院長インタビュー

「ERハブ化構想」と「かかりつけ医支援」でさらなる地域への貢献を目指す京都第一赤十字病院

「ERハブ化構想」と「かかりつけ医支援」でさらなる地域への貢献を目指す京都第一赤十字病院
池田 栄人 先生

日本赤十字社 京都第一赤十字病院 院長

池田 栄人 先生

この記事の最終更新は2017年11月01日です。

日本赤十字社 京都第一赤十字病院は、JR・京阪電鉄「東福寺」駅から、歩いて5分のところに位置します。京都駅八条口からは、無料シャトルタクシーも運行しています。診療科は36科、実働病床数は612床の総合病院です。1934年の開設以来、どのような医療を提供しているのか、院長の池田栄人先生にお話を伺いました。

航空写真

当院は、「救急」と「周産期医療」を基幹事業として医療を展開して来ました。

救急では、「院内に空床のある限り、救急を断らない!」をモットーに、重症や複合疾患のため他院では対応が難しいと判断された患者さんも積極的に受け入れて来ました。そのため、救急車の受け入れ数は京都府内でトップクラスです。ヘリポートからの搬入も含め、年間およそ8,000件の救急車を受け入れています。

ヘリポート

1997年には、病棟の全面改築にあわせて、京都では3番目となる「救命救急センター」を開設しました。集中治療室(ICU)8床を含む、全30床です。2012年には、10床の院内ICUが加わり、センターの受け入れ体制はより向上しました。

救急外来(ER)を当院の救急部スタッフが主に担当していますが、京都府立医科大学附属病院・救急医療科と京都大学大学院医学研究科初期診療・救急科とも連携関係を構築しております。小児救急にも対応しています。また、ドクターカー運用で医師を派遣し、患者さんの搬入前に診断する「病院前医療」もおこなっています。

周産期医療を担当するのは、「総合周産期母子医療センター」です。産婦人科と新生児科が協力して、妊婦の管理、出産、新生児のケアを行っています。早産の心配のある妊婦さんや、多胎や合併症のある妊婦さんに対しては、母体胎児集中治療室(MFICU)での対応も可能です。当センターでは、年間600件ほどの分娩数があり、NICUでは年間約300件の入院を受け入れ、京都においてトップの件数です。

当センターは京都府の周産期医療情報システムにおける基幹病院という位置づけもあります。府下の主な病院の空床状況を常時、一元的に把握し、ハイリスクの妊婦さんに対する適切な搬送先の確保に努めています。新生児に集中治療が必要だと判断した場合には、新生児科医がドクターカーで出向きます。当院での受け入れが難しい場合にも、新生児の状態にもっとも適した施設に搬送、入院できるよう手配します。

当院の高度医療の提供を強力にサポートしているのが、麻酔科です。常勤15名、非常勤2名(うち6名が日本麻酔科学会専門医)という体制で、麻酔科管理率は70%と高く、安全・安心な手術環境を整えています。

当院は「地域がん診療連携拠点病院」の指定も受けており、がん治療にも力を入れています。

さまざまながん治療を手がけていますが、特に、内視鏡を使った粘膜下層剥離術(ESD)の施行数は京都で最多を誇ります。ESDは、開腹の必要はありませんし、これまで内視鏡を使った治療では取れないとされた、比較的大きながんも切除できます。

2004年より外来化学療法専用の部屋を設け、現在は20床で稼働し、年間8000件以上の化学療法を行っております。主治医と化学療法部だけでなく、がん化学療法看護認定看護師やクラークが、患者さんをサポートしています。

がん治療に欠かせないのが、緩和ケアです。現在は、緩和ケア内科が中心となり、多職種から構成される20名ほどの「緩和ケアチーム」が、外来・入院中のがん患者さんに緩和ケアを提供しています。将来的には緩和病棟をつくり、レスパイト入院(在宅医療・介護からの短期入院)も引き受けられるようにしたいと考えています。

がん治療を支えているのが、病理診療科です。病理医が4名在籍し、うち一人は京都府立医科大学附属病院の元病理学教授です。もう一名も同大学附属病院の臨床教授です。診断に関しては全例、病理医間でクロスチェックして精度管理を行い、高い信頼を誇っています

重症例や複合疾患に対して適切な治療を実施するために、重要な機能を果たしているのが検査部です。ISO15189は、臨床検査室の品質と能力に関する国際規格で、認定を取得した検査室は、国際規格に合致した検査室として、その検査結果は国際的に通用することを意味します。

研修

現在は1学年13名を募集しています。毎年フルマッチし、初期研修医の7割が、当院の後期研修に残ってくれます。

後期研修には、専門医資格取得のための経験を積みに大学からやってくるドクターも多く、50名近く在籍しています。また、研修指導医は105名おり、充実した教育環境を整えています。

当院は日本赤十字病院であるため、災害救護活動にも積極的に取り組んでいます。

特に、当院は京都府の「基幹災害拠点病院(基幹災害医療センター)」に認定されております。拠点病院の役割は大規模災害初期の、被災地における迅速な医療活動の支援です。

また医師1名、看護師3名、事務員2名で構成される「救護班」を常に出動できるよう、訓練・準備しています。さらに、被災地での救急医療を担当する緊急災害派遣医療チーム(DMAT)も、編成しています。

最近では、災害だけではなくテロを想定する訓練も始まりました。国民の安全に関わる事態ですので、今後も気を抜くことなく万全の備えで臨みます。

池田栄人先生

2012年、当院は京都府から「地域医療支援病院」として承認されました。

認定以来、病診連携、病病連携の推進に力を入れています。

急性期病院としては、DPCⅡ群(大学病院と同程度の機能と医療レベルにある、高診療密度病院群、全国140病院のみ)に3期連続して選ばれ、トップレベルの高度急性期病院と評価されています。当院は京都南部において高度急性期医療の基幹病院として機能していますが、これからは、地域での包括ケア構築のための医療システムが重要となります。

たとえば、「ERのハブ化構想」です。これは、当院のERで診断した後、ほかの医療機関でも治療が可能だと判断した場合、より適した施設に紹介するというシステムです。地域の高齢化を検討し、救急医療リソースの有効活用が必要で、今後、病病連携、かかりつけ医との連携を更に進めていきたいと考えています。

当院は救急医療を核として長らく地域に貢献してきました。今後はこのシステムを活用して、医療だけでなく介護なども含めて、地域のみなさんの健康をサポートする医療機関、「地域に開かれた病院」目指していきたいと考えています。

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  • 日本赤十字社 京都第一赤十字病院 院長

    池田 栄人 先生

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