膠原病に伴う間質性肺疾患とは?

提供:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

膠原病こうげんびょうの患者さんは肺の病気を合併することがあります。特に多くみられる“間質性肺疾患”は、進行すると呼吸機能が低下していく恐れのある病気です。重症化を防ぐためには、できるだけ早期に発見し、適切な治療を受けることが重要になります。

膠原病の患者さんに起こりやすい“間質性肺疾患”とは?

免疫の異常が原因で全身に症状が現れる病気を総称して膠原病といいます。遺伝要因と環境要因(喫煙、感染症など)が影響して発症すると考えられている病気で、女性に多い傾向がみられます。

膠原病を発症すると、全身や皮膚などにさまざまな症状が生じることがあります。その中の1つが“間質性肺疾患”という特殊な肺炎です。

間質性肺疾患とは、肺の肺胞はいほうという袋状の組織の壁にあたる間質*に炎症や損傷が起こる病気の総称です。初期段階では無症状のことが多く、進行すると息切れや痰を伴わない咳(空咳)などの症状が現れます。呼吸の苦しさから疲れやすくなり、体重減少がみられることもあります。

また、肺がだんだん硬くなって(肺の線維化)、呼吸機能が低下していく場合があります。一度線維化した部分は、元の状態に戻ることはありません。

*間質:呼吸で取り込まれた酸素と排出される二酸化炭素の通り道になっている部分。

間質性肺疾患の進行の速さは患者さんによって異なります。一部の患者さんでは急激に悪化(急性増悪)し、命に関わる場合があります。

“軽い運動でも息切れがする”“坂道や階段を上るだけでも息苦しくなる”などの変化を感じたら医師に相談してみましょう。

間質性肺疾患が起こりやすいのは?

膠原病の患者さんの中でも間質性肺疾患が起こりやすいのは、主に次のような病気の方です。

全身性強皮症
皮膚や内臓が硬く変化する病気です。主な症状には、レイノー症状(冷たいものに触れたり寒く感じたりしたとき手の指の色が白~紫などに変化する症状)、皮膚硬化(皮膚が硬くなること)、間質性肺疾患などがあります。
多発性筋炎・皮膚筋炎
筋肉、皮膚、肺を中心として全身に炎症が起こる病気です。胴体に近い場所の筋力の低下や筋肉痛などがみられます。皮膚症状を伴う場合は皮膚筋炎、皮膚症状がみられない場合は多発性筋炎と呼ばれます。肺の症状の1つとして間質性肺疾患が起こることがあります。
関節リウマチ
関節リウマチは膠原病の中でもっとも患者数の多い病気です。関節の滑膜(関節を覆う膜)という組織に炎症が起こって発症し、炎症に伴って痛みや腫れが現れるようになります。関節以外に症状が現れることもあり、その1つとして間質性肺疾患を合併する場合があります。
血管炎症候群
血管炎症候群とは、全身の血管のどこかに炎症が起こり、皮膚や臓器などに症状が引き起こされる病気の総称です。主な症状としては発熱、頭痛、倦怠感などの全身の症状に加えて、間質性肺疾患などの臓器の症状がみられます。

間質性肺疾患は早期発見・治療で進行を抑えることが大切

間質性肺疾患を発症すると、徐々に肺の線維化が進行していく可能性があります。一度線維化した肺は元の状態には戻らず、線維化が進むと呼吸機能を回復させることが難しくなります。重症化を防ぐためには、なるべく早く発見して治療を開始することが重要です。早期治療によって、病気の進行を遅らせ呼吸機能の悪化を防ぐ効果が期待できます。

早期治療を行った場合と、行わなかった場合のその後の経過

間質性肺疾患をなるべく早く発見するには、定期的に受診をして肺の検査を受けることが大切です。肺の状態を把握するための検査には、問診・聴診、呼吸機能検査、胸部X線検査、高分解能CT検査(肺の組織の様⼦を胸部X線検査よりも詳しく調べる検査)、血液検査などがあります。

また、特徴的な症状を知っておくことで、早期発見につなげることができます。息切れや痰を伴わない咳(空咳)などの気になる症状がある場合は、間質性肺疾患を専門とする医師に相談することが大切です。

監修医からのメッセージ

膠原病の患者さんに起こりやすい間質性肺疾患は、進行すると息切れや空咳などがみられますが、早期には症状があまりないこともよくあります。発症した場合、なるべく早く治療を開始して進行を抑制することがとても大切です。気になる症状があれば、まずは医師に相談してみるとよいでしょう。

監修:北海道大学大学院医学研究院 免疫・代謝内科学教室 教授 渥美 達也先生
2024年9月作成