院長インタビュー

あらゆる人へよりよい医療の提供をめざす済生会松山病院

あらゆる人へよりよい医療の提供をめざす済生会松山病院
宮岡 弘明 先生

済生会松山病院  院長

宮岡 弘明 先生

この記事の最終更新は2018年01月29日です。

社会福祉法人 恩賜財団 済生会松山病院は愛媛県松山市に位置します。開院以来、松山市の西部地区に暮らす方々の健康を守ってきました。

あらゆる方に医療を届けるという済生会の精神のもと、生活困窮者や離島に暮らす方々への医療提供にも力を入れています。同院の取り組みについて、院長である宮岡 弘明先生にお話を伺いました。

 

当院は、松山市西部地区唯一の公的病院です。脳神経・脳卒中センターや循環器センター、甲状腺・糖尿病センター、内視鏡センターを設置したのに加え、愛媛県のがん診療連携推進病院として認可され、国が進める五疾患・五事業のうち、がん・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病の四疾患に対応してきました。今後もさらに質の高い医療提供をめざし、地域に貢献したいと考えています。

 

また、済生会グループが取り組む災害救援活動における、四国ブロックの準基幹病院として災害発生時に備えた訓練を行っています。さらに、2011年の東日本大震災で被害を受けた岩手県の済生会岩泉病院や愛媛県の済生会小田診療所へスタッフを派遣することにより、へき地医療のサポートにも力を入れています。

 

済生会は「分け隔てなくあらゆる人々に医療・福祉の手をさし伸べる」という理念のもと、さまざまな社会貢献活動に取り組んでいます。その一員である当院も、特別養護老人ホームや介護老人健康施設、訪問看護ステーションといった済生会グループ施設と連携することで医療と福祉が途切れることのない質の高い医療をめざしてきました。生活困窮者も医療を受けることのできる無料低額診療を実施しています。

 

これに加え、広島・岡山・香川・愛媛の4県による合同事業として行っている、「済生丸事業」もその取り組みのひとつです。

 

1986年に行われた海上保安庁の調査によって、瀬戸内海にある有人離島の数はおよそ300島であると明らかにされています。済生丸事業では、そのうちの60〜70島を巡回して診療を行ってきました。

 

広島県の有人離島には済生会広島・呉病院が、岡山県の有人離島には岡山済生会総合病院が医師を派遣するといったかたちで、瀬戸内海に面する4県が分担して巡回診療を行っています。愛媛県には4つの済生会病院があり、今治周辺の島には済生会今治病院と今治第二病院が、松山周辺の島には当院がそれぞれ医師を派遣しています。宇和海の島々には済生会今治病院・済生会今治第二病院・済生会西条病院・当院の4病院に在籍する医師が合同で診療にあたってきました。済生丸事業で診療を提供している島々には、2017年現在約18,500名が暮らしています。

 

2016年度には、年間でそのうちの8,656名が診療を受けています。同じく2016年度、当院をふくむ4県の済生会グループ病院は、年間延べ1,038名の医療スタッフを離島へ派遣しました。

 

松山沖の島嶼部では2017年からは厚生連病院グループと協議し、合同で「けんしん」を行っています。「けんしん」に使用する医療機器を厚生連が、医師と医療スタッフ・済生丸を済生会が提供しています。そこではがん検診は厚生連が、生活習慣病予防のための特定健診は済生会が分担して「けんしん」事業を実施しています。

 

済生丸事業は、済生会設立50周年を記念して1961年に開始した事業です。これまでに3度の代替わりを経て巡回診療を行ってきました。現在運行している4代目済生丸には、済生会設立100周年を記念して「済生丸100」という名前が付けられています。

 

済生丸100は3代目済生丸の基本設計に加え、船体・医療設備のハイスペック化や船内のバリアフリー化が図られました。乳腺のマンモグラフィーを搭載することで乳がん検診ができるようになったことに加え、エレベーターを設置することでご高齢の方の船内移動を楽にする工夫が施されています。

 

松山二次医療圏は輪番制二次救急体制が整っており、参加する各医療機関が8日に一度のペースで救急を担当するスケジュールが組まれています。

 

2012年には、救急棟を増築するなど、当院も救急医療に力を入れてきました。2014年10月1日からは単独で二次救急を担当するようになり、増床が認められました。

 

当院は、1992年に現在の場所に新築移転しました。研修医の育成に力を入れるなど医師の確保に務めることで、移転当初170名だった職員数を2009年時点で367名へ、2017年時点で545名へと増やしてきました。

 

また、1992年時点で141床だった病床の数も、2009年には170床へ、2015年9月には199床へと増床が認可されました。全国的に急性期病床数を減らす方向のなかで増床が認められた要因は、救急医療に力を入れていることが評価されたためだと考えられます。2016年度には年間2,962件の二次救急搬送を受け入れ、救急日の救急車搬送件数最高値は104台、入院患者数最高人数は44名であり、当院スタッフの奮闘には頭が下がります。

 

2017 年現在、全国的に高齢者の誤嚥性肺炎が問題になっています。誤嚥性肺炎とは、水や食べ物のほか、胃や食道からの逆流物が誤嚥によって肺に入り、それらに付着していた細菌が肺内で繁殖することによって炎症を起こす疾患です。この疾患は、飲み込む力が低下するこのより生じるため、再発を繰り返し退院に時間を要します。また、なかには食事が取れなくなってしまうご高齢の患者さんや、介護が必要になる患者さんもいらっしゃいます。当院は、2007年頃より誤嚥性肺炎専門の医療チームを編成することで、この疾患の救急搬送にも対応してきました。

 

また、高齢者の救急疾患として骨折が増えてきました。高齢者の骨折は対応が遅れるほど、種々の合併症を引き起こすリスクが高まり、入院期間が長くなります。当院の整形外科は、救急での入院や紹介を受けた高齢者の骨折を迅速に手術し予後改善につなげています。

 

当院には一般企業と同様に社会貢献が求められます。病院に来られる患者さんに対応するだけでなく、病院外に出かけて健康や疾病について啓発活動をすることが大切です。

当院は2015年から松山西部地区にある高浜・三津浜・興居島(ごごしま)で「元気100倍講座」を開催しています。毎年4月から11月まで毎月公民館や集会所で医師の講義やメディカルスタッフの実演などを行ってきました。2017年には味生(みぶ)地区で脳卒中がんに関する健康教室を開催しました。

 

当院は、2004年に臨床研修医の受け入れを開始し、愛媛県の将来の医療を支える人材育成に取り組んできました。臨床研修への取り組みは医師の確保にもつながり、1992年に15名だった医師の数は、2017年には48名となりました。若手医師の増加は、救急輪番を単独で行うための医療体制構築に不可欠な要素でもあります。

 

当院は、広い視野で診療に臨む専門医の育成をめざしています。研修医たちには、自身の専門領域を掘り下げながら、それに固執することなく総合的な視点で診療にあたることのできる医師になってほしいと考えています。そのような医師を育成するために、当院ではバランスのよい研修プログラムの提供に努めてきました。

 

研修プログラムを構築するにあたり、私は全国の研修病院を見学しました。その経験を通して救急医療のなかでの実践と、しっかりとした研修プログラムを整える、バランスのよい研修環境を提供したいと考えました。初期研修の目標のひとつは「救急疾患の初期対応がしっかりできるようになる」ことです。当院の救急輪番当番日には多くの救急患者さんが搬送されてきます。患者さん一人ひとりのへの対応をきちんとすることで、将来進む診療科を問わず救急疾患への初期対応ができるようになります。また救急当番日以外は比較的時間の余裕があるため、座学でもしっかり学べます。

 

当院の研修プログラムは、研修一年目に外科系の研修と内科系の研修を約半年ずつ盛り込むことで、バランスのとれた医師の育成をめざしています。さらに、一年目の研修プログラムには脳神経外科や整形外科の内容をふくむ救急部門の研修が必須になっています。これが当院の提供する研修プログラムの大きな特徴です。研修医が将来進む診療科に関係なく医師としてのキャリアの最初にこのような研修を経験したことは、この先の医師人生の大きな自信となるはずです。

 

宮岡 弘明先生

当院は、分け隔てなく医療を届けるという済生会の理念のもと、地域に密着したよりよい医療の提供をめざしてきました。

私は、当院のすべてのスタッフへ「当院をどのような病院だと思いますか」という問いを投げかけたことがあります。そのときの答えから、当院を表す言葉の一つとして「地域に密着した良質な医療を提供する」というメッセージができました。当院のスタッフは、今後も地域に根ざした医療を心がけ、日々の診療にあたってまいります。

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