院長インタビュー

ドクターヘリやドクターカーを積極活用し、地域の急性期医療に貢献する八戸市立市民病院

ドクターヘリやドクターカーを積極活用し、地域の急性期医療に貢献する八戸市立市民病院
今 明秀 先生

八戸市立市民病院 院長

今 明秀 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年08月14日です。

八戸市立市民病院は、JR八戸駅から車で30分ほどに位置する、7階建の病院です。608床、32診療科を擁する総合病院であり、1997年に現在の病棟で診療を始めました。病院の特徴や取り組みについて、同院の院長を務める今 明秀先生にお話を伺いました。

当院の使命は、地域の急性期医療支援にあります。そのため、救命救急センターと周産期センターは24時間体制で稼働しています。現在、救命救急センターの受診患者数は、年間2万5,000例弱です。そのうち、救急車での来院が約6,000例、ヘリコプターでの来院が300例ほどです。

当院が救命救急センターの指定を受けたのは、1997年の移設時です。当時は専従の救急専門医はおらず、兼任医師が対応していました。

2004年に私が赴任し、常勤の救急専門医となりました。それ以来、北米型救急(ER)システムによる医療提供を行っています。すなわち、救急患者はまず救急専門医が診断し、その後、専門科の医師たちと協力して集中治療を行います。

現在は救急ICU30床と救命病棟54床を、専従の救急専門医7名と救急看護師で担当しています。これに後期研修医や、専門医資格取得のための研修ドクターが加わります。

当院の救命救急は「病院前救護」にも取り組んでいます。救急疾患には1秒を争うものも珍しくありません。病院到着時には手遅れだった、では済みません。そのため当院では、2009年からドクターヘリとドクターカーの運用を始めました。医師、看護師が病院で待つのではなく、救急現場に出て行くのです。これにより、より早期からの救急医療が可能になりました。年間の出動回数はドクターヘリが約500件、ドクターカーは1,500件ほどです。また、ドクターヘリは東北、ドクターカーは東日本で最多の出動件数となります。

「病院前救護」の要否を判断するにあたっては、オーバートリアージ(重症度の過大評価)を許容するようにしています。つまり少しでも救護が必要な兆しがあると判断すれば、ドクターカーやドクターヘリを出動させるのです。重症度を過小評価して重症化させるよりは、早期に医師が接触して重症化を抑制した方が、結果として効率的であると考えています。

当院は研修・教育にも力を入れています。

たとえば外科ですが、現在の臨床研修制度が始まる前から、研修医を受け入れてきました。初期研修では、外科を中心に消化器科・内科や麻酔科、心臓外科などをローテートし、その後は後期研修医として外科手術を多数経験してもらいます。そして一定数の経験を積んだ時点で大学に戻り、外科専門医を受験・取得という流れです。新研修制度になっても、基本的にこの流れは変わりません。多くの初期研修医が後期研修でも残ってくれるため、当院では外科医が不足することは少ないです。

初期研修医の定員は19名ですが、うち2名は最初から、「産婦人科プログラム」向けに受け入れています。当院では大学にできるだけ依存することなく、院内で産婦人科医の育成を目指しています。きっかけは、帝王切開手術を受けた妊婦さんが亡くなられたある事件です。この事件により産婦人科医を志望する若いドクターが激減しました。その結果、大学病院は各地に派遣していた産婦人科医を呼び戻すことになり、多くの医療機関で産婦人科の診療が難しくなりました。当院も例外ではなく、自院で産婦人科医を養成する必要性に気づいたのです。

きっかけとなった事件では、出血性ショックへの対応が大きな原因でした。出血性ショックは、産婦人科医ならばあまり経験がなくとも無理はありません。そこで当院の産婦人科研修では、吐血や下血、外傷性出血によるショックへの対応を、他科で学んでもらっています。これはほかの産婦人科研修にはない、当院の研修の特徴だと自負しています。

小児科の研修にも、特色があります。当院には小児科のほかに、胎児・新生児を管理する周産期センターがあります。小児科医師がセンターも担当しているため、小児科の研修では、新生児集中治療室(NICU)の管理も勉強できます。

また初期研修の要である内科は、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科のいずれも、多くの患者さんを経験できます。

救命救急における研修は、医学の基本です。紹介状のない患者さんを研修医が診断できるのは、大病院では救急外来だけです。

先に申し上げた通り、当院は救急車だけで年間6,000例が搬入されてきます。研修するには十分なボリュームでしょう。そして専任の救急専門医9名が指導にあたります。非常に恵まれた環境だと思います。そのため、1学年で2名程度が、後期研修医として残ってくれます。

なお後期研修には、周りの病院や全国の大学からも研修医がやってきます。

今先生

今後の展開としては、緩和病棟の設立が挙げられます。厚生労働省の調査によれば、国民が医療に望んでいるものは、「医師・看護師の確保」、「救急医療の充実」、「高度医療」、「緩和医療」の4つだといいます。最初の3つに関し、当院ではある程度実現できていると考えています。しかし残された「緩和医療」が課題となります。そこで2019

年には緩和病棟を開設すべく、現在、準備を進めているところです。

当院は「市民病院」という名の通り、市民のみなさんのための病院です。しかし現在では市の枠を越え、青森県全域、さらには岩手県北部の住民のみなさんからも頼られる存在に成長しました。地域医療の担い手として、現状の機能を維持しながらさらに成長していきたいと考えています。

また現在、当院で対応できる患者さんの数には限界があるので、緊急を要さない場合などは、まずかかりつけ医を受診するなど、うまく使い分けていただけると嬉しいです。

より良い医療を提供できるよう、ご理解とご協力をよろしくお願いたします。

※画像提供:八戸市立市民病院

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