院長インタビュー

患者さんが人生を全うするための手助けをする 塩山市民病院の取り組みとは

患者さんが人生を全うするための手助けをする 塩山市民病院の取り組みとは
多和田 眞人 先生

塩山市民病院 院長

多和田 眞人 先生

この記事の最終更新は2018年07月03日です。

公益財団法人 山梨厚生会 塩山市民病院は、山梨県甲州市塩山に位置する医療機関です。1998年に開設されて以来、地域の中核病院として患者さんに寄り添った医療を提供しています。今回は院長の多和田眞人先生に、患者さんのニーズに合わせた病院の取り組みや、多和田先生が考える人生・病気との向き合い方についてお話を伺いました。

塩山市民病院よりご提供

塩山市民病院は、地域の患者さんのニーズに柔軟に対応するため、さまざまな取り組みを行っています。

当院を開設した1998年当初は、急性期病棟の病床が100床、療養病棟の病床が59床でした。しかし、地域住民の高齢化により急性期病床に加えて回復期リハビリテーション病床の必要性も強く感じるようになりました。そのため、2階は急性期病棟50床、3階は回復期リハビリテーション病棟50床、4階は長期療養型病棟57床という構造につくり変えました。

3種類の病床が1つの病院内にあることで、患者さんは他の病院へ移動するという負担がなくなり、急性期医療が終了した患者さん方は回復期リハビリテーション病棟へ転棟し、回復期リハビリテーションが終了しても自宅や介護施設へ帰ることが困難な患者さん方は、長期療養型病床を利用することができます。また、回復期リハビリテーション病棟や長期療養型病棟に入院中の患者さん方の容態が急変した際は、すぐに急性期病棟で処置をすることも可能です。もちろん、当院常勤医師の専門外の急性疾患の場合には、他院へ救急搬送する場合もあります。

塩山市民病院よりご提供

糖尿病の患者さんは全国でも増加傾向にあります。そのため、当院では糖尿病啓発にも力を入れており、その一環として地域の糖尿病患者さんやそのご家族向けの「糖尿病フォーラム」を開催しています。糖尿病の知識や歯周病との関係とともに、私が考える人生・病気との向き合い方について講演し、少しでも患者さんの手助けとなれるよう努めています。

また、最近では訪問診療を行っている医師との連携も進めています。在宅で訪問診療を受けている患者さん方の病態が変化して入院が必要となった際には、積極的に受け入れる訪問診療後方支援ベッドを確保する体制を整えました。在宅で訪問診療を受ける患者さん方と訪問診療を実践する先生方の後方部隊として地域を支えていく所存です。

塩山市民病院よりご提供

口腔環境は誤嚥性肺炎糖尿病などの病気と深く関わっており、患者さんの口腔環境を清潔にすることは非常に重要です。しかし、当院には残念ながら歯科がありません。そのため、地域の歯科医院に協力してもらいながら、専門的口腔ケアにも力を入れています。

誤嚥性肺炎…口腔内にある細菌が気道に入ることで発症する病気。

患者さん方が当院に入院する場合、かかりつけの歯科医院に行けなくなるため、今まで受けていた歯科治療・口腔ケアを中断することになります。そこで、当院では甲州市および山梨市内の歯科医院と連携し、入院患者さん方の専門的口腔ケアを行っています。患者さん方の専門的口腔ケアが必要だと判断した際は、連携している歯科医院に連絡し当院に来てもらっています。経口摂取が困難な患者さん方でも、ブラッシングや洗浄、舌を動かす筋肉のマッサージなどを実施することで、えん下機能の改善がみられた方も数多くいます。当然ながら専門的口腔ケアは口の機能の低下を改善させるだけでなく、誤嚥性肺炎の予防にもつながっています。

糖尿病の患者さん方は免疫力が低下するため、歯周病にかかりやすくなります。そのため、糖尿病内科と歯科の連携を深めるために、2016年に峡東Dental Diabetes研究会を立ち上げました。当研究会では、「歯科領域疾患で歯科医院を受診した際に、はじめて糖尿病と診断される患者さんが多いのではないか(歯科医院受診時の血糖値測定で判明する)」という仮説を立てました。その仮説をもとに、「歯科で血糖値測定を実施した後、糖尿病の疑いがある患者さんは専門の病院へ紹介し、糖尿病に早期介入をする」という自主研究の実施を目指しています。糖尿病は自覚症状が乏しいことが多く、比較的若年の方は仕事が忙しいなどの理由から糖尿病治療のための内科受診を敬遠する傾向があります。しかし、お口のトラブルの場合は日常生活に支障をきたすため歯科医院に行かざるを得ません。歯科医院で血糖測定をすることは、見逃されやすい若年の糖尿病患者さんの早期発見につながるのではないかと考えています。

峡東地区には糖尿病の専門家が多く、歯科の医師との連携も強いという特徴があります。この特徴をいかし、早く研究を実現させたいと思っています。

塩山市民病院よりご提供

病気の治療は、患者さん方がご自身の人生を全うするための手段のひとつではないかとご提案させて頂いています。患者さん方がご自身の使命や人生の目的を達成する際に障害となる病気を除去するために医療が必要となる訳であり、病気の治療それ自体が人生の目的ではないと思います。私は医師として、患者さんが人生を全うするためのお手伝いをするという思いで医療をご提供させて頂いています。

私は医療について研究するとともに、人生についても研究しています。私は講演会でよく「セレンディピティを身につけませんか?」とご提案させて頂いています。セレンディピティとは、禍を福に転じる能力のことです。セレンディピティが高まれば、幸福度も高まることが心理学の研究で報告されています。セレンディピティを身につける方法のひとつは、イマジネーションをすることです。たとえば、今自分のいる環境に破局的なことが起こったときのことを想像できれば、日常のあり難さに気づくことでしょう。そのことがセレンディピティを獲得することなのです。

そして、セレンディピティが高い方はレジリエンス(悲劇・喪失体験による悲嘆からの回復力)も高いということがわかっています。さまざまな病気を背負いながらもセレンディピティとレジリエンスの高さから、人生を謳歌している方は世界中にたくさんいらっしゃいます。ぜひ、セレンディピティを身につけて、より多くの方々に素晴らしい人生を歩んでほしいと思っています。塩山市民病院はその素晴らしい人生の支えになれるよう、これからも患者さん方とご家族の方々に寄り添った医療を提供していく所存です。

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