院長インタビュー

命の誕生から高齢者の健康を守る医療まで、トータルケアを行う東都文京病院

命の誕生から高齢者の健康を守る医療まで、トータルケアを行う東都文京病院
杉本 充弘 先生

東都文京病院 院長

杉本 充弘 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

この記事の最終更新は2018年04月05日です。

東京都文京区湯島の住宅地にある医療法人社団大坪会 東都文京病院は、命の誕生に向き合う出産から、生活習慣病の予防や治療、がんの早期発見・治療および疼痛緩和まで、トータルケアが可能な総合病院です。ワンフロアにほぼすべての診療科が集まっており、1度の通院で複数の科を受診する患者さんに優しい病院です。かつて3病棟から1病棟に縮小した東都文京病院を3病棟体制に再建し、現在もなお改革・発展を続ける同院の院長である杉本(すぎもと) 充弘(みつひろ)先生にお話を伺いました。

東都文京病院 外観
東都文京病院 外観

当院は1960年に開設されてから50年以上、地域のみなさまの健康を支えてきた小平記念東京日立病院を前身とします。小平記念東京日立病院の閉鎖が検討されたとき、患者さんや地域のみなさまからの存続を願う声に後押しされ、2014年医療法人社団大坪会が病院を継承し、東都文京病院の開設に至りました。

当院は、二次救急指定病院として急性期の患者さんを受け入れるとともに、糖尿病高血圧などの慢性疾患をお持ちの患者さんを受け入れています。内科、外科、産婦人科、小児科をはじめ、整形外科、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科、歯科、泌尿器科などの外来もあり、身近なかかりつけの病院として気軽に受診していただけるだけではなく、合併症に対しても診療科の枠を越えて、迅速に対応できます。外来は原則として予約なしでも受診できます(歯科、泌尿器科、午後の眼科は予約制)。紹介状も不要です。

当院は電車やバスなど公共交通機関の便がよいため、近隣の文京区・千代田区・台東区以外に、千葉県や茨城県からも患者さんがいらっしゃいます。

東都文京病院 内観
東都文京病院 内観

「総合内科」として、さまざまな症状・合併症に対応しています。

常勤医に加えて近隣の大学病院からさまざまな内科領域の医師の派遣を受け、内科の専門領域診療体制が整備されおり、ほぼすべての内科専門領域の診療が可能です。したがって、初診医の「総合内科」診察後は、必要に応じて、専門医と連携して診療を行うことも可能です。

病棟では高齢者に多い肺炎などの急性疾患、また、高度医療機関で急性期治療を受けた方の継続治療、在宅診療を受けられている方のレスパイト入院(ショートステイ)など幅広く受け入れています。

特に力を入れているのは糖尿病治療です。糖尿病教育入院も実施しており、医師、薬剤師、管理栄養士、看護師、理学療法士がチームで対応いたします。正しい知識を学び、病気と上手に付き合っていけるように、患者さんを全面的にサポートいたします。

また、腎不全の診療にも力を入れており、今後入院透析体制を整備する予定です。そのほか、進行する高齢化に対応するため、リハビリテーション機能を充実させ、歯科の口腔ケア、耳鼻咽喉科の嚥下指導、皮膚科の褥瘡管理など、総合病院のメリットを活かして、ご高齢の患者さんの治療に必要なチーム診療体制を強化していきます。

当院が位置する文京区には、大きな三次救急病院が複数あり、ハイリスク分娩や麻酔分娩を希望する妊婦さんに対する受け入れ態勢は整っています。一方で、「自然な出産をしたい」「気軽に受診したい」という妊産婦さんのニーズに応えられる医療機関は不足していました。そのため、当院は、総合病院というサポート体制を整えつつ、ローリスクの妊産婦さんの“病院内家庭出産”をめざし、分娩の取り扱いを開始しました。“病院内家庭出産”とは、病院のなかにありながら、家庭的で自然な出産ができるシステムです。経過が順調であれば、医療介入なく助産ケア中心の出産ができます。もちろん、自然分娩が難しい場合や緊急時には医師が対応いたしますので安心です。出産は、“産む方”、すなわち“お母さん”が主体です。お母さんが「自分で産む」という主体性を持って出産に臨める環境をご提供することが、私たちの役割だと考えています。

麻酔分娩を希望される妊産婦さんは、近隣の東京大学医学部附属病院や順天堂大学医学部附属順天堂医院のセミオープンシステムに、またハイリスク妊産婦さんで自然分娩を希望される妊産婦さんは日本赤十字社医療センターのセミオープンシステムにご登録いただき、妊娠35週までの妊婦健診を当院で実施しています。妊婦健診では助産師がお話を伺い、生活相談やアドバイスを行います。お子さんを連れての受診も可能です。地域の病院だからこそできる、細やかな医療をご提供しています。

近年は、出産が大学病院に集中し、妊産婦さんの入院期間もどんどん短くなっています。そのため、十分な休息が得られないまま家事・育児に追われ、肉体的・精神的に追い込まれてしまう方が増えています。当院では、そのようなお母さんを支えるため、産後ケア(産褥入院)に力を入れています。

赤ちゃんと向き合うには、体の疲れだけではなく、心の疲れを癒すことも不可欠です。しかし、現代社会においては、核家族化でサポートしてくれる人がいない、配偶者の帰宅が遅くて協力が得られない、妊産婦さんのご両親に介護が必要であるなど、出産を終えたお母さんがゆっくり休めないケースが多々あります。そのようなときに、当院のような施設が受け皿となって、お母さんを支える仕組みが重要だと考えています。

当院で産後ケアを受けられるお母さんの半数近くは、妊娠高血圧症候群貧血、子宮内感染など、さまざまな問題を抱えていらっしゃいます。また、うつ症状など精神的に不安定な方もいらっしゃいます。当院は、総合病院の強みを活かし、助産師、看護師、産科医、小児科医をはじめとする産後ケアサポートチームがお母さんと赤ちゃんを支援します。医学的なメンタルケアも実施しています。

産後ケアの様子
産後ケアの様子

当院の外科では、日常生活における小さなケガからさまざまな消化器疾患・乳腺疾患までほとんどの外科的治療に対応しています。常勤外科医は全員外科全般をカバーしますが、それぞれの医師が上部消化管(胃や食道)疾患、乳腺疾患、鼠径ヘルニア、腹腔鏡下手術、抗がん剤治療など専門分野での強みを持っており、専門性を活かした診療を行っています。

消化器がん乳がんなどの悪性腫瘍に対しては、早期発見と根治をめざすことを前提に、再発予防の化学療法、末期がんに対しての化学療法・対症療法、終末期の疼痛緩和まで、専門的知識と経験をもとに一人ひとりの患者さんに適した治療を提供しています。

外科的治療については、体への負担ができるだけ少なくなるよう、腹腔鏡下手術・内視鏡下治療も積極的に取り入れています。特に、乳腺疾患では切除量を必要最小限に抑え、傷が目立たないような工夫を重ねています。2015年に女性専用病棟をオープンし、よりきめ細やかなケアをご提供できるようになりました。

また、当院は、東京大学医学部附属病院をはじめ多くの大学病院と連携しています。入院・手術は当院で、高度な放射線治療は大学病院で、といった各医療機関のメリットを活かした集学的治療を積極的に実施しています。

当院の整形外科は、骨折打撲などの外傷から、腰痛・膝の痛みなどの関節痛、骨粗しょう症椎間板ヘルニアなど、整形外科疾患全般を扱っています。必要な診察・検査をしたうえで、入院・手術治療、ギブス治療、薬処方、運動療法指導、関節注射、理学療法、栄養指導などを行っています。

専門医療が必要と判断された場合には、東京医科歯科大学病院や東京大学医学部附属病院をはじめとする大学病院などと連携体制をとっていますので、速やかにご紹介いたします。

当院は進行する高齢化に対応するため、理学療法士を増員、リハビリテーション機器を追加して2017年にリハビリテーションセンターを開設しました。整形外科医がリハビリテーションの計画に関わり充実したリハビリテーションを行える体制を構築しています。

リハビリテーションセンター
リハビリテーションセンター

総合健診センターは約10年前に設立され、病院本館に隣接する別館にあります。年間1万人以上の健診者を受け入れてきました。人間ドックと定期健診に加え、文京区の区民健診・がん検診などを行っています。充実した設備を用いた検査と先進医療機器に加えて、東京大学医学部附属病院など専門領域の医師のご協力により、精度の高い健診が行われています。評価が高い胃カメラに加え、最近大腸内視鏡ドックを開始し、大腸がんの早期発見を目指しています。健診結果で、精密検査や専門科受診が必要な場合は、早期に病院診療部門で対応し、必要に応じて専門医療機関へもご紹介いたします。特に、乳腺外科・婦人科があることは当院の強みです。今後はさらに女性向け健診にも力を入れていきたいと考えています。

東都文京病院 外観
東都文京病院 外観

毎年夏に行われる隅田川花火大会の日には、地域のみなさまと一緒に花火を観賞するために、当院の屋上を開放しています。飲み物や子どもたちへのプレゼントを用意し、毎年200名くらいの方が参加されています。また、12月にはクリスマス会を行っています。職員やボランティアの方々の合唱やダンスなどを披露したり、サンタが登場したりし、毎年盛り上がっています。

そのほか、地域のみなさまに「健康に関する知識を深めていただく」目的で、公開健康教室を年に数回開催しています。糖尿病めまい、漢方、乳がん、健診など、さまざまなテーマについて、各診療科の医師がわかりやすく説明いたします。担当医師に直接質問することもできるため好評です。

当院は、大学病院との連携や地元医師会のみなさまとの連携を大切にしています。年に数回セミナーを開催し、医師同士が顔の見えるつながりをつくれるようにしています。その結果、医療機関との連携が非常にスムーズにできています。

また、当院が属する大坪会グループでは、年に一度、関連施設を中心に、看護師、薬剤師など、さまざまな職種のスタッフが集まり、主に日頃の臨床をテーマにした研究を発表するOZAK会という学術集会を開催しています。2017年で25回目を迎え、毎回800名近いスタッフが集まります。このような取り組みを通し、より質の高い医療・サービスを患者さんに提供できるよう、職員一同努力を続けてまいります。

当院の職員には、「できるだけ断らない」「自分の身になって考える」という2つを大切にするよう、いつも伝えています。

救急搬送患者さんを受け入れ、もし当院では対応できないとなれば、連携している大学病院などにご紹介するシステムがあります。なので、まずは患者さんをお断りせずに受け入れる、ということをモットーとしています。

そして、患者さんのことを自分の身になって考えるということは、なかなかできないことです。しかし、どんなに難しい状況であっても自分から積極的に取り組んでいき、よく考え、患者さんに寄り添って、患者さんにとって、何がもっとも大切かを考える姿勢を持ち続けてほしいと思っています。

この2つを、職員一人ひとりがしっかり意識し、地域のみなさまの健康と福祉に貢献する病院人となってほしいと思います。

当院は、地域の少子化の進行を止めるためにも、周産期・小児科医療はこれまで通り継続してまいります。また、地域の二次救急医療機関として担う急性期病院の機能に加え、回復期と一部慢性期の患者さんを積極的に受け入れ、総合病院としてのトータルケアができるよう、各診療科の連携・協力体制を強化していきます。将来構想として、2020年頃には、いまの病棟の東側に隣接する駐車場に新棟を建設する計画があり、新しい建物は病院機能と介護老人保健施設を兼ね備えた施設とする予定です。

杉本充弘院長先生

当院は、命の誕生から、ご高齢の患者さんが抱えるさまざまな問題まで、幅広くトータルなケアができる総合病院として設備・体制を整えています。ほとんどの診療科がワンフロアにありますので、患者さんにとって、複数の科を「早く、近く、診療してもらえる」メリットがあります。

当院は身近で気軽に相談できる「小回りの利く総合病院」として、これからも地域のみなさまの健康と長寿に貢献してまいります。