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頭頸部とは体のどこにある、どんなところ?

頭頸部とうけいぶとは、脳と脊髄せきずい、眼球を除いた顔面から頸部(首)までの領域の総称です。この領域には、咽頭いんとう喉頭こうとう口腔こうくう鼻・副鼻腔び・ふくびくう、唾液腺、甲状腺などが含まれます。また、聴く(聴覚)、嗅ぐ(嗅覚)、味わう(味覚)、呼吸する、咀嚼そしゃく(噛む)、嚥下えんげ(飲み込む)、発声するなど、人が日常生活を送るうえで必要不可欠な機能がいくつも存在しているところでもあります。また顔貌もその人個人を表す重要な因子です。

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頭頸部の病気について知ろう

頭頸部の病気には目や耳、舌、鼻などの感覚機能に影響するものやホルモン分泌に関わるものなどがあり、また消化器官や呼吸器官の入り口に当たります。病気がどの部位にできたかによって症状や進行の仕方が大きく異なることが特徴です。代表的な病気については以下の疾患名をクリックして説明をご覧ください。
頭頸部にできるがん(頭頸部がん)の中でも、特に口腔がんは世界的に罹患率・死亡率が上昇傾向にあることが分かっています。

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頭頸部外科とは何を診る診療科?

頭頸部外科が診る病気について

上記で説明したような頭頸部の病気全般の診療を行っているのが頭頸部外科です。その中でも特に、頭頸部がん(口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がん、副鼻腔がん、唾液腺がんなど)の手術治療を担当しています。

頭頸部がん治療における頭頸部外科の役割

主要な感覚器が密集した領域にできる頭頸部がんの治療には、手術、放射線、抗がん剤を組み合わせた集学的治療と、機能回復・生活の質(QOL)の充実を目指すリハビリテーションが必要となります。そのため頭頸部外科は、頭頸部に対する知識はもちろん、全身への基本的な知識や手術以外の治療の知識も持っていなければなりません。また、内科や放射線科、リハビリテーション科など、頭頸部がん治療において連携が必要な診療科同士の窓口としてチーム医療を推進する役割も担っています。

ワンポイント解説
頭頸部外科と耳鼻咽喉科~2つの診療領域の関係性について~

一般的に「耳鼻咽喉科医の専門領域は耳、鼻、喉の病気」と考えられていますが、実際には頭頸部にできる腫瘍、外傷、形態異常なども診療領域となります。こうした疾患は外科的治療が中心となるため、この領域を頭頸部外科ともいいます。このような実態から、近年では世界的にも"耳鼻咽喉科・頭頸部外科"という一連の名称が使われる傾向にあります。

※「一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会」は2021年5月12日より「一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」に名称変更となりました。

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頭頸部の病気における治療の重要性

頭頸部には味覚・嗅覚・聴覚などの感覚器が密集

咀嚼・嚥下・味わう・聴く・嗅ぐ・発声・呼吸などは人が社会生活を送るうえで非常に大切な機能です。頭頸部には、そのような機能をつかさどる耳・鼻・舌・喉などが密集しており、この領域にできる頭頸部がんは、患者さんのQOLに直結する病気だといえます。
たとえば、治療の過程で舌や咽頭を切除すれば咀嚼・嚥下機能や発声機能などが低下し、人とうまく会話ができなくなったり、今まで食べられていたものがうまく食べられなくなったりします。気管切開をすれば、肩までじっくりと湯船に浸かることも難しくなります。
そのため頭頸部がんの治療においては、がんを治すことだけにとどまらず、いかに治療後の合併症や後遺症を少なくしてQOLを充実させるかについても念頭に置くことが大切です。

頭頸部がん患者さんのQOLで意識するべき3つの指標

頭頸部がん患者さんのQOLを維持し、社会生活への復帰を目指すために、頭頸部外科では、たとえば以下のような点を考慮して治療を行っていきます。
1、電話を使って人とスムーズに会話ができる
2、外食で出されるようなメニューの食事ができる
3、肩までお風呂のお湯に浸かることができる

頭頸部の病気が疑われる方、頭頸部がんの発症リスクが心配な方は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科にご相談ください。

協賛企業

口腔がん(舌がん/歯肉がん/口腔底がん/硬口蓋がん/頬粘膜がん/口唇がん)
口腔がん

口腔がんは口の中にできるがんの総称で、発生した部位によって舌がん、歯肉がん、口腔底がん、硬口蓋がん、頬粘膜がん、口唇がんなどに分類されます。また、比較的男性に多いことが特徴です。
口腔がんの主な発症要因は喫煙と飲酒で、特に喫煙は発症リスクを高めます。さらに、喫煙と飲酒の習慣が両方ある方は、どちらか片方の習慣がある方よりもさらに危険性が高まることが知られています。

舌がん

舌に発生する“舌がん”は、日本における口腔がん患者数の半数以上を占めており、もっとも代表的な口腔がんといえます。ほとんどの場合、舌の辺縁(ふち)や裏側の粘膜表面の細胞から発生し、舌先や舌の中央部分にはあまりできません。
舌がんを発症すると、一般的には以下のような症状が現れます。
・舌粘膜の表面に赤い斑点(または白い斑点)が見られる
・舌の側縁にしこり・ただれなどができる
・舌を動かすときにしびれや違和感がある
・口内炎がなかなか治らない
・食事や会話がしにくい
・口臭が強くなる
・痛みや出血が起こる
など

治療は基本的に手術が中心となります。さらに、咀嚼・嚥下・発話などの口腔機能を回復させるためのリハビリテーションも必要です。

歯肉がん

上下の歯肉(歯茎)やその裏側にできるタイプの口腔がんで、上顎にできる上歯肉がん、下顎にできる下歯肉がんに分類されます。日本では舌がんに次いで発生割合が多いことが知られています。進行すると歯茎の粘膜にしこりや潰瘍かいようなどが現れ、歯がぐらぐらしたり、腫れたり、出血したりなど歯周病のような症状も見られます。歯肉がんの治療は、手術による切除が基本となります。

口腔底がん

舌裏と下あごの歯茎に囲まれた場所に位置する“口腔底”にできるタイプの口腔がんです。最初はほとんど症状が見られませんが、進行すると口腔底に潰瘍や出血、痛みなどの自覚症状が現れます。手術による病変の摘出が標準的な治療方法です。

硬口蓋がん

上あごの天井部分にできるタイプの口腔がんです。骨に浸潤しんじゅん(がんが周りに広がっていくこと)しやすいという特徴がありますが、発生頻度は口腔がんの中でも低いとされています。多くの場合は上あごの一部または全部を手術で摘出する治療が行われます。

頬粘膜がん

頬の内側の粘膜にできるタイプの口腔がんです。進行すると、口が開けにくい、頬の内側を噛むようになる、出血、痛みなどの症状が出ます。手で触れると頬粘膜の下に固まりや厚みが確認できることもあります。手術が基本的な治療法であり、切除範囲によっては遊離皮弁移植術も行います。

口唇がん

唇にできるタイプの口腔がんです。日本人では口唇がんの発症は少ないことが特徴で、全口腔がんの1%程度とされています。

咽頭がん(上咽頭がん、下咽頭がん、中咽頭がん)

咽頭がんは、食物や空気の通り道であり、鼻の奥~食道までをつなぐ咽頭にできるがんです。がんができた部位により上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんに分類され、上咽頭がんでは首のしこりなどが、中咽頭がん・下咽頭がんでは飲み込みにくさなどが主な症状となります。また、咽頭の周りにはリンパ節が多数存在しているため、咽頭がんはリンパ節に転移しやすいという特徴があります。
いずれの咽頭がんにも共通する発症要因は過度の飲酒、喫煙です。特に、お酒を飲むと顔が赤くなりやすい方(フラッシャー)が飲酒の習慣を長く続けると咽頭がんを発症するリスクが高くなることが分かっています。また、上咽頭がんではEBウイルス(エプスタインバールウイルス)が、中咽頭がんではHPV(ヒューマン・パピローマウイルス)が関連するといわれています。

喉頭がん

喉頭がんは、気管と咽頭をつなぐ“喉頭”という部位に発生する頭頸部がんです。発生部位によって声門上部がん、声門がん、声門下部がんに分類され、このうち声門がんが喉頭がん全体の半数以上を占めています。声門がんの場合、早期段階から嗄声させい(声のかすれ)の症状が現れます。発症には喫煙が大きく関与しており、喫煙によるリスクは肺がん以上に高いと考えられています。そのほか、飲酒や口腔内の不衛生なども喉頭がんの発症誘因になります。

甲状腺がん・副甲状腺がん

甲状腺は喉の下部に、副甲状腺は甲状腺の裏側に位置し、新陳代謝や骨などの成長に関わるホルモンを貯蔵・分泌する臓器です。この甲状腺や副甲状腺に発生するがんをそれぞれ甲状腺がん・副甲状腺がんと呼びます。甲状腺がんは乳頭がん、濾胞ろほうがん、低分化がん、髄様ずいようがん、未分化がん、悪性リンパ腫などのタイプがありますが、一部のタイプを除いて悪性度が低いことが多いため、腫瘍しゅようが小さく転移などのリスクも高くない場合は、積極的な治療をしない場合もあります。
発症すると、喉付近の結節(しこり)、喉の圧迫感や息苦しさ、嗄声、飲食物の飲み込みにくさ、痛みなどの症状が現れます。

副鼻腔がん(上顎洞がん)

鼻の穴の中は空気の通り道となる鼻腔が広がっています。鼻腔の外側には、鼻腔に通じる4つの空洞(上顎洞じょうがくどう篩骨洞しこつどう前頭洞ぜんとうどう蝶形骨洞ちょうけいこつどう)があり、これらを総称して副鼻腔といいます。副鼻腔がんの中でもっとも発生頻度が高いのが、頬の内側に位置する上顎洞に発生する上顎洞がんです。発症すると、膿の混じった鼻水・鼻づまり、片側の鼻出血などの症状が見られます。喫煙や副鼻腔炎が発症リスクを高めることが知られていますが、近年では副鼻腔炎の減少とともに上顎洞がんの患者数も減少傾向にあります。

唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん)

唾液腺は唾液を作り出すための臓器で、耳の下にある耳下腺や顎の下にある顎下腺など、大きなものから小さなものまで多数の唾液腺が頭頸部に存在します。唾液腺がんはこの唾液腺にできるがんで、そのほとんどが耳下腺または顎下腺に発生します。ほかの頭頸部がんに比べて病理組織型(がん細胞の種類やがん細胞の増え方)の種類が非常に多く、悪性度も幅広いことが特徴です。発症初期の主な症状は痛みを伴わない唾液腺の腫れで、病気が進行するとしびれや痛み、顔面神経麻痺なども現れます。

難聴

難聴とは音が聞こえにくい状態です。発症すると生活に必要な音を聞きとれなくなるため、人とのコミュニケーションや社会生活への支障をきたすほか、認知症やうつ状態のリスクも増大すると考えられています。
難聴は、外耳や中耳に障害がみられる伝音難聴、内耳や蝸牛かぎゅう神経、脳に障害がみられる感音難聴、この2つが合併した混合性難聴の3つに分類されます。感音難聴の中には、加齢に伴い音を感知する細胞(有毛細胞)が減少することや、有毛細胞とのシナプスが減少することで起こる加齢性難聴も含まれます。症状の程度や原因に応じて手術や薬物療法、補聴器装着などの治療が行われます。