悪性リンパ腫
DLBCL/再発率と治療方法
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

監修医からのメッセージ

“びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)”は、悪性リンパ腫の一種です。最初の治療で約6割の方が寛解を維持しますが、約4割の患者さんで再発後の治療が必要になるといわれています(難治性を除く)。最初の治療の効果が得られない場合(難治性)や再発した場合にどのような治療の選択肢があるかを知っておくことが重要です。

岡山大学病院 輸血部 准教授
藤井伸治 先生
再発後の治療には複数の選択肢があります
悪性リンパ腫の"びまん性大細胞型B細胞リンパ腫"では、最初の治療は通常抗がん剤と抗体製剤を組み合わせて行いますが、再発後の治療では複数の選択肢があります。
  • ・抗がん剤による治療抗がん剤(救援化学療法)
  • ・自分の細胞を強化して使う治療CAR T細胞療法
  • ・正常な造血幹細胞を移植する治療抗がん剤+造血幹細胞移植

ここでは、CAR T細胞療法について説明します。

CAR T細胞療法とは?
免疫療法からのアプローチCAR T細胞療法
保険適用スタート
2019年

2019年から日本でも悪性リンパ腫の再発後の治療にCAR T細胞療法が保険適用され、治療が可能となりました。CAR T細胞療法は、患者さん自身の細胞を取り出して機能を強化し、もう一度戻すという、抗がん剤とは異なるメカニズムの治療です。

CAR T細胞療法を行っている施設はまだ限られています。今治療を受けている施設でCAR T細胞療法を行っているか、必要に応じて主治医の先生に確認してみましょう。

目次

CAR Tカーティー細胞療法はがんへの免疫療法

CAR T細胞療法は、がんに対する免疫療法の1つです。私たちの体に本来備わっている免疫の力を活用して、がん細胞を攻撃します。

ポイント
  • 2019年から使われ始めた治療法
  • 自身のT細胞を取り出し、機能を強化して体に戻す
  • 特定の分子がある細胞を選択的に攻撃する
  • サイトカイン放出症候群、神経系事象などの重篤な副作用が生じることがある
  • T細胞を取り出しても体に戻せない場合もある*
  • 治療を受けるための条件がある
*製品が規格を満たさない等の理由により提供されない可能性があります

白血球の一種である“T細胞”には、もともとがん細胞を攻撃する性質があります。CAR T細胞療法は、患者さんのT細胞を一度取り出して強化してから、患者さんに戻します。患者さん自身のT細胞ががん細胞を攻撃することでがん細胞を減らします。

治療の流れについて詳しくはこちら

CAR T細胞療法の副作用や注意点

CAR T細胞を投与している間や投与後しばらくの間は副作用に注意が必要です。

CAR T細胞を投与した後に現れることがある、特に気を付けなければならない重篤な副作用としては、サイトカイン放出症候群*や神経系事象**などがあります。また、再発や感染症などの合併症にも注意が必要です。

* サイトカイン放出症候群
免疫や炎症に関わるサイトカインと呼ばれる物質が分泌されすぎることにより起こります。風邪のような症状(発熱、悪寒、倦怠感)や、動悸、息切れなどが現れ、場合によっては意識低下・消失、呼吸困難などがみられることもあります。投与後数日のうちに起こることが多いとされています。

** 神経系事象
意識低下・消失、記憶力低下、言語障害、手や足の震え、けいれんなどが現れることがあります。サイトカイン放出症候群と同時に、あるいは治まった後に起こることもあります。サイトカイン放出症候群が起こっていなくても神経系事象が現れることがあります。投与後1か月以内に起こることが多いとされています。

治療を受けることができる方

日本では、最初の治療の効果が得られない場合(難治性)または再発した場合に、救援化学療法、CAR T細胞療法、造血幹細胞移植が治療の主な選択肢となります(2024年3月現在)。患者さんの体の状態やこれまでに受けた治療など、さまざまな条件を考慮して治療を受けられるか判断されます。必要に応じて主治医の先生に治療法について相談してみましょう。

まずは主治医に相談
「自分の病気について詳しく知りたい」「今後の治療の選択肢を知りたい」など、気になることがあれば率直に今の気持ちを医師に伝えましょう。納得できる選択をするためには、患者さんが自分の希望を伝え、話し合うことから始まります。
先生に聞いてみたいことや治療の希望について、まずは相談シートを使って整理してみましょう。
相談シートをチェック
再発後の治療の選択肢
再発後の治療には他の選択肢もあります。
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