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治療法~PMSとの向き合い方~

PMS(月経前症候群)の治療としては、生活習慣の改善に加えて、いわゆる低用量ピルと呼ばれてきた低用量経口避妊薬(OC)や、同じ成分ながら月経困難症などに保険適用を持つ低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)といったホルモン剤、抗うつ薬などの薬剤を使用することで症状の軽減が期待できます。また、漢方薬も治療に向いているともいわれています。ここでは、病院で行われるPMSの検査や治療について解説します。

PMSの診断~病院で行われる診察、検査~

● 診察において重要なのは問診

PMSの特徴は、イライラやむくみなどの症状が月経(生理)前に現れて、月経が始まるとともに軽くなることです。そのため、症状日記をつけて出現した症状を把握し、月経周期との関連を調べることが重要になります。診察では、まずは問診を行ってどのような症状があるか、日常生活に支障をきたしているかどうかを確認します。また、うつ病などのほかの病気がないこと、薬物治療やアルコールにより症状が出ているわけではないこともチェックします。
月経前の3~10日間に上記のような自覚症状がある場合、PMSを診断するうえで役立つため、遠慮なく医師に話すことが大切です。

● そのほかの検査方法

PMSを調べるためにもっとも重要なのは問診ですが、内診や腟からの超音波検査などを行って、子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科の病気がないかを確認することがあります。内診などがどうしても怖い方はお腹の上から施行する超音波検査でも子宮や卵巣の状態を調べることができます。
子宮内膜症や子宮筋腫などの病気の可能性が考えられる場合にはMRI検査や血液検査などを行うことがあります。また、内分泌臓器の異常がないかチェックするため、卵巣・下垂体・甲状腺など、内分泌代謝に関わるホルモンの検査を行うことがあります。

PMSに対する治療の選択肢

● さまざまな治療方法があるPMS

PMSの症状を緩和するための対策としては、生活習慣の見直しや運動などのセルフケアのほか、薬剤による治療があります。一人ひとりの症状や体質に合わせて対処すれば症状の緩和が期待できます。
また、月経がある女性の80%以上にPMSのような症状がみられ、その中でも軽症で治療を必要としない方もいらっしゃる一方、中等症以上の PMSでは薬物治療などの対応が必要だといわれています。
どのような症状が出ているのか、また生活にどのような支障をきたしているのかによって治療法が選択されるため、まずは婦人科の医師に相談してみましょう。
具体的には、次のような治療法があります。
(保険適用がないものもありますので、こちらも医師と相談してください)

● 漢方療法

漢方治療はPMSの症状を和らげることが知られています。漢方医学では月経関連の症状を“血の道症”ととらえて、PMSに特徴的な症状であるむくみ、お腹の張った感じ、精神不安などに対する漢方薬を服用します。
漢方薬は、数種類の生薬(漢方薬を構成する原料)で構成されているため多くの成分を含みます。そのため、さまざまな心身の不調に広く用いられており、1つの漢方薬でPMSの複数の症状を和らげることが期待できる点がメリットです。また、副作用も少ないといわれています。症状や体質に合った漢方薬を見つけられるよう、漢方に詳しい医師に相談することをおすすめします。

● ホルモン療法

PMSの不調は、排卵が起こって女性ホルモンの分泌が大きく変動することにより現れます。そのため、ホルモン剤を服用することで排卵を止めて、女性ホルモンの分泌の変動をなくすことで、月経前の不快な症状が軽快します。こうした作用を持つ薬には、低用量経口避妊薬(OC:いわゆる低用量ピル)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)があります。特にドロスピレノン含有のLEPは効果のエビデンスがあります。なお、服用を中止すると自然な排卵が回復するため、その後の妊娠は可能です。
一方、女性ホルモンの分泌を抑制し、一定期間排卵や月経を止めるいわゆる偽閉経療法という治療法もあり、GnRHアゴニスト(皮下注・点鼻)やアンタゴニスト(経口)を用います。エストロゲンレベルを下げてしまうため、更年期障害様症状や骨量低下をきたすことがあり、PMSに対しては初めから使われる方法ではありません。

● そのほかの薬物療法など

身体症状については、痛みに対して鎮痛薬、むくみなどに対しては利尿薬などを使用します。
気分の落ち込みやイライラなどの精神症状が強い場合は、次のような薬物療法が検討されます。
・精神安定剤(抗不安薬)……不安や緊張、イライラなどを軽減します。
・抗うつ薬……SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:selective serotonin reuptake inhibitor)などうつ症状を軽減する抗うつ薬も使われます。SSRIは欧米では第一選択となっており、黄体期のみの服用でも効果があります。
サプリメントにも効果が期待できるものがあります。

もしかしてPMSかも? と思ったら

自分の症状がPMSかもと思ったときは、“PMSチェックリスト”を用いて受診前に症状をチェックしてみましょう。このリストでPMSの可能性がある場合、医療機関へのご相談をおすすめします。

【監修】
東京歯科大学市川総合病院 産婦人科教授 髙松潔先生
PMSチェックリスト
月経(生理)に関連した精神的・身体的な不調であるPMS(月経前症候群)の症状について、まずはセルフチェックで確認してみましょう。なお、このチェックリストはPMSを診断するためのものではありません。
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