院長インタビュー

高度急性期医療を担い、地域完結型医療をつくる名古屋第一赤十字病院

高度急性期医療を担い、地域完結型医療をつくる名古屋第一赤十字病院
宮田 完志 先生

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 名誉院長

宮田 完志 先生

この記事の最終更新は2017年09月27日です。

愛知県名古屋市は、人口減少が叫ばれている日本のなかで数少ない人口増加都市です。そのなかで、日本赤十字社名古屋第一赤十字病院は、852床の病床数を有し、名古屋西部の高度急性期医療を担っている病院です。最新鋭の医療設備や高度な診療技術を備えつつ、地域のみなさまから親しまれています。また、京都大学iPS研究所・CiRA(サイラ)の活動である細胞ストックプロジェクトに賛同し、協力関係を結ぶなど、多くの患者さんの役に立つことが期待される、最新の医療技術の発展にも貢献しています。同院ではそのほかに、どのような取り組みを行っているのか、院長である宮田完志先生にお話を伺いました。

 

 

 

当院は、1937年4月に日本赤十字社愛知県支部名古屋病院として100床で開設しました。開院以来、時代の流れや医療技術の向上とともに、病院建物の拡充や高度で先進的な医療技術を導入してきました。また、地域で安心して出産ができるよう助産師による正常分娩を取り扱うバースセンター棟や、がん患者さんやご家族のケアを図る独立家屋型の緩和ケアセンターを併設しています。

当院は名古屋市北西部に位置し、一日平均外来患者数約1,600名、年間の救急車搬送数は約8,000台と、愛知県でも有数の規模を誇ります。

バースセンター、総合周産期母子医療センター、小児医療センター、造血細胞移植センターでは、複数の診療科が連携し、患者さんに最適な診療ができるようにセンター制を導入しています。それ以外の神経疾患、循環器疾患、消化器疾患、呼吸器疾患などの診療でも専門科間の垣根を越えた医療を実践するシステムが整備されています。

 

 

 

当院の心臓血管外科は、年間約400例、開設以延べ6,000例ほどの心臓および胸部大動脈手術を行っています。大動脈の壁が突然裂けてしまう急性大動脈解離は、一刻も早い手術が必要となるため当院は24時間当直体制で速やかに対応しており、他院から依頼される患者さんの手術も断りません。

2014年に導入したハイブリッド手術室は、手術室とカテーテル室(レントゲン透視ができる部屋)を同じ場所に設置した施設です。この手術室の配備により、患者さんの容態の変化や不測の事態にも瞬時に対処できるようになりました。当院は、このハイブリッド手術室でしか実施できない「経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)」の認定施設です。これまで外科手術を受けるのが難しかったご高齢の患者さんや、合併症のある患者さんに対しても手術が実施できるようになりました。

また、MICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery)と呼ばれる心臓の内視鏡手術を実施しています。これにより、最小3センチの創(きず)で手術を行えるようになりました。胸骨を切ることなく心臓の手術ができるため、患者さんの負担を大幅に減らすことが可能です。

当院では、心臓外科、循環器内科、麻酔科、看護師、放射線技師などによるハートチームを構成し、患者さんに最適な治療を日々検討しています。これからも、一人でも多くの患者さんの命を救うため、ハートチームは日々努力しています。

 

 

 

当院の呼吸器外科では、常勤専門医師による最適で迅速な手術の実施により、肺がんをはじめとする呼吸器疾患の患者さんの外科診療に貢献してきました。2008年に地域がん診療連携拠点病院となり、肺がん診療により重点をおいてスタッフの充実を図りました。2016年の手術件数は364件であり、毎週7件の手術を行える体制を構築しています。呼吸器外科だけではなく、呼吸器内科・放射線科・病理部で毎週カンファレンスを開催し、最適な治療を迅速に提供し、患者さんが早期に復帰できるよう協力しています。

迅速な治療を実施するとともに、治療に不安を覚える患者さんに対し、丁寧な説明をするようにしています。手術の実施を決めたら、これから実施する手術の様子がわかるような画像説明システムを使い、患者さんの不安を少しでも取り除くよう努力しています。

 

 

造血幹細胞移植は、これまで完治に至らないとされた白血病だけではなく、再生不良性貧血や、発作性夜間血色素尿症、悪性リンパ腫多発性骨髄腫に対しても効果が認められている治療法です。

造血幹細胞移植を必要とする患者さんに、最適な状態で移植を受けられる医療施設と認められ、当院は2013年に全国ではじめて造血幹細胞移植推進拠点病院として認定されました。当院の造血細胞移植センターは、無菌治療室21床を含む41床をベースとして、内科、小児科、病理部、歯科をはじめとした多職種から構成する造血細胞移植チームを中核とし、運営しています。

1977年に当院の第一例目の骨髄移植が実施されて以来、現在まで行われた移植数は約1,600件を超えます。当院の小児血液・腫瘍科は、小児白血病の新規患者数が愛知県でもっとも多く、造血細胞移植件数も現在までに650例を超えます。全国から、治療のため長期入院される小児患者さんのご家族のため、当院から徒歩3分の場所に宿泊施設「めばえ」を用意し、ご家族が治療に専念できるようサポートしています。

 

 

当院は、心臓病・糖尿病などのある妊婦さんや、妊娠高血圧症候群切迫早産の妊婦さんなど、リスクの高い妊婦さんに適切な治療を行い、母子ともに元気に退院していただくことを目的として、1998年に愛知県ではじめて総合周産期母子医療センターを開設しました。同センターはNICU(新生児集中治療管理室)18床と、MFICU(母体・胎児集中治療管理室)9床を擁しています。

現在、愛知県内外より切迫早産や、多胎、重症妊娠高血圧症候群など、年間約300件の妊婦さんが母体搬送されています。分娩の際には新生児部門の医師と事前に情報を共有し、スムーズに出生後の新生児治療に移行できるように努めています。また産後大量出血など産後の救急疾患における搬送患者さんに対しては、当院の各診療科と連携しながら治療を進めています。

当院は、愛知県でもっとも歴史のある総合周産期母子医療センターとしての責務をまっとうし、リスクの高い妊婦さんの搬送を絶対に断りません。地域における出産を守る最後の砦として、地域のみなさまからの信頼にお応えできるよう、全力を挙げて周産期医療に力を入れていきます。

 

 

 

当院の病理部には、5名の病理医が在籍しています。また、各診療科の医師と連絡を取り合い、正確で質の高い医療を提供できるように努力しています。病理医の診断に基づき、治療方針や予後が決定されるため、病理は医療のなかで大変重要な位置を占めています。当院の病理部は非常に高い実績をあげており、とくに骨髄移植や造血器疾患の病理診断では全国からの相談を多数受け入れています。

2013年からベトナムの移植技術の向上のため、ベトナム国立血液輸液研究所から医師および技師を10名以上受け入れ、研修を行いました。その後はベトナムに設立された臍帯血バンクからの移植患者の治療法や合併症に関する問い合わせに答えるなど、同国との協力関係が続いています。その取り組みが評価され、2017年4月にベトナム保健省から人民健康章を受賞しました。

 

 

当院は地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、がん患者さんとそのご家族に対して高度ながん医療を提供しています。これまでは一般病棟のなかの1フロアを緩和ケア病棟にしていましたが、それでは真の意味のホスピタリティを実施できないと考え、独立家屋型の緩和ケアセンター棟を建てました。どの病室からも広い庭園を眺めることができ、ベッドのまま病室から庭に出ることが可能です。全室個室になっており、面会制限がないため、ご家族は24時間いつでも患者さんのそばにいることができます。

 

 

当院は、地域のみなさまの健康な暮らしを守るため、名古屋市西部の高度急性期医療を担っています。しかし、当院だけでは急速に進む高齢化社会に必要な医療サービスのすべてをご提供することは困難です。そのため、これまで取り組んできた地域医療機関との連携の強化を目指しています。

2017年には、高度急性期や、回復期、慢性期、在宅医療、介護などに範囲を拡大した連携を実現するため、発足当時から名古屋西部・海部東部地域包括ケア推進協議会(尾陽包括ケアの会)の一翼を担っています。

名古屋市西部は一人暮らしの高齢者の方がとても多く、とくに在宅医療や介護の領域まで含めた医療の提供が求められています。「地域にとって、当院はどのような役割を担うべきか」という視点を持ち、高度で質の高い医療を継続的に提供していく仕組みを、地域全体で考えてまいります。

 

 

当院には、医師が288名、看護師959名、そのほかの職員も含めると合計1,700名近いスタッフが働いています。どの診療科においても、ひとつの科だけでは医療は成り立ちません。医師や看護師、薬剤師、管理栄養士、放射線技師や理学療法士など、さまざまな分野のプロフェッショナルがそれぞれの専門性をいかし、患者さんにとって最適な医療を日々検討しています。当院の手術件数や症例数が伸びているのは、職員同士のチームワークあってのことです。職員間の仲は非常によく、年齢や立場にとらわれず、気付いたことを伝え合う雰囲気ができています。

 

宮田完志先生

 

 

当院は1970年に開通した地下通路により、地下鉄東山線の中村日赤駅と直結しております。地域のみなさまが愛着を込めて「中村日赤」と呼んでくださり、当院が地域に根差した病院になっていることに非常に感謝しております。

そして、今後も「名古屋第一赤十字病院に来てよかった」と思っていただけるよう、高度で安心・安全な医療を提供し続けます。

この地域に住むみなさまが、安心して医療を受け、その人らしい暮らしができる地域を目指し、地域の医療機関の方々との連携をさらに進めてまいります。

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