前立腺がんは、50歳以降から罹患率が高くなる病気です。もともと欧米人に多い病気でしたが、ライフスタイルの変化と高齢化の進行によって日本においても患者数が増加しています。
厚生労働省の統計によると、前立腺がんの死亡者数は1975年には年間約1,200人でしたが、1992年には約4,000人、2002年には約8,100人と増加しています。増加傾向にある前立腺がんの死亡者数は、2020年には12,700人にのぼると予測されています。
前立腺がんは男性のがん罹患数においてもっとも多く、高齢の方に多いがんとされています(全国がん罹患データ<2016年~2017年>より)。高脂肪、高たんぱくという欧米型の食生活が発症リスクに影響しているとも考えられていますが、因果関係は明らかになっていません。
前立腺がんと前立腺肥大症では、前立腺の中で発症する場所が異なります。前立腺がんは主に前立腺の外腺(前立腺の外側)に、前立腺肥大症は内腺(前立腺の内側)に発症する病気なので、前立腺肥大症から前立腺がんになるということは、まずありません。
ただし、前立腺がんと前立腺肥大症が同時に起こる場合もあるため、それぞれ別にかかる可能性のある病気と考えることが大切です。前立腺肥大症があるから前立腺がんにはならないと思い込まず、気になる症状がある場合には、早めに泌尿器科を受診して前立腺がんの検査を受けましょう。
前立腺がんは初期には自覚症状が表れにくい病気です。そのため、症状を自覚したときには、すでにがんが進行している場合が多くあります。だからこそ、前立腺がんを早い段階で発見するには、自覚症状の有無にかかわらず検査を受けることが重要です。
前立腺がんを早期に発見できる検査として、PSA(前立腺特異抗原)検査が挙げられます。PSA検査とは、採血した血液中のPSA値(前立腺でつくられるたんぱく質の量)を測定する検査です。PSA値が一定のレベルを超えると、前立腺がんである可能性が高くなります。
50歳を過ぎると前立腺がんの罹患率が高くなるため、50歳以上の方は内科や泌尿器科にかかった時にPSA値も調べてもらうとよいでしょう。
前立腺がんの原因として、遺伝的な要因や生活習慣などが指摘されていますが、はっきりとした因果関係は分かっていません。したがって、前立腺がんの予防法を具体的に挙げることは難しいといえるでしょう。
しかし、前立腺がんはPSA検査という簡便な血液検査で早期発見ができる病気なので、“早く見つけて早く治療を開始する”ということが最大の予防法といえるでしょう。
前立腺がんの分類方法はいくつかありますが、組織の悪性度によって高分化型腺がん・中分化型腺がん・低分化型腺がんの3種類に分類されます。
・高分化型腺がん……比較的悪性度の低いがん。
・中分化型腺がん……悪性度が中程度のがん。
・低分化型腺がん……正常細胞とは大きく異なる悪性度が高いがん。
また、前立腺がんの進行期は4つの段階に分類されています。
病期A | 前立腺肥大症などほかの病気の診断や手術で摘出した組織から偶然発見されたがん |
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病期B | がんが前立腺内にとどまっている |
病期C | 前立腺の外にがんが広がり、場合によっては精のうなどに浸潤*している |
病期D | がんが骨やリンパ節、肝臓などの遠隔臓器に転移がある |
血液検査で、血液中のPSA値と呼ばれる前立腺から分泌されるたんぱく質の量を測ります。PSA検査は、健康診断や内科の定期健診などでも測定することが可能です。
PSA検査でPSAが高値となった場合には、前立腺がんの可能性があるため、直腸診やエコー検査で前立腺の状態を確認します。その結果、前立腺がんの疑いがある場合には生検で採取した前立腺の組織を顕微鏡で詳しく調べ、確定診断を行います。
これらの検査に加えて、転移などがないか調べるためにCT、MRI、骨シンチグラフィーなどの検査を適宜実施します。
詳しくは「過活動膀胱(OAB)の精密検査」へ
前立腺がんの治療には、内分泌療法・手術治療・放射線治療などがあります。
詳しくは「前立腺がんの種類・進行度別の治療法」へ