を提供できるよう、言語の問題への対応も求められるでしょう。
座間市の医療を支える
座間総合病院
“みんなを笑顔に”を合言葉に
地域の医療に貢献
座間総合病院は“職員の笑顔を通して、地域の暮らし・医療・介護をつなぎます”という病院使命のもと、地域の人々に医療を提供しています。来院される患者さんやそのご家族に安心していただくためには、職員の笑顔や温かさがとても大切だと考えています。そのため、当院では“みんなを笑顔に”を合言葉に、患者さんやご家族はもちろん、職員の笑顔も大切にしています。2023年4月には念願の救急科が創設され、救急車をより多く受け入れられるようになりました。婦人科領域では、患者数の多い子宮筋腫に対して、カテーテルを使った“子宮動脈塞栓術(UAE)”を積極的に行っています。
今後は地域住民向けの講座や高齢者救急などに注力し、地域医療にますます貢献してまいります。何かお困りのことがあれば、お気軽に当院までご相談ください。
座間総合病院で行う
子宮筋腫の治療
子宮筋腫の治療選択肢
何らかの症状があれば手術や薬物療法、カテーテル治療を行う
子宮筋腫の主な症状は、月経時の出血量の増加(過多月経)や月経痛、筋腫の増大による腹部の圧迫感や排尿障害などです。 筋腫が骨盤内の静脈を圧迫すると血栓が生じることがあり、過多月経により貧血が続くと心不全を引き起こす可能性もあります。子宮筋腫はがんではありませんが、放置すると命に関わる病気なのです。
子宮筋腫があっても症状がなければ治療の必要はなく、何らかの症状がある場合には、手術や薬物療法、カテーテル治療などの治療を検討します。手術には大きく“子宮全摘術”と“筋腫核出術”の2つの方法があります。子宮全摘術は、子宮そのものを取り除くため再発リスクがなく、子宮がんの心配もなくなります。こうした利点から、日本では子宮全摘術が主流となっていますが、術後に腸閉塞などが生じるリスクがあります。また、妊娠ができなくなるため、これから子どもをつくりたい人など、子宮全摘術を希望しない場合には筋腫だけを取る“筋腫核出術”が選択されます。
薬物療法では、対症療法として鎮痛薬や貧血症状を抑える鉄剤などが使用されるほか、低用量ピルの処方や偽閉経療法(薬剤で月経を止めて閉経に近い状態にする治療)が行われる場合もあります。ただし薬の使用を中止すると症状が再発してしまい、偽閉経療法では更年期様の症状や骨粗しょう症などが生じるリスクもあります。これらの治療法に加え、2014年に保険適用となったのがカテーテル治療である“子宮動脈塞栓術(UAE)”です。当院では、患者さんの病態やご希望に合わせながら、適切な治療方法をご提案していきます。
お腹を切らず早期の社会復帰が可能 カテーテルで行う“UAE”のメリット
子宮動脈塞栓術(UAE)は足の付け根からカテーテルを挿入して子宮筋腫につながる血管(子宮動脈)を塞栓物質で塞ぎ、筋腫に栄養が供給されないようにする治療法です。UAEを行うと直後から子宮筋腫が縮小し始め、個人差はあるものの術後6か月ほどで筋腫の容積率が元の半分程度になります。子宮筋腫の細胞は壊死しますが、正常な子宮の細胞にはほとんど影響がありません。多くの場合、過多月経は術後最初の月経時から改善し、筋腫が縮小することで頻尿などの症状も早期に治まっていきます。
UAEのメリットはお腹を切らなくて済み、開腹手術に比べて術後の早期回復が目指せる点です。当院では、経過が順調であれば術後48時間程度*で退院いただいています。そのため、UAEは仕事や家事・育児を長期間お休みするのが難しい方にも受けていただきやすく、早期の社会復帰が可能です。また、過去に子宮筋腫の手術を受けたことのある方にも実施可能ですので、子宮筋腫が再発した方にも適しています。
座間総合病院のUAE
一人ひとりの患者さんに適した治療法を提案
当院では、適応があると判断した方に対しては積極的にUAEをご提案しています。私は、子宮全摘術は最終手段にしたいと考えています。子宮全摘術は治療効果の高さから、日本では一般的な治療法となっていますが、手術による合併症のリスクはゼロではありません。また、子宮を失うことによる喪失感が生まれる方も多くいらっしゃいます。今後の妊娠を希望する方はもちろん、そうでない方にとっても、子宮を摘出せずに治療できるUAEのメリットは大きいと考えています。
ただし、患者さんによってはUAE以外の治療法が適しているケースもあるので、そのような場合は当院から他院の婦人科にご紹介するようにしています。血液検査や画像検査の結果をもとにしっかりと適応を判断した上で、ご希望に応じて一人ひとりの患者さんに適した治療方針を検討させていただきます。子宮筋腫と診断された方や子宮筋腫を疑うような症状がある方は、ぜひどなたでも当院までご相談ください。
放射線科医が主治医となり治療の前後も一貫して担当
UAEはカテーテル治療を専門とする放射線科医が行います。当院では放射線科医である私(瀧 康紀先生)が患者さんの主治医となり、最初の診察から治療、術後のフォローアップまで担当しています。単にUAEだけを担当するのではなく、一貫して患者さんに関わることで、一人ひとりの背景や希望などをよく理解したうえで治療を行うことができます。
また、UAEでは極めて微量の放射線被ばくが発生*するので、リスクを可能な限り低くするために治療は迅速に行う必要があります。そして、それには術者の技術や経験が重要です。私は1998年から30年以上にわたり4,200例以上(1998年10月〜2024年4月実績)のUAEを行ってきました。これまで積み重ねてきた技術で安全かつスピーディに治療を行うことを心がけています。
また、子宮は非常に攣縮(筋肉が収縮し血流が滞ること)しやすいデリケートな臓器です。そのためUAEではいかに攣縮を起こさせないか、また、他の血管を傷つけることなくいかに短時間で目的の血管までカテーテルを挿入できるかもポイントとなります。血管の走り方は人によって異なるため、今もなお技術を磨き続けることはもちろん、全症例において必ずイメージトレーニングを行うなど術前準備も徹底しています。
初診から治療までの流れ
初診の際は、子宮筋腫の大きさや場所、卵巣の異常を調べる超音波検査、超音波の反射を利用して血流を調べるカラードプラ、血液検査を行います。これらの検査でUAEが適応かどうかの大まかな判断はできますが、最終的な適応判断にはMRI検査が必要です。MRI検査には後日改めてお越しいただく必要があるため、もしほかの医療機関でのMRI検査結果があれば、初診時にお持ちいただくことを推奨しています。
当院でUAEを受けることが決まったら前日から入院していただきます。入院期間は通常3泊4日です。治療の際は全身麻酔や硬膜外麻酔は行いませんが、患者さんが苦痛を感じずに済むよう痛みが生じる前に鎮痛薬を投与しています。痛みの生じ方や鎮痛薬の効き方には個人差があるため、鎮痛薬の投与にも技術が必要です。長年にわたるUAEの経験に基づきながら、患者さんの様子を確認しながら慎重に鎮痛薬を使用しています。
なお、当院における具体的な治療の流れはこちらでもご紹介していますので、ぜひお読みいただき疑問点などがあればぜひお気軽にご相談ください。
術後2週間程度で元の生活に戻ることが可能
退院後は数日間自宅で安静にしていただきます。デスクワークなどあまり体を動かさない仕事であれば、基本的にはUAEの1週間後から復帰できます。術後2週間程度経過すれば日常生活の制限はほとんどなく、運動や旅行なども可能です。1週間後、1か月後、3か月後、6か月後、12か月後には経過のチェックのため来院いただいています。そのため、UAEは仕事や家事・育児を長期間お休みするのが難しい方にも受けていただきやすい治療法です。
UAE後も妊娠・出産に関わる機能は保たれます。ただしUAEは子宮筋腫をなくすのではなく、小さくして症状が出ないようにする治療法ですので、術後に妊娠した場合は子宮筋腫合併妊娠となります。もし不安な場合には治療前にご相談ください。よりよい治療法について一緒に考えていきましょう。
- 公開日:2024年7月12日