院長インタビュー

「女性と子どもにやさしい病院でありたい」-葛飾赤十字産院の取り組み

「女性と子どもにやさしい病院でありたい」-葛飾赤十字産院の取り組み
三石 知左子 先生

葛飾赤十字産院 院長

三石 知左子 先生

この記事の最終更新は2017年10月30日です。

葛飾赤十字産院は、1953年(昭和28年)に東京都葛飾区立石に設立され、2013年(平成25年)に創立60周年を迎えました。全国に92ある赤十字病院のなかで、唯一の産院として、地域の周産期医療に貢献しています。

1997年(平成9年)に東京都より地域周産期母子医療センターに認可され、現在、地域の周産期および小児医療の拠点病院としての役割を担っています。同院の取り組みと今後の展望について、病院長である三石知左子先生にお話を伺いました。

 

当院は2013年に創立60周年を迎えました。地域の方々に親しまれ、60年もの長きにわたり、地域の産婦人科と小児科医療に携わらせていただきました。葛飾区の子どもの4人に1人は当院で産まれた子どもです。

2017年(平成29年)3月からはより当院に親しんでもらう目的で、「Pepper」を導入しました。これは赤十字病院グループのなかではじめての試みです。治療が必要だけれども、病院に行きたがらない子どもを当院にお連れいただくきっかけになればと思っています。Pepperには現在、病院案内などといった患者さんへのサービスに関する仕事をしてもらっていますが、いずれは保健指導などもしてもらえるようになれば、と考えています。

 

近年、高齢出産や合併症のある妊婦さんが増加しています。当院はNICU(新生児特定集中治療室)12床、GCU(新生児治療回復室)18床、産婦人科68床を備え、高度な医療を必要としているハイリスクな妊婦さんや新生児を診る病院としての役割を担っています。そのため、救急搬送の依頼は断りません。地域の病院からそのような搬送の依頼があれば、当院の医師が迎えに行き、治療にあたることもあります。そういった取り組みが地域からの信頼を得ており、東京都のみならず、埼玉県や千葉県といった近隣の県からも搬送依頼を受けることもあります。スタッフの懸命な努力により、院内のみならず地域の母子のために24時間医療体制を整えております。

 

当院は施設の老朽化や耐震性向上などの理由から、2021年(平成33年)に葛飾区新宿(にいじゅく)への移転・建て替えを計画しています。新病院はNICU12床、GCU24床、産婦人科68床の104床となる予定です。また、敷地内に図書センターの機能を備えるなど、これまで以上に地域の方々とのつながりを強くし、親しまれる病院つくりをめざす考えです。

 

当院では、親しみやすく温かい雰囲気のなかで、安全を担保した出産ができるよう、常に心がけています。安心して私たちスタッフにお任せしていただけるよう、妊婦さんに寄り添うことのできる人材育成に取り組んでいます。その一環として、外部講師を招いての研修などを実施して接遇スキルの向上には特に力を入れて取り組んでいます。

また、当院には2名のソーシャルワーカーが在籍しています。1名は当院で助産師として働いていた経験があります。助産師として培った周産期医療に関する幅広い知識をいかしながら、患者さんの産後の生活サポートや社会資源の活用などについて支援を行っています。医師や助産師・看護師だけでなく、ソーシャルワーカーや臨床心理士といったコメディカルスタッフが活躍してくれていることが、当院の大きな強みであるといえます。スタッフ一人ひとりが高いスキルとノウハウを持ち、どのようにすれば患者さんによりよいケアが提供できるのかを、自ら考え、試行錯誤し、努力して仕事をしてくれていることは、当院にとっての強みとなっていると考えています。

 

当院にはマタニティ鍼灸ルームがあり、女性の鍼灸師が東洋医学に基づき、鍼と灸の施術を行っています。妊娠中から産後にかけて、つわり、冷えやむくみといったマイナートラブルや産後の全身疲労などに悩む方は少なくありませんが、母体や赤ちゃんへの影響を考慮し、薬物療法を積極的に行えないケースがあります。そのような妊婦さんや産婦さんに対し、医師の許可を得て、安全に配慮した施術を行っています。リラックス効果や痛みを和らげる医療効果があることはもちろん、一対一で体に触れてケアすること自体が、何より人を癒すのではないかと考えています。

当院は実働病床数98床の小規模な病院なので、幹部職員にスタッフの声が届きやすい環境といえます。風通しのよい病院作りを心がけており、スタッフから新しいことに取り組みたいという要望があれば、なるべく採用するようにしています。

 

私が2006年(平成18年)に病院長に就任した際に取り組むべきと感じたことは、働きやすい職場づくりでした。我が国の若手の小児科医師の半数、産婦人科医師は7割が女性である現状のなかで、現場で充実した高度医療を提供するには、いかに子育て中の医師のキャリアを途切れさせずに継続してもらうかが課題といえます。

赤十字病院グループでは、職員のワークライフバランスや、女性の活躍の推進を掲げ、2016年(平成28年)10月に「イクボス宣言」をしました。まずは、有給休暇の取得率を上げ、時間外労働を減らすといった取り組みから始めています。女性にとって働きやすい職場は、男性にとっても働きやすい職場であると考えています。お互いに助けあってメリハリをつけた働き方を現場で工夫していただくことが大切です。当院としても、女性医師が産休や育休後に復帰しやすい、あたたかな職場環境をつくり、困っていることがあれば、それをいち早く察知してサポートしていきたいと考えています。常に100%で働くことが難しくても、医師という仕事を辞めずにキャリアアップして欲しいと思います。

また、この課題に関しては、学生教育も大変重要であると考えています。医学部教育の段階で、男女がともにキャリアを形成していくために家事や育児をどうシェアしていくのか、そういった意識を育てることが大切ではないかと思っています。また医師の道を志す方は、医師としての社会的責任を自負し、社会の健全な発展に対して積極的に貢献するという意識をもって働いていただけたらと思います。

 

三石知左子先生

地域のみなさまには「ここで出産してよかった」、「医療を受けてよかった」と、また、職員には「この病院で働いてよかった」と思っていただけるような病院でありたいと考えています。

当院に関わったみなさまが幸せであるように、そして、病院の基本理念にもあるように「女性と子どもとそしてその周囲の人と環境にやさしい病院」、それをきちんと実践できる病院にしたいと思っています。

 

当院は患者さん・地域のみなさまとともに、この地域の未来を考え、つくっていける病院でありたいと思っています。

今後も、地域の周産期医療を担う中核病院としての役割を果たし、みなさまに愛される病院をめざしてまいります。

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