間質性肺疾患を疑ったときに行う検査と間質性肺疾患の原因について

提供:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

どんな検査があるの?

間質性肺疾患が疑われた場合、肺の検査を行い間質性肺疾患の原因を探ります。また、定期的に肺の検査を受け、病気の状態を把握することも大切です。一度肺が線維化して呼吸機能が低下すると元通りにすることはできません。そのため、早い段階で病気に気付き、原因となる病気の治療と管理(たとえば過敏性肺炎の場合ならば原因を避ける、もしくは経過観察)を行い、それにもかかわらず線維化が進行する場合はその対策を行います。ここで挙げるのは、基本的な肺の検査の一部です。

・問診・聴診

息切れやたんの伴わない咳(空咳)といった症状の経過に加えて、自宅や職場の環境、職業、趣味、サプリメントや薬の服用、家族や親戚の病気などを詳しく聞いていきます。また、背中に聴診器を当てて間質性肺疾患の特徴でもある“パチパチ”、“バリバリ”という音がないかを確認します。

・呼吸機能検査

呼吸をしたときの空気の量(肺活量)などを調べ、病気の進み具合を確認します。

・胸部X線検査

肺の組織が変化していないか、サイズが変化していないかなど、肺全体を診るために行う検査です。

・高分解能CT検査

胸部X線よりもさらに詳細に肺の中の状態を高感度に捉えます。2次元、3次元で肺の断面を精細に描き、わずかな変化も見ることができるため、間質性疾患の診断には必須の検査です。ただし、胸部X線に比べると放射線の被曝量ひばくりょうが多くなります。

・血液検査

間質性肺疾患にかかっている場合に高い数値を示す特定のたんぱく質を調べます。また、原因を明確にして診断するために、各種自己抗体検査、過敏性肺炎の原因検査、間質性肺炎の活動性を調べる検査などが実施されることもあります。加えて、治療中は副作用の確認のため肝機能検査、腎機能検査、治療効果を調べるための検査などが定期的に行われます。

間質性肺疾患は原因によって分類される

間質性肺疾患は原因ごとに大きく5つに分けられます。原因として挙げられるのは、①特発性間質性肺炎、②自己免疫性間質性肺疾患、③職業環境性間質性肺疾患、④医原性間質性肺疾患、⑤その他の間質性肺疾患です。原因が分からないものは広い意味で①特発性間質性肺炎に分類されます。どの分類の間質性肺疾患かによって治療方針や経過が異なるため、しっかりと検査をして治療方針を決めることはとても大切です。

Cottin V. et al.: Eur Respir Rev 2018; 27(150): 180076.を参考に作図
知っておきたい追加情報
肺の検査以外にどのような検査をするの?

肺の検査のほか、間質性肺疾患の原因を明確にするために行われる検査もあります。たとえば、自己免疫疾患に伴う間質性肺疾患が疑われる場合には、自己抗体検査(抗核抗体、リウマチ因子、その他各種自己抗体の検査)を行います。自己抗体検査は、血液を採取して自分の体の細胞や組織に反応する“自己抗体”の量や種類を調べる検査です。

過敏性肺炎が疑われる場合は、疑った原因が本当にアレルギー反応を引き起こしているかを確認するため、抗原隔離試験、抗原こうげん曝露ばくろ試験しけん(外泊試験など)も行われます。

また、血清中の沈降抗体を測定することで、アレルギー反応の原因が分かることもあります。たとえば、カビに対する抗体である“抗トリコスポロン・アサヒ抗体”の測定を行い陽性となった場合には、トリコスポロンというカビがアレルギーの原因であると判断できます。

しかしながら、慢性過敏性肺炎は抗原が確定できない場合も少なくありません。

参考資料:
日本呼吸器学会・日本リウマチ学会合同委員会『膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020』メディカルレビュー社,2020
日本呼吸器学会『特発性肺線維症の治療ガイドライン2017』南江堂,2017
日本呼吸器学会『特発性間質性肺炎診断と治療の手引き(改訂第3版)』南江堂,2018
吾妻安良太(編),三嶋理晃(編)『間質性肺炎・肺線維症と類縁疾患』(呼吸器疾患診断治療アプローチ,4)中山書店,2018.
公益財団法人 難病医学研究財団 『難病情報センター』(https://www.nanbyou.or.jp
2024年9月作成