症状をチェックする病院を検索する

乾癬特集乾癬の種類について

乾癬には5種類ある

乾癬の分類と割合

乾癬かんせんは病態や症状の特徴によって大きく以下の5つに分類されます。

尋常性乾癬じんじょうせいかんせん
乾癬性関節炎かんせんせいかんせつえん
乾癬性紅皮症かんせんせいこうひしょう
膿疱性乾癬のうほうせいかんせん(汎発型・限局型)
滴状乾癬てきじょうかんせん

これらのうち、もっとも患者数が多いのが尋常性乾癬で全体の約90%を占めるといわれています。そのほか、滴状乾癬が約4%、乾癬性関節炎が約3%、乾癬性紅皮症が約1%、膿疱性乾癬は汎発型と限局型*がそれぞれ約1%であると報告されています*1。しかし近年、乾癬性関節炎の患者さんが増加しているといわれており、最近の調査では乾癬性関節炎の割合はより多いという報告もあります*2

*膿疱性乾癬は、手足など部分的に症状が現れる限局型と、全身に症状が多発する汎発型に大別される。
症状セルフチェックシート
自分の症状が乾癬かもと思ったら、まずは受診前に症状をチェックしてみましょう。
チェックする

尋常性乾癬

尋常性乾癬では皮膚に鱗屑りんせつ(銀白色の粉)を伴った赤い紅斑こうはんが見られます。紅斑の部分は盛り上がっており、正常な皮膚との境界がはっきりしていることが特徴です。また、鱗屑はポロポロと剥がれ落ち(落屑らくせつ)、また無理に剥がすと点状に出血するような症状が見られます。かゆみはおよそ半数の患者さんに見られます。こういった皮膚症状は全身のどこにでも出現する可能性がありますが、刺激が加わりやすい頭部、肘、膝、腰、臀部でんぶ、下腿前面などによく見られます。
また、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら経過していく特徴があります。

監修医提供
監修医提供

乾癬性関節炎

先述の皮膚症状に腫れや痛みといった関節症状を伴ったものを乾癬性関節炎といいます。関節症状は手や足の関節に起こるほか、手首や足首、膝、肩、背骨など全身の関節にも見られます。腰や背中の症状は、朝にこわばりを強く感じ、動くと軽減されるといった特徴があります。
爪が変形して厚くなる、へこむ、剥離はくりするなども特徴的な症状です。そのほか、アキレス腱や靱帯が骨と付着する結合部に炎症が起こったり、指全体がソーセージのように腫れたりする症状が見られることもあります。
症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、突然症状が進行して関節が曲がったまま元に戻らなくなる(不可逆的になる)こともあります。
また乾癬性関節炎では、約70~80%*3*4の方で皮膚の症状が先行して出現するといわれています。

監修医提供

乾癬性紅皮症

乾癬の皮膚症状が全身に出現したものを乾癬性紅皮症と呼びます。正常な皮膚がほとんど見えなくなるほどに皮疹ひしんが広がることが特徴です。これに伴い、発熱、倦怠感、脱水、むくみなどの症状が生じ、入院が必要となることもあります。
乾癬性紅皮症は、突然発症することは少なく、尋常性乾癬が重症化することで発症することが多いです。たとえば、尋常性乾癬の治療を受けずに放置したり、治療は受けたものの適切な方法で治療が行われなかったりすることが原因となります。そのほか、薬の影響や何らかの感染症が引き金となり、尋常性乾癬から乾癬性紅皮症に移行することもあります。

監修医提供

膿疱性乾癬(汎発型・限局型)

膿疱性乾癬は、乾癬のなかで病状が重いと言われているタイプです。皮膚の灼熱感(熱い感じ)を感じるとともに、紅斑が出現します。このとき、発熱、全身倦怠感、むくみ、悪寒などの全身症状が出ることが多いです。その後、紅斑の上にたくさんの膿疱(膿がたまったもの)が出現します。この膿疱は細菌性ではないため、人に感染することは決してありません。
膿疱性乾癬は、皮膚症状が全身に現れる“汎発型”と、手足などの一部に現れる“限局型”に大別されます。このうち汎発型は重症度が高いため、厚生労働省の指定難病として医療費の助成対象となっています。また、汎発型の膿疱性乾癬には妊娠をきっかけとして起こる疱疹状膿痂疹ほうしんじょうのうかしんも含まれます。
汎発型の膿疱性乾癬では、関節の痛み、爪の変形・変色、目の炎症が起こることがあります。さらに、腎臓や心臓にも影響が及ぶこともあり、適切な治療をしないと命に関わることもあります。膿疱性乾癬は、尋常性乾癬が重症化して発症することもあるため、尋常性乾癬の方で膿疱性乾癬を疑う症状がみられたら早めの受診が大切です。

監修医提供

滴状乾癬

滴状乾癬では小さな水滴ほどの大きさの紅斑が全身に現れます。お子さんを含む若年者が発症することが多い乾癬です。風邪(感染症による扁桃炎)が発症のきっかけとなることが多く、その場合には、通常感染症の治療によって改善します。しかし、患者さんによっては尋常性乾癬に移行する方もいらっしゃいます。

監修医提供
乾癬の相談ができる医療機関を探す
乾癬にも複数の種類があります。
自己判断せず、乾癬の診療ができる医療機関へ相談しましょう。
病院を検索する
乾癬の症状と類似疾患について
乾癬に似たような症状が生じる病気はいくつか存在しますが、乾癬の皮疹の現れ方にははっきりとした特徴があります。また、種類によっては全身に症状が現れ、腎機能や心機能に支障をきたすこともあります。乾癬の好発部位(症状がでやすい場所)や特徴、経過について詳しく見ていきましょう。
詳しくはこちら
乾癬の病態概念と注意すべき合併症
乾癬は遺伝的な“なりやすさ”に加え、メタボリックシンドローム、ストレス、食事などのさまざまな因子が重なって免疫機能に異常をきたすことで発症すると考えられています。また、発症すると免疫機能の異常により全身の臓器に炎症を起こすため、皮膚のみならず全身に多様な合併症が現れてくることがあります。具体的にどのような合併症が起こりやすいのかを詳しく見ていきましょう。
詳しくはこちら
乾癬のお悩みQ&A
「どんなときに受診すればよい?」「食事制限は必要?」「着るものは何を選んだらよい?」など、乾癬の患者さんの多くが抱えるお悩みと回答をQ&A形式でまとめました。受診を検討している方や症状のコントロールで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
詳しくはこちら
監修
自治医科大学 副学長、自治医科大学 皮膚科学講座 教授
大槻 マミ太郎 先生
出典:
*1 Takahashi H, et al.J Dermatol.2011 Dec;38(12):1125-9.
*2 Yamamoto T, Ohtsuki M, Sano S, et al. J Dermatol.2016; 43: 1193-1196.
*3 Gottlieb AB, Mease PJ, Mark Jackson J, et al.J Dermatolog Treat.2006; 17: 279- 287.
*4 Ogdie A, Langan S, Love T, et al.Rheumatology(Oxford), 2013; 52: 568-575.

参考資料:
清水宏『あたらしい皮膚科学第3版』中山書店, 2018
公益社団法人 日本皮膚科学会(https://www.dermatol.or.jp
公益財団法人 難病医学研究財団 『難病情報センター』(https://www.nanbyou.or.jp
大久保ゆかり: 実地診療マニュアル イラスト&ビジュアル46 尋常性乾癬. Clinical Derma 13: 3-6, 2011.
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/PsAgl2019.pdf
山本俊幸編. 乾癬・掌蹠膿疱症-病態の理解と治療最前線.中山書店.2020
2022年12月作成