臨床試験の概要
- 臨床試験の目的
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食道がん術後難治性吻合部狭窄に対する治療として、ステロイド併用RIC(Radial Incision and Cutting)の臨床的有用性を標準治療であるステロイド併用内視鏡的バルーン拡張術(Endoscopic Balloon Dilation:EBD)とのランダム化比較にて検証する臨床試験※です。
臨床試験とは、患者さんに参加・協力していただいて治療法や診断法の有効性や安全性を調べる研究のことをいいます。現在行われている多くの治療法や診断法も、国内および海外で行われた臨床試験によって進歩してきました。
この臨床試験は、新しい薬(未承認薬)の厚生労働省による承認を得るために、主に製薬企業が主体となって行う「治験」とは異なり、研究者(医師)が主体となって行う研究者主導臨床試験であり、 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG(ジェイコグ))という多施設共同臨床試験グループにより行われます。
- 臨床試験の対象となる方
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食道がんの手術後、難治性吻合部狭窄と診断され適格規準に該当する患者さん
※詳細な適格規準に関しては、担当医にご確認ください。
- 登録数と研究期間
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予定登録患者数 130人 期間 登録期間: 8.5年。追跡期間:登録終了後0.5年。解析期間:1年 臨床研究の開始予定日 2014年5月21日 臨床研究の終了予定日 2024年5月21日
臨床試験での治療法
臨床試験の対象となる方
本臨床試験は、食道がんの手術後に、吻合部の狭窄が原因で嚥下障害(食べ物がのみこみにくいこと)を繰り返す患者さんを対象としております。※適格規準に関しては担当医にご確認ください。
術後吻合部狭窄に対して、一般的に施行される内視鏡的拡張術では、多くの場合、複数回の治療が必要で、数ヶ月以上にわたり嚥下障害で苦しむことが多くあります。また、拡張術抵抗性の難治性狭窄に対する有効な治療法はなく、効果が不十分な拡張術を繰り返さざるを得ません。患者さんの生活の質(QOL)の低下、精神的、経済的負担に加え、医療経済的にも問題だと考えられています。
本臨床試験の意義
がん患者さんにおける治療前後の生活の質(QOL)の維持は、がん患者さんとご家族が社会の一員として生活を営む上で極めて重要です。
消化器がんの術後吻合部狭窄は、嚥下障害による極めて深刻なQOL低下を来します。本試験で新しい治療法であるRICの有用性が示されれば、これまでの有効な治療がなかった吻合部難治性狭窄に対する新たな治療法として、嚥下障害の改善と患者さんのQOL向上に大きく貢献し、患者さんとご家族の苦悩も軽減されることが期待できると考えています。
臨床試験の治療法について
臨床試験では、以下のA群かB群のいずれかの治療を受けていただきます。
- A群【標準治療】
- (内視鏡的バルーン拡張術+ステロイド局注)
- B群【試験治療】
- (内視鏡的切開(RIC)+ステロイド局注)
臨床試験の参加について
臨床試験への登録
臨床試験への参加に同意されますと、担当医が臨床試験への登録を行い、治療が始まります。
登録後、A群かB群のどちらの治療を受けていただくかは「ランダム」に(五分五分の確率で)決まります。あなたや担当医が治療法を選ぶと、その意思が影響して比べたい治療法の患者さんの特徴に偏りが生じてしまい、正しい臨床試験の結果を得ることができません。この方法は治療法の比較において最も効果の高い方法と考えられており、世界中の臨床試験で採用されています。
- 登録から治療決定までの流れ
臨床試験終了後の治療と進捗状況・結果について
臨床試験で行う治療が終了した後の治療については、終了時の身体の状態に合わせ、その時に最良と考えられる方法をご提案いたします。 また、この臨床試験の結果が判明し、いずれかの治療群が良いと結論された場合、もう一方の治療群に割り付けられた方につきましては、その時点の治療経過や身体の状態にあわせ、その時に最良と考えられる方法をご提案いたします。 進捗状況、主な結果はJCOGウェブサイト(www.jcog.jp)およびjRCTウェブサイト(https://jrct.niph.go.jp/)で公開しています。 公開はすべて個人を特定できない形で行われ、あなたの個人情報がこれらのウェブサイトに出ることはありません。
補償について
臨床試験で行う治療は、通常の診療の範囲内で行われ、用いる治療はいずれも保険診療で使用することができます。お見舞金や各種手当てといった特別な経済的な補償はおこないません。
参加までの流れ
本臨床試験に関して、ご不明な点、医師、患者様に限らず、
京都大学大学院医学研究科腫瘍薬物治療学講(TEL:075-751-4592)までお気軽にお問合せください。
なお、臨床試験の参加に関しては、担当医にご相談ください。
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1
- 担当医師より本臨床試験の説明
- 担当医師より臨床試験の説明を受けてください。
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2
- 「同意書」のご記入
- 説明後、同意書の内容をご確認いただき、ご記入の上、担当医師にお渡しください。
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3
- 臨床試験参加
- 医師の指示のもと臨床試験に参加いただきます。
※最終的にご自身で選択し、決めていただくことになります。その結果、どのような決定をされたとしても、不利になるようなことはありません。
臨床試験参加者の募集が行われている医療機関(予定含む)
本臨床試験責任者・連絡窓口
研究代表(臨床試験の責任者)
〒606-8507 京都府京都市左京区聖護院川原町54 TEL:075-751-3111(代表)
- 京都大学大学院医学研究科腫瘍薬物治療学講座:武藤 学
研究事務局(臨床試験の実務担当者、連絡窓口)
〒520-8511 滋賀県大津市長等1丁目1-35 TEL: 077-522-4131(代表)
- 大津赤十字病院 消化器内科:青山 育雄