治療に関する情報

前立腺肥大症・過活動膀胱の治療とその効果

前立腺肥大症ならびに過活動膀胱の治療は、それほど重症でない場合には、まず症状を軽減させるために薬物療法を行います。薬物療法で症状の改善がみられない場合には、患者さんの要望を伺いながら手術やそのほかの治療を行います。

治療を始める前に、ご自身の病気について医師から説明を受け、今後の治療方針について十分に理解したうえで治療に臨むようにしましょう。

前立腺肥大症の薬物療法には、主に“α₁アルファワンアドレナリン受容体遮断薬”、“ホスホジエステラーゼ5阻害薬”、“5α還元酵素阻害薬”、“抗アンドロゲン薬”などがあります。また、過活動膀胱には主に“抗コリン薬”、“β₃ベータスリーアドレナリン受容体作動薬”などが使われます。

α₁アドレナリン受容体遮断薬

α₁アドレナリン受容体遮断薬(α₁遮断薬)は、自律神経から命令を受けて排尿をコントロールするα₁アドレナリン受容体のはたらきを抑えることによって、前立腺や尿道の筋肉の緊張を和らげて排尿困難を改善する薬です。

α₁遮断薬には、前立腺そのものを縮小させる効果はありませんが、前立腺肥大症によって現れる排尿しづらさや残尿感などの症状を緩和するだけでなく、前立腺肥大症に伴う過活動膀胱の症状にも効果が期待できます。

一方、めまいや頭痛、鼻づまり、射精障害などの副作用があるため、医師と相談のうえで複数あるα₁遮断薬の中からご自身に適した薬を選択することが重要です。

ホスホジエステラーゼ5阻害薬

ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬は、膀胱や前立腺の筋肉の緊張を緩めることによって排尿困難などの症状の改善を図る治療薬で、勃起不全に対する治療薬としても使用されています。

膀胱や前立腺の筋肉を収縮させるPDE5という酵素のはたらきを抑えることで、排尿困難の治療を図る薬であり、前立腺自体を縮小させる効果はありません。ただし、過去に心筋梗塞や脳梗塞などを患った方には使用できない場合もあるため注意が必要です。

5α還元酵素阻害薬

5α還元酵素阻害薬とは、前立腺肥大症の要因となる男性ホルモンであるジヒドロテストステロンの作用を抑えることによって、前立腺そのものを縮小させ、排尿困難などの症状を緩和する治療薬です。男性ホルモンを抑える効果があるため、勃起機能の減退や性欲の低下などの副作用が見られることがあります。

抗アンドロゲン薬

抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン薬)は、前立腺の肥大に影響を及ぼす男性ホルモンのはたらきを抑え、前立腺を縮小させることで排尿困難を改善する薬です。男性ホルモンを抑える薬であるため、副作用として勃起機能の減退や性欲の低下などが見られる場合があります。

抗コリン薬

過活動膀胱の治療で多く用いられる抗コリン薬は、膀胱の収縮に関わるアセチルコリンという物質のはたらきを抑えることで、膀胱の過剰な収縮を抑制し、頻尿や切迫性尿失禁などの症状を改善する治療薬です。

実際に日本では、さまざまな薬剤が使用されています。ただし、抗コリン薬では、口内の乾燥や便秘、認知障害などの副作用が現れる場合があります。

β₃アドレナリン受容体作動薬

β₃アドレナリン受容体作動薬は、膀胱の弛緩に関わるβ₃アドレナリン受容体に作用する治療薬です。膀胱平滑筋の緊張を和らげることによって膀胱に尿を蓄える機能を高め、頻尿や切迫性尿失禁などの過活動膀胱の症状を改善します。

特徴は症状改善効果に加えて抗コリン薬に特徴的な副作用(口内乾燥や便秘など)がほとんど認められない点です。心血管障害を持つ方へ用いるときは、心拍数が増加する可能性があるため注意が必要です。

薬物療法以外の治療法として行動療法を行う場合もあります。

行動療法

機能の弱まった膀胱や骨盤底筋を鍛えることを目的とした骨盤底筋訓練や膀胱訓練によって、尿トラブルの症状を軽減します。

また、尿トラブルに影響するといわれている塩分制限の指導を行うこともあります。

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監修:旭川医科大学 腎泌尿器科 柿崎 秀宏 先生