新型コロナウイルス感染症特設サイトはこちら

慢性咳嗽:医師が考える原因と対処法|症状辞典

慢性咳嗽

東邦大学医学部びまん性肺疾患研究先端統合講座 教授、東邦大学医療センター大森病院間質性肺炎センター センター長

本間 栄 先生【監修】

咳は気管や気管支などにたまった分泌物や吸い込んだホコリなどの異物を体外へ排出するために生じる現象であり、日常的によく見られる症状の1つです。その中でも特に8週間以上続く咳のことを“慢性咳嗽(まんせいがいそう)”と呼びます。咳は軽く考えられがちな症状でもありますが、中には思わぬ原因が背景にあるケースもあるため注意が必要です。

  • 風邪を引いた後、ほかの症状が改善したのに咳だけがずっと続いている
  • 長引く咳とともに、血が混じった痰や胸の痛みなどの症状もある
  • 疲れとストレスがたまった状態が続き、咳が出るようになった

これらの症状が見られるとき、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか?

慢性咳嗽は、次のような病気が原因で引き起こされることがあります。

慢性咳嗽は気道の病気によって引き起こされるケースが多いとされています。具体的には以下のような病気が挙げられます。

咳喘息

風邪をひいた後などに気道の粘膜が過敏な状態となり、乾いた空気など些細な刺激によって咳が止まらなくなる病気です。呼吸困難などは伴わず、乾いた咳が発作のように止まらなくなるのが特徴で、アレルギーの関与も指摘されています。

慢性咳嗽の約6割は咳喘息(せきぜんそく)が発症に関わっているとの報告もあります。

咳喘息
関連記事数: 2記事

後鼻漏

鼻水が喉の奥に流れて粘膜を刺激することで咳が出る病気のことです。鼻水が喉の奥に流れるのは自然な経路ですが、鼻水が多くなったり、粘り気が出たりすると咳が続きやすくなります。主な原因は慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)です。

副鼻腔気管支症候群

慢性副鼻腔炎と気管支に炎症を引き起こす慢性気管支炎気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎(せいはんさいきかんしえん)などを合併した病気のことです。粘り気のあるが混ざった鼻水が出て、それが喉の奥に流れることでさらに気管支の炎症が悪化するという悪循環を繰り返します。痰が絡んだ咳が続くのも特徴であり、治療には抗菌薬が用いられます。

喉頭アレルギー

喉の粘膜でアレルギー反応が生じることで喉のかゆみやイガイガ感、乾いた咳などの症状が現れる病気です。アレルギーを起こす物質は人によって異なりますが、花粉、ハウスダスト、動物の毛などが挙げられ、治療にはアレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬が用いられます。

慢性咳嗽は次のような肺の病気によって引き起こされることもあります。

肺がん

肺に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)です。発症すると、慢性的な咳のほかにも血が混ざった痰、胸の痛み、倦怠感、体重減少などの症状が現れます。早い段階で発見できれば手術切除を行って完治が期待できますが、肺がんは進行した状態で発見されやすいがんの1つであり、5年生存率は2割程度です。

肺がん
関連記事数: 71記事

肺結核

結核菌に感染することによって発病する病気です。しかし、万が一結核菌に感染したとしても免疫の力がはたらいて結核菌は封じ込められています。一方、感染した菌の量が多かったり、免疫力が低下していたりすると結核菌が肺の中で拡がり、咳、血が混ざった痰、胸の痛み、息苦しさ、体重減少などの症状が引き起こされます。現在は結核菌に効く薬が多数開発されていますが、かつては日本人の死因第1位であった病気でもあります。

肺結核
関連記事数: 5記事

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマという病原体に感染して肺炎を引き起こす病気です。発症時は発熱、倦怠感、頭痛などの症状が現れますが、3~5日ほど遅れて咳が現れます。咳症状は徐々に強くなることが多く、ほかの症状が改善しても続くことがあります。

マイコプラズマ肺炎
関連記事数: 13記事

慢性咳嗽は次のような気道・肺以外の部位の病気によって引き起こされることがあります。

胃食道逆流症

胃の内容物が食道に逆流する病気です。胃酸が食道の粘膜にダメージを与えるため胸やけや前胸部の痛みなどが現れます。また、胃酸が食道を通って喉の付近まで上がってくると口の中が酸っぱくなる“呑酸(どんさん)”と呼ばれる症状が生じ、喉を刺激することで咳が出るようになります。特に横になると逆流が生じやすくなるため、咳も夜間に出ることが多いとされています。

胃食道逆流症
関連記事数: 8記事

咳は日常的によく見られる症状の1つです。そのため、軽く考えられがちな症状の1つですが8週間以上咳が続くときは上で挙げたような病気が原因のこともあります。

特に、風邪を引いた後に発作のような咳が突然出るようになったとき、咳以外に血液が混ざった痰や胸の痛みがあるとき、倦怠感や体重減少が続いているとき、粘り気の強い鼻水が多く出るとき、胸やけや呑酸などの症状を伴うときは何らかの病気の可能性があります。できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

受診に適した診療科は呼吸器内科や耳鼻科、小児科などですが、かかりつけの内科などがある場合は主治医に相談するのも1つの方法です。

受診した際は、咳が出るようになった時期ときっかけ、咳以外の症状の有無、内服歴などについて詳しく医師に伝えるようにしましょう。

慢性咳嗽は日常生活上の好ましくない習慣が原因で引き起こされることもあります。

日常生活上のストレスや疲れがたまると慢性咳嗽が生じることがあり、このような症状を“心因性咳嗽”と呼びます。咳は意図的に出すことができ、周囲の関心を引き、仕事などストレスや疲れの原因となることを避けることができるため現実に直面したくないという思いが根底にあると考えられています。

ストレスや疲れをためないためには

社会生活を送る以上、ストレスや疲れを完全に避けることはできません。しかし、過度なストレスや疲れをためないようにするには、趣味に没頭するなど適度な息抜き方法を見つけること、十分な休息と睡眠を確保することが大切です。

たばこには多くの有害物質が含まれており、長期間にわたって喫煙を続けていると咳、痰、息切れなどの症状が引き起こされることがあります。また、肺炎肺がんを合併しやすい慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)を発症しやすくなり、命に関わる病気につながることもあるため注意が必要です。

禁煙するには

たばこは「百害あって一利なし」といわれるように慢性咳嗽だけではなく、さまざまな部位のがん慢性閉塞性肺疾患などを引き起こすことがあります。これらを防ぐには、たばこを断ち切ることが大切ですが、自分の意志だけで成し遂げるのが困難な場合は禁煙外来で薬物治療を行うのが一般的です。

慢性咳嗽は、降圧薬や解熱剤の副作用で引き起こされることがあります。

副作用で慢性咳嗽が出たときは

慢性咳嗽は夜間の良質な睡眠を奪ったり、体力を消耗したりするなど生活の質を大きく低下させる原因です。副作用で慢性咳嗽が生じる場合は、早めに担当医に相談して薬の変更を検討してもらいましょう。

日常生活上の好ましくない習慣を改善しても咳嗽が改善しない場合は、思わぬ原因がある可能性もあります。軽く考えずにできるだけ早めに医療機関で診察・治療を受けるようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。