院長インタビュー

港区・東京都済生会中央病院の取り組み-総合力・チーム力・機動力で、思いやりのある医療を実現する

港区・東京都済生会中央病院の取り組み-総合力・チーム力・機動力で、思いやりのある医療を実現する
高木 誠 先生

東京都済生会中央病院 名誉院長

高木 誠 先生

この記事の最終更新は2017年06月13日です。

東京都・港区に位置する東京都済生会中央病院は、済生会の「分け隔てない医療を提供する」という精神が根付く病院です。この精神のもと、スタッフ一丸となり、思いやりのある医療を実現してきました。

その背景には、同病院が有する「総合力・チーム力・機動力」という強みがあります。特に病院内の垣根が低く、診療科の枠を超えた連携を実現している点は、大きな特徴であるでしょう。

東京都済生会中央病院の院長である高木 誠先生は、より良い医療サービスを患者さんへ提供するため、様々な取り組みを実現していらっしゃいます。今回は、同病院の取り組みから患者さんへの思いまで、高木 誠先生にお話しいただきました。

東京都済生会中央病院は、済生会の病院のひとつです。済生会とは社会福祉法人恩賜財団済生会を正式名称とし、医療・保健・福祉を総合して提供する日本最大の社会福祉法人です。1911年(明治44年)、「生活に困窮して医療を受けられない人々にも救いの手を差しのべるように」という明治天皇のお言葉(済生勅語)により創設されました。

済生会には2017年現在、全国に79の病院があります。東京都支部にある当院は、済生会の病院のなかでは2番目に古く、長い歴史を持つ病院として地域医療に従事してきました。

写真提供:東京都済生会中央病院

済生会の「分け隔てない医療を提供する」という精神は、当院が果たすべき使命でもあります。それは、貧困により医療を受けることができない方に限りません。独居の高齢者など、様々な問題を抱える方を対象としています。

私たちはこの使命を積極的に実践してきました。たとえば、当院には日本で唯一のホームレス専用の病棟があり、救急車や福祉施設から紹介され来院するホームレスの患者さんを広く受け入れています。また、東京都内で最も古い歴史を持つ乳児院を設けており、様々な事情により家族で診ることができない乳児を受け入れてきました。

これらの事業は、ほかの病院には類を見ない取り組みではありますが、当院のスタッフは当然のこととして取り組んでいます。それは、スタッフ皆が、済生会が掲げる「分け隔てない医療」に共感しているからにほかなりません。

実際に、患者さんからは、当院には優しいスタッフが多いとお褒めの言葉をいただくことが多くあります。特に、患者さんと接することが多い看護師の評判は非常に高く、当院の特徴の1つであるでしょう。

2017年にオープンした新主棟(写真提供:東京都済生会中央病院)

私たち東京都済生会中央病院の強みは「総合力、チーム力、機動力」であると考えています。

私たち東京都済生会中央病院の病床数は、535床です(2017年現在)。大学病院ほど大規模な病院ではありませんが、ある程度の病床規模を誇り、専門的な診療科が揃っています。そのため、どんな患者さんにも対応できる総合的な強みがあると自負しています。

また、各診療科や多職種の垣根がなく、日頃から連携を実現する体制が築かれている点は大きな特徴であるでしょう。合併症を持っているなど、患者さんが抱える問題は1つの疾患とは限りません。スタッフの密な連携により患者さんが抱える複合的な課題を解決できる体制が、当院にはあります。

さらに、市中病院にとって、迅速に対応できる機動力は非常に重要です。私たちの規模の病院であるから発揮できる機動力を常に失わないよう、スタッフ全員で迅速な対応を心がけています。

当院には、高い技術力を有する優秀な医師がそろっています。それぞれが、専門とする診療科で実績のある医師ばかりです。しかし、質の高い医療サービスを提供できる理由は、それだけではありません。

最先端の治療を可能とするハイブリッド手術室(写真提供:東京都済生会中央病院)

私たちは、高度な専門性を持つ診療科を細かく分けていますが、内科は大きくひとつのグループとして同じチームで診療にあたっています。これは、外科も同様です。基本的には、内科と外科は、それぞれをひとつのグループとして協力し合う体制を築いています。

このように、一人ひとりの医師に高い技術があることはもちろんですが、チーム力を培うことで、より良い医療サービスの提供につながっているのではないでしょうか。

また、近年は、特にがんの診療にも力を入れています。東京都済生会中央病院のがん診療の特徴は、がんのみにとどまらない総合的な治療を実現できる点でしょう。

がんの患者さんは、必ずしもがんのみに罹患しているわけではなく、合併症を有する方も少なくありません。たとえば、心臓病を抱えるがん患者さんや糖尿病のコントロールが必要ながんの患者さんを、がん専門病院であるがん研有明病院や国立がんセンター病院からも積極的に受け入れています。これも、診療科同士の連携が実現できているから可能になっているのです。

さらに、当院には、港区唯一の救命救急センターがあります。2012年に設立され、特に重症の患者さんを受け入れる高度急性期医療にも力を入れてきました。この高度急性期医療においても、私たちの病院の強みである総合力やチーム力を発揮しています。

院内の診療科の垣根が低く連携が実現できているため、救命救急センターで受け入れた患者さんを当院の診療科にスムーズに移動することが可能になっており、患者さんにとっても、不安や負担の軽減につながっています。

当院は、地元の開業医や診療所との連携に昔から取り組んできました。特に、港区の医師会とは40年ほど前から連携を実現してきた歴史があります。地域の医療連携の会は、2017年現在で、すでに33回ほど実施し、顔の見える関係を築いてきました。

開放感のある病棟の食堂ディルーム(写真提供:東京都済生会中央病院)

また、近年では、回復期病院との連携にも力を入れています。もともと、都心には急性期病院が多い一方、回復期病院が少ないという特徴がありました。しかし、近年、回復期病院が都心に病院を設立するケースが増えてきています。私たちは、これら都心にある回復期病院を中心に連携を実施しており、患者さんのスムーズなやりとりを実現しています。

さらに、高齢化の進行とともに、医療介護福祉連携にも力を入れています。訪問看護ステーションを有し、港区立の特別養護老人ホームや高齢者在宅サービスセンターの運営にも携わっています。

また、当院は認知症の相談や診療をおこなう認知症疾患医療センターの指定を受けています。地域に根ざした地域包括ケアを実現する病院として、今後はさらに医療介護福祉連携の活動にも力を入れていくつもりです。

2015年に、当院は開院100周年を迎えました。この100周年を節目として、老朽化、狭隘化した施設の建て替えを進めてきましたが、2017年5月、建て替えの最終ステージである14階建ての新主棟がオープンしました。

当院では、地域の方を病院にお招きし、病院の見学やスタッフとの交流を実施するオープンホスピタルデーを定期的に開催しています。新主棟を地域の皆さんにお披露目する目的で、2017年4月23日にもイベント(済生会フェア2017)を開催しました。

写真提供:東京都済生会中央病院

職員の家族や地域の皆さんを含め、約1,000名もの方が集まってくれ、ともに楽しい時間を過ごしました。

今後も、地域の病院として、地域の皆さんと交流する機会を積極的につくっていきたいと考えています。

お話ししたように、私たち東京都済生会中央病院には、ここ港区で100年を超える歴史があります。これからもこの地域の皆さんのお役に立てる病院であり続けたいと思っています。病院は人々の生活のなかで必要不可欠な存在です。必要なときに、いつでも頼りにしてもらえる存在でありたいのです。

我々が提供するものは、病気の治療にとどまりません。医療や介護のことで患者さんが困っていることがあれば、どんなことでも何かのお役に立てる病院であり続けること。それが目標です。