院長インタビュー

救命とともに機能再建を目指す外傷治療を実践する札幌徳洲会病院

救命とともに機能再建を目指す外傷治療を実践する札幌徳洲会病院
奥山 淳 先生

札幌徳洲会病院  院長

奥山 淳 先生

この記事の最終更新は2017年10月05日です。

1983年に北海道札幌市白石区に開院した医療法人 徳洲会 札幌徳洲会病院は、徳洲会グループ病院の特徴でもある救急医療に力を入れています。日本でも数少ない重度四肢外傷に特化した外傷センターを有しており、不慮の事故やケガなどで外傷を負った患者さんを北海道全域から受け入れています。患者さんの命を救うだけではなく、後遺障害なく早期に社会復帰ができるような治療を実践している同院の取り組みについて、院長の奥山淳先生にお話を伺いました。

当院は、全国の徳洲会グループでは10番目、北海道内では最初の同グループ病院として1983年に設立されました。2012年に札幌市白石区から厚別区に新築移転し、移転前病棟の2.5倍の延べ床面積と10室の手術室、屋上ヘリポートなどを備えた機能的な病院に生まれ変わりました。

当院の救急科は、ハイブリッド手術室を備え、札幌市の東部および北広島市、江別市からの救急患者さんを受け入れています。救急車搬送台数は年間約4,000台、手術件数は4,000件を超えます。屋上のヘリポートには、北海道全域から多くの患者さんが搬送され、24時間速やかに手術を実施できる体制を整えています。

日本には多くの「救命救急センター」が存在していますが、「外傷センター」はあまり構築されていません。それゆえに避けられたはずの外傷後遺障害が数多く発生しているといわれています。この社会問題を解決すべく、当院は「外傷センター」を設立いたしました。患者さんの早期社会復帰を目指し、「機能再建型」の外傷センターを目指しています。救急車で搬送されたときから、外傷治療に特化した整形外科医が、緊急手術を含めて早期から治療を開始します。手術後は速やかに専門的なリハビリテーションを行うことをモットーとしています。

当院の外傷センターには、整形外科医11名、形成外科1名がおり、整形外科医のうち4名は救急科専門医の資格を取得しています。病院全体の手術件数約4,000件のうち、2,000件を超える手術がこの外傷センターで実施されています。

 

当センターは、転倒によるご高齢の患者さんや小児患者さんの骨折が上位を占めており、年齢問わず幅広く受け入れる体制を整えています。またその一方で、重度四肢外傷の手術も数多く実施しており、切断指の再接着、血管や神経などの再建など、市外からの受け入れも積極的に行っております。切断指の再接着手術は2016年で37件44指あり、道内随一の症例数を誇ります。手術後は早期にリハビリテーションを取り入れ、早期に社会復帰できるよう、チーム医療として取り組んでおります。

マイクロサージャリーとは、通常の手術とは異なり、顕微鏡を覗きながら特殊な器具を用いて行う手術のことです。形成外科領域では、切断された指の再接着や切れた神経の縫合、血管と血管の縫合などの再建手術などの際に用いられます。たとえば、事故や悪性腫瘍の切除手術などで失った体の欠損部に対して、体のほかの部位から組織(骨、筋肉、皮膚、神経など)を切り離して欠損部に移植し、神経や血管をつなぐ手術などが行われます。そのときに役立つのが、マイクロサージャリーの技術です。顕微鏡下で、1ミリメートル以下程度の動脈、静脈、リンパ管および神経同士をつなぎ、失われた機能を再建します。

当院は年間120件以上のマイクロサージャリー手術を行っています。当院の外傷センターにはマイクロサージャリーを得意とする医師が数多く在籍しているため、スピーディーに治療ができます。

外傷センターでは、毎朝7時から術前・術後のカンファレンスを行っています。カンファレンスには、医師や、看護師、作業療法士、理学療法士などのスタッフなど総勢25名ほどが参加し、患者さんにとって最適な治療方針について議論を交わしています。医師は担当症例についてのプレゼンテーションを行い、職員全体で症例について理解を深めています。このように同センターのカンファレンスは、非常に充実しており、若手医師の育成にも大きく役立っています。また、豊富な症例数を職員が共有し、多職種の連携を強めることにより、患者さんのよりよい治療につながっています。

手は小さな骨や細い血管・神経がたくさんある繊細な組織です。手の外傷の場合、そのような組織の損傷に合わせた的確なリハビリテーション技術が必要になります。そのため、ハンドセラピィという手の疾患に特化したリハビリテーション分野があり、当院には専属のハンドセラピストが5名在籍しています。また全国に11か所しかない日本ハンドセラピィ学会認定臨床研修施設の1つにも認定されており、北海道のハンドセラピィ分野を牽引しています。

手以外の四肢・体幹を対象とした理学療法部門では、主に骨折や重度四肢外傷の患者さんにおける、機能トレーニングから在宅生活を想定した練習まで幅広く実施しています。また、整形外科外傷理学療法研究会を主催し、定期的に他院との症例検討会などを実施することで、重度四肢外傷における理学療法分野の確立を目指しています。

外傷に特化したリハビリテーションは日本でも数少ないため、当院の取り組みを全国に発信し、より多くの病院で正しいリハビリテーションが行われるよう、学会発表や大学での講義などを通じて情報発信に取り組んでいます。

当院のプライマリーセンターは、救急搬送された患者さんのうち、外傷以外の患者さんに対応しています。地域の高齢化が進むなかで、複合疾患を持つ患者さんが増えています。その場合、単科では診療が困難です。救急患者さんが入院される場合、一つの臓器に集中した治療を行うより、それぞれの臓器のバランスをとりながら診療をすすめなければならないことも少なくありません。また、医療を超えて、介護や福祉、法律などの専門的な知識を要する場合もあります。そのような患者さんに対して、多方面から総合的にサポートする、いわば総合診療科の役割を果たしながら、救急診療を担うのが、同センターです。

医師だけではなく、看護師、リハビリ、栄養士、薬剤師、ソーシャル・ワーカーなどが一丸となり患者さんにとって最適な医療を目指しています。

脚の血管がこぶのようふくらんでいる患者さんのなかで脚がつる、むくむ、疲れやすい、皮膚が変色している、かゆい、などといった症状がある場合は、下肢静脈瘤の可能性があります。当院では、下肢静脈瘤の治療を積極的に行っています。2015年4月に札幌で初となる新型ELVeSレーザー1470nmを導入しました。従来のレーザー治療では、光ファイバーの先端から1点に集中してレーザー光を当てるため、痛みや手術後の皮下出血が強いことが難点でした。最新のレーザーを使うと、光ファイバーの先端の2か所のリングから360度レーザー光を当て、静脈壁を広範囲に均一に焼く(焼灼)ことが可能になりました。これにより、痛みや皮下出血が劇的に軽減されました。

当院は急性期病院であり、働いている看護師の業務はどの科においても多重課題の連続です。ですが、どのような場面でも患者さんやそのご家族に寄り添うことを第一と考え、「心にとどく看護」を目指しています。これまで看護師は、病院のなかで病院にいらっしゃる患者さんのために日々懸命な看護を行っていました。しかし、これからは地域包括ケアシステムが構築され、地域のみなさまの健康を守り、病院以外の医療機関とも情報共有するなど、地域で活躍する看護師が必要とされます。当院でも、そのような看護師や職員を増やしていきたいと思っています。

職員をサポートするため、当院の敷地内には120名の園児を預かれる保育園があります。24時間保育にも対応しており、看護師だけではなく、医師やコ・メディカルスタッフなどすべての職員のお子さんを預かっています。当院の職員にとってより働きやすい職場環境を構築するため、日々改善を続けてまいります。

2014年には新しくIBD(炎症性腸疾患)センター、2017年には血友病センターを立ちあげました。また、耳鼻科では内視鏡による甲状腺手術も積極的に導入しました。

当院の医療の質をさらに高めていくとともに、プライマリーセンターおよび外傷センターを中心に当院が従来から実施してきた救急医療や地域医療をますます強化します。

これからも当院の理念である、「生命を安心して預けられる病院」と、「健康と生活を守る病院」を目指し、地域に根ざした病院として適切な医療が提供できるよう努力してまいります。

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