乾癬特集乾癬の症状と類似疾患について
乾癬にはいくつかの種類があり、種類によって症状が異なりますが、大部分*1は尋常性乾癬と呼ばれるタイプのものです。尋常性乾癬の典型的な症状は、皮膚が赤くなる紅斑と皮膚が盛り上がる浸潤・肥厚、またその上に鱗屑という銀白色の粉のようなものが見られることです。
また、これらの皮膚症状は正常な部分との境界がはっきりしていることが特徴です。鱗屑はフケのように剥がれ落ちる落屑が見られ、鱗屑を無理に剥がすとポツポツと点状に出血するような症状が見られます。尋常性乾癬の約半数の方で強いかゆみの症状を伴います。なお、乾癬が人にうつる(感染する)ことは決してありません。
乾癬の種類によっては、先述した皮膚の症状に伴い、関節の痛みや腫れ、爪の変形が見られることがあります。また、風邪(扁桃炎)を発症した後に全身に小さな紅斑が見られたり、正常な皮膚がほとんど見えないほどに全身に紅斑が見られたりする種類の乾癬もあります。そのほか、発熱や倦怠感、全身の紅斑とともに膿疱(膿がたまったもの)が出現し、場合によっては他臓器に影響が及ぶ種類の乾癬もあります。
乾癬の症状は全身のどこにでも起こる可能性がありますが、こすったり傷ついたりなどの刺激を受けやすい頭部、肘、膝、腰、臀部、下腿前面などに生じやすい特徴があります。
乾癬は慢性の経過を辿る病気で、長い付き合いが必要となる病気です。しかし、発症したらその後もずっと症状が続くわけではなく、良くなったり悪くなったりを繰り返す特徴があります。患者さんによっては、数年単位で症状の出現を繰り返すこともあります。
このように乾癬は長い経過を辿ることから、途中で治療をやめてしまう方も少なくありません。しかし、乾癬は根気よく治療を続けていくことで、症状をコントロールできる可能性があります。
また、症状が悪化するタイミングは患者さんによって異なりますが、乾癬の患者さんでは皮疹がない部分でも刺激が加わることによって新たな皮疹が生じてしまうことがあります(ケブネル現象といいます)。そのため、症状の悪化を防ぐには皮膚をこすったり、引っ掻いたりしないことが大切です。そのほか、けがや激しい日焼けといった強い刺激や精神的なストレスなどによっても悪化することがあります。皮疹の範囲が広がったりかゆみが強くなったりすると、見た目や日常生活にも影響を及ぼすため症状そのものが精神的ストレスとなり、さらに症状が悪化するという悪循環を招きかねません。
一方、適度な紫外線は乾癬の症状を軽減する効果があることから、夏場には症状が起こりにくい方もいらっしゃいます。
乾癬で起こる赤い紅斑や皮膚の盛り上がりはほかの病気でも見られることがあります。このため乾癬だと気付かずに放置してしまい、適切な治療を受けられないまま重症化するケースもあります。似たような症状が現れる病気には以下のようなものがあり、診断の際には慎重に皮膚を観察したり、場合によっては病理検査*などで詳しく調べることで、これらの病気との鑑別を行います。
・湿疹
・じんましん
・脂漏性皮膚炎
・接触皮膚炎
・白癬
・類乾癬
・Gibertばら色粃糠疹
・皮膚リンパ腫(菌状息肉症)
・梅毒
・薬疹
・関節リウマチ など
乾癬の症状は見た目にも目立ったり、鱗屑が剥がれ落ちたりするために、周囲からの視線を気にしながら日々の生活を送っている患者さんが多くいらっしゃいます。また、感染する病気ではないのにもかかわらず、「うつるのではないか」と勘違いされることもあります。こういった精神的なストレスによって、QOL(quality of life:生活の質)が大きく低下してしまうのが乾癬の大きな問題といえるでしょう。
また、乾癬のなかには、乾癬性紅皮症という乾癬の重症化などによって発症するタイプのものや、膿疱性乾癬といった命にかかわる可能性があるタイプのものもあります。乾癬の症状があっても「単なる乾燥や湿疹だから自然に治るだろう」と思い受診を控え、診断や治療が遅れてしまうケースも少なくありません。乾癬は皮膚科で診断・治療を受けることができます。もし当てはまる症状があるなど少しでも気になることがあれば、放置せずに早めに受診しましょう。