膝が痛い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

膝が痛い

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 膝を強くぶつけたなど、きっかけがはっきりしていて痛みが強い
  • 膝を強くぶつけたなど、きっかけがはっきりしていて見た目の異常がある(大きく腫れている、膝の形がおかしい)
  • 歩くことができないほど痛む

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 歩行に支障が出ている
  • 痛むほうの膝が反対側の膝に比べて腫れている
  • 痛めた覚えはないが、走ったりジャンプしたりするスポーツをすると痛みがある
  • 2〜6歳の子どもで、主に夜間痛がり、朝には治っている症状が1週間以上つづく

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 日常生活に支障はないが、痛みが慢性化している

熊本回生会病院 院長補佐

中村 英一 先生【監修】

膝の痛みは、高齢者や肥満体型の人によくみられる症状といわれています。中でも痛みが強い場合や腫れが伴っている場合、長く続いている場合などには注意が必要なこともあります。

  • 痛みのほかに膝がガクっとする感じやグラグラする感覚がある
  • 膝に水が溜まっているような感じがする、左と右で膝の大きさが違う
  • 運動やスポーツの後に膝がズキズキと痛みだす

このような場合に考えられる原因には、どのようなことがあるでしょうか?

膝に痛みがある場合、病気やケガが関係していることが少なくありません。膝の痛みが症状として現れる病気には、主に以下のようなものがあります。

変形性膝関節症

変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減ることによって膝に強い痛みが現れる病気です。

膝を動かしたときに膝に強い痛みが現れるほか、炎症によって膝に水がたまることもあります。

変形性膝関節症
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関節リウマチ

関節リウマチは、関節包の内面を覆う滑膜(かつまく)というものに炎症が起きる病気です。

手首や手指の関節に起こることが多いものの、膝にもよく起こります。また、ほとんどの場合一つの関節にとどまらず、複数の関節かつ左右同時にみられます。

関節の痛みや腫れ、朝に起きるこわばりなどの関節の症状が主として現れますが、微熱や倦怠感、貧血などの全身症状を伴うこともあります。

関節リウマチ
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膝関節靭帯損傷

膝関節の中にある靭帯(じんたい)が切れてしまった状態です。

特に膝前十字靭帯損傷では、受傷時にブチッ・バキッという鈍い音とともに、直後よりズキズキした痛みを自覚し、その後に徐々に腫れがみられるのが一般的です。痛み以外の症状として、踏ん張った際に膝がガクっとする感じやグラグラとした感覚もよくみられます。

腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)

腸脛靭帯とは、膝の外側にある筋肉の端の部分で、正確には靭帯ではありません。しかしながら、同部に炎症が起こるものを腸脛靭帯炎と呼んでいます。

腸脛靭帯炎では、炎症による膝の外側のズキズキした痛みが特徴的な症状です。特に、成長期のスポーツ障害の代表的なものでもあります。足を地面についたときに痛みが起こることが多く、炎症がひどくなれば痛みで歩くのが困難になることもあります。

腸脛靭帯炎
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特発性膝関節血症

特発性膝関節血症とは、何らかの原因で膝の滑膜(かつまく)や半月板の血管が切れて出血を起こし、血液が膝の内部に溜まる状態のことをいいます。高血圧の人、特に高齢者に多いといわれ、膝関節内に血液が溜まって腫れたり、痛みを感じたりします。

半月板損傷

半月板損傷とは、膝関節のクッションの役割を担う半月板が損傷する病気です。

半月板が損傷すると、膝を曲げたり伸ばしたりしたときに痛みやひっかかりを感じるようになります。ひどい場合には、膝に水が溜まって腫れることもあります。

半月板損傷
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オスグッド病

オスグッド病とは、スポーツなどによって膝の脛骨粗面(けいこつそめん)の骨端線という部分に障害がおこり、進行するとこの部分が剥がれるものです。10歳〜15歳の成長期の子どもによくみられます。

膝の前下部に痛みが生じ、痛みは運動時に現れて安静時になくなるのが一般的です。時には腫れや熱を持つこともあります。

骨のがん

骨のがんには、臓器に発生したがんが骨に転移する転移性骨腫瘍や、骨を起源として発生する骨肉腫などの原発性骨腫瘍がありますが、このような病気でも膝に痛みが生じることがあります。

いずれも発生部位やその周辺に痛みや腫れが主として現れますが、膝の障害とは違い、運動など何もしていなくても痛みや腫れが生じ、それが長く続くことが多いとされています。

骨肉腫
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膝の痛みが強い、痛みとともに腫れがある、痛みが長く続いているという場合には整形外科へ受診しましょう。関節リウマチなど一部専門科目がわかれる病気もありますが、基本的にはまず整形外科への受診でよいでしょう。

受診時には、何をして痛みがでるようになったのか、それはいつ頃か、痛みのほかに症状があるか、スポーツの習慣があるかなどをできるだけ詳しく伝えるようにしましょう。最終的にはレントゲン撮影やMRIなどの検査結果も含めて総合的な診断が行われますが、その際問診も診断の手がかりになるのため、医師にしっかりと伝えられるよう事前にまとめておくとよいでしょう。

年齢や生活習慣、日常生活が原因となって膝に痛みがでることもよくあります。

年齢を重ねるごとに膝を支える周辺の筋肉が衰えるほか、膝の関節軟骨がすり減っていき、膝に大きな負担がかかるようになります。そして負担がかかって炎症が起きると、膝に痛みが生じることがあります。

加齢による膝の痛みを予防するために

加齢による膝の痛みは、筋肉の衰えが原因の一つになっていることから、まずは膝周辺の筋力を保持する、または強くすることが大切だといわれています。

膝への負担を減らすために、ウォーキングやジョギング、水泳・水中ウォーキング、エアロバイク、体操、筋力トレーニングなど、無理なく継続的に続けられる程度の運動がよいでしょう。

ただし、症状によって適切な運動が異なるので、まずは医師に相談してみるとよいでしょう。

また、布団ではなくベッドにする、洋式のトイレを使用する、重いものを持ち上げない、正座を避けるなど、日常生活で膝に負担をかけないよう心がけましょう。

重力の影響から、体重が重いほど膝にかかる負担が大きくなり、体重が1kg増えただけで歩行時の膝への負担が3kg増加するといわれています。

膝に大きな負担がかかり続けると膝の関節軟骨がすり減り、炎症が起きると痛みが現れるようになります。

膝に負担をかけないために

適正体重を上回っているなら、食生活の見直しや軽い運動を取り入れて、体重を減らす努力をしてみましょう。また、日常生活において膝に負担のかかる動作を避けることも大切です。

運動不足は筋力の低下を引き起こします。筋力が低下することで膝への負担が増え、膝の関節軟骨がすり減って摩擦が起き、その摩擦が炎症を引き起こし痛みとなって現れることがあります。

運動不足を感じたら

膝の痛みによってさらに運動を控えてしまいがちですが、筋力を鍛えるために、日常生活にウォーキングなどの身近な運動を取り入れるようにしましょう。

膝の痛みが強ければ、水泳・水中ウォーキング、エアロバイクなど、膝への負担が少ない運動から始めるのがよいでしょう。

スポーツなどで膝を使いすぎると、膝の筋肉が疲れて組織に小さな損傷が生じ、痛みが現れることがあります。また、周囲の腱などの骨の付着部に炎症が起こることも、膝に痛みがでる原因と考えられています。

スポーツなどの際気をつけたいこと

ストレッチやアイシング(冷やすこと)は、筋肉の疲労回復や怪我の予防などに効果があるといわれています。

運動やスポーツによる膝への負荷を減らすために、始める前に十分にストレッチを行うとともに、終わった後にアイシングを15分ほど行いましょう。

日常生活での対処を行ってもよくならないときには、思いもよらない原因が潜んでいるかもしれません。一度整形外科で相談してみましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。