福井県福井市にある福井赤十字病院は、2015年に創立90周年を迎えました。そんな歴史ある同院は、福井県内の「地域医療支援病院」に指定され、多くの患者さんとその家族をサポートしています。同院はどのような思いを持ち、地域医療に貢献されているのでしょうか。院長の髙木治樹先生にお話を伺いました。
福井赤十字病院は、1925年に県の管理下におかれていた当時の県立病院が日本赤十字社に移管され、現在地に新築されて誕生しました。2015年には90周年を迎え、その長い歴史の中で福井県の地域医療に貢献しています。
福井赤十字病院の外観
福井赤十字病院は許可病床数600床(一般586床、結核10床、感染4床)を保持し、1,043名の職員が勤務しています。病床で見ると、その規模は福井県内において第2位を誇ります。
2015年4月、先進中央棟が完成しました。がん診療センターや緩和ケア病棟を備え、ダヴィンチXi(手術支援ロボット)、4次元放射線治療などの最新技術を用いた治療を行うことが可能になりました。(緩和ケア病棟については後述します。)
ダヴィンチXi(手術支援ロボット)
紹介患者さんに対する医療提供・医療機器の共同利用を通じて、かかりつけ医(患者さんの身近にいる主治医)を支援します。効率的な医療提供体制を構築することを目的とし、都道府県の認定によって成立します。福井県内では、当院を含めた4病院が「地域医療支援病院」に認定されています。
<福井県内の地域医療支援病院>
福井県内の地域医療支援病院は、すべて福井市内にあります。1980年頃までは福井県内で500〜600床ある病院同士が競い合っている状態でした。しかし現在では協力体制が整い、機能分化して連携を強めています。
福井県の高齢化率(2017年2月データ)は29.3%です。地域住民にはご高齢の方も多いため、医療や健康に関する意識も高いと感じています。現在では高速道路も通り、以前に比べて福井県内の移動も容易になりました。怪我や病気でお困りの場合には、かかりつけ医の紹介状を持ってぜひ地域医療支援病院に来院されることをおすすめします。
当院は訪問看護ステーションを併設しており、かかりつけ医と協力して在宅医療を支援しています。当院で長年経験を積んだベテラン看護師を訪問看護ステーションに配置し、かかりつけ医と連携を図ることで、在宅で療養を希望される方を幅広くサポートすることが可能になります。
院内センター化構想とは、患者さんの治療にあたり、臓器や科で分類するのではなく、疾患ごとに領域の重なる内科と外科が連携することです。患者さんの年齢や基礎疾患をふまえて各科が議論することで、より広い視点で最適な治療方法を判断し、協働で治療を行うことが可能になりました。
<福井赤十字病院の院内センター>
緩和ケア病棟「エキナケア」は先進中央棟に20床を備え、体や心のつらさを和らげる場所として、がんの告知を受けた患者さんやそのご家族に、生活の場を提供しています。がんの治療には痛みや不安、悩みなどが伴い、体だけでなく心も元気をなくしてしまう場合があります。エキナケアは、これらのつらさを緩和し、患者さんが自分らしく生活できるようにケアします。
エキナケアのデイルーム
エキナケアはがんを告知された患者さんを対象とした緩和ケア病棟です。がん患者さんは病院で亡くなることが多く、自宅で亡くなる場合と比べるとその数は10倍ほどになります。「患者さんには、自分の部屋のような安らげる場所で体と心を癒し、人生の最後を過ごしてもらいたい。」そんな思いから、2015年にエキナケアを設置しました。
患者さんがリラックスして過ごせるよう配慮して作られた病室です。生活の場として、体と心のつらさを軽減します。
エキナケアの個室
可動式ベッドに座ったまま利用できる屋上庭園です。新鮮な空気を吸うことができ、心のケアに効果をもたらします。ペットとの面会も可能ですので、自宅にいるようにリラックスした時間を過ごすことができます。
エキナケアの屋上庭園
患者さんのご家族がくつろげるように作られたスペースです。面会は24時間可能ですので、いつでもお好きなタイミングで患者さんと交流できます。
エキナケアの家族室
食事の際に家庭の雰囲気を感じられるよう、食器には強化磁器を使用しています。患者さんに1日3食、温もりのある食事の時間を過ごしていただけるように配慮しました。
エキナケアのお食事(例)
当院では2003年からTQM活動を行なっています。TQM活動の最大の目的は、患者さんのニーズに沿った良質な医療を提供することです。病院組織を改善していくことで提供する医療の質が向上し、患者さんの満足につながる仕組みです。
<TQM活動の流れ>
患者さんの満足度を向上させたいと考えたとき、病院で働く職員の満足度が密接に関わります。当院では、患者さんからの「接遇Goodカード」を導入することで職員のモラル向上を図り、患者さんの心に届く医療サービスを実現しています。このような良い循環が、患者さんの過ごしやすい病院を作っていくと考えます。
福井赤十字病院は「体と心に優しい、優れた医療を提供する」を理念に掲げ、地域の医療に貢献してきました。例えば、内視鏡手術は開腹手術よりも体への負担が少なく、短期間での退院も可能になるため、内視鏡手術の推進に力を注いできました。
当院を含めた4つの地域医療支援病院は、福井県内の診療所やクリニックを支援し、地域医療の安定化に貢献する役割があります。20年後、30年後先を見据え当院として何をすべきか、地域を支えるという視点で実行していかなければなりません。そして福井県内の方々が安心して生活できるよう、今後も地域を支えていきます。
診療以外では「病気について知りたい」「病気と向き合いたい」という方々を支援するため、「市民公開講座」を開催する他、5月の赤十字月間に開催される「もっとクロス!赤十字フェスティバル」内で、様々な催し物を行っています。今年もぜひ、たくさんの方々に足を運んでいただきたいと思っています。
当院の最新情報や医療に関する情報等は、ホームページ、広報誌等でタイムリーに掲載していきますので、手にとってご覧ください(広報誌は、県内図書館や県内各保健センター等にも設置しています。)
福井県では高齢化が進んでおり、日々の生活を困難とせず健康に暮らすことが重要なテーマになっています。そんな中で、当院は福井県に住む方々の医療ニーズに応え続ける、地域にとって重要な医療機関でありたいと思っています。
当院は日本赤十字社のもとに成り立っています。患者さんの中には、日本赤十字社の理念に共感して当院へ足を運ばれる方も多くいらっしゃいます。今後もそんな患者さんの期待に応え、病気や怪我で困っている方々を1人でも多く治療し、支えていきます。
福井赤十字病院 名誉院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。