院長インタビュー

高度な先進・救急医療で地域に貢献する、いわき市立総合磐城共立病院

高度な先進・救急医療で地域に貢献する、いわき市立総合磐城共立病院
新谷 史明 先生

いわき市医療センター 管理者

新谷 史明 先生

この記事の最終更新は2017年09月11日です。

福島県いわき市にある、いわき市立総合磐城共立病院は、高度な先進医療や救急医療で地域に貢献する地域医療支援病院です。さまざまな課題と向き合いながら、質の高い医療サービスを地域に提供し続ける同院の取り組みについて院長である新谷 史明先生にお話を伺いました。

 

当院は、761の病床と25の診療科を有する福島県いわき市の地域医療支援病院です。開院以来、高度な先進医療や救急医療を提供する医療機関として地域の方々からの信頼を得てきました。相手を慈しみ思いやる気持ちで患者さんに接し、優れた医療技術で診療、治療を行う「慈心妙手」の精神を基本理念に、市民のみなさまの健康を守っています

前身である磐城共立病院が開院したのは1950年(昭和25年)のことであり、1966年(昭和41年)の市町村合併を経て、いわき市立の医療機関となりました。2018年(平成30年)には新病院の建設完了が予定されており、新しい施設での診療体制の構築が進められています。現在の医療体制をさらに充実させ、新たに総合診療、緩和医療などの機能を加える予定です。

 

当院の心臓血管外科、循環器内科は、TAVI治療やPCI治療の導入により高い実績を誇っています。新たな技術の導入によって、手術によるアプローチでは体への負担が大き過ぎるために治療が困難であった患者さんも救えるようになったのです。

TAVI治療とは、機能の低下した心臓の弁を人工弁と置き換える治療方法です。別名「経カテーテル大動脈弁植え込み術」とも呼ばれるこの治療法は、カテーテルという医療用の管を、大腿動脈や胸壁から心臓へと入れ、人工弁を植え込むというものです。当院の心臓外科医がこの技術を習得し、循環器内科医と共同して大きな成果をあげています。

一方、PCI治療とは、動脈硬化などにより血液の流れが悪くなった心臓の血管を、バルーンによって膨らませたり、ステントを入れたりすることで機能改善を図る治療法です。TAVI治療同様、カテーテルによって心臓までバルーンを運び、疾患のあるところで膨らませます。

当院は、TAVI治療やPCI治療の導入により、大動脈弁狭窄症虚血性心疾患を患う多くの患者さんを救い、また医療技術の発展にも貢献してきました。切開をしないため、体への負担を最小限にとどめることのできるこのふたつの治療法は、当院の大きな特色となっています。

現在、福島県内には4つの救命救急センターが設置されています。当院は、その設備を有する医療機関のひとつで、いわき市では唯一の救命救急センター設置病院として、地域の救急患者さんと向き合っています。

1980年(昭和55年)に認可を受けた、当院の救命救急センターは、2002年(平成14年)に設備拡充をともなうリニューアルが行われ現在の姿となりました。4名の常勤医師と15名ほどの非常勤医師による万全の医療体制が整えられています。

初期および2次救急の患者さんの診療を行う救急外来のほか、複数の診療科に渡って処置を行う3次医療ゾーンを備えており、その万全の医療体制によって年間4,000台以上の救急車と22,000名以上の救急患者さんを受け入れています。

いわき市はもとより、周辺地域に当院以外の救命救急センターはありません。そのため、当院は夜間の救急患者さんを受け入れることができる、福島県浜通りから茨城県北地域で唯一の医療機関です。在籍する医師たちは地域における救命救急の砦として、常に命の最前線で戦っています。

また、日本救急医学会の救急科専門医指定施設である同センターは、救命救急医の育成の場であると同時に、救急救命士のプレホスピタルケアー教育の場としての役割も果たし、救命救急に携わる次世代の医療従事者を育てる拠点としても重要です。

当院では、充実した職場環境づくりにも力を注いでいます。働きやすい環境を整備することで、医師や看護師をはじめとした職員全員が気持ちよく仕事のできる病院を目指しています。その取り組みのひとつに、未就学児を対象とした育児スペース設置の計画があります。

病院は、看護師や女性医師、医療事務員など働く女性の多い職場です。そのような女性達が安心して働けるようにと育児スペース設置の計画はスタートしました。2018年(平成30年)に完成する新施設への設置を目指し、関係機関などとの調整を進めています。

福利厚生の一環として、在籍する医師達のキャリア支援にも取り組んできました。医師が、自身の専門性を高めるために行う勉強や研究などに対して、金銭面での支援や労働時間の調整を行っています。

病院をもっと身近な存在として感じて欲しいという思いから、当院は地域の方々や医療分野に興味のある方たちに向けて積極的な情報の発信を行ってきました。パンフレットやホームページ、SNSなどでの情報発信に加え、医療分野に興味のある中高生を対象とした職場紹介や院内の見学会の開催、医大生や看護学生など医療の道に進もうとする方たちを対象とした職場見学などを行っています。

パンフレットやホームページでは、主に地域住民のみなさまへの情報発信を目的に診療体制や理念などを紹介しています。また、2016年(平成28年)4月からは新たに情報誌“みまや”(病院の所在地、内郷御厩町に由来)の発行も開始しました。情報誌の目的は当院の診療に関するUp-To-Dateな情報の発信です。新たに取り入れた医療技術や取り組みなどを紹介することで、当院の存在をより身近に感じて欲しいと考えています。

当院は、医療分野に興味のある中高生をはじめ、医療に携わることを志す方たちを対象とした職場紹介や院内の見学会を定期的に行ってきました。将来医療に従事する可能性のある方たちに、病院での仕事を身近に感じてもらうことが目的です。また、ホームページ上で医療現場への就職を希望している学生に向けたPRビデオの公開も行っています。動画をとおして現場の様子や職場の雰囲気を伝える新たな取り組みとして、今後も継続して展開していく予定です。

※新病院完成予想図

 

当院は、長らく医師不足の問題に悩んできました。

現在は呼吸器内科の医師不足により結核病棟の閉鎖を余儀なくされています。これは、地域に結核の患者さんが発生した場合、遠方の病院へ頼らざるをえないことを意味し、特に移動手段を持たないご高齢の患者さんへの負担が懸念されている状況です。医学生や看護学生に向けた見学会はこのような現状の打破に向けた施策でもあります。並行して、あらゆる手を尽くし即戦力となる医師の早急な確保にも努めています。

 

当院では、診療科ごとに別々の医局が設置されています。医局とは、医師が待機したり、支度や研究を行ったりする部屋のことです。その医局が診療科別に設置されているため、診療科間の交流が生まれにくいという課題がありました。

そのため、2018年(平成30年)に完成予定の新施設には、すべての医師が共有する大きな医局の設置が予定されています。普段から、気軽に意見交換できるような雰囲気をつくることで、ゆくゆくは医師達がお互いの専門性を超えさまざまな視点に立った診察が行える体制の構築を狙っています。

 

地域で唯一の救命救急センターを有する当院では、3次救急患者の受け入れ体制を含む質の高い急性期医療サービスの提供を行ってきました。先ほど述べたように循環器疾患のほか、消化器疾患、脳卒中外傷などに対しても先進技術を取り入れて高い実績を上げています。

さらなる高度先進医療サービスの提供を目指すとともに、現在の課題と真摯に向き合っていくことで、地域の方々に信頼していただける病院づくりを進めてまいります。

今後の展望として、地域の医療機関だけであらゆる患者さんの診療が行えるよう、当院が中心となり医療機関の連携を強めることで地域完結型医療の実現を目指しています。安心して暮らすことのできる地域づくりにこれからも貢献していきたいと考えております。

*画像提供:いわき市立総合磐城共立病院

受診について相談する
「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

「受診について相談する」とは?

まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

  • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
  • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。