院長インタビュー

「地域密着型の国立病院」 東京医療センター

「地域密着型の国立病院」 東京医療センター
武田 純三 先生

独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 名誉院長

武田 純三 先生

この記事の最終更新は2017年05月18日です。

東京・目黒区に位置する国立病院機構 東京医療センター病院は、地域に根付いた治療を提供する国立病院です。地域の患者さんにより質の良い医療を提供するために、様々な取り組みを行っています。また当院が有する臨床研究センター(感覚器センター)では、眼科・耳鼻咽喉科領域における最先端の治療・研究が行われています。当院の魅力について、名誉院長の武田純三先生にお話を伺いました。

武田純三先生

国立病院は全国に143施設あります。その中で最も病床数が多い施設が国立病院機構 東京医療センターで、当院は780の病床、30の診療科を擁しています。国立病院というと、がんセンターなどそれぞれの専門性を高めたナショナルセンター(国立高度専門医療センター)として機能するものが多くありますが、当院は幅広い診療科を揃え医療を提供する総合病院として診療を続けています。

当院は地域密着型の病院です。周辺には大きい病院が少ないこともあり、周囲5キロ圏内にお住いの患者さんは当院を受診されることが多いです。病院利用者の構成は当院が建つ目黒区にお住まいの方が2割、隣の世田谷区にお住まいの方が6割を占めています。

現在、目黒区は約27万人、世田谷区には約90万人の方がお住まいになっており、これら地域は今後も人口増加が予想されています。こうした多くの人口を抱える地域をしっかりと支えられるよう、周囲の病院との連携を深めながら、地域密着型の医療を提供していこうと考えています。

“国立病院”というと大きな病気を患ったときにかかる病院だというイメージをお持ちの方も多いと思います。これは国立病院設立の歴史に由来しているのかもしれません。国立病院は終戦に至った1945年、当時の厚生省が戦地からの帰国者を受け入れる病院を作るため、軍人病院を国民のために返還してもらうよう要請したことがきっかけで誕生しました。

これらの病院は都市から離れ戦災を免れたことから、医師・看護師そして医療機器など医療体制が整う非常に貴重な存在でした。そのため、困ったときやどうしようもない時には国立病院しかないというイメージがあり、そうした感覚をいまも持っている方がいらっしゃるかもしれません。

しかし現在では多くの患者さんの診療を行い、地域患者さんを広く受け入れる病院として機能しているのです。

医療相談窓口

当院では地域に根差した病院として、患者さんが受診しやすい体制づくりを進めています。ここではその一例をご紹介します。

医療相談窓口

患者さんの医療に関する様々な相談にお答えし、心配事などを解決したうえで診療を受けていただくために2004年9月から患者さんの医療相談窓口を設置しています。

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【受付しているご相談内容】

・受診の仕方

・診療科の内容

・設備・機器等に関する内容

・苦情やご意見等

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ここでいただいたご意見は医療サービス向上に役立てていきます。

また、当院の相談支援センター・がん相談支援センターでは、疾病によって引き起こされた問題に対して、ソーシャルワーカー、医師、看護師、薬剤師、栄養士など多職種が連携をして、患者さんご家族に安心して治療を受けていただけるよう支援しています。入院患者さん、外来の患者さん、また当院にかかられていない方からのご相談にも応じています。

また当院の臨床倫理サポートチームでは、たとえばがんの治療をどのように進めればいいか、人工呼吸器を外すかどうかをご家族がどう判断するかなど、倫理的に判断が難しい相談に対応しています。国立病院というと、気軽に相談しにくいイメージがあるかもしれませんが、ぜひこうした窓口を活用してほしいと思います。

詳しくはこちらの当院HPをご覧ください。

医療相談窓http://www.ntmc.go.jp/p_pati/contents/286.html

相談支援センターhttp://www.ntmc.go.jp/p_pati/contents/285.html

 

患者さん自身による事前初診予約制度

当院では紹介患者さんのご予約方法を2パターンご用意しています。1つは紹介元の医療機関からのご予約、もう1つは紹介患者さんご自身からのご予約です。

患者さん自身によるご予約では事前予約制度を設けています。予約日の2日前までに紹介状やCD-R等の添付資料を直接の病院持参いただく、または郵送いただければ、受診日当日は事務の窓口に寄らず直接外来へお越しいただくことが可能です。

 

当院の中でも特色のある診療科についてご紹介します。

当院には臨床研究センター感覚器センター)と呼ばれる、眼科・耳鼻咽喉科を中心とした感覚器疾患の病因解明と治療法の開発を行う施設があることから、全国の国立病院機構の病院の中で特に感覚器疾患を専門的に扱う高度な医療を行っている施設に位置付けられています。そのため感覚器科(眼科・耳鼻咽喉科)の診療と臨床研究には特に力を注いでいます。

特に眼科領域における手術件数は日本でトップクラスです。また耳鼻咽喉科では2007年より人工内耳手術体制を整え、2012年8月までに100例の手術を終えており、全国の中でも最先端の実績を誇ります。

当院の泌尿器科では小線源療法の症例数が日本でトップクラスです。2003年にヨウ素125シード線源永久挿入による小線源療法を国内で初めて導入以来、12年間で2400例を越す症例の治療を行いました。

また2014年から手術支援ロボット ダ・ヴィンチが泌尿器科に導入され、消化器外科領域での手術を開始しています。

※小線源療法…主に前立腺がんの治療に用いられる。密封されたチタン製カプセル(線源)に放射線を出す同位元素ヨウ素125を入れ、それを前立腺内に挿入することで、前立腺の内部から放射線を照射する治療法。

当院は「地域がん診療連携拠点病院」に指定されています。また当院には幅広い診療科が揃うことから、合併症のあるがん患者さんの診療にも対応しています。がんの診断・治療のみならず、緩和ケア、セカンドオピニオンを含むがん相談、地域の先生方との連携など、がん診療におけるすべての面で今後もよりよい治療を提供していきたいと考えています。

当院では国の初期研修制度が始まる以前より、研修医に向け内科一般を総合的に教育する体制をもつ総合内科を立ち上げていました。当科では教える体制を非常に重視しています。教育者がよい人材であっても、組織として教育する時間や、十分な教育者の数を整えないと、教育システムは成り立ちません。こうした体制の整備もあり、当科には多くの研修医の募集が集まります。

また、当科では認知症ケアの新しいコミュニケーション法として注目を浴びるユマニチュード(Humanitude)テクニックを取り入れています。ユマニチュードは認知症患者さんと意思疎通が取れない、または暴れてしまうといった場合に、見る、話す、触れる、立つ、を基本とするコミュニケーションで「あなたは人間そこに存在している」ということを伝える手法です。この医療の原点ともいえる取り組みは多くのメディアにも取り上げられています。

 

当院では近隣の小学校での手洗い教室の開催や、地域で行う震災訓練への参加を通じて、地域とのコミュニケーションを図っています。震災訓練時には近隣の看護学校生にもご協力いただき、震災時の対応強化を図っています。緊急時に力を合わせ助け合うには、普段からコミュニケーションが非常に重要です。 

震災時の様子

当院の医療サービスの質を向上するよう、院内に出入りをする業者さんには2カ月に1回、すべての方に面接を実施しています。たとえば清掃、給食、レストラン、検査会社の方々が対象です。面接の場では当院からの改善案を提案し、逆にご指摘の意見をいただいています。病院を利用する患者さんの声は、現場スタッフに伝わっていても、なかなか病院の事務局には上がってきません。

また、月1回は医長や看護師長を集め、管理進行会議を行います。ここでは病院の方向性や課題を共有しています。こうした機会を活用して院内のよりよい医療サービスの提供に力を入れています。

 

連携のイメージ図

当院のような地域の急性期病院は、地域病院と連携が欠かせません。そうした中、これまでのような書類でのやり取りで患者さんの受け入れをするのではなく、地域病院と連携を深めて当院で行われる治療と同じことが転院先や在宅でもそのままできる時代になっていかなくてはいけないと思います。そうするためには、できるだけ技師をはじめとした当院の職員が、実際に地域病院を回り、各症例の状況(健康管理上の課題、患者さんの要望、または医療従事者側の留意点)を共有して、同じ治療を退院後も引き継げることが理想だと思います。当院ではそういった連携ができるように、周囲の病院を12か所ほどまわり、連携を深めています。地域で患者さんを診るということは、こういう体制が実現できてこそだと考えています。

 冒頭でもお話した通り、当院は多くの人口を有する地域に存在する病院であるため、地域の病院と連携しながら患者さんを支えていく必要があります。こういった連携をさらに深めながら、地域の患者さんが安心して医療を受けられるよう、院内、院外の両面で、baseの医療とサービスの底上げを続けていきたいと思います。

 

 

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