院長インタビュー

地域医療に貢献しながら、若手医師にも魅力的な病院を目指すJCHOうつのみや病院

地域医療に貢献しながら、若手医師にも魅力的な病院を目指すJCHOうつのみや病院
草野 英二 先生

独立行政法人地域医療機能推進機構うつのみや病院 名誉院長

草野 英二 先生

この記事の最終更新は2017年08月30日です。

 

外観

独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO:ジェイコー)うつのみや病院は、JR雀宮駅からタクシーで約5分、宇都宮駅からバスで30分弱のところにあります。1978年から「宇都宮社会保険病院」の名称で医療を提供しており、2014年に、現在の名称となりました。病院の特徴について、院長の草野英二先生にお話を伺いました。

当院は、一般病棟と回復期リハビリ病棟を合わせて245床を擁する総合病院です。健康管理センター、介護老人保健(老健)施設も併設しています。現在、健康管理センターは年間約2万2千人の健診を行い、老健は一日当たり100名のご高齢の患者さんが入所され、30名ほどが通われています。JCHOが掲げる「5事業」のなかでは、救急医療と災害医療、そして小児医療に特化しております。

救急救命は、宇都宮市内の他の4病院と輪番制で行なっており、2次救急を担当しています。現在の救急車の応需率は67%程度ですが、患者さんの受け入れ数は、確実に増えています。今後は、75%~80%近くまで上げたいと考えています。そのためには、救急体制の見直しも必要です。

当院には17の診療科があり、一般的な疾患ならすべて対処できます。当院での診療が不可能と判断した場合は、自治医科大学附属病院、あるいは獨協医科大学病院へ紹介するルートが確立されておりますので、ご安心ください。

当院でもっとも医師数と患者さんの数が多いのは、消化器疾患です。消化器内科と消化器外科(診療科名は「外科」)が診療しています。医師は内科が7名、外科が5名在籍しており、対応できない消化器疾患はありません。将来的には「消化器センター」として一元化し、当院の看板診療科にしたいと思っています。

腎臓内科・透析センターには、院長の私を含め4名の医師が在籍しており、うち3名は腎臓内科専門医です。栃木県では自治医大、獨協医大に次いで腎臓・透析専門医が多い病院です。しかし透析ベッドが10床しかないため、透析合併症のある患者さんや手術を控えた透析患者さんなどを中心に、入院透析を行っています。将来的には増床したいと考えています。それまでは慢性腎臓病CKD)治療などを中心に、地元かかりつけの先生方との連携を強化していくつもりです。なお週に1回、腹膜透析外来を、開設して血液透析の穴を埋めています。

常勤医師3名、非常勤2名から成る整形外科は、全人工股関節置換術を行える先生が自治医科大学附属病院から派遣されて以来、患者さんが非常に増えています。同大学附属病院から転院され、こちらで手術を受けられる患者さんも少なくありません。手術は週に2回ほど行われ、患者さんの満足度も非常に高いとのことです。

循環器内科は、常勤医師3名に非常勤が1名という体制です。狭心症心筋梗塞に対する心臓カテーテル検査や治療も積極的に行っています。また、不整脈に対するペースメーカーの植え込みを行ない、週に1回、ペースメーカーを植え込んだ患者さんのみを対象としたペースメーカー外来もあり、ペースメーカーのチェックやメンテナンスを行っています。

呼吸器内科も常勤医師は3名ですが、こちらは非常勤医師が2名います。当院には回復期リハビリ病棟がありますので、呼吸器疾患の治療だけでなく、今後は呼吸器リハビリでも活躍して欲しいと思っています。

小児科は常勤医師が2名いますが、自治医大から非常勤の先生加わり日常診療に加え、宇都宮市の輪番制に参加して救急診療を積極的に行なっています。

これらの科は、常勤は一人体制ですが非常勤の先生が加わり診療をしていますし、オペが必要な症例に対しては自治医大の方から先生が来て、かなり大きいオペも手掛けています。

獨協医大の方から眼科の医師が2人来られ外来診療、白内障のオペなどに携わっています。

麻酔科には、常勤医が2名おります。非常に恵まれた環境であり、当院で行う手術の65%近くは、全身麻酔で麻酔専門医が全身管理を行っています。

健診センター

当院には健康管理センターもあり、各種検診や健康診断人間ドックなどの医療を提供しています。このため当院では、病気を発症する前の段階から、発症後の急性期と回復期、さらに必要であれば自宅退院前の老健施設まで、一貫してケアできる、病院完結型医療の提供が可能です。さらに退院後も必要であれば、介護老人保健施設でのケアを受けられます。

仕事風景

市中病院にとって、医師の確保は大きな課題です。卒後5年~10年ほどの若い先生にとって魅力的な病院となり、そのような先生方に選ばれなければならないと考えています。

たとえば当院のように、急性期から回復期まで継続して患者さんを診られるという環境は、急性期を担当した患者さんの転帰が、細部までわかります。医師として成長するには非常に良い環境です。

まだ学位を取っていない先生ならば、「学位論文が書けて、場合によっては短期間の留学ができる」病院は、魅力的だと思います。学位の取得後は半年程度の、留学も視野に入れています。

現時点ではまだ構想の段階ですが、近い将来実現したいと願っています。

一昨年春から地域臨床教育センターを設置しましたが、現段階で医学部の学生を5人受け入れ予防医学から実地臨床に渡る研修を1か月のスパンで研修して頂きました。学生の反応も良好で、大学ではあまり診ないcommon diseaseを診られるいい機会になったようです。将来的には研修医の臨床修練の場としても考えています。

JCHOは、地域医療、地域包括ケアの要として地域住民の多様なニーズに応え、地域住民の生活を支えることが使命であることから、他の団体に先駆け、平成29年度から地域医療に貢献する医師を育成するため「JCHO版病院総合医(Hospitalist)育成プログラム」を開始しました。この育成プログラムは、JCHO全57病院のネットワークを活用し、医師個人のニーズに合ったカリキュラムを提供するJCHO独自のプログラムです。JCHOは、本プログラムの運用による病院総合医の育成を通じ、地域医療に貢献していきます。

当院は、医師のライフワーク・バランスにも配慮しています。特に子育て世代にある女性の先生に「このまま続けるか、辞めるか」という二者択一を迫らず、「どうすれば子育てしながら働けるか」を共に考え、多様な働き方を実現したいと思っております。

そのためには管理職が率先して効率的な仕事の実践を心がけています。

草野先生

現在は、紹介率、逆紹介率ともまだ満足な水準に達しておりません。そのため、地域医療連携室の機能を強化し、地域かかりつけ医の先生方との連携を進めていきたいと考えております。また当院には回復期病棟に加え、併設介護老人保健施設がありますので、在宅医療に取り組まれている先生のバックアップにも力を入れていきます。

なお当院はJCHO病院として「地域医療連絡協議会」を開催し、地域のみなさまからご意見をいただいております。医療に対する要望にとどまらず、さまざまな声を聞かせていただき、病院の改善につなげています。