膠原病の患者さんは肺の病気を合併することがあります。特に多くみられる“間質性肺疾患”は、進行すると呼吸機能が低下していく恐れのある病気です。重症化を防ぐためには、できるだけ早期に発見し、適切な治療を受けることが重要になります。
免疫の異常が原因で全身に症状が現れる病気を総称して膠原病といいます。遺伝要因と環境要因(喫煙、感染症など)が影響して発症すると考えられている病気で、女性に多い傾向がみられます。
膠原病を発症すると、全身や皮膚などにさまざまな症状が生じることがあります。その中の1つが“間質性肺疾患”という特殊な肺炎です。
間質性肺疾患とは、肺の肺胞という袋状の組織の壁にあたる間質*に炎症や損傷が起こる病気の総称です。初期段階では無症状のことが多く、進行すると息切れや痰を伴わない咳(空咳)などの症状が現れます。呼吸の苦しさから疲れやすくなり、体重減少がみられることもあります。
また、肺がだんだん硬くなって(肺の線維化)、呼吸機能が低下していく場合があります。一度線維化した部分は、元の状態に戻ることはありません。
間質性肺疾患の進行の速さは患者さんによって異なります。一部の患者さんでは急激に悪化(急性増悪)し、命に関わる場合があります。
“軽い運動でも息切れがする”“坂道や階段を上るだけでも息苦しくなる”などの変化を感じたら医師に相談してみましょう。
膠原病の患者さんの中でも間質性肺疾患が起こりやすいのは、主に次のような病気の方です。
間質性肺疾患を発症すると、徐々に肺の線維化が進行していく可能性があります。一度線維化した肺は元の状態には戻らず、線維化が進むと呼吸機能を回復させることが難しくなります。重症化を防ぐためには、なるべく早く発見して治療を開始することが重要です。早期治療によって、病気の進行を遅らせ呼吸機能の悪化を防ぐ効果が期待できます。
間質性肺疾患をなるべく早く発見するには、定期的に受診をして肺の検査を受けることが大切です。肺の状態を把握するための検査には、問診・聴診、呼吸機能検査、胸部X線検査、高分解能CT検査(肺の組織の様⼦を胸部X線検査よりも詳しく調べる検査)、血液検査などがあります。
また、特徴的な症状を知っておくことで、早期発見につなげることができます。息切れや痰を伴わない咳(空咳)などの気になる症状がある場合は、間質性肺疾患を専門とする医師に相談することが大切です。
膠原病の患者さんに起こりやすい間質性肺疾患は、進行すると息切れや空咳などがみられますが、早期には症状があまりないこともよくあります。発症した場合、なるべく早く治療を開始して進行を抑制することがとても大切です。気になる症状があれば、まずは医師に相談してみるとよいでしょう。