院長インタビュー

救急医療に軸足をおきながら、専門的治療も提供するJR札幌病院

救急医療に軸足をおきながら、専門的治療も提供するJR札幌病院
安藤 利昭 先生

JR札幌病院 院長

安藤 利昭 先生

この記事の最終更新は2017年10月31日です。

JR札幌病院は、JR札幌駅から徒歩で5分のところに位置します。同院の歴史は1915年(大正4年)、札幌鉄道集会所における仮診療の開始までさかのぼり、現在の土地に移ったのは1922年で、移転以来、地域に根ざした急性期医療を提供し続け、2015年には開院百周年となる節目の年を迎えております。同院の特徴や取り組みについて、病院長の安藤利昭先生にお話を伺いました。

外観

 

当院は、22診療科を構える中規模病院です。そのため院内の連携が取りやすく、診療科のあいだに隔たりはありません。診療科間で密に連携し、高度な専門医療を提供しています。これは当院の大きな特徴だと考えています。

 

耳鼻咽喉科における、中耳炎に対する「鼓室形成術」という手術の件数は、H28年の統計では全国で21番目にに多い施設で、患者さんは、道内各地からいらっしゃいます。手術後も長期間の経過を観察し良好な結果が得られています。

 

当院の呼吸器内科は、前院長の時代に「肺サルコイドーシス」という難病で全国的に有名になりました。その流れをくみ、今でも当院を代表する診療科です。

現在、呼吸器内科は肺がんを中心に呼吸器全般の診療を行い周辺の医療機関より多くのご紹介を戴いています。肺がんにつきましては化学療法を中心に行い、適応により当院呼吸器外科での手術、必要に応じて他医療機関との連携で放射線療法を選択・併用することもあります

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呼吸器内科がサルコイドーシスを広く診療していた関係で、心臓サルコイドーシスの患者さんも循環器内科を受診されるようになりました。現在でも心臓サルコイドーシスは、循環器内科の重点領域です。

加えて循環器内科は、狭心症の血管内手術を主に、心不全など幅広く循環器疾患を診療し、また心臓と密接に関係し増加する腎臓疾患に対応するため糖尿病専門医を含む腎臓内科と連携し、高齢者に多い多臓器疾患に対応しています。

 

皮膚科は、乾癬(かんせん)の患者さんが多いことで知られています。その数は近隣の大学病院と並ぶ程であり、外来診療だけでなく重症の患者さんには入院加療も行っています。

 

手術

消化器内科も、内視鏡検査治療を中心に幅広い領域を診療し患者さんの多い診療科の一つです。

消化器外科化も周辺の医療機関より非常に多くの紹介を戴き、腹腔鏡手術を中心に多数の症例を手掛けています。将来的には内科・外科の密接な連携のもと消化器センターの設置を考慮しています。

 

地域医療連携センターを活用した、地域かかりつけ医の先生方との連携も進めています。通常の紹介患者さんはもちろんですが、当院では救急にも力を入れています。当院に登録いただいた開業医の先生からご紹介いただいた救急患者さんは、基本的にすべて引き受け、優先的に診療します。

この救急でのご紹介がきっかけになり、専門治療を求めての紹介患者さんも増えてきました。

地元医療機関の先生方には、当院のスタッフや医療を案内すべく、「ほっとネット」と題する小冊子を年に4回お送りしています。この冊子は病院にも置いてありますので、患者さんもご覧いただくことが可能です。

 

地域医療への貢献としては今後、在宅医療の後方支援病院としての機能を充実させたいと考えています。在宅医療に携わるかかりつけの先生方にとって最大の問題は、患者さんの急変時にどの病院に搬送できるかという点でしょう。当院がどのような貢献ができるか今後かかりつけ医の先生たちとの連携を構築していくつもりです。

 

カンファレンス

当院は、北海道がん診療連携指定病院であるため、多くのがん患者さんも入院されています。

その一方で、当院には緩和ケア病棟はありません。しかし、病院を挙げて緩和ケアに力を入れています。「緩和ケアは医療、看護の基本」と位置づけ、緩和ケア専門の看護師が中心になって非医療職を含む全職員を対象とした緩和ケアの講習会を開催しています。緩和ケア病棟を設けるのではなく、全病棟で緩和ケアを提供できるように努めているのです。

 

当院がもっとも重視しているのは、急性期医療であり、そのため救急機能の向上を図る観点から、2017年にはHCU病棟を開設しました。それに加え、呼吸器や心臓、消化器の病気、あるいは整形外科などでは、専門的な高度医療も提供しています。地元かかりつけ医の先生方は、対応の困難である患者さんがいらっしゃれば、ぜひとも当院にご紹介ください。

安藤利昭院長